佐藤友哉おすすめ作品ランキングベスト6!三島由紀夫賞の最年少受賞作家!

更新:2021.12.15

心に刺さるような、斬新かつエンターテインメント性に富んだ作風で、若い世代から圧倒的支持を得ている作家・佐藤友哉。ここでは、サブカルチャーから純文学まで、佐藤友哉の魅力溢れるおすすめの作品を6冊ご紹介していきます。

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皮肉的な青春小説が魅力の作家・佐藤友哉

1980年、北海道で生まれた佐藤友哉は、小説やテレビ、映画などの娯楽作品にほとんど触れることのない子供時代を過ごしたようです。中学校3年生で『新世紀エヴァンゲリオン』に熱中。その後、角川ホラー作品を好んで読むようになったのだとか。高校生頃から作家を目指し始めるものの、最初はなかなか書けなかったといいます。

紆余曲折を経て完成した『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』で、若干19歳にしてメフィスト賞を受賞。その後立て続けに作品を発表し、2007年、『1000の小説とバックベアード』で、史上最年少の三島由紀夫賞を受賞したことでも、注目を浴びました。
 

6位:佐藤友哉が描く「生と死」

物語は、主人公の老婆カユ(70)が、住む村のしきたりにより「お山」に捨てられるところから始まります。カユは寒さと空腹に痛めつけられながら、必死に極楽浄土を願っていました。

しかし、予期せぬ出来事が待っているのです。

命を救われたのです。救ったのは、同じように「お山」に捨てられた老婆たちでした。彼女たちは、「お山」とは反対側の土地に「デンデラ」なる場所を創り出し、貪欲に生き延びていました。 

カユは激怒しますが、「デンデラ」の一員とならざるをえませんでした。そして、かつての顔なじみと共に、「生」と「死」に真っ向から向き合い続けることになるのです。

著者
佐藤 友哉
出版日
2011-04-26

「生と死」 

生きるものにとって、追っても追っても辿りつけないテーマなんですよね。

保科キュウはお山参りの後、極楽浄土を信じながらも、生き延びることを選びデンデラを見つけました。

キュウはカユとの会話で、こう言っています。

「永劫の幸福なんてないよ。安心なんてない。極楽浄土にそれはない。だから、生きなくちゃならない。」
(『デンデラ』より引用)

カユは当たり前のごとく、真っ向から否定しました。

しかし一方で、かつて親交があった黒井クラが死に絶えそうな時、こう懸命に叫ぶのです。

「死ぬな死んで満足するな喜びながら死のうとするな」
(『デンデラ』より引用)

死ね、と言ったり死ぬな、と言ったり、乱れ動くカユの心を追ってみると、より本書の真髄に近づけると思います。

物語の中盤で「デンデラ」は幾度となく、熊に襲われるという展開をみせます。ページを多く割いて、血みどろの闘いが色濃く描かれているのです。

ここまでクローズアップしたのは、自然という猛威に立ち向かう困難さ、生き続けることの難しさ、死に逝くことの儚さを、より具体的に生々しく伝えたかったから、ではないでしょうか。

「喰う(生きる)」のも「喰われる(死ぬ)」のも、相当な力がいることで、苦しみを伴うのであれば、それはもう同じことなのかもしれません。

「生と死」について考え抜きたい時、本書をおすすめします。

5位・デビュー作を含む人気シリーズ 異常な兄妹の物語

特異な体質を持つ、鏡家の7人兄妹の姿を描くミステリー作品『鏡家サーガ』シリーズ。デビュー作『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』をはじめ、関連作品が全7冊刊行されている人気シリーズです。

D.J サリンジャーの小説に登場する、グラース家がモチーフになっているという鏡家。『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』では3男の公彦が、『エナメルを塗った魂の比重 鏡綾子ときせかえ密室』では次女の綾子、『水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪』では、次男の創士が主人公と、作品ごとに、兄妹のうちの誰かが主人公として登場しています。

ミステリーとはいえ、とにかくよく人が死に、暴力シーンや殺人シーンなどの描写は、生々しくて、痛々しい。シリーズを通して、なんとも狂った世界が展開されていきます。
 

著者
佐藤 友哉
出版日
2001-07-06

ストーリーに粗があるのかもしれませんが、そんなことを考えること自体が野暮なのでは、と思わされる作品です。読者をひきつけてやまないその面白さには中毒性があり、1度はまり込んでしまったら、抜け出すのは困難かもしれません。

分かる人にしか理解できない漫画ネタや、ゲームネタなどがこっそり仕込まれているのも、ファンには嬉しいところ。その突き抜けたような異常さが癖になり、読むのをやめられなくなる、不可思議な魅力にあふれたシリーズになっています。
 

4位・1000年を経て起こる奇跡 佐藤友哉から見た3.11

空一面を花が覆い尽くした世界で、終末へと向かっていく人類の1000年間を描く『星の海にむけての夜想曲』。星海社が企画したカレンダー小説として出版された短編に、書き下ろしが加えられた1冊です。

世界中の空が、突如として色とりどりの花で覆われてしまいました。花からは花粉が降り注ぎ、それを吸った人間は、狂ったように人を襲い出します。空を覆う花、大地を覆う屍体。世界の終わりが近づく中、青空も星空もない世界で、生き残った人々の切実な姿に涙するでしょう。
 

著者
佐藤 友哉
出版日
2012-07-13

佐藤友哉が、3.11の大震災を踏まえ、執筆したというこの作品。独特な表現方法で、様々なメッセージを読み取ることができるでしょう。荒廃した世界の様子には胸が痛み、絶望的な状況のなか、星空を見ようと奮闘する少女の姿が印象的です。悲惨な中にも愛が漂い、希望を持つことの大切さを感じることができます。

ページ数も少なく読みやすい作品です。独特な文章の勢いはそのままに、詩的で綺麗な表現が多く、佐藤友哉の作品の中では、静かにしみじみと読ませる、異色の作品と言えるかもしれません。佐藤友哉の作風が苦手だという方でも、すんなり読めるのではないでしょうか。
 

3位・佐藤友哉の三島由紀夫賞受賞作!小説とは何か

数々の個性的な作品を生み出してきた佐藤友哉が、小説と、とことん向き合った傑作『1000の小説とバックベアード』。史上最年少となる26歳で、三島由紀夫賞を受賞した作品です。

個人からの依頼を受け、その人だけのための物語を作成する「片説家」。この職業に就く主人公・木原は、27歳の誕生日に、クビを言い渡されます。元々は小説家になりたかった木原ですが、それが叶わず「片説家」になったというのに、突然の解雇を受け失意のどん底。そんな木原の前に、小説の執筆を依頼したいという、1人の女性が現れて…
 

著者
佐藤 友哉
出版日
2009-12-24

物語には、バックベアードという謎の組織も登場し、予想外の展開へ。様々な弊害に遭いながらも、なんとか小説を書き上げようとする、主人公の姿が描かれています。

物語の中で、世の中に「本物」と呼ばれる小説は、1000しかないとされているのが、印象深く心に残ります。あらゆることがもうすでに、誰かの手によって描き尽くされているというなら、これから生み出されようとしている小説とはいったい何か。小説家たちはなんのために書くのか。とことん悩み、考え、小説と真摯に向き合おうとする想いには、胸が熱くなります。

壮大なテーマに挑戦している本作。テンポが良くて読みやすく、本が苦手な方でも、最後まで楽しく読むことができるでしょう。文章にとにかく勢いがあり、言葉にするのは難しい、不思議な魅力の詰まった作品です。
 

2位・戦後文学についてつづった痛快エッセイ

1000年経っても読まれ続ける小説を書くには、どうするべきかを熱く語る、佐藤友哉の痛快エッセイ『1000年後に生き残るための青春小説講座』。太宰治や野間宏、D.Jサリンジャーなど、戦後多くの人から読まれた文学を取り上げ、1000年後も読まれる文章とは、どんなものなのかを考えています。

10代で作家デビューを果たし、勢いに乗って走り続けてきた佐藤友哉。30歳を過ぎ、結婚して子供ができ、3.11の震災を経験したことによって、思っていたよりも普通になっている自分に気がついたのだそう。この作品では、そんな自分を鼓舞するかのような、相変わらずの攻める文章を披露しています。
 

著者
佐藤 友哉
出版日
2013-01-22

戦後文学を、独特の語り口調で面白おかしくいじったと思うと、原発問題に対して逃げ腰がちな作家たちに怒りの感情をあらわにし、めちゃくちゃなことを言っているようで確信をつく、ストレートな文章が魅力的です。佐藤友哉の心の叫びを、凝縮させたような一冊で、そのエネルギッシュなパワーには圧倒されるばかり。その少年のような真っ直ぐさが、とてもまぶしく羨ましくもあります。

「僕は生きたい!死にたくない!書いていたい!」と声高らかな宣言に、気持ちの良い爽快感を感じる、力強い作品。1000年後も残るのかはわかりませんが、読めば必ず、心に伝わる何かをくれることでしょう。
 

1位・思春期の葛藤をリアルに描く傑作青春小説

北海道の田舎町を舞台に、10代の少年の葛藤を描く青春小説『灰色のダイエットコカコーラ』。若くしてこの世を去った、芥川賞作家・中上健次の『灰色のコカコーラ』に、強く感銘を受けた作品となっています。

主人公は19歳の少年。かつて「覇王」と恐れられていた祖父のようになりたい、と夢想しますが、北海道の片隅でなす術もなく、鬱々とした日々を送っています。平凡な人生を送る人々を、ただの「肉のカタマリ」と呼んで嫌悪感を抱き、自分は特別な存在のはずだと信じてきましたが、次第にその自信もゆらいでいきました。何かをしなければ、と焦燥感を募らせ、「覇王」を目指しますが、「覇王って何?」と聞かれても、本人にもよくわからない始末で…
 

著者
佐藤 友哉
出版日
2013-11-08

過激な描写も多々ある本作ですが、大人が押し付ける「普通」に反発する、ひりひりとした思春期の葛藤が、とてもリアルに描かれ、物語に惹きつけられます。多少なりとも、誰もが似たような感情を1度は体験し、そして大人になっていくのかもしれません。

登場人物も個性的で、皆何かと葛藤しています。重くなりがちな題材を、リズミカルで軽快に描き、若い世代の人たちが充分に共感し、楽しく読める内容になっています。佐藤友哉という作家に興味のある方に、ぜひ1番におすすめしたい、魅力的な青春小説です。
 

佐藤友哉のおすすめ作品を、ランキングでご紹介しました。常にポップな文章を心がけているという作品は、とても読みやすく心にしみていきます。興味のある方はぜひ1度読んでみてくださいね。

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