アメリカ文学おすすめ代表作5選!傑作だけ集めました。

更新:2021.12.15

アメリカという、数多くの国がある中でも特殊な国で起こった文学、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。今回はアメリカ文学を読む人も、全く読まない人も楽しめるアメリカ文学の代表作を5作品紹介します。

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アメリカ文学史上不朽の名作『老人と海』

84日の不漁に悩まされていた、漁師の老人が主人公の短編小説です。この物語は、老人がとんでもない大きさのカジキを釣り上げようとする、その様子を描いています。この老人が釣ろうとしているカジキは大変な大魚でした。

老人はカジキを釣り上げるどころか、数日間海に流されてしまうのです。

それでも、老人はカジキと生きるか死ぬかの戦いを続けました。そして、ようやくカジキをしとめることができるのですが、港へ帰るまでに大量のサメが襲ってきてカジキの肉を食べてしまいます。老人は後悔しながら港へと戻りますが、そこにあったのはカジキの巨大な骨だけでした。

 

著者
アーネスト ヘミングウェイ
出版日
2014-09-11


ヘミングウェイの代表作として名高く、彼のノーベル文学賞の受賞を決定づけたとも言われる作品となっています。物語としての派手さはありませんが、だからこそ老人の心情を表現する巧みさがうまく出てくるのです。

大魚を釣り上げるまでの攻防の間、とりとめのない思い出や希望、そこからの底知れぬ絶望まで、老人は様々な思考を巡らせました。やっとの思いで仕留めたカジキを大量のサメに食べつくされても、ただ一つの獲物、カジキを釣り上げるという最初の目的を達成した老人の動きが、人生そのものを描いているともいえるのではないでしょうか。

ストーリーを追い、その流れに心を動かされるものではなく、カジキとの死闘の中での老人の心理描写をはじめとした、1文1文の文章を堪能できる魅力があります。何度でも読み返すことによって価値が出てくる作品です。

華麗なる、一人の男の物語。アメリカ文学の象徴『グレート・ギャツビー』

語り手であるニックという男が、主人公ギャツビーについて医者に語るという少し不思議な構成となっている作品です。ニックが過去にニューヨークで暮らしていた時の隣人がギャツビーであり、ギャツビーは日々豪華なパーティを開いていたというところからニックの話は始まります。

パーティに招待され、ギャツビーと親しくなったニックは、彼の生い立ちについて聞かされます。その内容は、彼が裕福な家の生まれであり、戦争で武勲を立てた英雄であり、今は両親を失い天涯孤独の身であるということでした。出来すぎたその人生に、彼はギャツビーが嘘をついているのではと考え、彼の過去を探り始めるのです。

 

著者
スコット フィッツジェラルド
出版日


『グレート・ギャツビー』は何度も映画化され、複数の訳者による翻訳が刊行されたアメリカ文学史上最も有名な文学作品ともいえるでしょう。物語としては悲恋を描いた作品で、富豪であるギャツビーが昔の恋人の愛を取り戻そうとする姿が描かれているのですが、これは一般的なラブストーリーとはまた違った物語となっています。

ギャツビーという男はその財力によってパーティを開き続けるという生活をしていたのですが、それはすべて過去に付き合っていた女性の関心を自分に向けさせるためのものでした。彼の情熱は真っ直ぐですが、それ以上にどこか歪んでおり、物語は最後、悲劇的な結末を迎えることとなります。

そこで語り手であるニックは、彼のことをグレートだと、そう表現するわけです。ニックはなぜギャツビーをそういう男であると思ったのでしょうか。そんな視点で読んでみるのも面白い一作になっています。

インチキな社会と少年『ライ麦畑でつかまえて』

主人公であり、語り手となるのは16歳のホールデン・コールフィールドという学生。この物語は、16歳という複雑な年齢の少年が主人公の、思春期の内面を描き出した青春ストーリー作品です。

寮生として高校に通っていたホールデンが、成績不良からの退学処分を受け、実家へ帰ることを余儀なくされる、というところから物語は始まります。家に帰らなくてはならないことが親に伝わるまでの3日の間、彼は一人寮を飛び出してニューヨークの街をさまようのです。

ニューヨークで、かつての教師や知り合いなどに彼は出会っていくわけですが、関係はうまく行かず喧嘩別れに終わり、娼婦を買っても心は満たされません。純粋な心を持つがゆえに社会に疑念を持った彼は、自分の居場所を見つけられないのです。

 

著者
J.D. サリンジャー
出版日


メインとなるのはホールデンという一人の少年の感情の動きです。彼は純粋な子供ゆえに、社会や大人を信用できません。10代だからこそ感じる大人は全ていい加減でインチキであるという感情を描き切った、揺れ動く少年の内面を描いた不朽の名作といえるでしょう。

いたずらが好きでわんぱくな少年たちの冒険の日々『トム・ソーヤーの冒険』

今なお愛され続ける冒険小説の名作として、名前を知っている方も多いのではないでしょうか。主人公のトマス・ソーヤーという少年が、仲間たちと共に冒険を繰り広げる物語です。

35章ある本編の中で、彼らには様々な出来事が起こります。たとえば遊びに行くことを禁じられ、ペンキ塗りを命じられた主人公が機転をきかせて仕事をさぼったり、ホームレスのような生活をしている親友と殺人事件を目撃してしまったり、転校生のかわいい女の子に恋をしたりします。この作品には、10歳の少年たちの日常のわくわくが溢れているのです。

 

著者
マーク・トウェイン
出版日
2012-06-12


描かれているのは少年たちの日常ですが、その中に冒険物語の要素が入っているのがこの作品の一番の魅力です。物語は子供向けではありますが、著者がかつて少年少女だった人にも読んでほしいと語ったように、大人が読んでも楽しめる作品となっています。世代を超えて愛される名作なので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

不幸な家族の、ささやかな幸福『ホテル・ニューハンプシャー』

ホテル経営を夢見る父の姿を、次男の視点から描いた家族の物語です。ウィンという名のこの父親は、若い頃に海辺のホテルでアルバイトをしていた夏、大道芸人のフロイトに出会います。ヨーロッパに渡る彼からウィンは一頭の熊を託されますが、結局熊は誤射により死んでしまうのでした。

その後、高校教師を務めるウィンでしたが、どうしてもホテル経営をする夢を諦めきれません。そして廃校だった女子高を買い取りホテル・ニューハンプシャーを家族と共にオープンすることになるのです。

 

著者
ジョン・アーヴィング
出版日
1989-10-30


ホテル経営という大きな夢に向かう男とその家族の苦難、そしてそこからの回復を描いた物語です。この話に出てくる家族は、長男はゲイであることから学校でいじめを受けたり、長女が性的暴力を受けたり、果てには母親と末っ子が墜落で死亡したりとなかなかに不幸な人生を歩んでいくことになります。

しかし、それでも彼らは家族でオープンさせたホテルを心のよりどころにして、皆でホテルの維持を目指します。不幸にめげない家族の強い意志によって、苦難を乗り越えていくのがこの作品の見どころなのです。冒頭で登場した熊も作中では別の形で、象徴のように扱われているので、それに注目してみてもよいでしょう。

自由の国アメリカの文学だけあって、夢や自由といった無垢で無形のものを追い求めるお話が多いのが一つの特徴ともいえるのではないでしょうか。ぜひ、この機会に彼らが追い求めたものを、ともに探ってみるのはいかがでしょうか。

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