ファンタジーの世界は非常に奥が深く、かつ果てしなく広がっています。ここではあまりファンタジーを読んだことがない初心者の方から、深く読み込んでいる上級者の方まで幅広くおすすめしたい、人気作品の裏側を知ることができるおすすめ本をご紹介します。
本書はまさに、果てしなく広がるファンタジー世界への案内書と言えます。19世紀から現代に至るまで、歴史的背景から世界のファンタジー作品の流れを知ることがでる本書。ファンタジーというジャンルが時代を反映しながら成長してきた様子を、具体的な代表作品と共に深く理解することができます。
19世紀の妖精物語から始まり、ラヴクラフトによる怪物などが登場する恐怖小説や魔法を描く作品、第二次世界大戦の終結により自由を求めて想像力が生んだ異世界冒険物語と続きます。そしてミヒャエル・エンデが『はてしない物語』で描いたスチームパンクに至り、有名作品とその在第背景について詳細に書かれています。
- 著者
- 小谷 真理
- 出版日
そもそもファンタジーの定義について、本書では現実的な表現に重きを置かない文学すべてと言及しています。本書ではSF、魔法使い、怪物、そしてファイナルファンタジーといったゲームでさえも、ファンタジーのカテゴリーなのです。
本の中では、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』や、前田珠子の『破妖の剣』、荒俣宏の『帝都物語』など、とにかく数えきれないほどのファンタジー作品が挙げられています。本書を読み進めるにつれて、きっと次に読みたい作品が見つかるでしょう。
ファンタジーの背景を知ることでより作品世界を楽しめるようになり、様々なジャンルのファンタジー作品を読むきっかけを与えてくれる、おすすめの一冊です。
心理療法を本職とする河合隼雄氏が、ファンタジーにカテゴライズされる児童文学を取り上げ、作品に込められた豊かなメッセージを読み解いた本です。
取り上げられる作品は、ポール・ギャリコの『七つの人形の恋物語』や、フィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』、映画『借りぐらしのアリエッティ』の原作であるメアリー・ニートンの『床下の小人たち』、ル=グウィンの『ゲド戦記』など。読んだことはなくても名前を聞いたことがある人が多いであろう、10作品を取り上げています。
- 著者
- 河合 隼雄
- 出版日
どの作品も、心理療法士ならではの視点で深く解説されています。例えば著者は、病に伏せる少女が夢の中で出会う少年について親に言わずにいることについて、「人間は成長するためには秘密をもたねばならない」(『ファンタジーを読む』より引用)と言います。
何気なく通過してしまうストーリーの一部について、改めてはっとさせられる著者ならではコメントが、本書の一番の魅力と言えるでしょう。児童文学といえば子供が読むものという印象が強いのですが、心理学的視点で、もう一度児童文学の奥深さを味わってみませんか?
まさにファンタジーの事典と言える本作品。ですが、この作品はファンタジー好き以外にもおすすめ!第一章「国家」、第二章「魔法」、第三章「武器」、第四章「宗教」、第五章「世界」、第六章「魔物」、第七章「生活」と分けられていて、リアリティあるファンタジー世界を作るために必要な歴史や文化などがまとめられており、会話のネタ帳としても使える一冊となっているのです。
- 著者
- 山北 篤
- 出版日
- 2010-08-03
本作品はファンタジー小説の設定を論理的に解説します。当初、剣は斬るものではなく、どちらかというと殴り倒すための武器でした。剣を斬る武器として使うようになったのは鎧を着なくなった時。つまり銃の性能が鎧を上回った頃にそのような用途として使われ始めたのです。こんな知識を知っていれば、ファンタジー作品の登場人物の衣装もいつもより楽しく観察できるのではないでしょうか。
また、天使の項目の内容も目から鱗の面白いもの。天使といえば思い浮かべるのは翼を持った姿なのではないでしょうか。しかし初期のキリスト教では、翼を持たない普通の男性の姿をしていたそうです。なかなか知られていない天使の起源はちょっとした会話のタネになりますよね。
タイトルにはゲームシナリオのためとありますが、単にファンタジーが好きだという方も、わくわくしながら楽しむことができます。物語の背景を知るために、あるいは新しい作品創作のひらめきの素として、ページをめくってみてはいかがでしょうか。
プライベートでも仲の良い、「守り人」シリーズや「獣の奏者」シリーズの作者・上橋菜穂子、「匂玉」シリーズや「西の善き魔女」シリーズの作者・荻原規子、「一瞬の風になれ」シリーズや「シロガラス」シリーズの作者・佐藤多佳子が、それぞれの作品について語り合った内容をまとめた本です。
- 著者
- ["上橋菜穂子", "荻原規子", "佐藤多佳子"]
- 出版日
- 2014-12-19
三人とも書いている作品はファンタジーが多いですが、創作への姿勢やストーリーへの感じ方などは三者三様。それゆえ作者自身が気づかないような意見が同じ小説家である友人から飛び出てきたりする、ライブ感のある内容です。いわゆる対談物が苦手な方でも、興味深く読めるおすすめの一冊となっています。
三人の作品について語るという内容ですが、それ以外にも『ナルニア国』シリーズやミヒャエル・エンデなどファンタジー小説に関する有名所の名前も挙がっており、次に読みたい作品を探すこともできます。
作品を読んだことがある方もない方も、人気小説家三人の作品に対する姿勢、素顔が見られる仲のいいやりとりを楽しんでみませんか。
『ファンタジーが生まれるとき―『魔女の宅急便』とわたし』というタイトルの通り、『魔女の宅急便』の原作者・角野栄子が、自分の幼少期から現在を振り返りながら、キキが生まれたいきさつや、彼女にとってのキキという存在について語った一冊です。
幼少期の体験談などは、おもしろおかしく読めてしまいますが、やはり物語を書く人というのは、子供のころから自身への物語に繋がるインプットの習慣があったのだなと思えるエピソードが盛りだくさんです。
- 著者
- 角野 栄子
- 出版日
- 2004-12-21
キキの存在は、当時中学生だった娘さんが描いた絵を見て、娘と同じくらいの年の魔女を書いてみようと思ったと書かれています。作者と娘さんの関係も、キキとキキの母親のように穏やかでお互いを信頼しあっているのだろうと思える、心温まるエピソードです。
『魔女の宅急便』のキキの不安や希望などは、魔女でありながらも普通の私たちとさして変わりはありません。だからこそ、幅広い層の読者の心にすんなり入り、愛されるのだろうと感じられます。その優しい心理描写は、作者の人柄から生まれたものなのだと本作品で感じられます。
映画化もされ大ヒット作品となった『魔女の宅急便』。老若男女に愛されるキキを生んだ作者が一体どんな人なのかを知れば、よりキキのことを好きになること間違いなしです。
以上、ファンタジーをさらに深く楽しめるようになる5冊をご紹介いたしました。ファンタジー初心者の方も、ファンタジー歴が長い方も、どうぞ素敵なファンタジーライフをお楽しみください。