今回は『空が灰色だから』で特にトラウマ注意のおすすめエピソードをご紹介。「週刊少年チャンピオン」に連載され、主に10代半ばの少年少女達を主人公にしたエピソードが収録される本作。 主人公がエピソードごとにかわる1話完結のオムニバス形式の作品で、青春漫画でありながら後味の悪いホラーテイストの話もあるなど、それぞれに独特な世界観が楽しめます。
本作を一言でいうと、10代の少年少女を主人公とした(まれに20代がいる)日常ドラマです。
原作者である阿部共実は、本作以外でも『ちーちゃんはちょっと足りない』で少女たちの痛々しい日常を描いた作品を描いており、人間の心理をえぐるドラマを描くのに長けた作家でもあります。
しかし、その内容はスポーツ漫画のような疾走感のある激しさはなく、かといって恋愛もののような甘酸っぱさもなく、10代半ばの若者にありがちな見栄や、大口を叩いたことで生まれてしまう悲喜劇が大半です。
大抵は好きな人の気を引きたかったり、仲間からはみ出したくなかったりと人間関係がきっかけ。読んでいて、そんな理由で?と思ってしまう方もいるかもしれません。
しかし、10代半ばの若者にとっての日常とは、友達と学校でどう過ごすかが何よりも重要。そこに彼らの未熟な認識と考え方が合わさって、すれ違いがおこり、笑いや悲劇が起こります。『空が灰色だから』は、若者の過剰な自意識や思い込み、そうした痛々しい心理を描いた物語なのです。
- 著者
- 阿部 共実
- 出版日
- 2012-03-08
その他にも、人の精神をえぐるような、本格ホラーを描いたエピソードもあります。
ホラーといっても、殺人鬼も怪物も登場しません、読者の心を揺さぶるような、抽象概念的なものや、人間の狂気性、そして歪な一面を描いたものが大半です。そういった心がザワザワする話があるのも、本作の特徴といえるでしょう。
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「このマンガがすごい!2015年」オンナ編の第1位に選ばれた『ちーちゃんはちょっと足りない』の作者・阿部共実の、当たり前の日常の背中にひそむ影をえぐる作品たちをご紹介いたします。
ここからは本作のトラウマエピソードを、ランキング形式で紹介していきます。
陸上をやめた不真面目な男子高校生・咲村は、掃除当番もさぼり気味で、周囲の人間からひんしゅくを買っていました。
そこへ、後輩の影村黒絵がやってきます。彼女は咲村にお守りを渡しにやってきたのですが、そのデザインたるや、目玉をモチーフにした実にグロテスクなもの。しかし彼女に悪意はなく、それは純粋に彼を思っての行為でした。
また別の日、彼女は今度、赤いインクで書いた不気味な手紙を彼に渡します。そして、その後も咲村に不気味なプレゼントを渡し続けることになるのですが……。
- 著者
- 阿部共実
- 出版日
- 2013-03-08
「さいこうのプレゼント」はコメディタッチの作品です。咲村は常に多くの女の子に囲まれており、彼女達は何かと彼を気にかけます。掃除当番をさぼったために叱りつける委員長、運動部時代の部員、幼なじみ……。
どことなくラブコメ的な展開を想像させます。しかし、このエピソードのヒロイン影村の存在が、それを覆していくのです。
主人公に恋する彼女は、髪で目が隠れたちょっと風変わりな雰囲気の女の子で、グロテスクなものが好きなのが特徴。渡すものも不気味なお守りや、血のような赤いインクで書かれた手紙など、気味の悪いものばかりです。
悪い子ではないのですが、やはり、こんな女の子に好かれてしまったら、かなり嫌かもしれません。
しかし、咲村は彼女を邪険にすることもなく、意外と優しいところがあります。不真面目に見えて、実は実直な男なのかもしれません。
さて、本作はコメディタッチの作品だと書きました。しかし、よく読んでみると、ある怖い考えに行き着くのです。それは、この話に登場する女の子たちが関係しているのですが……。
その、ある考えに行き着いたとき、思わずゾッとしてしまうこと間違いなしです。登場する女の子たちに注目して読んでみてくださいね。
男子高校生・慶太に声をかける、幼馴染の少女・鳴田あおい。彼女はやたらと慶太に世話を焼きますが、彼は彼女を無視したり、気の抜けた返事をしたり……。
彼女は幼いころから彼の世話を焼いてきたのですが、それも覚えているんだかいないんだか……なんとも微妙なリアクションです。
昔のことを全然覚えていない様子の彼に、彼女は幼い頃に友達がいなくて寂しい思いをしていたときに、彼が「一緒に遊ぼう」と声をかけてくれたことを話します。すると、彼はそのことは憶えていたようでした。
ようやく思い出してくれた彼とともに、彼女は電車に乗り込むのです。
- 著者
- 阿部 共実
- 出版日
- 2012-03-08
一見すると平凡な青春ドラマですが、よくよく聞いてみると、彼女の話に矛盾点があります。
世話焼き屋で積極的な性格なのに、なぜ友達がいなかったのか?
そして、あおいが覚えていることなのに慶太が覚えていないこと、あおいと慶太が記憶を共有していること。この記憶のズレが最後に現れるキャラクターによって、ストーリーにある歪みが露呈し、眼を覆いたくなる事態に発展するのです。
「今日も私はこうしていつもつまらなそうな顔してるあいつとつまらない話をして日を過ごしていくのだ」というタイトルが納得できる、そんな結末となっています。
男子小学生・鈴鹿は、物陰に隠れている変わり者の女子中学生と出会います。鈴鹿が何しているのと尋ねると、彼女は「名乗る名もない」と答えました。
そんな彼女は鈴鹿がベソをかいているのを見て、彼がいじめられていると見抜きます。彼女は彼に相撲の稽古をつけて、いじめに立ち向かう勇気をつけさせました。 やがて鈴鹿は、彼女を「アネゴ」と呼んで慕うようになります。
空が灰色だから 4 (少年チャンピオン・コミックス)
2013年01月08日
いじめられっ子が年上の女の子と出会い、いじめに立ち向かう訓練をするという、この物語。
大抵はボクシング漫画『はじめの一歩』のように、気の優しい不良か何かしらの武道をやっている人が訓練をつけて、いじめと立ち向かうというパターンが多いのですが、今回はちょっと違いますね。
相手は女の子、しかも年上のお姉さんなので少年は淡い思いを抱きながら、無事いじめを克服。一方「アネゴ」も、彼に慕われてどこかうれしそうです。
しかし、もちろん本作が朗らかな結末で終わるわけがありません、よく見てみると少年が女の子と相撲をとったり、腰に組み付いたりと、「性」を暗示させるような描写が出てきます。
しかも、自信のついた少年はいじめっ子に過剰にやり返し、暴力に酔いしれるような描写が出てきて、読者に神経を引っ搔くような、気持ち悪さを与えるのです。
そして彼が「アネゴ」の正体を知ったとき、一気に温度を失っていくような結末を迎えることになります。あなたの身近にあるかもしれない、そんな結末です。
高校1年生の少女・吹雪が、おばのもとへ届け物に行きました。彼女は、おばの息子でいとこの直樹に、気まずい思いを抱えている様子。彼女は小学校のころ彼に遊んでもらっていたのですが、その時に何かあったようなのです。
無事に届け物を終えましたが、その帰りに不審者に遭遇します。なんと、それは直樹でした。
思い出のなかの彼は、眼鏡をかけて黒髪です。しかし、現在は眼鏡をコンタクトに代えて(しかも片目だけカラーコンタクト)、髪を染めて、突拍子のないことを言う、変な性格になっていました。
彼は、本当に直樹なのでしょうか?
- 著者
- 阿部共実
- 出版日
- 2013-03-08
子供ころ遊んでもらっていた、年上のいとこの男の子。しかし主人公との間に何かあり、それが原因で気まずい思いをしてしまいます。通常なら、どこか甘酸っぱい出会いを期待するところですが、現れたのはかつてのいとことは、似ても似つかない男です。
昔の知り合いと出会ったときに、その人物が変り果てた姿になっていた。しかも、わけのわからないことを言ってくる。
赤の他人が自分に向かって、いきなりわけのわからない事を言ってきたら、かなり怖いです。しかし、知っている人が豹変して、わけのわからないことを言う方が、もっと怖いでしょう。
なぜ直樹は、まるで別人のように変貌してしまったのでしょうか。それには、やはり吹雪とのある過去が関係していたのでした。
もしかしたら、自分が他人の人生を変えてしまうかもしれない……そんな実際にあるかもしれない恐怖が描かれています。
女子中学生・唐井は、仲のいい友達・川江、鈴田にせがまれて一発ギャグをかましたが、見事に滑ってしまいました。そして、つまらないギャグを言った罰ゲームとして、窓際に座っている女子・水戸と話すことを命じられるのです。
水戸は、3年になってから、誰とも会話したことがありません。もちろん唐井も、彼女と話したことはありませんでした。
唐井はさっそく彼女に話しかけるべく、ウケなかった一発ギャグをかまします。すると、水戸は大笑い。
それをきっかけに、2人は行動をともにすることになります。水戸は意外にもおしゃべりで、無遠慮な性格の持ち主でした。そして、お笑い好きな一面があったのです。
やがて彼女たちは、それぞれ趣味について語り合います。水戸はお笑い、唐井は将棋。そして2人は唐井の趣味である将棋を覚えはじめようとし、いつか対戦しようと約束するのでした。
- 著者
- 阿部共実
- 出版日
- 2013-03-08
「いかにも」な窓際の席にいる孤独な少女、と思いきや、実はおしゃべりでお笑い好き。この意表のつき方が見事です。罰ゲームで話しかけるというきっかけではありましたが、意外にも気が合い、将棋や一発ギャグで盛り上がっていきます。
しかし、そんな2人を、川江と鈴田は意地悪く見ていたのでした。そして、この2人が終盤におこなう無邪気で残酷な行為が、朗らかな話を、苦々しい結末へと変えてしまうのです。
この「歩み」が、『空が灰色だから』の最終話となります。仲良くなった彼女達は、果たして最後どうなるのでしょうか。この苦々しくも、どこか優しい結末は、ぜひご自身の目でお確かめください。
大垣内(おおがいと)、田中、佐藤は好みの男性について話し合っていました。ダメ男がいいという田中、暴力男がいいと言う佐藤と、どこか男の趣味が悪い2人。そのなかで唯一、大垣内は、恋人ができたことがないからわからないと言いました。
そんな彼女に対し2人は、彼氏がいないなんて変だと、異常なまでに言ってくるのです。さらに二股をしていると言ってきた彼女たちに対して「二股はだめだ」と言ったら「二股なんて普通だ」と言われ、コンビニでもらったお釣りをしまおうとしたら「寄付するのが普通」だと言われる始末。
彼女が何をするのに対しても、2人は「それは普通じゃない」と主張してくるのです。そんな彼女達に、大垣内の内心は正直不平不満だらけ。彼女は爆発寸前でした。
まじめで潔癖症の大垣内は、親友たちの言動が気に入らなくてたまらないよう。それなのに友達でいたいから、というよりは関係性を壊したくない一心で、己の憤りをこらえていました。
- 著者
- 阿部 共実
- 出版日
- 2012-10-05
誰もが心当たりがあるであろう、人間関係における葛藤を描いたエピソードですが、第三者の視点で見ると、見た目がおっとりした女の子が内心では凄まじい憤りを募らせているさまは、とんでもない迫力です。そうまでしても、この2人と行動をともにしたいのか、と思うと、いじらしさを感じる部分もありますが。
「普通」とは、一体何なのでしょうか。大多数が賛成したものが「普通」だとするなら、そこからあぶれた人達は、皆「異常」なのでしょうか。この話を読んでいると、「普通」について考えてしまいます。
イライラを募らせた大垣内は、一体どうなってしまうのでしょうか。「学校のいじめは、こうして発展していくのだろうか」と、考えずにはいられない話です。
いつも1人でグロテスクな絵を描いている少女・来生(きすぎ)。やはりというべきか、周囲から気味悪がられ、浮いてしまいます。
そんな彼女のもとに、同じクラスの佐野という女の子が現れました。彼女は2人の仲間と、アーティスティックな絵を描くことを趣味にしています。彼女たちは来生の絵を気に入り、仲間に誘うのです。
彼女たちは親睦を深めるためにホラー映画を見たり、怖い絵を描いて見せ合いました。
しかし、来生は彼女たちを小馬鹿にするように、より一段上のグロテスクな絵を描き、とうとう彼女たちをも遠ざけてしまいます。しかし佐野だけは、彼女ともっと仲良くなりたいと言ってきたのです。
その真意とは……。
- 著者
- 阿部 共実
- 出版日
- 2012-10-05
本作には、自意識が過剰なキャラクターが多く登場します。自分は他人とは違うと思い込んで孤高を気取る一方、友達が欲しいという矛盾した葛藤を抱えているような人物です。今回の主人公である来生も、ただひたすらグロテスクな絵を描いて周囲から気味悪がられ、孤立しています。
その一方で、心の底では仲間を欲しがっているのです。それにも関わらず、いざ仲間になってくれる人が現れたら相手を見下し、自分はお前たちのような平凡な人間とは違うとばかりに、えらそうに映画の講評したり、グロテスクな絵を自慢げに見せびらかしてしまいます。
そんな彼女に、佐野だけはもっと仲良くなりたいと言ってくるのです。それでも来生は佐野さえも心の中で小馬鹿にしています。
しかし来生はこの後、真の狂気の世界に足を踏み入れ、恐れおののくことになるのです。結局、彼女も自分が本物の狂人でも特別な存在でもなかったということを、嫌が応でも知ることになります。
本当は友達が欲しいのに、周囲を拒み続けた彼女に残されたものは、本当にイカレた世界。しかし彼女は、そこにもなじめません。最後に彼女が体験した、想像を絶する恐怖とは何だったのでしょうか。
女子小学生の憐(れん)は、友達2人が自分のバックで学校に通っているのに対し、ランドセルを背負って登校していました。
それを2人にからかわれた後、今度は彼女達から「ガガスバンダスをやっているでしょう?」と言われますが、彼女は何のことだかわかりません。しかし、また馬鹿にされるのが嫌で、知ったかぶりをしてしまいました。
しばらくは話を合わせて聞いていましたが、ついになんのことだかわからないので、とうとう意を決して2人に「ガガスバンダス」な何か聞くことにするのです。
果たして、その正体とは……。
- 著者
- 阿部 共実
- 出版日
- 2012-03-08
主人公は女子小学生。子供は、時に大人よりも流行に敏感です。同じことを共有していないと、仲間外れになってしまうという意識が強かったのは、誰しも身に覚えがあるはず。
今回の主人公・憐も見栄を張って、つい知ったかぶりをしてしまいます。本作に登場する主人公達は大抵の場合、ここからさらに痛い言動をくり返して、墓穴を掘るパターンが多いです。しかし彼女は珍しく、墓穴を掘る前に、正直に知らないと白状します。そしてこのエピソードの奇怪さはその次の展開にあるのです。
彼女が「ガガスバンダス」のことを聞いても、友達の話は要領を得ません。聞いている限りでは、小学生がよくやっている言葉遊びみたいにも、何かを勝手に「ガガスパンダンス」と言っているだけのようにも見えます。
もしかして2人は、彼女をからかっているだけなのでしょうか?それとも、仲間はずれにしていじめているのでしょうか?さまざまな憶測を掻き立てられて、読者の神経を逆撫でするような、気味の悪さを覚えます。
あるいは、この2人も全然わからなくて、知ったかぶりで盛り上がっているだけなのかもしれません。ありとあらゆることがわからないまま話が進んでいき、最後まで不気味さを感じることでしょう。
1人の少女が暗闇に閉じ込められています。周囲には誰もいません。しかし、外から人の声はします。そんなわけのわからない目に合っている彼女の名は、沢村亘理(さわむら わたり)。
彼女はまず所持品を確認しましたが、何もありません。さらに、何があったか思い出そうとしますが、まったく思い出せません。しかし頭痛がするので、酒を飲んだのだろうと思いました。彼女はつらいことがあると、よく酒に逃げるのです。
その結果、失恋し、酒に酔ってどこかの倉庫に入り込んだ、そう推理したのでした。
彼女は扉らしきものを探しますが、どこを押しても開きません。しかも大声を出しても、なぜか誰も助けには来ないのです。
- 著者
- 阿部 共実
- 出版日
ホラーというより、ヒッチコックや江戸川乱歩、ポーが好みそうな、スリラー系のエピソードです。
主人公が、閉じ込められているのに妙に明るいのが滑稽ですが、それも己の不安を打ち消すための空元気に思えてなりません。彼女は記憶喪失になってしまったのか、こうなった経緯を思い出すことができません。なんとか名前だけは憶えている様子です。
しかし、このエピソードは暗闇の中で進んでいくので、背景も完全な黒。もちろん鏡も、何もありません。つまり彼女が「沢村亘理」であることは、誰にもわからないのです。
この名前も、たまたま彼女の脳裏に焼き付いていただけで、実は別の誰かの名前である可能性も捨て切れません。そもそも、彼女は記憶がない様子。自分がこれまで何をしていたかを語る場面がありますが、これはあくまでも、彼女の推測にすぎないのです。
果たして彼女は、本当に「沢村亘理」なのでしょうか。もし別人だとしたら彼女は何者?沢村亘理は誰?
そう考えた瞬間に、すべては真っ黒な不安に包まれてゆきます。
2人の女子中学生・前園と冬花。ある日、前園のスマホに怖い画像が送られてきますが、悲鳴を上げながら彼女は画像を見てしまいます。彼女は怖いものが嫌いなくせに、それを見なければ気が済まない少女。そんな彼女たちの前に、2人の男子がやってきました。彼らこそが怖い画像の送り主だったのです。
2人は彼女たちを肝試しに誘います。坂を下ったところに廃墟になった空き家があって、肝試しにぴったりだというのです。そして、実際に肝試しをすることになるのでした。
夏だというのに家の中は妙に寒く、なんだか不気味な雰囲気。しかも家の奥に行くと、なんと無数のお札が貼られた壁があったのです。
さすがに、全員震え上がります。しかし、そんななか異常な行動に走る人物がいました。前園さんです。彼女はなぜか、怖がりながらお札をはがし始めたのでした。
前園さん以外は、みんな空き家から脱走するのですが、前園さんだけは残っていました。すると、その後……。
- 著者
- 阿部 共実
- 出版日
この話はいわゆるホラー作品なのですが、阿部共実らしく、人間の心理をゆさぶるような恐怖演出です。幽霊や妖怪といった類は登場しません。
読者を怖がらせる道具は、廃墟と、お札の貼られた壁のみ。怖いけれど、あまりに抽象的過ぎて、前園さん同様これにいったい何の意味があるのかと、気になってしまいます。
怖いものを見たい、確認したいというのは、人間の本能に基づくもの。それは、自分にとって怖いもの、すなわち危険なものを確認しておく必要があるからではないでしょうか。
ホラーが娯楽になってしまうのも、この本能のおかげともいえますが、好奇心が時に災いになってしまうことも世の中にはしばしばあります。この話がまさに、そのよい例といえるでしょう。
物語の終盤で前園さんが言った「とれちゃった」。この言葉も気になって仕方ありません。一体どういう意味だったのでしょうか。考えれば考えるほど、恐怖を感じてしまいます。
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今回は、読むと気分が滅入ってしまうような、暗鬱になる漫画をご紹介します。狂った登場人物や世界観はトラウマもので、見るに耐えられないものばかり…。でもなぜか読むのをやめられない、そんな不思議な魅力を持つ作品を読んでみませんか?
現実にありそうでない、それなのにどこか身に覚えのあると思わせるようなストーリーが魅力の本作。こうした生々しい感覚を漫画にできる阿部共実の魅力が少しでも伝われば幸いです。
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「可愛い」はよく聞く言葉です。動物やファッション、人間の容姿、行動に起因するものなど、「可愛い」は世にあふれています。あえてワーストでご紹介する、「可愛い」とは真逆の「トラウマ可愛い」世界をご紹介します。