美しい街並みが憧れの国、フランス。そんなフランスで生まれた文学を、あなたはどれくらい知っているでしょうか。今回はフランス文学の名作を5作品紹介します。
主人公のムルソーはある日、母親が死んだことを知らされます。そして彼女の葬式に出席するのですが、涙どころか感情を一切表に出すことはありませんでした。葬式の翌日から彼はすでに普段通りの生活に戻ります。
まるで母親の死などなかったかのように生活をしていたムルソーは、友人のトラブルに巻き込まれアラブ人を射殺してしまうのです。彼は逮捕され裁判にかけられることになるのですが、母親の葬儀のあとの行動から冷酷な人間であると非難されることとなります。
- 著者
- カミュ
- 出版日
- 1963-07-02
942年に出版されたアルベール・カミュの代表作と言える作品です。この物語の主人公であるムルソーは人としての常識から外れた行動を取る人間として描かれているのですが、彼は決して感情が伴わない人間というわけではありません。ただ多くの人が考えるそれと大きく変わっているがゆえに、意味が分からない人物のように見えるのです。
それに対して作者は決して否定的な考えを持っていません。むしろムルソーという、人間社会の常識から脱却した人間を肯定しているかのようにさえ思えます。ムルソーの行動に、自分ならどのような印象を抱くのか、ぜひ読んで確認してみてください。
操縦士だった「ぼく」が、砂漠に不時着した時に不思議な少年と出会い、無事に生還するという物語です。彼らは砂漠でともに過ごすうちに絆を深め合っていきます。その過程の中で「ぼく」は少年が地球ではない別の星の王子さまであったことを知るのです
。
王子さまは自分の星でバラの世話をしていたのですが、ある日そのバラと喧嘩してほかの星を見るための旅をしてきたことを「ぼく」に話してくれます。最後にはやはりそのバラが大切であったことを自覚し、王子さまは星へと帰っていくのでした。
- 著者
- サン=テグジュペリ
- 出版日
非常に知名度の高い、フランスで生まれた児童文学の名作です。ファンタジーな雰囲気が強い作品で、おとぎ話の雰囲気を持っています。しかし、その内容は意外なまでに社会を鋭く突いてくるのです。
ここで語られる王子さまがまわって来た星で見たものは、そのままのイメージでとらえればただのファンタジーな異世界でしかありません。それが何を象徴しているのかそれがわかった時に、この作品はまた違った側面を見せてくれることでしょう。
たとえば、彼が見てきた星にいた人物は、それぞれ権力や快楽、労働などの象徴として行動を見せるのです。社会に触れ、知識が増えるごとに印象が変わっていくので、10代、20代、と年齢を重ねるごとに読み返したい作品です。
一本のパンを盗んだために19年間投獄された男の生涯を描いた作品です。家族のためにパンを盗んだ男、ジャン・バルジャンは出所したあと、とある司祭に助けられるのですが、そこでも彼は銀の燭台を盗んでしまいます。しかし、捕まった彼を司祭が庇ったおかげで罪に問われることはありませんでした。
心を入れ替えた彼は別の街で名前を変え暮らしますが、正体がバレこれまでの罪を告発されてしまいます。しかしジャン・バルジャンはとある親子を救うため脱獄をし、その娘を救ったあと実の子のように育てるのです。
- 著者
- ヴィクトル・ユゴー
- 出版日
- 2012-12-18
ミュージカルの題材としても有名で、また数多くの映像化がなされた名作です。タイトルの『レ・ミゼラブル』は日本では『ああ無情』などと訳されることが多いですが、正確に日本語に訳すとするならば「みじめなる人々」「哀れな人々」というような意味になります。
その通りにジャン・バルジャンが投獄される理由は、貧困から食料を盗み出したというものです。そんな彼がいかにして人生を生き、そしていかにしてたった一人の娘を愛したか。彼の生き方は必ず、見る者に感動を与えてくれることでしょう。
働く必要もないほどの富を得た主人公が、晩年に作家になることを目指すという人間の一生を描いた長編作品です。作家を目指していたにも関わらず、特に書きたい題材が思いつかなかった主人公が、年老いてから無意識的記憶を体験することから自分にとって書くべきなのは己の過去であると自覚します。
この無意識的記憶というのはこの作者の名前マルセル・プルーストからとって「プルースト現象」と呼ばれることもあるのですが、要するに嗅覚などをきっかけに過去の記憶を呼び覚ます心理現象のことです。この作品では主人公がマドレーヌを紅茶に浸した香りから、幼少期のことを思い出したというシーンが有名となって広まりました。
- 著者
- マルセル プルースト
- 出版日
- 2015-05-29
登場人物は2000人を数えるほどで、作者はこの作品を書ききるまでに亡くなってしまいます。彼の死後5年経ってようやく彼の未定稿をもとに執筆され、完結しました。それほどの大作であり、20世紀を代表する小説とまで言われています。
とにかく大変長い小説で、読みなれている人でも読破には半年から1年を要します。だからこそ、文章を芯まで味わい尽くせる作品です。毎日少しずつ読むことを目標に、気長に読んでみてはどうでしょうか。
舞台となるのは第一次大戦の真っ最中、主人公が年上の女性マルトに恋をするという物語です。主人公が恋をしたこのマルトという女性には実は婚約者がいて、彼女たちは結婚するのですが、そのころには彼女の夫への愛は冷めていました。
彼女は夫が前線で戦っているという状況の中、主人公と毎晩のように体を重ねることになります。そして、ある日主人公は彼女から妊娠したということを告げられるのです。
- 著者
- ラディゲ
- 出版日
- 1954-12-14
レーモン・ラディゲの処女作となる恋愛小説です。驚くべきことは作者が10代の時にこの作品を書き上げたということでしょうか。この作品の魅力は、恋に溺れていく二人の姿を歪んでいく時間感覚と共に完璧に仕上げてみせたことでしょう。恋愛心理を非常に丁寧に紐解いた名作です。
人の生涯、人の心理、そういったものがフランス文学でよく表現されています。じっくりと時間をかけて読むことに適した作品が多いので、空いた時間を見つけて休息を楽しむように読んでみてはいかがでしょうか。