おすすめ海外ホラー小説名作17選!身の毛もよだつ恐怖、教えます

更新:2017.1.28 作成:2017.1.28

日本のホラーがその陰湿な怖さから話題になっていますが、海外のホラーも負けてはいません。古典からモダンホラーにいたるまで傑作と呼ばれ、読者を恐怖のどん底に陥れるホラー小説をご紹介します。

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恐怖か妄想か、自分の赤ちゃんに怯える女性『ローズマリーの赤ちゃん』

アイラ・レヴィン原作で、古典ホラーを代表する文学作品です。妊娠女性の不安がテーマの作品であり、得体の知れない不気味な恐怖で、読者に不安を植えつけ、恐怖を煽ります。1968年には映画化されており、そちらも古典ホラーの名作に挙げられるほどです。

ニューヨークのアパートメントに引っ越してきた、売れない役者を夫に持つ、ローズマリー。テレサという同年代の女性と仲良くなりますが、テレサは自殺してしまうのでした。やがて隣に住む老夫婦と交流を始めるローズマリーたちでしたが、ある日、婦人からテレサの形見の首飾りをプレゼントされ、不信感を抱くようになります。そんな中、夫の仕事が軌道に乗ったのを機に子づくりを計画。しかしローズマリーはその夜に気分が悪くなり、気を失ってしまうのでした。運よく懐妊したものの、気を失っている間に悪魔に犯される夢を見た彼女。やがてお腹の子どもが悪魔崇拝の儀式でもって種付けられたという確信を持ち始め……。

著者
アイラ・レヴィン
出版日


本作の最大の特徴は、恐怖が、妄想の中で起こっているのか、現実で起こっているのかわからないという点でしょう。物語の主人公ローズマリーと同様に読者も真相が掴めず、最後までハラハラした気持ちで読み進めてしまうはず。

本書の最大の恐怖は「自分の周り全員がおかしくなっているかもしれない」という孤立した不安感と、「もしかしたらおかしくなっているのは自分なのかも知れない」という絶望的恐怖が織り交ぜになっている点。誰にも助けを求められないローズマリーの孤独を共有することによって、読者も強い不安感を覚えるでしょう。

幾多の恐怖が、あなたを襲う『淑やかな悪夢』

様々な女流作家によって書かれた恐怖を集めた短編ホラー小説集。幽霊を題材にした古典的な恐怖を楽しめる1冊です。

著者
シンシア・アスキス他
出版日
2006-08-30


自分の目の前に度々現れる恐ろしい男に悩まされる女性の恐怖を描いた「追われる女」から始まり、引っ越した先で幽霊騒動に巻きこまれるというオーソドックスなホラー作品「空き地」、精神が崩壊していく女性の恐怖を描いた「黄色い壁紙」など、身の毛もよだつ短編ホラー集です。ただし「名誉の幽霊」に登場するのは、喜劇役者の幽霊。無害な幽霊が出てくる本作は、恐怖で疲れた読者にとって箸休め的作品になることでしょう。

本短編集の中で特におすすめしたい作品は「黄色い壁紙」。自分の精神が崩壊していく様を読み進めていくと、自分の精神が崩壊するのではないかとすら感じられ、恐怖に駆られます。また独特な段落の切り方も、その不安を煽る大きな要因となっているのではないでしょうか。

人間の裏の顔を映し出す戦慄のホラー小説『アメリカン・サイコ』

エリートビジネスマンと猟奇殺人鬼ふたつの顔を持つ男の物語です。2000年に実写映画化され、俳優クリスチャン・ベールの名を世に知らしめました。

マンハッタンのウォールストリートで働くパトリック・ベイトマンは、証券会社に勤めるエリートサラリーマンでした。昼はジムで体を作り上げ、同じようにエリートと呼ばれる友人たちと会食をする華々しい日々。しかしベイトマンには誰にも知られてはいけない秘密があったのです。それは、夜になると、殺人によって異常的性欲を満たしていたというもの。ベイトマンはエリートサラリーマンとしての生活と、サイコ殺人鬼としての生活という、ふたつの生活を続けていくのでした……。

著者
ブレット・イーストン・エリス
出版日


本書は殺人の様子が事細かに描写されているので、人によっては非常にグロテスクに感じるかもしれません。しかしそこが作品最大の魅力になっています。さらに作者は感情や感覚などの深い描写は極力排除し、目に映る素材の情報だけを与える手法を取っています。これにより読者に想像の余地を与え、気味の悪い恐怖が味わえる至極の殺人小説です。

暗い時代を反映した、モラル崩壊の恐怖『ペインティッド・バード』

幽霊も超常現象も登場させずにとてつもない恐怖を与える、イェジー・コシンスキの作品。第2次世界大戦で行われていたホロコーストなどの一方的な異民族虐殺などの闇を描き、やすやすと狂気に陥ってしまう人間のリアルな恐怖を味わえる作品です。

著者
イェジー コシンスキ
出版日
2011-08-05


本書は主人公の少年の過酷な体験を通して、第2次大戦中にある東ヨーロッパの過酷で恐ろしい生活をのぞきみる物語です。その少年が疎開先で両親を亡くし、身寄りを失って東ヨーロッパを旅することから始まります。少年の年は弱冠6歳。ひとりで旅をするどころか、生きることすらもできない年齢です。生きるために、彼は虐待されながらも、酷い大人たちに身を寄せるしかありませんでした。

少年が身を寄せる先で虐待されるのにはわけがありました。それは少年の肌がオリーブ色で、黒い髪と黒い瞳を持つことに由来します。少年のような身体的特徴を持つのはジプシーかユダヤ人に限られ、ナチス支配の強かった当時の情勢において、このふたつの人種は迫害対象にあったからです。その他にも暴力に殺人、強姦など、混乱する東ヨーロッパ世界でモラルの欠如した人間の恐ろしさを本書は克明に描いています。

美しくも恐ろしい殺人鬼たちの恋愛劇『絢爛たる屍』

女流作家ポピー・Z・ブライトによって書かれた猟奇殺人鬼たちの物語です。美しく描写されているだけに、繰り広げられる行為のむなしさをより実感することができ、物寂しげな恐ろしさを感じることのできるホラー小説です。

著者
ポピー・Z. ブライト
出版日


物語の舞台はニューオリンズ。そこで、脱獄した連続殺人鬼と隠れて凄惨な殺人を繰り返していた富豪の青年がいました。そんなふたりの殺人鬼が心に傷を負った美少年と出会うことで、想像だにしなかった地獄の展開が幕を開けます。

本書は、とにかく描写表現が美しいです。ニューオリンズの物悲しい雰囲気や、殺人を繰り返すふたりの情景など、読めばポピーの才能に惚れこんでしまうほど。そんな表現力で殺人の様子を描くものだから、その悪魔のような行為に恐怖せざるをえません。そして本書が純然たる恋愛ものであるということも無視できない事実です。倒錯した人間たちが生み出す悲劇は、この恋愛という感情が元凶となっているのですから。

閉ざされたホテルで家族に襲いかかる恐怖『シャイニング』

1977年にスティーヴン・キングによって発表された本作。題材になった幽霊ホテルだけでなく、人の精神が崩壊していく様を描いた恐怖小説です。1980年にはスタンリー・キューブリック監督によって映画化されました。また本書で子どもだったダニーを主人公にした続編の『ドクタースリープ』が刊行されています。

著者
スティーヴン キング
出版日
2008-08-05


舞台は、コロラド州ロッキー山にあるオーバルックホテル。売れない作家のジャック・トランスが冬季閉鎖するホテルの管理人として住みこみのアルバイトにやってくることで物語は始まります。ジャックは妻のウェンディと5歳になる息子のダニーを一緒に連れてきており、楽しい休暇にもなるはずでした。

しかしホテルに関する古い記録にジャックがのめり込むようになってから事態は急変。「輝き」と呼ばれる不思議な力を持つダニーはホテルの毒気にやられ、放心状態が続くようになります。ホテルに何かあると妻のウェンディが出たがる一方で、ホテルに出現する幽霊に取りつかれたジャックは家族が自分の仕事とキャリアを故意に邪魔しようとしていると、恐ろしい妄想を抱くようになるのでした。

本書には恐ろしい幽霊が多く姿を見せます。湯を張ったバスタブに横たわる女の霊、手をつなぐ双子の幽霊、そして夜な夜な開かれる死者たちによる舞踏会などです。巧みな心理描写と表現力によって、それら幽霊の登場シーンがより恐ろしく感じられます。モダンホラーの帝王と言われる、キングの力量がわかるシーンの連続です。

幽霊だけでなく精神が崩壊していく様子も本書の恐ろしさのひとつです。狂っていく中で凶暴性を獲得し家族に危害を加えようとするジャックの様子だけでなく、だんだんおかしくなる夫の様子を怖がるウェンディの心理描写が相乗効果をなし、家族に襲いかかる恐怖の物語がより深まります。また特別な力を持っているのに幼すぎてその力を持て余し、なんとか家族を助けようする息子ダニーの健気な姿もこの作品の魅力です。

歴史に名を遺す古典ホラー小説の最高傑作『ジキル博士とハイド氏』

ロバート・ルイス・スティーヴンソンによって発表された古典ホラーの代表作で、1886年に出版されました。二重人格の男を扱った本書は当時としてもセンセーショナルでしたが、いまなお語り継がれるほどの恐怖を提供してくれます。

著者
ロバート・ルイス スティーヴンスン
出版日


物語は弁護士のアターソンが自分の体験した奇妙なできごとを友人に話すところから始まります。ある男が建物の角でぶつかった女の子をそのまま踏みつけて行くのを目撃したというのです。アターソンは女の子の両親と一緒にそのことを咎めると、ぶっきらぼうに金銭のやり取りだけで済まそうとしました。しかし問題なのは、そのハイドと名乗る男が使った小切手の名義がジキル博士のものだったいうのです。それからほどなくして、「自分が死んだ暁には遺産のすべてをハイド氏に相続する」というジキル博士の遺言を知ったアッタスンは何かがおかしいと感じて真相解明に乗り出し、恐ろしい事実を知ることになるのでした。

本書は二重人格という狂気に陥った男を題材としています。しかしもこのハイド氏というのが、単にジキル博士のもうひとつの人格というだけでなく、博士が薬飲むことで姿までもが変わってしまうという恐ろしい物語です。怪物に変身してしまう狼男のような要素もあり、物語におどろおどろしい独特な雰囲気を醸し出しています。何も知らない側の人間の立場から恐ろしい事件の全容を解き明かしていくストーリー展開は、読んでいて恐ろしくもあり面白いです。次々に謎が解き明かされることにより、驚きの連続を体験することができるからです。

世界の終わりの果て亡き旅路『ザ・ロード』

荒廃した世界でひたすら南に向かって旅を続ける父子の物語で、2006年に書かれたディストピア小説です。文明も心も荒れ果ててしまった世界で純粋に生きようとする父子の目に映る人間の姿は目を覆いたくなるほど恐ろしい姿をしています。

著者
コーマック・マッカーシー
出版日
2010-05-30


空は黒雲に覆われ、気温が下がり続ける世界。動植物はほとんど死に絶え、文明も荒廃してしまし、栄華を誇っていた人類にさえわずかな時間しか残されていません。そんな終末世界をひたすら南に向かって旅を続ける父子がいました。ふたりは生きるために略奪や食人行為もいとわなくなった人間たちからの襲撃をなんと振り切りながら、一本の道に沿って進んで行くのでした。

本書はどこか物寂しい雰囲気がして、容赦のない略奪者との孤独な戦いが強調されます。しかし本当に恐ろしいのは襲われる危険ではありません。明日も無事でいられるかどうかわからない極限の状況で、ギリギリのところで人間らしさを保っていることが一番怖いと思います。自分たちもいつかは、生き残るために他人の命を踏みにじる恐ろしい存在に堕ちてしまわないかと、怯えなければならないからです。

餅は餅屋に、犯罪者を利用した心理捜査『羊たちの沈黙』

小説史上最も有名な殺人鬼ハンニバル・レクター博士が活躍する話といえば、本作が思い浮かぶのではないでしょうか。トマス・ハリスが創作したハンニバル・レクター博士は1981年に発表された『レッド・ドラゴン』に初登場し、1988年には本書『羊たちの沈黙』で再び登場。このふたつの作品では連続殺人犯逮捕のために警察側から助言を求められるという端役で登場しました。

そして1999年に発表された『ハンニバル』では堂々のメインキャラクターとして警察に追われる犯人側へと転身します。2006年にはレクター博士の幼少期を描いた『ハンニバル・ライジング』も発表されています。

著者
トマス ハリス
出版日


ハンニバル・レクター博士が活躍する小説のすべてが映画化されており、本書の『羊たちの沈黙』でアンソニー・ホプキンスがレクター博士役を務めました。『レッド・ドラゴン』にいたっては、2回も映画化されています。また2013年にはハンニバル・レクター博士役にマッツ・ミケルセンを迎えてドラマ化もされ、人気シリーズに発展しています。

上司に呼び出されて行ったFBI訓練生のクラリスに特命が下ります。それは「世間を騒がせている凶悪殺人鬼に関して、服役中のハンニバル・レクター博士に助力を求めよ」というものでした。しかしレクター博士もまた、自身の患者9人を殺した経歴の持ち主です。レクター博士は殺した女性の皮膚を剥がすという異常な犯罪に対してのヒントを少しずつクラリスに与えていきます。FBIの威信をかけた無謀な作戦に巻きこまれたクラリスは、生徒と捜査官の二足のわらじを履きつつ、孤独な捜査を開始するのでした。

物語の主軸には恐ろしい殺人鬼、バッファロー・ビルが背景にあります。クラリスの必死の捜査の裏側で行わるバッファロー・ビルの犯行は身の毛もよだつ恐ろしいものでした。自宅に空けた大きな穴に女性を監禁、体中にローションを濡らせて言うことを聞かなければ罵声を浴びせる。この猟奇殺人鬼の異常行動は世界を震撼させました。

幽霊屋敷の金字塔!恐ろしい心霊現象の連続『丘の屋敷』

数々のホラー作家に影響を与えたシャーリイ・ジャクスンの作品です。さすがは古典ホラーの傑作と呼ばれているだけあって、1959年にその姿を現してから数十年以上経った今でも読み続けられています。1963年には『たたり』として実写映像化され、そのリメイクが1999年に『ホーンティング』として公開されています。

著者
シャーリイ・ジャクスン
出版日


心霊研究者のモンタギュー博士が霊感の強いと思われる素人たちを集めて、曰く付きのある屋敷を調査するお話です。ポルターガイスト経験者のエレーナ、透視能力をもつセオドラ、屋敷を相続したルーク。4人の目の前に屋敷が歓迎するかのように、超常現象が襲いかかるのでした。

本書は多数の心霊現象を題材にした本格的なホラーです。部屋を満たす異様な霊気、血塗られて部屋、怒りに満ちたラップ現象。原因もわからない得体の知れない恐怖は、心の奥底から抉ってきます。そして主人公は屋敷に感化されるようになり、影響を一番受けるようになります。そして心霊現象の理由が解き明かされることで、本当の恐怖が加速していくエンターテイメント性の高い作品になっています。

ドラキュラの牙まで感じられる『吸血鬼ドラキュラ』

イギリスに住む弁理士ジョナサンが、とある城に招かれるところから物語は始まります。

ジョナサンは徐々に城主の行動に疑問を抱くようになります。夜な夜などこかへ出かけていく城主、異様なまでに光るおぞましい赤い瞳。その城主こそが、吸血鬼ドラキュラだったのです。そしてジョナサンは、命からがら城から逃げ帰ります。けれどそれはまだ始まりに過ぎず、とうとうドラキュラの魔の手は彼の妻にまで忍び寄ってしまうのでした。

そこで立ち上がるのがヘルシングという男と、その仲間達です。この勇気には読者も心打たれるものがあるでしょう。ドラキュラを打ち倒そうとするヘルシングの意志の固さは、彼の言葉にも表れています。

「われわれは奮って往時の十字軍の武士のごとく、日の出にむかって、もっと多くの魂の済度に出かけるのだ。それで死ねば本望だよ」(『吸血鬼ドラキュラ』より引用)

命さえ惜しくないという彼の熱意に、ここまでドラキュラの恐ろしさを見せつけられてきた読者も共感せざるを得ません。

著者
ブラム ストーカー
出版日

このホラー小説には、薄暗くじわじわと心を恐怖に染めていく独特の空気が漂っています。読めば読むほどに、その空気がひしひしと感じられます。繰り広げられている事全てが、まるで自分の事のように思えてしまう、そんな不思議な魅力が読者を物語に引き込みます。

この海外ホラー小説は吸血鬼の持つ恐怖の原点に立ち戻り、間違いなく私達読者を魅了してくれます。 まるでドラキュラの牙が自分のすぐ側まで迫っているかのような恐怖を、ぜひ味わってみてください。

正統派海外ホラー小説の傑作『黒衣の女 ある亡霊の物語』

人里離れた無人の館に、仕事で訪れなければならなくなった主人公のキップス。この物語は、彼がその館で体験した恐怖体験を描いています。

キップスは仕事の一環で、孤立した館に住んでいたドラブロウ夫人の葬儀に参列することになります。葬儀が終わった後は、その館でドラブロウ夫人の遺産を整理するという仕事が残っています。そして葬儀の終わりごろ、彼はある女性に気が付きます。

「ボンネット型の帽子をかぶり、顔の一部を隠しているが、しげしげと見やらずとも、何か怖ろしい消耗性の病気にかかっていることがはっきりわかった」(『黒衣の女 ある亡霊の物語』より)

この女性こそがまさに、タイトルの黒衣の女なのです。この時点で読者は既にこの女性への恐怖心と不信感を隠せません。そしてキップスが館で仕事を始めて間もなく、怪奇現象は始まりました。誰もいないはずの部屋から聞こえる謎の音、全てを引きずり込もうとする沼から聞こえる馬車の音、そして子供の泣き声。それらがキップスの精神をじわじわと追い詰めていきます。

著者
スーザン・ヒル
出版日
2012-10-23

読者は終始、どことなく心にざわざわしたものを感じざるを得ません。このホラー小説の魅力は何といってもスピード感です。たたきつけられるような恐怖の連続が、私達読者を一気に惹きつけてくれます。

これぞまさに正統派海外ホラー小説と言える傑作です。読み終えて、暗闇やふとした影が怖いと感じたら、それはあなたが、この作品から、黒衣の女から解放されていないことの証です。

狂った幸せな世界『ずっとお城で暮らしてる』

主人公であるメリキャット、その姉であるコンスタンス、そして二人の伯父。このホラー小説は、三人を残して他の家族は全員殺された、そんな屋敷で閉じこもるように暮らしている小さな世界の物語です。

資産家であったために村の人々から憎まれていたメリキャット達は、外の世界を憎んでいました。こうして閉じこもるようになったメリキャット達ですが、その平穏をおびやかす従兄、チャールズが現れます。そしてとうとう、彼女達の幸せな世界は崩壊へ向かっていくのです。

著者
シャーリィ ジャクスン
出版日

この作品のホラー要素は、人間の狂気が深まっていく過程にあります。世界には自分と自分の許すものしかいらないと考えるメリキャット。それを面白がるように壊そうとする村人達。

メリキャットは最初から狂っていたのでしょうか。それとも村人達や従兄にじわじわと狂わされていったのでしょうか。それを見極めるためにも、ぜひ読んでいただきたい海外ホラー小説です。

「あたしたち、とっても幸せね」(『ずっとお城で暮らしてる』より)

何を思い、メリキャットはこの言葉を口にしたのか、最後まで読めばきっとその狂気に触れることができるでしょう。

すぐ隣にある地獄『隣の家の少女』

主人公であるデイヴィットという少年が、隣の家に引っ越してきたメグという美少女とその妹、スーザンと出会うところから、この海外ホラー小説は始まります。

隣の家にはルースという女性とその息子達が住んでいます。メグとスーザンはそこに引き取られてきました。そしてある日デイヴィットは、ルースがメグをきつく叱っているところを見てしまいます。しかしそれは、始まりにすぎませんでした。やがて地下室に監禁されてしまうメグ。そこで行われる、どうしたらこんなに酷い事を思いつくのだろう、と疑問すら抱いてしまうほどのありとあらゆる暴行が、メグの全てを奪っていくのです。

しかし本当に恐ろしいのは、もしかしたらルースではないのかもしれません。それに加わっていた何の責任もない、全てをルースのせいにして楽しんでいた子供達の狂気を忘れることはできません。

著者
ジャック ケッチャム
出版日

「わたしにはひどく奇妙に思えたが、子供には大人が持つ権利を与えられていない以上、大人が負う責任も免除されて当然なのだろう。」(『隣の家の少女』より)

デイヴィットはこのように考えましたが、暴行に加わっていた他の子供達がどう考えたかはわかりません。

このホラー小説は、どこまで人間が残酷になれるのかということを追求しています。読んでいるのが痛くなるほどに、目を背けてしまいたくなるくらいの恐怖に、思わず心がすくんでしまいます。ここまで読者の心を重くし、強く揺さぶるホラー小説はないでしょう。

まるで今、自分が普通に暮らしていることが奇跡である、そんな気持ちにさえなることは間違いないでしょう。もしこの地獄が隣の家で繰り広げられていたら、自分ならどうするか、それを考えながら読むとよりいっそう恐怖が止まりません。

愛を知りたかった少女の狂気『キャリー』

これは、学校ではいじめられ、家では狂った母親の教育に耐えなくてはいけない、そんな悲劇的な少女、キャリーについての物語です。あまりにも狂信的な教育をする母親に耐え切れず、キャリーはとうとう、こう言います。

「わたしはただ自分の生活をさせてもらいたいだけよ。わたし……ママの生活なんか嫌いだわ」(『キャリー』より)

この言葉を発するのに、どれだけの勇気が必要だったことでしょうか。キャリーは母親のことも愛したかったのです。しかし悲しいことに二人は、最後まで愛しあうことはできませんでした。

キャリーは母親の制止を振りきって、学校の舞踏会へと出かけます。しかし、そこで起こったある事件のせいで、キャリーの何かが完全に壊れてしまいます。キャリーは念力を使い、舞踏会の会場にいる人々を殺害し、血まみれのまま町へと飛び出します。

著者
スティーヴン キング
出版日

そこからの彼女の狂った行動こそが、この作品をホラーに仕上げています。次々と倒れていく人々、止まらない爆発、そしてもはや止まることができないキャリー。彼女の悲しみは、恐怖となって私達読者の心を撫でていきます。読み進めるうちに、この少女がどこか世界から見放されたような印象を受けることになります。

悲しい恐怖、というのはなかなか味わうことができないものです。どうかその目で確かめて、体中で感じてください。そして誰かに愛されたかったキャリーを、愛してあげてください。

森の奥に住むモンタギューおじさんが語る怖い話『モンタギューおじさんの怖い話』

イギリスの小説家・イラストレーターであるクリス・プリーストリーの作品です。主人公はエドガーという少年。エドガーは森に住んでいるモンタギューおじさんの家をたずね、モンタギューおじさんから、その家にある「いわく付きの品々」にまつわる怖い話を聞かせてもらいます。作品の中の登場人物たちは、みな酷い目にあってしまうなどゾっとするようなお話ばかりで……。

著者
クリス プリーストリー
出版日

おすすめのポイントは、「おじさんが語る怖い話」。この作品は、主人公エドガーが怖い話を聞くという斬新なスタイルです。そのため、読者自身もモンタギューおじさんからお話を読み聞かされているような気分になります。さらに、お話とお話の間でエドガーが怖がっていないと強がってみせたり、モンタギューおじさんがエドガーを怖がらせようとする場面などが見られ、ちょっとほっこりするのも、他のホラー小説とは違って面白い点です。

そして、西洋的な怖さが詰まっている点も魅力です。イギリス出身の著者が書いた小説のため、悪魔や魔女など西洋の子供たちが怖がる要素がたっぷり入っています。日本の読者が読むと少しファンタジー要素を感じ、楽しめるでしょう。

『モンタギューおじさんの怖い話』が気に入ったら、クリス・プリーストリーの怖い話シリーズ『トンネルに消えた女の怖い話』『船乗りサッカレーの怖い話』などもおすすめです。

シュール?ホラー?フランスのホラー小説を集めた風変りな1冊『最初の舞踏会 ホラー短編集3』

岩波少年文庫が送る海外のホラー小説を集めた1冊です。この作品は、ホラー小説の中でもジャパニーズホラーや日本の小説家たちが描いた小説とはちょっと違った作風です。

フランスの詩人で『ペロー童話集』などで知られるシャルル・ペロー著の「青髭」。この作品は、妻が次々と行方不明になっている青い髭を持つ男の新妻になった女性が彼の隠す恐ろしい秘密を見てしまうというものです。

次に、タイトルになっている「最初の舞踏会」では、主人公が“メスのハイエナに自分の身代わりにして舞踏会に行かせる”というかなりシュールなお話。ハイエナの顔を隠すためにとった行動がとってもグロテスクです。

著者
["平岡 敦", "佐竹 美保", "平岡 敦"]
出版日

ホラーといっても、この『最初の舞踏会 ホラー短編集3』には、ファンタジーな要素が多いお話や、残酷なもの、怖いながらもシュールな情景が浮かぶお話、怖いというよりも痛そうなお話など、様々なジャンルが詰め込まれています。共通して言えることは、「フランスのホラー小説」である点です。残酷なお話の中にも気品が感じられ、奇怪でシュールな発想は、フランスらしさを楽しむことができます。

「日本のホラーには飽きちゃったよ!」と思ったら、ファンタスティックで奇妙な雰囲気にあふれるフランスのホラーを読んでみてはいかがでしょうか。その手始めに、まずはこの『最初の舞踏会 ホラー短編集3』がおすすめです。

人間が感じる恐怖は幽霊や超常現象だけではありません。それは同じ人間であったり、自分自身であったりもします。多くの作家たちが様々な手法を用いてホラー作品を表現してきました。彼らの用意した恐怖に自ら飛び込んでみませんか。