世界史を扱う歴史小説おすすめ5選!

更新:2017.1.14

偉人や国が時代の流れによって栄光の日々を送ったものから衰退にいたるまで、偉人に起きたハプニングなど私たちの知らなかった魅力あふれる歴史が描かれたオススメの5作品をご紹介します。

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奔放でワガママな王妃のイメージを覆す!18世紀フランスの伝記文学

上巻では、オーストリアの皇女として奔放で不自由なく育ったマリー・アントワネットが、フランスとの同盟関係を強くするための政略結婚する事になります。結婚からフランス革命に至るまでのマリー自身の心境の変化や成長、フランス社会の変化や状況が傍観しているような視点で描かれています。

下巻では、子供を授かり、大人の女性へと成長を遂げたマリーが描かれています。本来の理念を失くして暴力性だけが露わになってしまったフランス革命に大切な家族や友人といった様々なものを奪われ翻弄されながらも、誇り高く生きようとした気高いマリーが断頭台へ向かうのです。

著者
シュテファン ツヴァイク
出版日

多くの伝記文学を手掛けてきたシュテファン・ツヴァイクの代表作『マリー・アントワネット』は1932年に発表されました。1980年代の日本でも伝記小説として広まり、多くの方に読まれてきた作品です。最初に発表されて以来、長年愛される伝記小説として知られています。

悲劇の王妃として知られるマリーのありのままの姿を、歴史的事実を踏まえたうえで感じる事ができ、段々とマリーに近づいてくる時代の流れに恐怖すら覚える事でしょう。マリーが政略結婚という愛のない世界に連れてこられ、退屈しのぎに豪遊するに至った経緯が分かりやすく描かれているので、その様子を自分の目で見ているような錯覚を感じるのです。自由奔放で思慮にかけ、少しばかり軽薄だったマリーを心から心配している母親のマリア・テレジアの親心にも胸が詰まります。

そんな自由奔放だったマリーが恋人フェルセンと出会い、本当の愛を知り、妻として母親として成長を遂げていく様子が淡々とした文章で描かれているのですが、先入観を取り除いたその描写には感動させられます。そんな淡々とした文章の中で際立つのが、死を目前に控えたマリーの最後の手紙。激動の時代をいきたひとりの女性の姿がそこに凝縮されています。フランス革命を知らなくても分かりやすい文章で書かれていて、テンポよく展開するので難しく考えずに読み進められる作品です。

舞台は15世紀のイタリア!悪名高いチェーザレ・ボルジアの華麗で儚い一生

時の権力者・ローマ法王アレッサンドロ6世の長男として生を受けたチェーザレは、権力者である父親とローマ教会の勢力を最大限に利用し自身の勢力範囲を広げていきます。小国分裂の絶えなかったイタリアを統一するため、チェーザレは美しい妹や弟さえも利用し、自身の巧みな政治手腕を大いに奮いました。

段々と力を付けてきたチェーザレは、時には軍事力を使ったり、更には冷酷無比な決断をして「イタリア統一」という夢に向かって邁進していきました。しかし、あと1歩というところでチェーザレに思いもよらない不運が降りかかるのですが……。

著者
塩野 七生
出版日
1982-09-28

1970年に発表された『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』は歴史作家・塩野七生の代表作の1つで、毎日出版文化賞を受賞した作品でもあります。日本では、一般的に知られていないイタリアの政治家・チェーザレ・ボルジアの一生に焦点を当てた歴史小説です。

ボルジア家は毒殺や近親相姦などの悪い話ばかりで有名ですが、本作ではチェーザレが苛烈に自身の夢を追うカッコいい人物として描かれています。視点は一定で、決して物語の中に入って行こうとはせずに史実を含めて、少し肉付けされた出来事を読み手は傍観者という感覚で読み進める事が出来るのです。

その傍観者ゆえの淡々とした描写の中で、史実を描いたパートと小説として進行するパートとの変化がいいアクセントになってテンポよく展開していきます。塩野七生が描く情景描写はとても美しくて、人物や風景を目の前にしているように感じてしまうでしょう。

さらに天才建築家レオナルド・ダ・ヴィンチや思想家ニッコロ・マキャヴェッリがチェーザレを慕って接している様子も描かれていて、今まで知識として得たボルジア家に対する印象が覆る内容になっていて驚かされます。チェーザレの事をまったく知らない方でも、チェーザレがどういった人物なのか分かりやすく描かれている作品になりますので彼を知り、混乱時代のイタリアを知る事が出来る作品です。

15世紀フランスが舞台!王族の離婚裁判とは?

時は1498年、現フランスの王・ルイ12世は、前王・ルイ11世の娘で自身の妻であるジャンヌを相手取り離婚裁判を起こします。離婚の理由はジャンヌが「醜い」。ただそれだけでした。前代未聞の王族の離婚裁判を天才弁護士・フランソワは個人的な復讐心から傍聴に訪れていたのですが、王妃から離婚裁判の弁護を引き受けて欲しいと頼まれたフランソワは、全力で拒否するのですが、ひょんな事から弁護を引き受けることになり……。

著者
佐藤 賢一
出版日

1999年に発表された『王妃の離婚』は、史実ベースの奇想天外なストーリーで有名な佐藤賢一が手掛けた作品であり、直木賞を受賞した作品でもあります。1498年のフランスで、実際に行われたルイ12世が王妃であるジャンヌ・ド・フランスに対して起こした離婚裁判をベースにしたストーリーで、史実を交えながら面白い展開を向かえる内容になっています。

離婚が許されないカトリックにおいての離婚裁判、さらに国王夫妻の離婚裁判という題材だけでも面白味に溢れている作品ですが、その面白い題材を使ったスピーディーな展開と思わず笑ってしまうような意外な展開が絶妙なバランスで繰り広げられているのです。中だるみせず、読み手の気になるところを上手く刺激して飽きのこない流れを見せる本作は、エンターテイメントに富んだ作品だと言えます。

離婚という重々しい言葉が入っているにも関わらず、天才弁護士・フランソワが裁判所で繰り広げる弁論や彼の過去、更にはルイ12世やジャンヌの心理描写にいたる様々な変化を見事に臨場感たっぷりに表現されています。そして、登場するキャラ作りもしっかりしていて、キャラクターの姿を容易に想像する事も出来るので裁判を傍聴している感覚になってしまうことでしょう。

難しい言葉もなく、分かりやすい文章で軽快に読み進める事ができ、さらに所々に用意されている史実ネタと笑ってしまいそうになるネタと全編を通した痛快なストーリーに時間を忘れて読みふける事が出来る名作に仕上がっています。

西暦184年から280年の長い戦いを描いた永久不滅の中国歴史の名作!!

実権を握っていた官吏たちの手によって悪政が布かれ腐敗した後漢の時代。政府に不満を抱いていた黄巾賊が暴れまわり、手を焼いた政府は庶民の中から黄巾賊討伐の義勇軍を募ったのです。義勇軍に参加した者はめざましい活躍を見せ、後に「黄巾の乱」と呼ばれる内乱は消息を向かえます。しかし、政府の腐敗は進み、更に皇帝が崩御してしまったのです。これを好機と見て動き出し、実権を握った董卓による恐怖政治が始まります。

著者
吉川 英治
出版日
1989-04-11

独裁者・董卓を討伐するため曹操を始めとする名だたる武将が集まり反董卓軍を結成しますが、上手く機能しません。しかし、裏切りや謀略の末に何とか董卓を倒すことに成功した頃、頭角を現した曹操・孫権・劉備はそれぞれ魏・呉・蜀という国を作り出したのです。そして、それぞれが中国大陸統一のため、知力・軍事力を総動員する長い戦いが始まったのでした。

吉川英治が手掛けた『三国志』は1939年から1943年まで新聞で連載されていました。中国の歴史小説『三国志演義』を日本人に読みやすくアレンジした作品になっています。『三国志』を書いた書籍は多数存在していますが、そのほとんどが本作に影響を受けたと言われるほどの傑作です。

漫画や人形劇にもなっていた『三国志』は幼い頃から目にする機会が多く、読んだことがある人も多いと思いますが、反対に中国文学は難しそうと嫌厭されている人もいると思います。しかし、中国文学をアレンジした本作『三国志』には、難しいと感じる要素は一切なく、登場する英雄たちが自身の武力と頭脳を使った戦いに身を置く姿は驚くほどカッコよく、魅力的です。

男として命を懸けて、主君を守っていく人物や自分の事だけを考えて裏切りを続ける人物とそれぞれの信念や思惑が交錯する物語には手に汗握る迫力が文体からでも感じる事が出来ます。約1000人もの人物が登場する本作ですが、人物の書き分けも外見だけでなく、癖や性格の特徴といった書き分けが分かりやすくされているので、読み手自身が共感したり憧れる対象が1人はいることでしょう。

史実に基づいた長い戦いの流れを大河ドラマを見ているような感覚で楽しむ事が出来る小説で、とても分かりやすく秀逸でドンドンと読み進められます。様々な作品が存在している『三国志』ですが、その中でも吉川英治が手掛けた『三国志』には、読みやすさと日本人を惹きつける魅力が潜んでいるように感じます。まさに超大作であり超傑作。読まないと本当に損です。

15世紀、様々な文化が入り混じるオスマントルコ帝国!!

15世紀から16世紀の間に活躍した建築家・ミマール・シナン。スレイマン大帝のもと最盛期のオスマントルコ帝国で、シナンは工兵から宮廷建築家へとのし上がっていきます。シナンが見習いとしてイスタンブールにやって来た時、後の大帝スレイマンと後の大宰相・イブラヒムと出会い、オスマントルコの内部の勢力争いを知ることになります。

著者
夢枕 獏
出版日

功績を挙げて徐々に昇進するシナンは勢力争いが激化する混乱の中、スレイマンの愛妾ロクセラーヌによる陰謀を上手く躱しながら、首席宮廷建築家の地位を得たのです。そして、80歳を超えたシナンは地上の奇跡とも言われる建築物・聖ソフィア超えに挑戦し始めます。

2007年に発表された『シナン』は『陰陽師シリーズ』で有名な夢枕獏が足掛け8年かけて仕上げた作品です。トルコの天才建築家ミマール・シナンの生涯とトルコの歩んできた歴史を描いた内容になっています。

一介の兵士から「石の巨人」と呼ばれるほどに有名になった天才建築家の生涯。トルコにまったく関心が無く予備知識もないまま読んでも、その荘厳な建築物を想像することができ、トルコ風景を見ているかのような気持ちになる作品です。まだ、無名だった頃のシナンを通してオスマントルコ時代の宗教観などの文化も知ることができます。

壮麗帝と言われたスレイマンやベネチアで知り合いになる芸術家のミケランジェロの登場にも驚かされ、更に1000年以上不可能と言われてきた聖ソフィア越えに80歳という年齢を超えてから挑戦するシナンの精神力にも驚かされ、シナン自身のもつ、哲学的思考にも共感を覚える事でしょう。

詳しい資料が圧倒的に少ないなか、物語を上手く絡ませ壮大で分かりやすい文章で綴られた内容にドンドンと引き込まれてしまいます。シナンという有名な建築家の目を通して、読んでいる自分まで、この壮大な歴史の物語に入り込んだような気分で読み進める事が出来る作品です。

歴史を扱った作品には、意外な人情物語やハプニングが潜んでいてグッと引き込まれる魅力を持っています。さらに時代背景の知識があればもっと想像できるのにという悔しい思いをする事もありますが、そこは読み終わった後に調べてさらに理解を深める楽しみ方も出来ました。気になったものがあれば是非、手に取ってみて下さい。

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