超能力・異能バトルは読んでみたいけれど、作品数が多くてどれを選べばいいのかわからない! ライトノベルの花形のジャンルの1つなので、そういった経験したことがある人もいると思います。今回は、ぜひ読んでほしい作品をご紹介します。
WEB小説投稿サイト「小説家になろう」で累計PV1,200万超を達成した、藤孝剛志によるライトノベルです。他人の頭上にその人物の「役」を見ることができる能力に覚醒めてしまった主人公。彼は「死者」「吸血鬼」などの異様な「役」の人物たちにも出会ってしまうのです。
姉の坂木睦子に武術を仕込まれ、高校生でありながら常人離れした戦闘能力を持つ主人公坂木雄一は、ある日他人の頭上に、その人物がどんな人間なのかを示している文字が見えるようになります。家の中では「母親」や「姉ちゃん」など、普通の役柄ばかりが見えていました。しかし高校へ入学し、入ったばかりのクラスで彼が見たものは、「殺人鬼」「獣人」「魔女」などのとんでもない役柄ばかり。そんな非日常的な登場人物たちに雄一は振り回されていくことになるのです。
- 著者
- 藤孝剛志
- 出版日
- 2013-08-30
主人公雄一は常人離れした武力の持ち主ではありますが、あくまで常識人です。しかしその一方で、姉の睦子は重度の中二病を患っており、特に武術などには大きな関心を持っているよう。弟のペンケースに暗器(隠し武器)をしのばせたり、弟が人の役柄を見抜く能力を得た際には大喜びし、その能力を「魔眼(ソウルリーダー)」と命名してしまったりと、そんな中二病をこじらせまくった姉なのです。
そんな中二病で非常識人の姉に、常識人である雄一が振り回されるストーリー。殺人鬼や吸血鬼、獣人などの非日常的な登場人物たちにも次々に出会っていき、雄一は更に周囲に振り回されるのです。そんな風にどこか雄一の不幸をおびたキャラクターは、不思議な魅力をかもしだしています。
また、次々に登場する様々な役割を持った登場人物たちは、次はどんなやつが出てくるのだろうと読者の期待をふくらませてくれます。ここで語ったもの以外に、一体どんな役柄を持ったやつらが登場するのか、ぜひ読んでお確かめください。
岩井恭平の『ムシウタ』は、人の夢を喰う「虫」を体内に宿し、その「虫」に由来した特殊能力を使って闘う、異能バトルラノベです。「虫」に寄生され、異能を使えるようになった人間達は虫憑きと呼ばれます。
- 著者
- 岩井 恭平
- 出版日
この作品は異能バトルラノベらしく、異能を持つキャラクターが次々と登場します。もちろん異能に関する専門用語も多いのですが、分かりやすく魅力的なネーミングが多いので、異能バトルものが初めての人でも作品世界に入りこみやすいのではないでしょうか。
例えば、虫憑きの異能は「同化型」「分離型」「特殊型」という3つの型、能力は攻撃に特化した「火」種、特殊な能力を持った「異」種、重要性や秘匿性を持った「秘」種に分けられます。さらにその強さには1号~10号という順番がつくのです。たとえば火種で最強い虫憑きを、火種1号といいます。キャラクターの属性と強さが、一目で分かります。
もちろんバトルものの醍醐味でもある、手に汗握る先の読めない展開と、魅力的なキャラクター達の闘いを通しての成長物語も存分に楽しめます。しかし、特筆すべきは本作の物語設定による独特な作品世界です。抗いようのない残酷な運命に翻弄されながらも闘い続ける少年少女達の姿が、『ムシウタ』最大の魅力である「儚さ」といえるでしょう。
この作品に出てくる人物は皆ある夢を持っています。彼らは皆、その夢を「虫」に喰われながら闘います。つまり異能を使えば、その分夢を失っていくのです。
ここでいう夢というのは、夢を叶えるために存在する人間の意思と感情、つまり心を指しています。虫憑きは皆、異能を使う度に心が欠落していき、夢が尽きた者は「欠落者」となり最後は心を失った人形と化してしまう、過酷ながらも儚い運命を背負うことになります。
夢を叶えようと力を使えば、最後には全てを失うことになるのです。
『ムシウタ』に登場するキャラクター達は実は同じ夢を持っています。皆、自分の居場所を欲しているのです。作品世界の織りなす独特の儚さに、読み終えた後は、胸にポッカリと穴が空いたような読後感に襲われることでしょう。
ちなみに挿絵は、るろお氏が担当しています。繊細なタッチで描かれた、可愛くも儚げなイラストも、ぜひご堪能下さい。
江波光則『ボーパルバニー』は、3億円を中国マフィアから奪った主人公たち6人が、ひたすら武闘派バニーガールに襲われる異能バトルラノベ。主人公側6人は、普通の人間です。1名だけ人間離れした豪傑もいますが、普通の人間という部分からは逸脱していません。
- 著者
- 江波 光則
- 出版日
- 2015-09-18
バニーガールはタイトルの「ボーパルバニー」を指しています。「ボーパルバニー」は作中、以下のように定義されています。
「このウサギの前歯は鋭く、刃物のような切れ味を持っている。攻撃時にはキャラクターの首筋にこの歯でくらいつき致命傷を与え、あっという間に殺してしまうのだ。 『ウィザードリィモンスターズマニュアル』 ゲーム・アーツ著(エム・アイ・エー)」(『ボーパルバニー』から引用)
「ボーパルバニー」とはつまり、ウィザードリィというゲームに出てくる敵モンスター、不死身で殺人に特化したバニーガールなのでした。
主人公たち6人の内、まず1人がバニーガールに殺され、もう1人が行方不明にされます。そこで主人公たちはバニーガールに備え、ありとあらゆる手を打つのです。
例えば、1人は「判事」と呼称される非常に殺傷能力の高いショットガンを持ち出します。しかしバニーガールはびくともしません。さらにバニーガールは履いているピンヒールを槍のように使用し、肉体を指してきます。化け物バニーガールという絶対的恐怖に対して、あらゆる手段を用いて戦う姿から目が離せません。
本作をさらに面白くするのは、倫理観から思いっきり外れた行動を淡々と行うキャラクターたちでしょう。主人公たちの思考がわかる文章をご紹介します。
「引き金を引く直前に私が思っていた事は誰かに鉛玉をぶち込めるというそれだけの歓喜で、要するに誰でも良かった。」(『ボーパルバニー』から引用)
「俺はリスクを負ってでも物事を明確にしたがるタイプだった。たとえそのリスクが、自分の首と命を奪いかねないとしても。」(『ボーパルバニー』から引用)
いかがでしょうか? 敵の殺人特化型バニーガールも主人公たちのキャラクターも、ハードボイルドであり、バイオレンスですよね。少し渋めのラノベを読みたいという方にはぴったりの1作です。
時を止める異能「停時フィールド」を使用し、次元の裏側より送り込まれた「鬼」を退治する異能バトルラノベ『筐底のエルピス』。
- 著者
- オキシ タケヒコ
- 出版日
- 2014-12-18
本作は先ほど紹介した『ムシウタ』よりも、さらに設定が難解です。というのも、物理学に即した設定が多く登場するからです。例えば、ヒロイン・乾叶の「停時フィールド」(武器)について、こんな説明があります。
「静止した時間と動く時間との境界面に巻き込んだあらゆる物質を、易々と切断する。この世に切れぬもののない刀」(『筐底のエルピス』から引用)
凝った説明でありつつも、頭の中でイメージがしやすい安定感がある理由は、著者・オキシタケヒコが、創元SF短編賞というSF畑からデビューしたという経緯があるからでしょう。
また、バトルに様々なトリックを仕掛け、駆け引きをしながら戦うシーンには、ワクワクさせられること間違いなしです。ヒロイン・乾叶が使用する「停時フィールド・蝉丸」は、刀状にしか展開できず、射程は自分の触れている物質に刃を付けられるだけ……と、あまりにも低い応用度。しかし作品中盤からは、ある工夫によって、バトルがグッと面白くなっていきますよ。
本作は、バトルものらしい王道バトル作品を読みたい方にはうってつけの作品です!
家族を失い、弟子入りした崩月家での凄まじい修行により戦鬼となった揉め事処理屋の高校生・紅真九郎が、7歳の名家の御令嬢・九鳳院紫を助けるために戦う物語『紅』。
- 著者
- 片山 憲太郎
- 出版日
- 2014-12-19
本作におけるおすすめポイントは、主人公の心理描写の丁寧さでしょう。例えば以下のような表現があります。
「寂しくて、悲しくて、死にたくて、死にたくなくて、一人になりたくて、誰かにいて欲しかった。頭の中はグチャグチャだった」(『紅』から引用)
1度心理描写に入ると、こちらを畳みかけてくる文章が延々と続き、異常な程に感情移入できることでしょう。ちなみに心理描写以外の部分は、ラノベらしくて読みやすい本作ですので、ご安心くださいね。
また直接的な心理描写ではありませんが、主人公から見たヒロイン・九鳳院紫の行動から読み取れる、ヒロインの心情変化にも大注目です。
後ろ向きな人生を歩んでいた真九郎と紫が、前を見るための、前に進むための物語。彼らはどんな風に前を向いていくのか……。ぜひ本作でお確かめください。
「ブギーポップ以降・ブギーポップ以前」という言葉ができた程、革命的な作品で、「ブギーポップ以降」のラノベでその影響を受けていない作品はない、とまでいわれる本作。
ブギーポップは笑わない (電撃文庫)
たとえば『戯言シリーズ』や『物語シリーズ』で有名な西尾維新、『Fateシリーズ』で有名な奈須きのこ、『キノの旅シリーズ』の時雨沢恵といった作家が影響を受けたと明言しています。
『ブギーポップは笑わない』は、宮下藤花から浮き上がってくる人格・ブギーポップが世界の敵と戦うというお話。5人の少年少女の話を読みながら、1つの事件を追っていきます。5人の視点を合わせて初めて事件の真相が解明できる群像劇である本作。謎解き要素によって先が気になり、ページをめくる手が止まらなくなることでしょう。
捉えどころのない性格のブギーポップ。彼には他人に対しても、自分自身に対してもあまり興味がありません。しかしそんなブギーポップが、人間社会を理解したような言葉を放つのです。
「さあね。ぼくにはわからないね。ぼくは義務でここにいるだけだから」(『ブギーポップは笑わない』から引用)
「夢が見られない、未来を想えない、そんな世界はそれ自体で間違っている。でもそのことと戦うのは、残念ながらぼくではない。君や宮下藤花自身なんだ」(『ブギーポップは笑わない』から引用)
哲学的ともいえるセリフの一つひとつが、ブギーポップのキャラクターの面白さであり、作品の魅力に繋がっています。
超能力・異能バトルラノベおすすめランキングベスト5は、いかがでしょうか? どの作品もきっとあなたを楽しませてくれることでしょう。