文芸

平安時代を舞台にした歴史小説おすすめ5選!

更新:2017.2.5 作成:2017.2.5

平安時代は鎌倉幕府が誕生するまで300年以上続き、天皇・皇族・貴族らを中心とした時代でした。平仮名、片仮名が発明されたために、枕草子や源氏物語など多くの日記や読み物が誕生しています。そんな平安時代が舞台のおすすめ歴史小説をどうぞ。

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中宮定子様への愛に溢れた一冊

枕草子の作者、清少納言の半生を描く『はなとゆめ』。描かれているのは、清少納言が28歳で宮中に仕えるようになってからの話です。

清少納言の一人称で語られていく平安時代の宮中の様子は、華やかでありながら争いも多い世界。中宮定子に認められ、彼女自身も定子に傾倒し、いつしか藤原道長との権力争いに巻き込まれていきます。その中で定子を守り抜くと決め、その心を貫く清少納言は、定子亡き後に枕草子を纏めるのでした。
著者
冲方 丁
出版日
2016-07-23
冲方丁が記すこの作品には、平安時代の宮中のしきたりや人々の様子、この時代に起こった出来事などが細かく表現されています。豪華絢爛な服装、優雅な歌の取り交わしなど雅で華やかな世界の描写は、読者をも風流な空間へと誘ってくれるようです。

物語の主体は、清少納言目線で語られる定子様への愛。まずその愛情の深さに心打たれます。そして避けられない藤原一族の権力争いに突入すると、今度はその壮絶な争いに目が離せなくなるのです。枕草子の現代語訳というわけではないのですが、枕草子がどういうものなのかということも知れ、深く読み込みたいと思うきっかけになることでしょう。

平安が舞台のハチャメチャラブコメディ

続いては、平安時代を舞台に内大臣家のおてんば娘、瑠璃姫が繰り広げる恋愛と冒険の物語、『なんて素敵にジャパネスク』です。初恋の吉野君を忘れられずに結婚適齢期を過ぎてしまった16歳の瑠璃姫は、心配した父親に無理やり結婚させられそうになります。そこを助けてくれたのが幼馴染みの高彬。身分も性格も申し分のない高彬は、ずっと瑠璃姫に想いを寄せていたのでした。

二人の恋愛は順調に進むかと思われましたが、鷹男という男が現れ、瑠璃姫と一緒に宮廷内の問題を解決するために活躍します。そんな鷹男は実は正体を隠した東宮。彼も瑠璃姫のことを好きになり、三角関係となるのです。さて、この恋模様はどうなっていくのでしょうか。
著者
氷室 冴子
出版日
元気いっぱい、明るくておてんばな瑠璃姫が物語を引っ張っていきます。初版は1984年にコバルト文庫から発行された全10巻のシリーズ。当時の中高生に大人気の本でしたが、その面白さは何年たっても色褪せません。平安を舞台に繰り広げられるラブコメディは、年齢を問わず楽しめる物語となっています。高彬派か鷹男派か、はたまた初恋の吉野君派か。女性の間ではそんな話もできそうです。

恋愛要素だけではなく、謎解き冒険の要素があるのも魅力的なポイントです。東宮を亡きものにしようとする陰謀に巻き込まれていくのですが、それを解決するために奮闘し活躍する瑠璃姫にワクワクハラハラしっぱなしです。しかし陰謀といっても暗い話ではなく、笑って読み進めてしまえるのはやはり瑠璃姫の人柄からでしょうか。

平安時代の様子はしっかりと書かれていますが、難しいことはないので古典が苦手な人でも大丈夫。周りの登場人物も個性ある人ばかりで、知らず、平安の世界に入り込んでしまえることでしょう。

勾玉を持つ天女と男装の皇女との恋

児童ファンタジー界で大人気、萩原規子が描く『空色勾玉』三部作の最後にあたるのが『薄紅天女』です。更級日記や蝦夷の伝説を元にして書かれたファンタジー小説で、奈良時代末期が舞台となっています。赤い鳥文学賞授賞作品。

東の武蔵国で叔父の藤太と暮らしていた阿高は、両親を知るため蝦夷の地へと旅立っていきます。そして双子と呼ばれるほど仲の良かった藤太もまた、阿高を追って同じように蝦夷へ向かうのでした。そこで知る真実と、坂上田村麻呂との出会いは二人の人生を変貌させることとなります。後半から登場してくるのは、ヒロインである皇女の苑上。国を良くするために、男装をしてまで勾玉を持つという天女を探し求めます。そして出会った阿高と苑上の無垢な恋愛物語が主体となり話は進んでいくのです。
著者
荻原 規子
出版日
2010-08-06
三部作の最後ですが、単体でも問題なく読める話です。しかし前二作を読んでいることで知識が深まり、さらに読み込める場面もありますので、読んでいて損はありません。文体がきれいで、目の前に情景が浮かぶような表現が多く、物語の世界へあっという間に引き込まれてしまいます。児童書という分類ながら大人が読んでも奥が深い話で勉強になることでしょう。

阿高と苑上の恋は、笑ってしまう部分もあったり、悲しくもあったりと純粋な二人の行動に心洗われるようです。藤太との深い絆や藤太の恋からも目が離せません。そして結末、最後のシーンでは大きな感動が生まれます。何度も読み返したい名作です。

頼朝と義経の確執はここにあり!

幼いころは鞍馬山に預けられていた義経。22歳の時の頼朝との初対面は感動的なものでした。すぐに戦いの才能を表し、英雄となっていきます。しかし、義経の人気ぶりは頼朝との溝を広げていくばかりだったのです。義経は政治には疎く、頼朝とは考え方も価値観も相容れません。『義経』は、そうして結局は非業の死を遂げることになる義経の生涯を描いた作品です。史実の話というよりは、司馬遼太郎らしい魅力的な人物描写が生かされた話で、兄弟の確執が心に迫ります。
著者
司馬 遼太郎
出版日
2004-02-10
司馬遼太郎の義経は、戦さだけは天才、女好き、能天気、政治能力ゼロと散々な書かれ方をしています。「義経は、一種の痴呆であったであろう」(『義経』より引用)というような政治的痴呆という言葉がたびたび登場し、義経をヒーローのように思っている人にとっては、驚きの人物像かもしれません。しかしその無能ぶりも愛すべき人柄として感じられ、実際の義経はこういう人物であったのだろうと納得してしまうのです。

終盤は奥州への逃避行など描かれていない場面も多く、あっけなく感じてしまいます。しかし司馬遼太郎が書きたかったのは、頼朝と義経の確執なのでしょう。その点を深く掘り下げており、頼朝側の気持ちについても良く分かるので、なぜ英雄であった義経が頼朝に殺されるに至ったのかということに疑問を持っている人にはぜひ読んでもらいたい本です。新たな義経像が確立されることでしょう。

安倍晴明、参上。哀しき物の怪よさらば。

平安時代のあやかしの世界を楽しめる作品として『陰陽師』シリーズをご紹介します。このシリーズは、連載開始から30年を超え、現在も刊行中の作品です。作者、夢枕獏自身も倒れるまで書き続けたいと話しており、まだまだ話が続くこととなっています。

舞台は平安時代、陰陽師安倍晴明が主人公で、相棒に貴族で笛の名手の源博雅が登場します。陰陽師というのは呪術を使う仕事となりますが、そういった人の周りには物の怪たちが集まってきやすいのでしょうか。これは身の回りに普通に存在する妖怪たちを、晴明と博雅が退治する伝奇小説です。

しかし、退治するといっても、おどろおどろしい話でも華々しく活躍するわけでもなく、静かに話を聞いていくだけ。なぜ物の怪になってしまったのか、人間にどんな恨みがあるのかを真摯に受け止め、解決へと導いていきます。清明と博雅のほのぼのとした会話が、雰囲気を和ませてくれるのです。
著者
夢枕 獏
出版日
物の怪たちにも心があること、それがこの本の一番の魅力となっています。人間を襲いたくて襲っているわけではない、人間界にとどまりたくてとどまっているわけではない。そんな気持ちが素直に伝わってきて、怖いだけではない愛嬌もある妖怪たちに妙に愛着がわいてしまうのです。

そしてその気持ちを受け止める晴明の懐の大きさにも感銘します。もともと晴明はすべて見えているので、物の怪たちに対して自分からアクションは起こしません。事件を持ち込んでくるのは普通の人、博雅です。博雅の頼みを断れない晴明が事件解決へと立ち上がるという流れが多く、その二人の関係、会話の面白さが心地よい読後感を生み出します。10冊以上あるシリーズですので、平安時代のホームズとワトソンにたっぷりと浸ってみてください。

完全創作の話から史実を基にした小説まで集めてみました。読みやすい話が多いと思いますので、ぜひ手に取って平安の世に思いを巡らせてください。きらびやかで不思議な時代。きっと楽しめるはずです。