「昔はよく読んでいたけれど、最近は少女漫画を読まなくなった」という方も多いと思います。ヒロインの女子高生になかなか感情移入ができなくなったり、淡い恋模様だけでは物足りないと感じてしまったり……と理由は様々。 そこで今回は、オトナ女子でも楽しめる少女漫画を50作厳選してジャンルごとにご紹介します。前編では王道の作品から、仕事との両立や年の差、パートナーとの関係性について考えられる作品を集約しました。
ファンタジー世界で非日常が楽しめる少女漫画6選
歴史浪漫も恋愛も楽しめる少女漫画5選
因縁渦巻く後宮が舞台の中華系少女漫画5選
異世界の荒波にも負けない主人公がかっこいい少女漫画5選
こちらについて知りたい方は、後編の記事をご覧ください。
有名で王道設定(主人公が高校生、など)ですが、これを語らずに“大人向け”少女漫画は語れない! という6作品をご紹介します。
主人公のキョーコは、幼馴染みで人気歌手の不破尚と一緒に暮らしています。彼のために高校進学を諦め、一緒に上京して彼を支えるためにフルタイムで働くという献身ぶりです。
「いつか彼のお嫁さんになる」と頑張っていたキョーコでしたが、尚はキョーコを召し使い程度にしか思っていなかったという事実が発覚。
長年積み重なった思慕は一気に憎悪へ変わり、キョーコは尚に復讐すべく、彼のライバル・敦賀蓮(尚が一方的にそう思っているだけ)が所属する芸能事務所のオーディションを受けます。
果たして、キョーコは尚が跪くほどのビッグな女優になれるのか。
- 著者
- 仲村 佳樹
- 出版日
- 2002-07-19
何と言ってもキョーコの演技力が魅力です。
初めてキョーコの演技力が炸裂したのは、芸能事務所のオーディション時。台本のセリフはそのままなのに、表情、声色でいつの間にか配役の立場がまるっと入れ替えてしまったシーンには戦慄しました。「自分の子供を憎む親なんていない」というお話を、「自分の子供だって親は憎むことができる」という結末に変えてしまったのです。セリフの変更はなしで。
『ガラスの仮面』が好きな方ならハマること間違いなしの作品です。
養護施設で育った主人公・詩春は、保育士になるのが夢の高校生。
ある日、詩春のバイト先である保育園に、人見知りの双子が入園してきます。その双子が人見知りせずに詩春に懐いているのを見て、保護者である松永政二は天にもすがる思いで詩春にベビーシッターを依頼します。
松永政二はTV局の人気アナウンサーで、どうやら双子は実子ではない、という訳ありの様子。
かわいい双子に癒やされ、家族の在り方を考える、育児ドキュメンタリーです。
- 著者
- こうち 楓
- 出版日
- 2009-05-19
2歳の双子がとにかくかわいい! この漫画は2人の成長記録と言っても過言ではありません。
双子を優しく、大きな愛情をもって育児をする詩春は聖母に見えますし、とはいってもまだまだ子どもである詩春を大人らしくスマートにサポートする松永さんはとてもかっこいい。
こんな家族を築けたらいいなと思わせてくれる、温かい作品です。
『図書館戦争』は、“メディア良化法”という法が制定された世界が舞台。メディア良化法は図書の検閲、表現規制を厳しくした法であり、一方で図書館は“本の自由”を宣言し、独自の機関“図書隊”を立ち上げメディア良化法に対抗していました。
この図書隊の特殊部隊に、全国初の女性隊員として配属されたのが主人公の笠原郁。高身長で戦闘能力もあり勝ち気な性格の郁は、教官である堂上篤と衝突してばかりです。ですが相手を深く知っていくたび、2人はお互いにかけがえのない存在になっていきます。
“本の自由”を守る大人たちの、最高にかっこいい物語です。
- 著者
- ["弓 きいろ", "有川 浩"]
- 出版日
メディア良化法の検閲は、武力行使もいといません。そのため防衛手段として、図書隊員も戦闘訓練を積んでいます。策略、銃撃戦、諜報活動と、何ら戦争と変わりありません。これはタイトル通り、図書を守るための戦争の話なのです。
図書隊員たちの命をかけた戦いに痺れること間違いなしです。小説原作ということもあり、少女漫画らしくない題材で大人も楽しめます。
唯一の肉親である兄を亡くした主人公・紅林照の心の支えは、携帯電話でメールのやり取りをしている謎の人物“DAISY”。DAISYはいつも優しく、どこか遠くから照を見守ってくれています。
そんな照を下僕扱いしているのは、照の通う高校で校務員をしている黒崎祐。彼とDAISYは似ても似つかないと思っていた照でしたが、ひょんなことから黒崎がDAISYだということに気づいてしまい……。
- 著者
- 最富 キョウスケ
- 出版日
- 2007-10-26
照と黒崎の恋愛模様も気になるところですが、注目してもらいたいのはこの2人、大変“頭が良い”ということ。
照はボケ担当でアホなことばかりしていますが、成績は学年トップ。しかも本気になれば数時間で教科書の内容を丸ごと覚えられるという暗記力も備えています。
黒崎はツッコミ担当で周囲からヘタレと揶揄されていますが、凄腕のハッカーです。学校の管理システムを全滅させるなんてお手の物です。
この2人が繰り広げる頭脳戦がとてつもなくかっこいいので、ぜひ読んでみてください。
この世で一番不幸なことは、人を好きになること――そう思いながら生きている主人公・敦子は、酒飲みの父と貧しい暮らしをしていました。
ある日、大企業の跡取り息子・至と顔が瓜二つなことから、至の身代わりというアルバイトをすることになった敦子。
至の身代わりをして、必要とされることの喜びを知った敦子ですが、その日々は終わりを迎えます。敦子の失ったもの、得たものは一体何だったのでしょうか。
- 著者
- 山中 ヒコ
- 出版日
- 2011-10-07
彩度が低く、全体的に温水プールのようなぬるい温度感で話が進むこの作品は、まさに“灰色の日々”です。
この作品の主な登場人物として敦子、至、遼、信也がいますが、全員が全員、自分が欲しかったはずの“何か”を諦めています。例えば愛されること。自分のセクシュアリティのこと。
諦めることに慣れすぎてしまった彼らが、勇気を出して欲しいものを掴みにいく瞬間にはグッと胸を掴まされました。
烏丸和歌は、13歳ながら大学生に間違われるほど大人びた少女。彼女は囲碁のプロ棋士を目指していますが、家族からはとある理由で猛反対されています。
「全国大会で優勝したらプロ棋士を目指していいが、負けたら囲碁を辞める」という約束を母と交わした和歌が出会ったのは、新進気鋭の天才棋士と呼ばれる鷺坂総司でした。
彼と師弟関係になった和歌は、より深く、囲碁の世界にのめり込んでいきます。
- 著者
- モリエ サトシ
- 出版日
- 2013-02-20
キャラクターはもちろんなのですが、より魅力的なのは彼らが囲碁に向き合う姿勢です。日常生活の一切を囲碁に捧げ、命を削りながら一手を打つ姿は鬼気迫るものがあります。
恋の前に囲碁がある、愛を土台に囲碁がある。そんな常人では理解できない極限に至った棋士たちの真剣勝負に、手に汗握ること間違いなしです。
恋愛要素よりも、囲碁に打ち込む登場人物らの熱意が中心に描かれている点も大人におすすめです。
結婚を考えてはいるけれど、今は仕事が忙しくてそれどころではない、今は仕事を頑張りたい、という方も多いと思います。そんなときに勇気をもらえる、仕事を頑張る女性が主人公の少女漫画を11作品集めました。
腐女子である桃瀬成海は、過去にそれが原因でフラれたことから会社でのヲタバレ(周囲にオタクだとバレること)を何よりも恐れていました。
そんな折、転職先で幼馴染みかつゲームオタクの二藤宏嵩に再会。そこで成海は「元からオタクの彼氏を作れば理解があって引かれることもないんじゃ……?」と交際のメリットを説き、元から成海に好意があった宏嵩はそれを了承、晴れて彼氏彼女の関係となります。
オタクカップルの日常を描いた、共感性マックスの作品です。
- 著者
- ふじた
- 出版日
- 2015-04-30
夢中になる趣味がある大人の方には特におすすめ!随所に挟まれるオタクエピソードがとてもいいです。
タイトルにもある通り『ヲタクに恋は難しい』のですが、なぜ難しいかと言えば“オタクは忙しい”からです。同人誌を作っている人は原稿の締め切りがありますし、ライブや舞台といったイベントに通う場合は休日全てをそれにつぎ込まなければなりません。かなり緻密にスケジュールを組み、完璧に遂行しないとデートする時間すらありません。
成海は同人誌即売会で宏嵩に売り子を頼んでいましたが、こんな頼みを聞いてくれる彼氏がいたら絶対に手放せませんね。理想のカップルだと思います。
漫画雑誌の編集をしている順平が密かに憧れているのは、ライバル他社の水落さんという編集者。ある日、漫画家先生の締め切りがライバル他社とドッキングしてしまい、憧れの水落さんと会えるのですが、男性だと思っていた水落さんは女性でした。
仕事を完璧にこなし表情が硬く物言いがキツイ水落さんと、おおらかで相手を全力で受け止める包容力の持ち主である順平は、切磋琢磨し、お互い自分にないものを吸収して成長していきます。
- 著者
- 田中メカ
- 出版日
- 2015-12-04
仕事と恋愛を両立させているキャラクターが描かれます。
編集者という多忙な職業に就いている2人ですが、恋愛にきちんと時間を割いているのが偉すぎます。2人とも仕事中毒気味なのに。スケジュールを完璧に遂行する水落さんと、何でも受け止めてくれる順平の相性が抜群にいいのです。
出版社、しかも漫画雑誌の編集者という職業がどんなものか詳しく描かれているので、好きな作家先生がどういう風に仕事をしているか分かるのも楽しいポイントです。
元カレとのトラウマから、体の関係となると尻込みするようになってしまった小山田沙絵。そんなとき、沙絵は同僚の九鬼瑛介がED(勃起不全)だと知り、互いのトラウマを克服するため協力関係を結ぶことになりました。
果たして、2人はトラウマを乗り越え、“恋愛”を取り戻すことが出来るのか。
- 著者
- よしだ 斑鳩
- 出版日
体の関係に発展するのが怖くて恋愛ができない沙絵と、恋愛の定義が分からず体がついてこれなくなった九鬼は、抱えている問題が似ているようで逆ベクトルです。大人になって、それなりに恋愛経験を積んできたからこそ立ち止まってしまった2人。
同じ大人なら、共感してしまう部分がきっと多いはず。
日本酒製造会社の総務課で働く神代米花は、今の仕事が天職だと思って働いていましたが、ある日突然辞令が下ります。異動先は新設された“未来開発課”、しかも役職は課長という栄転です。部下となったのは、海外で成果を上げた富士虎太郎というちょっと風変わりな男性。
新たな環境に戸惑いを隠せない米花ですが、この富士という男性が米花の許嫁であることも判明し、さらに困惑する事態に。お酒造りの楽しさと、次の恋へ踏み出す勇気をもらえる作品です。
- 著者
- 山田 こもも
- 出版日
米花が働いているのは、老舗の日本酒製造会社です。“未来開発課”として、ビール、ワインに並ぶほど日本酒をメジャーにしようと、様々な試みをします。味、パッケージ、コンセプトなど、ひとつの商品を作る過程が丁寧に描かれているので、米花と富士の恋の行方と一緒に楽しむことができます。
お酒が好きな大人におすすめです。
不動産会社で働く栞は、地味で冴えない普通のOL。しかし、夜は“アンジュ”という名義で活動する超人気手相占い師という顔を持っています。会社は副業禁止なのでバレたらクビなのですが、よりによって同僚の通称“クズ将軍”松平健(まつひらたける)にバレてしまいます。
彼はところ構わず女性と逢瀬を重ねる“クズ将軍”なのですが、営業としてとんでもなく仕事がデキる男。栞は会社に副業の件をバラさないことを条件として、松平健と奴隷契約を結ぶことになってしまいます。
- 著者
- 北川 みゆき
- 出版日
占い好きにはぜひ見てほしいほど、全てのエピソードに手相が絡んでいます。自分の手と見比べながら読めばさらに楽しめること間違いなし。
また、松平健の仕事に対する姿勢にも注目です。彼は女性関係はとことんだらしないのですが、仕事となれば話は別。素晴らしい営業の手腕は、松平健を嫌いひねくれている栞ですら舌を巻くほどなのです。手相を見てお客様の状況と未来を察する栞とのコンビネーションにも注目です。
経理部で働くOLの森若さんは、完璧に仕事をこなします。収支に間違いがないこと、決めたスケジュールを寸分の狂いもなく遂行することを至上とし、日常生活でも分刻みのルーティンをこなすことに生きがいを感じています。
そんな森若さんが苦手意識を持っているのは、営業部のエース山田太陽。日々のルーティンを乱すイレギュラーな存在に辟易していた森若さんでしたが、太陽の底抜けな明るさと包容力に絆されていきます。
- 著者
- 森 こさち
- 出版日
- 2018-11-22
森若さんの仕事する姿が最高にかっこいいです。経理部できっちりしている人、というと、正義感があって頭でっかちな人をイメージしがちなのですが、森若さんは“なるべく公平であること”を理念に掲げつつも柔軟性のある選択ができる人です。こんな経理さんがいたら頼ってしまいたくなるのも頷けます。
美人で必要最低限の言葉しか交わさない藤田歩は、その見た目と行動から、会社で敬遠されがちでした。一方で同期の谷地は明るく人気者。
同期ということ以外接点のなかった2人ですが、歩の失恋と、谷地の引っ越しに偶然が重なり、一時的に同居することになってしまいます。歩は失恋の傷から、谷地にあまり関わらないよう努めますが、段々と彼に癒やされ惹かれていきます。
- 著者
- 一井 かずみ
- 出版日
誰しも働いているときの自分と、プライベートの自分を使い分けているはず。しっかりしなきゃと気を張り続けた結果、歩のように誤解されてしまった人も多いのではないでしょうか。歩にとって谷地がそうだったように、自分が羽を伸ばしても良い場所はどこか、改めて考えさせられる作品です。
借金のため稼げる仕事を探していた雨水玲は、とある会社の社長の秘書に抜擢されます。その社長が女性恐怖症ということで、玲は男装して仕事をすることになりました。バレたらクビになるかもしれない、と男装を受け入れて淡々と仕事をこなす玲。果たして、社長に女であることがバレずに、目標金額までお金を貯めることができるのでしょうか。
社長! 私はあなたの(男装)秘書です。
2021/6/16
高身長で美人な玲の男装姿がとにかく麗しいです。何事も淡々とこなし、表情筋があまり動かないのもクールで、どこか掴み所のない感じがとても良い。社長である湊も段々と玲のことが気になっていくのですが、ミステリアスだけどたまに抜けている玲を好きになってしまうのも分かります。
男装女子が好きな方や、社長と秘書という関係性に憧れを抱いている方へおすすめの作品です。
主人公のかりんは腕っぷしと正義感が強く、よく“聞こえすぎる”耳を持った警察官。ひょんなことから、女性を守る専門SP集団QB(クイーンズ・バトラー)のメンバーに抜擢されたかりんは、イケメンだらけのQBで数々の仕事をこなしていきます。実は本人も気づいていない秘密を抱えたかりんが、SPとして活躍する物語です。
- 著者
- 西山 優里子
- 出版日
かりんは強いですが、女性であることに間違いなく、単純な力では男性に敵いません。また、本人も守る側ではなく守られる側に憧れを抱いています。こうしたギャップに悩む大人の女性も多いのではないでしょうか。かりんと一緒に悩み、かりんが成長していく過程を見守ることで、少し気持ちが前向きになるかもしれません。
体温37.5℃は、保育園に登園できるかどうかのボーダーラインです。子どもの看病をしたいけれど仕事は休めない親のために、病児保育があります。
新米病児保育士である桃子は、笑顔を作るのは苦手だけど一生懸命に突っ走る頑張り屋。様々な家庭を訪問し、多くの子どもたちとその親を見守ることで、自分の過去、そして未来と向き合っていく物語です。
- 著者
- 椎名 チカ
- 出版日
人の子どもを預かる保育士は過酷な職業ですが、病児保育士はさらに特殊な状況での保育になります。家庭を訪問するからこそ見えてしまう問題、子どもの容体が悪化したときの緊迫感、この漫画には様々な“家族”がつまっていて、桃子の実家もそのひとつです。
病児保育のリアルな現場がメインの物語ではありますが、あいだあいだに挟まれる桃子とその上司・朝比奈の優しく切ない恋愛模様も必見です。
両親に先立たれてしまった十和子は、兄が唯一の肉親。いじめを受けた過去がトラウマとなり引きこもりニート生活を送っていた十和子ですが、兄がホストに転職してから、十和子の平穏な日常は終わりを迎えます。
兄の同僚たち(つまりホスト)が家に住み着くようになり、何かと十和子に絡んでくるのです。このホストたちと関わることによって、十和子は徐々にトラウマを克服していきます。
- 著者
- カナエサト
- 出版日
最初はホストという職業を“汚いもの”として見下し、兄に甘えてニート生活を続ける十和子でしたが、頑なだった心が段々とほどけていく過程を楽しめます。嫌々ながらも外に出るようになり、小説家としてデビューし、友達ができて、恋もするようになった十和子に、昔の暗く陰鬱な面影はほとんど残っていません。
子どもを見守る親目線で、成長していく十和子を応援したくなる作品です。
最近はアプリなどが増え、以前よりもずっと婚活に対するハードルが下がりました。婚活を気軽に始める人も増えてきましたが、特に女性の場合、子どもが欲しいとなると「アラフォーまでには……」と焦って疲れてしまうことも。そんなときに少し立ち止まって読んでみてほしい少女漫画5作品を選びました。
小学校の教師をやっている柚季は、とある事件から教師を辞め、婚活に励むようになります。しかし、婚活はことごく上手くいきません。
自信をなくしていく最中、文具店の片隅でパン屋を営む風変りな洋一と出会います。半ば勢いで結婚を前提に交際を始めた2人。パンが発酵するのを待つように、ゆっくりと愛を育む2人を見守る物語です。
- 著者
- 芦原 妃名子
- 出版日
- 2014-03-25
柚季は34歳、洋一は39歳、2人とも周囲から「良い人いないの?」とせっつかれる時期です。周囲からのプレッシャーを受け止めながら、自分たちのペースでゆっくりと進んでいく2人に勇気をもらえます。お互いに大人だからこそぶつかる問題もあり、大人だからこそ一歩引いて許せることもあるでしょう。等身大の大人が見られる作品です。
平凡な大学生の美山くくりは、京都の名家御曹司・印伝織之助に、初対面でいきなり「結婚してほしい」と求婚されます。その理由は、神様が縁結びの相手にくくりを選んでしまったから、というもの。織之助の家は代々縁結びの神様に仕えてきた家系です。そのため、縁結びの神様が選んだ相手でないと織之助は結婚できず、その相手は生涯に1人きりなため、くくりが拒否すれば織之助は一生独身、印伝家も途絶えてしまうと言うのです。
ひとまず結婚を視野に入れたお付き合いを始める2人ですが、様々な困難が2人を待ち受けています。
- 著者
- 小糸 さよ
- 出版日
神様の決定で、急に結婚について考えなければならなくなったくくり。自分の今後を決定する瞬間というのは誰にも訪れるものですが、くくりのように、自分の裁量を超えてその機会が訪れると自信が持てなくなってしまうものです。神様のお告げで向き合うことになった2人が、ゆっくりと相互理解をしていく様が素敵な作品です。
派遣切りにあってしまった森山みくりは、家族の紹介で津崎平匡という男性宅で家事代行サービスの仕事を始めます。やがて2人は“雇用主と従業員”、表向きは“事実婚の夫婦”として関係を結ぶことに。契約結婚の偽装夫婦となった2人は、雇用契約書に則った生活を続けていくうちに、信頼だけではない、愛情が芽生えていくのです。
- 著者
- 海野 つなみ
- 出版日
- 2013-06-13
実写ドラマ化で社会現象となった作品です。夫婦や家族のしがらみの部分だけを排除し、結婚の利点だけを受け取ろうという契約結婚の形を望む人も増えたのではないでしょうか。
この作品では契約結婚のひとつの例を見られるだけでなく、「やっぱり結婚には愛が欲しい」という方も満足できる展開となっています。みくりと平匡さんが徐々に恋愛モードになっていく姿は必見です。
広告代理店で働くバリキャリのマキは、家事が一切できず汚部屋住み。そんなマキが出会って、偶然が重なり同居することになったのはイケメン・ヴィーガン・ゲイという特性持ちの渚。実家が農家で野菜嫌いのマキは、渚の手料理を食べて野菜嫌いを克服していきます。
ともに生活をする内に、マキは渚に恋心を抱くようになりますが、渚は女性を恋愛対象として見ていません。しかし渚にとってもマキは単に切り捨てる存在ではなく、家族のように大事な存在となっていきます。
- 著者
- 小林ユミヲ
- 出版日
- 2010-08-12
この作品はグルメ漫画としても、恋愛漫画としても読める漫画です。ヴィーガンである渚の料理がどれもこれも美味しそうで、野菜嫌いのマキが食べてしまうのも納得。互いにかけがえのない存在になっていく渚とマキですが、2人が結ばれることはありません。切ないと同時に、これもひとつの愛の形なのだと思わせてくれる作品です。
彼氏に浮気をされてしまったアラサーでデザイナーのいろはの生きがいは、オネェなコラムニスト・タモーヌ様の“恋愛体質改善講座”。実はタモーヌ様のオネェは営業で恋愛対象は女性だったり、憧れのタモーヌ様といろはがなぜか同居することになったり、タモーヌ様から“珍獣”として可愛がられたり……と、ジェットコースターのような展開が魅力的な作品です。
- 著者
- 横山 真由美
- 出版日
いろはは恋人の前でありのままの自分が出せなかったり、やることなすことが裏目に出たりする恋愛虚弱体質。数々の失敗を経て、「そういえば恋愛ってどうやってするんだっけ」と自問自答している姿は、同じく数々の恋愛を経験してきた方には共感性の高い疑問ではないでしょうか。いろはにとってのタモーヌ様のように、ありのままの自分を愛してくれる相手と巡り会えたら最高ですね。
学生の頃は学年がひとつ違うだけで大きな差に思えても、社会に出てみると、それほど大した差ではないと思えてくるもの。それは恋愛も同じで、学生の頃に読んだ“年の差系少女漫画”も、また違った視点で読めるのではないでしょうか。年下側の焦りや不安も分かり、年上側の理性や自戒も分かる大人におすすめな7作品を選びました。
花塚姫子・12歳の許嫁は、軍人で30歳の土屋文治。許嫁という関係に反発することなく、互いに真摯に向き合い愛を育んでいく様子が落ち着いていて素敵です。大正時代を描いた作品で、文治の軍人としての仕事が描かれたり、姫子の家には女中さんがいたりと、大正浪漫を随所に感じる作品です。
- 著者
- 長蔵 ヒロコ
- 出版日
何と言っても文治に“大人の魅力”が詰まっていて目が離せません。目元のクマも相まって、タバコをくゆらせる姿は危険で色気を振りまく大人の男に見えますし、姫子を子供として接しながらもきちんと女性として扱う姿はまさに紳士。
そして、他人が姫子を貶すと剣呑になる様は雄を感じさせてくれます。そんな文治にたじたじになりながら、精一杯ついていこうとする姫子の愛らしさもたまりません。
時は明治時代、遊郭で禿(花魁見習い)として暮らしていた鈴は、その賢さを買われて津軽という男性に身請けされます。鈴は津軽に恩を感じていますが、津軽は色事や結婚するために鈴を引き取ったわけではないため、どう恩返しして良いものか悩む鈴。様々な事件に巻き込まれながら、津軽と鈴は次第に心を通わせていきます。
- 著者
- リカチ
- 出版日
- 2011-09-13
不遇な環境にいた自分を助けてくれて、顔が良く、ここぞというときに必ず頼りになる年上の男性に出会ったら、世間を知らない少女が恋をしてしまうのも当然というもの。そんな鈴の初恋を眺めるのも甘酸っぱいですし、話の軸は様々な事件を取り扱っているので、ミステリー好きな大人へおすすめです。
津軽と鈴の仲が発展するのは続編の『明治メランコリア』となっていますので、気になる方はぜひそちらもチェックください。
仕事のできる相原メイですが、家事はからっきし。妹がよかれと思い家事代行サービスを頼みますが、派遣された鴫野ナギサはメイよりかなり年上の男性でした。女性のひとり暮らしということもあり、最初はナギサさんを敬遠していたメイも、ナギサさんの仕事ぶりに感心して次第に心を開いていきます。
- 著者
- 四ツ原 フリコ
- 出版日
「お母さんになるのが夢だった」と語るナギサさんのシーンがとても印象的です。男性が家事で家庭を支え、女性が仕事をして家計を支える家庭も増えてきてはいるものの、やはりまだマイノリティ。メイとナギサさんの年の差もあり、2人の道のりは問題だらけですが、ひとつひとつ乗り越える2人に勇気をもらえる作品です。
工事現場で重機オペレーターとして働くガテン系女子・晴日は、酔っ払った勢いで、居酒屋で居合わせたアラフォーの男性と入籍してしまいます。春原永人と名乗った男性は休職中の書道家らしく、晴日との結婚は「何かと都合が良い」と言います。晴日も晴日で、結婚を理由に田舎の実家へ連れ戻されそうと困っていたので、2人は婚姻を継続することに……。
- 著者
- 鈴木 有布子
- 出版日
初対面同士でいきなり結婚してしまった2人。蓋を開けてみると相性は良い様子で、結婚にはある程度の勢いも大事なのだと痛感します。晴日の父親は2人の結婚に猛反対なのですが、その理由が泣けてしまいます。時間は平等に過ぎていくもので、年の差はどうしたって埋まらないものですが、晴日の底抜けな明るさと、春原さんの包容力に癒やされる作品です。
スランプ中の小説家・内海真一の家に、森本遥といの少女が迷い込んできました。遥の家庭環境はあまり良いとは言えず、孤独な少女を見かねた真一は彼女の訪問を受け入れるようになります。
やがて遥は真一のことが好きになりますが、真一の遥に対する感情は“同情”のみ。それもそのはずで、31歳の真一からすれば遥は、自分の子どもと言っても差し支えない10歳の少女だったからです。しかし、遥が成長するにつれて、真一の感情はどんどん揺さぶられていきます。
- 著者
- チカ
- 出版日
- 2011-04-07
遥も、真一も、心に傷を抱えた者同士。互いの“寂しい”が合致して寄り添っていくうちに、恋愛感情が芽生えていきます。遥の純粋無垢な好意は時に痛々しく、報われてほしい気持ちもあるのですが、真一の葛藤は当然のことで、「20歳も年下の女の子に手は出せないよな……」と共感してしまいます。純愛と言うべき、とても美しくキレイな物語です。
ホテルの中にあるカフェに勤務している平沢百々子は、“怪人”と噂されるほど仕事のできるホテルマン長谷慧に出会い、急激に惹かれていきます。運命としか言いようのないほどの速度で恋に落ちていく2人。年の差など感じさせない、激しく美しいラブストーリーです。
- 著者
- みつき かこ
- 出版日
年齢詐欺と言われる美貌をもつ長谷と、ふわふわしていて純粋な百々子はお似合いなカップル。一見すると百々子が長谷にいいようにされているように見えるのですが、しっかりと芯が通っている百々子は心から長谷を愛しています。
こんなにふわふわしているのに仕事はきっちりできるのもギャップがあって良いです。長谷が骨抜きにされてしまうのも頷けます。これぞ大人の恋、という艶やかさと激しさがあります。
図書館司書の夜野とばりは、離婚した元夫と、義理の母と暮らしている息子がいます。ある日、とばりの勤める図書館に不眠症の青年・太一が現れ、とばりが傍にいるときだけ眠れるという彼から添い寝をお願いされます。
人の気持ちに寄り添えないことで自分を責めていたとばりは、太一によって徐々に許されていくのです。
- 著者
- 糸井 のぞ
- 出版日
比較的円満に離婚したとばりは、元夫やその家族ともそれなりに交流があります。そんな中で芽吹いた新しい恋、しかも一回り年下の青年と、ともなれば、踏み出すのに必要な勇気は相当なはず。とばりが元から持ち合わせている不器用さも相まって、なかなか上手くいきません。
絡まった糸をほどくような、不器用だけれど優しい物語です。
後編の記事では、ファンタジーや歴史ロマン、異世界といったジャンルの少女漫画を紹介します。