今回は人気のライトノベルの中から、須賀しのぶ作品をご紹介したいと思います。生粋のライトノベルファンはもちろん、これまで触れることの無かった方にもおすすめの作品です!まずは一冊、騙されたと思って手に取ってみませんか?
須賀しのぶは、大学卒業後、1994年にコバルト・ノベル大賞の読者大賞を受賞し、以降ライトノベルを中心に活躍しました。
2007年からは一般文芸に活躍の場を移し、2013年『芙蓉千里』でセンスオブジェンダー賞大賞受賞、2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞の候補になります。さらに『また、桜の国で』では直木賞の候補に上がっており、乗りに乗っている作家です。
今回は、そんな須賀しのぶの原点とも言える5シリーズをご紹介していきます。
十年戦争により破壊され、不毛の荒野(=バレン)となった無法地帯に一軒のモーテルが建っています。そのモーテル、ルーラン・ルージュの店主である、ピンク色の髪が印象的なロキシーの前に、不吉な雰囲気を漂わせて黒い衣服を身にまとった美女、キリが現れます。
町にはキメラと呼ばれる化け物がはびこり、自ずと、キメラ狩りを生業とするハンターもうまれました。キリもその一人で、ハルという神父を探す一人旅の最中、キメラ狩りで生計を立てていたのです。
- 著者
- 須賀 しのぶ
- 出版日
腕が立つと豪語するキリに現実を見せようと、ロキシーは情報収集の名目で近くの町まで連れ出しますが、そこで明らかになったのは異常な程のキリの強さでした。
キリの正体は何者なのか。彼女が探すハルとは一体どんな人物なのか。快活なロキシーとクールなキリの迫力満点なアクションファンタジーです。
あれよあれよという間に、グングン物語に引き込まれてしまいます。ストーリー展開もさることながら、ロキシーとキリのやりとりがなんとも愉快で微笑ましいです。その上、シリアスなシーンやカッコいいアクションシーンも満載で、そのオンオフの切り替えが見事で飽きを感じさせません。
時は第一次世界大戦の最中、リックという飛行機の操縦技術だけが取り柄のお調子者が、婚約者と大喧嘩の末に空軍の傭兵部隊に入隊するところから始まります。
しかし、入隊した部隊は荒くれものの集まり、リックはからかわれますが、持ち前の明るさも手伝って、飛行機を愛する仲間たちと打ち解けていきます。
- 著者
- 須賀 しのぶ
- 出版日
自信のあった操縦技術も、上には上がいてリックは世界の広さを知ることとなります。飛行機が好きで飛行機に乗りたいだけなのに、戦場に飛び出さなければいけない境遇、読んでいて考えさせられるところです。
テーマはとてもシリアスなものですが、とてもライトに笑いに溢れて描かれているのでサクサクと読めてしまいます。須賀しのぶの力量を感じざるを得ません。
飛行機好き、男の友情好きにはたまらないシリーズだと思います。全二巻というのも嬉しいですね。
学校にいても、つらい軍事訓練や、クラスメイトの顔色を窺ってばかりで、疲れ果ててしまいます。それでも、マリアのもとへ訪れた時には自分をさらけ出すことができたのです。音楽の授業では下手に歌い、合唱部では実力の全てを出し切らずに、目立たないように努めていましたが、ここでは何も気にすることがありません。心の赴くままに歌を歌う。それが陽菜にとって特別な時間でした。
しかし、その日はいつもとは違いました。歌を歌い、マリアと話していると、突然強い力で引っ張られたのです。その正体は、湊という別の中学の男の子。おかしな出逢いだと思いながらも、この出逢いこそが、陽菜の運命を非情にも変えていきます。
- 著者
- 須賀 しのぶ
- 出版日
- 2008-11-28
学園物の読みやすさと、先が気になるミステリー要素を兼ね備えた作品に仕上がっており、読み始めると止まらなくなってしまいます。天使病と呼ばれる奇病。そして、その病で死ななかった者が成れるというアンゲルゼという存在。一体陽菜の身に何が起こるのか、本当に気になって眠るのを忘れてしまうほどです。
陽菜に襲い掛かる過酷な試練の数々も読みどころです。思わず頑張れと言いたくなってしまいます。
本作の舞台は23世紀。
止まらない環境破壊、留まることのない人口増加、それらにより地球は壊滅的に破壊されてしまいます。人類は月への移住を始めますが、無慈悲な選別が行われます。有権者優先の移住です。
最新の科学技術と共に月へ渡った彼らは、自分たちの生活の為に尽力しますが、地球のことは見向きもしません。月での生活が落ち着いた頃には、すでに時遅し。地球は巨大なスラム街と化していたのです。
- 著者
- 須賀 しのぶ
- 出版日
月へ渡った者たちは、侮蔑の目を向けながらも可哀そうにと手を差し伸べます。しかし、それは地球で暮らしていた人々の怒りを買うに過ぎなかったのです。その瞬間から、月に渡ってしまった政府と、地球に残されたレジスタンスとの壮絶な戦いが始まってしまいます。
初めはレジスタンスが優勢でした。旧式の武器しかない状況なのに、荒れ果てた地球を知り尽くした彼らに太刀打ちできません。
そこで政府は動きます。高い俸給と月やスペースコロニーの市民権をエサに地球側から人を集めたのです。経験、性別、人種、宗教、そんなものは関係ない、唯一の線引きは17歳以上であること。そのメンバーで構成された部隊が治安部隊であり、その中で曹長を務めているのがキャッスルなのです。
義理人情に厚く、誰よりも男らしく逞しい彼女は、階級に関係なく慕われていました。しかし、どこにでもいるのが目の上のたんこぶ。直属の上司であるクーンツ将校がその一人。月の士官学校出身のエリートで部下をゴミのように扱う情の欠片も無いような男です。
戦場で助けを待つ部下を助けに行くというキャッスルに対し、なかなか首を縦に振りません。それでも懇願する彼女に悩んだ挙句に三人の助っ人をつけると言い出すのですが、喜ぶのもつかの間、その三人というのが手に負えない荒くれものたちだったのです。
濃密なストーリーと魅力的なキャラクターの面々、そして、戦争ものとは思えないほどのコミカルな描写。それらが絶妙なバランスで混ざり合い、読む手を止めさせません。『ブルー・ブラッド』 シリーズというスピンオフが作られてしてしまうほどの世界を、どっぷりとお楽しみください。
14歳のカリエは、普段から刺繍をしていてほしいと望む猟師の父に、狩りに行けと命じられます。それも寒さの厳しい雪の降る冬のことです。母は売り物用に作った綺麗な刺繍が施された外套を着せてくれましたが、カリエはなにか妙だと思いながらも狩りに出かけていくのです。
この町で女性の猟師はカリエしかいません。唯一の女性猟師で腕前も良いのですが、それでも獲物が取れない日はあります。雪の降る寒い冬ですから当然かもしれません。カリエの体力も気力も次第に限界が近づいてしまうのです。
父に怒られることを覚悟して、帰ろうとすると生き物の気配を感じます。かなり大きく、一発ではとても仕留められそうにないと感じ、逃げようと考えるのですが、注意深く観察すると、それが男の人であることが分かります。
どうしてこんな所に、と考えていると、いつの間にかその男はカリエの目の前に立っていました。驚くのもつかの間、みぞおちに食らった一撃に意識を失い、連れ去られてしまうのです。
目を覚ますと煌びやかなお城の中、話を聞いてみれば、病気を患っている皇子の影武者になれと言われてしまいます。14歳の女の子、カリエの運命や如何に!
- 著者
- 須賀 しのぶ
- 出版日
普通の女の子が、突如貴族の生活を送ることになる、と聞くと一種のシンデレラストーリーのように聞こえるかもしれませんが、そうではないのです。彼女に課せられた使命はとてつもなく重く、大きいものでした。立ち居振る舞いを矯正され、過酷な軍事鍛錬を強いられ、男として振舞わなければならないとなれば、その苦労は涙無くしては語れません。
しかし、カリエは泣きません。芯の強い真っすぐな女性ほど輝いて見えるものはない。そう感じるほどに強く逞しいカリエの姿は、読者の心を捉えて離さないでしょう。
カリエの他にも魅力的なキャラクターが多く、物語に引き込まれる大きな要素となっています。楽しめる部分が目白押しの本作は、須賀しのぶの魅力全開のシリーズです。
以上、須賀しのぶのおすすめ5作品でした。全部読むのは大変そうなんて思うかもしれませんが、一度開いてしまえばあっという間です。ぜひお楽しみ下さい。