日本と同じ、島国の文学であるイギリス文学。教養として知っておきたいのはもちろんのこと、純粋に面白い物語が読みたいという方でも満足できる作品ばかり。今回はそんなイギリス文学の中から5作紹介します。
1813年に刊行された、ジェーン・オースティンの長編作品です。舞台となるのは18世紀末イギリスの田舎町で、ベネット家の次女エリザベスを中心に描かれる恋愛ストーリー。英国文学の最高峰と名高いこの作品は、恋愛小説の金字塔と言われるほど有名で、数多くの映像作品も制作されています。
物語は、五人姉妹のベネット家の近くに青年資産家のビングリ―が引っ越してきたところから始まります。娘を嫁にやれるかもと盛り上がった彼女たちの母親がきっかけとなり、エリザベスたちは彼と知り合いになるのです。そんなビングリ―は長女ジェーンと互いに惹かれ合っていき、主人公であるエリザベスはビングリ―の友人であるダーシーと知り合うことに。しかし、エリザベスはこの男の高慢で横柄な態度に対して激しい反感を覚えていき…。
- 著者
- ジェーン オースティン
- 出版日
最初は反発し合っていた男女が交流を深める中で、少しずつ惹かれていくという恋愛小説の王道展開をストレートに表現した作品です。もちろん書かれた時代は違いますが、いつの時代でも通用する魅力を持っています。
そんな王道ストーリーを支えるのは、登場人物たちの個性です。勝気なヒロインと、無愛想なヒーロー。お人よしな彼女の姉と、その陽気な恋人、娘の結婚に躍起になる母親など娯楽作品として色あせない魅力が溢れています。ロマンス溢れる恋愛ストーリーが好きだという方は、一度読んでみてはいかがでしょうか。
人間に利益を搾取されていると気づいた動物たちが、飲んだくれの農場主を追い出して自分たちだけの共和国を作る、というところから始まる物語です。無事に自分たちだけの平和と安定を手に入れたと思った動物たちでしたが、指導者であった豚が次第に権力を握りはじめます。結果的に特権階級が生まれ、不和や争いが起き、どんどん過酷な状態へ陥っていくことになるのです。
- 著者
- ジョージ・オーウェル
- 出版日
- 2017-01-07
作品の中で、20世紀前半の全体主義やスターリン主義を寓話という形で痛烈に批判していますが、この本が刊行された1945年は世論が反ソ連に動いていたので非常に好評でした。そういった時代背景を踏まえてみるとまた違った側面が見えてくることでしょう。
しかし、それがなかったとしても、この作品に描かれた集団の普遍さにはきっと胸を打たれるはずです。集団というのは安全性を高めるために作られるものですが、それは崩壊の危険と裏表であるということがとてもよくわかります。
イギリス文学としては外すことのできないウィリアム・シェイクスピア、『ハムレット』は彼の作品の中でも四大悲劇と呼ばれる作品の1つです。タイトルのハムレットとは、主人公となるデンマークの王子の名前。
この物語は、ハムレットが父であるデンマーク王の亡霊から復讐を頼まれることを発端として動き出していきます。父が急死してしまったこと、そして母が叔父と即座に再婚してしまったことなどに意気消沈していたハムレットは、父からその死の原因が叔父にあることを聞かされるのです。復讐のため狂気を演じ、叔父を油断させることにしたハムレットですが、その結果数多くの悲劇が起こっていきます。
- 著者
- ウィリアム シェイクスピア
- 出版日
- 1967-09-27
復讐を誓ったといっても、その目的に向かって真っ直ぐに進んでいく話ではありません。主人公であるハムレットはことあるごとに悩み、堂々巡りを繰り返すのです。その姿はどこか甘ったれで、頼りないと思うこともあるかもしれません。
しかし、それでも父の復讐のために命をかけて最後まで貫いた彼の姿は、ただの軟弱な若者というだけでは決してありません。最後まで初志貫徹をするのに、どこに行くか分からない優柔不断さは、それがあるからこそ見ているものに訴えかけてくるのかもしれません。
大戦のさなか、イギリスから疎開するための飛行機に乗っていた少年たちを主人公とした物語です。彼らが乗っていた飛行機は、途中で攻撃を受けてしまい、孤島へと不時着します。頼れる大人がいない場所で、彼らはリーダーを立て規則を作り救援を待つ生活を送ることになります。しかし、最初こそ平和だった彼らですが、次第に対立を始め闘争へと駆り立てられていくことになるのです。
- 著者
- ウィリアム・ゴールディング
- 出版日
- 1975-03-30
この作品は、少年たちの漂流物語を土台に、人間のあり方について深く書かれています。登場するのは若い、というよりは幼い少年たちばかり。故に人の理性、本能、それらがありのままに描かれていくのです。彼らを二分することとなった二人の少年、彼らのどちらが悪で、どちらが善か、そもそもそんな前提に意味があるのか。結末と、そして物語のその後が気になる作品です。
主人公となるのは嫌われ者で、冷徹な金儲け一筋の商人スクルージ。どこまで守銭奴かというと、彼は知人であるマーレイが亡くなった時、彼の冥銭を持ち帰ってしまうほどでした。
そんな彼は、亡くなったマーレイの亡霊に出会います。マーレイは、3人の精霊がスクルージの元を訪ねると彼に伝えます。その3人の精霊は、過去、現在、未来のクリスマスの霊でした。過去の精霊は、彼に懐かしい少年時代を、現在の精霊は、スクルージの知人たちの悲しいクリスマスの様子を、そして未来の精霊はひとりぼっちで死んでしまう哀れな男の姿を見せるのです。
- 著者
- ディケンズ
- 出版日
- 2011-12-02
この出来事によってスクルージは改心し、幸せな人生を歩みだすというとても心が温まる話です。内容はとてもシンプルですが、だからこそ心に染みわたるものがあります。幸せについて問いかけるこの作品のテーマ性は、この本が発行された1843年の時代から色あせることがありません。だからこそこの物語は長い間人々に親しまれているのでしょう。
いかがでしたか。イギリス文学というだけではぴんと来ないという方も多いのではないかと思います。まずは有名作を手にとり、イギリス文学のすばらしさに触れるきっかけとなれば嬉しいです。