ゴミと呼ばれた少年がゴミから生まれた敵を倒す!漫画『ガチアクタ』レビュー

更新:2022.10.16

先日行われた「次にくるマンガ大賞 2022」にて、英語圏のイチオシに相当するGlobal特別賞に見事輝いた裏那圭&晏童秀吉の『ガチアクタ』。 本作は冤罪で奈落に追放されたゴミ場荒らしの少年・ルドが、下界で個性的な仲間たちと出会い、ゴミから生まれた怪物・斑獣を倒す過程で世界の核心に迫っていく物語です。 今回は今後人気急上昇間違いなしの『ガチアクタ』をレビューしていきます。

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『ガチアクタ』の簡単なあらすじ&登場人物紹介

主人公の少年・ルドはゴミ場荒らしを生業にする貧しい少年。彼は犯罪者を父に持ち、卑しい族民(犯罪者の子孫)として蔑まれていました。

ルドが暮らす世界は貧富の差が激しく、一般市民が豊かな生活を謳歌する一方で、ルドたち族民は不潔なスラム街に押し込まれています。しかしルドは心優しい幼馴染の少女・チワ育ての親・レグトに囲まれ、逞しく生きていました。

そんなある日、レグトが何者かに殺害される事件が発生。必死の弁明も聞き入れられず養父殺しの冤罪を着せられたルドは、奈落と呼ばれる巨大な穴に廃棄されてしまいました。

ルドが落ちた先は下界と呼ばれる場所。

そこはゴミから生まれる怪物・斑獣が闊歩する危険地帯で、ルドが元いた世界が天上界と呼ばれているのが発覚します。

斑獣を倒して稼ぐ掃除屋の青年・エンジンに拾われたルドは、さらなる過酷な真実を突き付けられるのでした。

著者
["裏那 圭", "晏童 秀吉"]
出版日

大久保篤のエッセンスを受け継ぐスタイリッシュな画風

『ガチアクタ』週刊少年マガジンで2022年より連載スタートし単行本は既刊二巻。作者の裏那圭およびグラフィックデザイナーの晏童秀吉が、分業体制で制作している事でも話題を呼びました。

次にくるマンガ大賞2022においてGlobal特別賞を獲得、本選でも13位に入りました。

裏那圭は大久保篤のアシスタントを長く務めた経験上、師のスタイリッシュなセンスを強く受け継いでいます。

キャラクターの造形が似ているのは言うまでもなく、ダイナミックな構図やスタイリッシュなアクション、スチームパンクな世界観や登場人物たちのシュールな掛け合いにも既視感を覚えました。

しかもただ似ているだけではなく、際立ったオリジナリティーを獲得しているのに注目。

シュッとしたイケメンからキュートな美少女まで描きこなす画力の高さや、装飾にこだわり抜いたファッションセンスの良さで、大久保の漫画が好きな層にとどまらず新しい読者を取り入れることに成功しました。

メリハリ満点なデフォルメの利いたキャラデザ、白と黒のコントラストが鮮烈な絵作り、ゲス顔すら魅力的に映える圧倒的目ヂカラ。

裏那圭&晏童秀吉タッグの三拍子揃った個性が凝縮された『ガチアクタ』は、結果として非常に中毒性の高い作品に仕上がりました。

著者
["裏那 圭", "晏童 秀吉"]
出版日

ゴミから生まれた斑獣を唯一倒し得る人通者が世界の鍵を握る?

次点に挙げるのは読めば読むほど深まる世界の謎と、斑獣を唯一倒し得る人通者の設定の面白さ。

下界には人通者(ギバー)と呼ばれる能力者が存在し、人器と呼ばれる特殊な武器を自由自在に操り、凶暴な斑獣を撃退します。ルドの恩人のエンジンや師のザンカもこれにあたり、斑獣を狩り生計を立てる掃除屋を営んでいました。

この人器の設定が面白い!

あるキャラははさみ、別のキャラは眼鏡と種類は様々ですが、共通しているのはそのキャラクターの一番大事なものであること。

即ち、大切にしていた物に命が宿り具現した武器が人器なのです。

付喪神を思い浮かべればわかりやすいかもしれません。この人器はもちろんオンリーワンのアイテムで、キャラクターごとに形状や性質が異なっています。それ故人器誕生に纏わるエピソードは涙なしには読めません!

人と人、人と物の間に生まれるエモーショナルなドラマこそ『ガチアクタ』のポイント。

天上界ではいとも容易く物が捨てられていました。捨てられた物はゴミとして処分される運命を免れず、その悲劇が数多くの斑獣を生み出します。

かたや人通者は浪費と対極の存在。

有形無形にかかわらず、どうしても捨てられない何かを持ち、自分の信念を貫き通した結果能力者として覚醒した彼等は一人一人が魅力的です。

ゴミを大量投棄して顧みない天上界とそのゴミの中で暮らす人々がいる下界の対比は、私達が生きる現実世界ならびに格差社会の風刺とも解釈できます。

ゴミか否かを決めるのは人の心、自分の意志。

『ガチアクタ』の根底に流れるメッセージ性は、大量消費社会のアンチテーゼとして、読者の心に突き刺さります。

ガチでかっこいい&可愛いキャラクターに惚れる!

最後に挙げるのが忘れちゃいけないキャラクターの魅力。

『ガチアクタ』の本質はバディものにして師弟もの。

全てを失った主人公・ルドが逆境のどん底から這い上がり、頼れる仲間を得て成長していく姿を描いた、最高に熱くて面白い少年漫画なのです。

第一話時点ですこぶる劣悪な環境におかれていたルド。それでも絶望せずやってこれたのは、心の支えとなる幼馴染と養父がいたから。

ところが養父はあっさり殺され、ヒロイン枠かと思われた幼馴染には、「信じてたのに……やっぱり人殺しの子供なんだね」とこれまたあっさり見限られてしまいました。

この時点でプラマイゼロ、どころかマイナスからのスタートです。

普通なら絶望のあまり自殺しかねない状況ですが、奈落で運命的な出会いを果たした掃除屋・エンジンに世界の真実を告げられ、「レグトを殺した奴の正体と目的を突き止める!」と開眼しました。

少年漫画の王道は「主人公が失った何かを取り戻す為に足掻く」物語。

クールなエンジンや関西弁の棒使いザンカなど、一筋縄じゃいかない兄貴分にしごかれながら、天上界にリベンジを誓い自分を鍛え上げるルドをきっと応援したくなります。

リヨウやセミュなど女性陣も負けず劣らずチャーミングで、生き生きした一挙手一投足から目が離せなくなりました。

著者
["裏那 圭", "晏童 秀吉"]
出版日

『ガチアクタ』を読んだ人におすすめの本

『ガチアクタ』が気に入った人におすすめしたいのが大久保篤『ソウルイーター』

月刊少年ガンガンで連載されたファンタジーバトル漫画で、職人&武器の男女バディの痛快な活躍を描きました。アニメ化もしています。

アメコミタッチの背景や大胆なデフォルメなど、『ガチアクタ』にハマった読者なら楽しめることうけあいの大久保節を堪能してください。

著者
大久保 篤
出版日
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