いくつになっても心躍らせてくれる冒険というテーマ。たまには現実を忘れて冒険の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。今回はそんな冒険小説の傑作をご紹介します。
ロビンソン・クルーソーの誕生から始まり、彼が船乗りとして海へ出、そして無人島に漂流してから脱出するまでの28年間を描いた作品です。1作目が人気を博したために、さらに別の場所へと航海を続ける続編まで執筆されました。
- 著者
- ダニエル デフォー
- 出版日
ロビンソン・クルーソーという男は裕福な家庭の三男坊という立場に生まれ、冒険に胸を焦がすような毎日を送っているような人物です。彼は家族の反対を押し切って海を出て、一度は危うく遭難しかけますが、それでもめげずに彼はまた海へと出て行きます。そこで海賊の捕虜となりますが脱走、無人島へと辿り着くのでした。
その後、彼は別の捕虜を1人助け出して無人島を無事脱出することになります。ただ本作で楽しいところはそこではなく、日記のような口調で語られていく彼の無人島での暮らしぶりです。彼に与えられたのは、共に漂流した海賊の船とその中に入っていた道具のみ。それらを駆使して生活を整えていくまでが試行錯誤の連続で、面白くなっているのです。たとえば食料について、初めに船に乗っていた分では足りるわけはないので、海で魚や亀をどうにか捕ってみたり、島にいる山羊をなんとか繁殖させようとしたり……。彼の行動はまさしく人類が辿ってきた道そのもの。
冒険物語としては特別長いわけではありませんので、休日の読書にも丁度良い作品といえるでしょう。
ジム・ホーキンズという少年が主人公の冒険小説『宝島』。物語は彼の母が経営する宿屋に、刀傷を顔に持つ大男がやってくるところから始まります。大きな箱を持ち、酒浸りになっていく大男は、ジムに「片足の男に気をつけろ」と言いつけるのでした。そしてある日、大男は亡くなり、彼の荷物から1枚の地図が出てきます。それには財宝の隠し場所が記されていて……。
- 著者
- ロバート・ルイス スチーブンソン
- 出版日
- 1994-07-10
物語としては、主人公の少年が仲間と共に宝を探す冒険をするという至ってシンプルなものです。もちろん、ただ行って終わりということにはなりません。彼らの行く先々には様々な困難が待ち構えています。特に、同じく宝を狙う海賊の残党との激戦では、手に汗握る展開が続きます。
この展開を盛り上げるのは、ジョン・シルヴァーという男。序盤から彼は少し特殊な立場でジムの近くにいます。彼には目的があり、純粋な味方ではないというキャラクター設定になっているのです。純粋な冒険の困難も楽しい作品ではありますが、このジムとシルヴァーの独特な信頼関係も見所の一つです。
物語は、砂漠を旅する行商隊が、1人の男と出会うところから始まります。その男はスレイマンといい、自身が語り部であると告げるのです。今回の旅が人生で初めてだったアブリという少年は、スレイマンにせがみ、毎晩物語を語ってもらいます。その彼が語る冒険物語の主人公が、副題にもなっているサイード。サイードの冒険では、地味な砂漠の行商隊とは大きく違い、魔人や空飛び絨毯、魔法の道具を交えたアラビアンナイトな世界を旅していきます。
- 著者
- ジクリト ホイク
- 出版日
この物語は、砂漠を行く行商隊と、スレイマンが語る少年サイードの物語が交互に展開されていきます。そのため砂漠の旅の厳しさや堅実さと、派手なファンタジー世界の両方が同時に楽しめるという点が特徴のひとつになっているわけです。
本作の面白さの秘密は、少年との旅の中で、スレイマンが物語を作っていくことにあるでしょう。サイードの物語には少しずつ、少年アブリの道が反映されていき、最後には2つが結びついていっていることがわかります。
アラビアンな世界が楽しめるとともに、物語の語り方について作者の挑戦が見て取れる意欲的な作品です。
全3部作のファンタジー小説、その第1部が今回おすすめしている『黄金の羅針』です。タイトルにある黄金の羅針とは物語のキーアイテムで、何度もライラを導いてくれる道具として登場します。
舞台となるのは現実とそっくりな、しかしどこか違う架空のイギリス。この作品の世界では、人々は皆「ダイモン」という名の守護精霊のような動物を連れています。ほかにも魔女がいたり、魔法の道具があったりと非常に壮大なファンタジー世界になっているのです。
- 著者
- フィリップ プルマン
- 出版日
- 2003-10-29
そんな世界で主人公を務めるのは、学寮で暮らすお転婆な少女ライラです。彼女が暮らす学寮で、生徒が次々に連れ去られるところから物語はスタートします。さらにはライラの親友であるロジャーが攫われ、彼女の叔父であるアスリエル卿は失踪。彼らを救うため、ライラは北極へと旅立ちます。
とにかく前向きで行動的なライラの活躍を楽しめる本作。しかし一方で、子ども向けとは思えないほどに残酷で、エグいと言えるほどのシーンがあったりもします。この物語は決して痛みを伴わない楽しい冒険活劇ではありません。多くの人が血を流しながら、それでも突き進んでいく少女の決意の物語です。
江戸時代に書かれた、有名な長編ファンタジーの作品『南総里見八犬伝』。その長さは、当時発行された形式で106冊にも及ぶという壮大なものです。様々な物語にも影響を与えてきた人気作品なので、読んだことはなくても、なんとなく聞き覚えがあるかもしれません。歌舞伎や映画、ドラマや近年の娯楽小説、漫画まで、本作を題材としたものは数多く存在します。
- 著者
- ["滝沢 馬琴", "浜 たかや"]
- 出版日
舞台となる時代は、室町時代の末期。物語は伏姫という女性と、八房という名の犬によって始まります。安房里見家の当主である里見義実が、戦いの勝者に自分の娘である伏姫を与えると八房に冗談で言うと、八房は見事に敵将を打ち取ってきてしまいます。まさか犬に娘をやるわけにもいかず、拒む当主でしたが、結局二人は山の中へ去っていきます。それでもなお二人を追う手によって、伏姫と八房はともに亡くなってしまうのでした。しかし、伏姫が息を引き取る瞬間、8つの玉がそれぞれの方角へと飛んでいきます。そしてこの8つの玉を持つことになった八犬士たちの物語が始まっていくのです……。
その魅力はやはり、八犬士たちや、それに関わる人々のエピソードの多さでしょう。八犬士たちはそれぞれが別の場所で過ごし、別の人生を歩んでいるのですが、玉の因果により、最後には皆、里見家に集うことになるのです。このような、ここでは書ききれないほどの多くの話の流れがあるからこそ魅力がある作品ですので、ぜひ全文読むことをおすすめします。
主人公・千代延義正は、兄と共に左翼運動を行っていました。しかしその中で兄が死んでしまったことから、パリに旅立ちます。そこで、トリポリのグランプリレースを観戦して、自分もカーレーサーになろうと決心しました。
しかし時代は、第2次世界大戦真っ盛りであり、自分の目指すものが中々できません。そんな中、義正が自分の夢に向かって走っていく様子が描かれています。
- 著者
- 藤田 宜永
- 出版日
ナチスが支配しようとしていたヨーロッパの中で、フランス、ロシアなどの人物が多く出てきます。歴史に明るい方ならば、歴史小説としても読むことが出来るでしょう。また、レースがお好きな方は、レースの物語として読むこともできます。
しかし、そんな楽しみ方以外でも、多彩なキャラクターたちが絡み合う内容に、自分も主人公のように巻き込まれ、惹きこまれていくこと間違いなしです。
第2次世界大戦、という重いテーマですが、その雰囲気の中にも、スパイ、怪盗など、面白味あふれるキャラクターが登場するのが特徴だといえます。
戦争中でも、一見華やかな内容になっているのは、子爵家出身で貴族の義正を取り巻く人物たちの物語だからなのかもしれません。それらの人物たちが、自分の夢や目標のために突き進んでいきます。
上下巻のこの作品は、大ボリュームであることでも有名です。シリーズとして何冊かに分けてもよいのではないかと思うほどのボリュームに、ついためらってしまうかもしれません。
しかし、カーレースという現代的なテーマと、国内間の争いというテーマが絡み合って非常に読みやすい作品となっています。読んでみてはいかがでしょうか。
冒険小説となると、その性質上、話が非常に長くなりがちです。しかし今回ご紹介した作品は、終わってほしくない、もっと彼らの活躍を見たいと思えるほど引き込まれてしまうような作品ばかり。毎晩の習慣として読み進めてみてはいかがでしょうか。