小説版『8番出口』が切り開く、もう一つの“出口”──原作ゲームファン必読の異世界サスペンス

更新:2025.8.20

2023年に話題を呼んだインディーゲーム『8番出口』が、実写映画化に先駆けて小説化!監督・脚本を務める川村元気氏自身による書き下ろし作品として、ゲームの持つスリルと違和感を「読後感」で体験できる一冊に仕上がっています。 本記事ではネタバレを避けつつ、原作ゲームファンに向けて、小説版『8番出口』の読みどころと独自の魅力を紹介します。

実家で猫を5匹飼っている猫好きな駆け出しライターです。 アニメのEDクレジットスタッフは欠かさず目を通してて、 好きなアニメーターさんが参加しているとテンションが上がります。
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なぜ『8番出口』はここまでバズったのか?原作ゲームの中毒性と魅力

地下通路の“違和感”、あなたは見逃せますか?

わずかな「異変」を見抜いて進むか、引き返すか――2023年に爆発的な話題を呼んだインディーゲーム『8番出口』。そんな注目作が、映画化に先駆けてまさかの“小説化”を果たしました。

本記事では、ゲームファンならではの視点で、小説『8番出口』の読後に広がる“もう一つの体験”を読み解いていきます。

ゲームクリエイターであるKOTAKE CREATE氏よって開発され、2023年11月29日にリリースされたインディーゲームの『8番出口』。

「あなたは無限に続く地下通路に閉じ込められている。周囲をよく観察し、『8番出口』まで辿り着こう。」そんなキャッチコピーのともに登場した本作は、ウォーキングシミュレーター形式のゲームです。

 

ルールは至ってシンプルで、地下通路に閉じ込められたプレイヤーが、そこから外の世界に戻る為には、地下通路で起こる様々な「異変」を発見し、「異変」があれば引き返し、見つからなければ進む…これを繰り返し、正しい判断のもとに「8番出口」を目指して脱出するゲームです。しかし、そんなシンプルさとは裏腹に、リアルに再現された地下通路や、閉鎖された空間にいる謎のおじさん、「異変」を見逃すとやり直しになる緊迫感がプレイヤーの心を掴み、配信直後から話題を呼びました。

 

インディーにもかかわらず、ゲーム実況者やYouTuberを含む多くのプレイヤー間で爆発的に拡散され、ゲーム実況者・キヨ。氏による実況動画は873万、YouTuber・ヒカキン氏は346万(いずれも25年7月25日時点)再生されるなど反響を呼び、現在ではSteam、Nintendo Switch、PlayStation 5、Xbox、スマートフォンといった幅広いプラットフォームでも楽しめる人気作となっています。

『君の名は。』の川村元気が挑む、「異変」だらけの実写化とは?

そんな『8番出口』が、実写映画化を発表。監督・脚本を務めるのは、『電車男』『モテキ』『君の名は。』など数々のヒット作を手がけた川村元気氏。2022年には自身の小説を原作とした映画『百花』で、サン・セバスティアン国際映画祭にて日本人初の最優秀監督賞を受賞するなど、国内外で高い評価を受けてきた人物です。

 

主演には二宮和也氏、河内大和氏、小松菜奈氏といった豪華俳優陣がキャスティングされ、瞬く間に注目の的となりました。また、第78回カンヌ国際映画祭公式招待作品にも選出され、更に『8番出口』の吊り下げ看板を彷彿とさせる、洗練されたポスタービジュアルはコンペティション「Prix Luciole」で最優秀賞を受賞するなど世界からの評価も高く、称賛を浴びています。

 

映画『8番出口』の日本公開は、2025年8月29日(金)を予定。ラヴェルの「ボレロ」が印象的な、思わず息を呑んでしまうほど緊張が走る予告映像は、早く映画が見たいという期待を膨らませます。

小説版『8番出口』の“手触り”はここが違う──読後に残る不穏な余韻

その映画公開に先駆けて、川村元気監督書き下ろしの小説『8番出口』が2025年7月9日に発売されました。

表紙には映画と同じポスタービジュアルが使用されており、鮮やかなイエローに、大きな「8」の文字がパッと目を引きつけます。価格も定価:888円(税別)と、至る所に『8番出口』への愛を感じる一冊となっています。

著者
川村元気
出版日

 

原作ゲームには明確なストーリーがなく、閉じ込められた地下通路で起こる「異変」を発見しながら、爽快感やスリルを“主観視点”で味わう作品でした。

一方、小説では主人公が設定されています。地下通路に迷い込んだ主人公が出口を見つけ出すまでの物語が“客観視点”で描かれています。プレイヤー自身が体験するゲームとは異なり、読者は主人公の外側からその心理や行動を追っていく構成となっているため、「疲弊していく心」「焦燥感」「猜疑心」「無限ループへの絶望感」といった精神状態が、じっとりと肌にまとわりつくような感覚で伝わってきます。

登場人物の心情や場面描写も細やか。親近感のある主人公を軸に物語が展開することで、読者を「8番出口」という絶望の淵に引きずり込むような没入感や恐怖心は、小説だからこそ得られる体験です。

 

「進む」か「引き返す」か、ゲーム上ではコンテニューができるが、1人の人間にとっては究極の2択で、人生を大きく左右することになる。待ち受ける「異変」とは何か?果たして「出口」は存在するのか?無事に外に出られるのか……そんな極限までに追い込まれた主人公がどんな行動を起こすのか、最後まで目が離せない展開が小説の魅力となっています。

映画公開より一足早く、違った角度から描いた『8番出口』の世界を知ることで、映画の見方も変わってくるでしょう。

あるいは映画を先に観て、その後に小説で違った視点から物語を味わうのもひとつの楽しみ方です。

映画を先に観るか、小説を先に読むか──その“ルート選択”によって体験がまるで変わるのも、『8番出口』ならではの魅力です。

 

ぜひ、一人ひとりの『8番出口』の楽しみ方を見つけてみてください。

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