チートな強さを持つ主人公が活躍する物語はとても爽快な気分になります。今回はそんなチートな主人公達が縦横無尽に動き回り、物語の中を暴れ回るライトノベルをご紹介します。
「第四真祖」……これは伝説でしかないと言われていた世界最強の吸血鬼の称号。あるとき伝説だったはずの第四真祖・暁古城が日本に出現。これを監視・抹殺するために派遣されたのが政府獅子王機関の攻魔師である「剣巫」見習い・姫柊雪菜でした。
- 著者
- 三雲 岳斗
- 出版日
- 2011-05-10
監視・抹殺される側とする側、相対する立場にある古城と雪菜はさまざまな戦いのなかで第四真祖の存在や失われた過去などの真相に迫っていきます。
主人公の暁古城は伝説の吸血鬼と言われながらもその能力を受け継いだのはほんの3ヶ月前。まだまだ新米だったことにまず驚かされます。しかしその能力は本物で、まさに世界最強の称号にふさわしいもの。
古城の能力は眷獣を覚醒すること。そのためには霊媒と呼ばれる女性の血を吸わなければなりません。血を吸う描写にはラブコメのような雰囲気が漂っているので、吸血鬼を題材としていますがネガティブ要素はあまり見られません。
作品の舞台が日差しの強い南国でありイメージカラーが青であるなど、よくある吸血鬼物語の概念を覆した作品です。戦争や聖戦を「ケンカ」と言ってしまうあたりも固くなりすぎない要因になっています。
そのため読者は人間関係のドロドロや非情なトラウマなどのストレスに悩まされることなく読み進めることができるでしょう。古城が困っている様子をニヤニヤしながら見守る面白さもあります。吸血鬼という設定、体質をどこかコメディータッチに描き、わずかな性的興奮で鼻血が出て周囲に誤解されるなど思わずクスリと笑ってしまう場面も。
ジャンルとしては学園アクションファンタジーの部類に入りますが、ラブコメ要素も含まれています。この両方のジャンルが好きな方にはぜひ読んで欲しい、物語の筋もラブコメも楽しめる一作となっています。
凶悪犯罪が横行した社会で、武力行使する探偵「武偵」が存在する世界のストーリー。優秀な武偵を育成する東京武偵学校に通う遠山キンジは普通の高校生活を求めるが故に学校在籍に悩む日々を送っていました。あるときSランクの少女武偵である神崎・H・アリアと出会ったことで普通とはかけ離れた、戦いのなかに巻き込まれていきます。
- 著者
- 赤松 中学
- 出版日
- 2008-08-20
平凡な高校生のはずのキンジはある条件下で30倍の能力が発動するという人物。その実力を知る機関などからは一目置かれる存在でもあります。武偵に向いた、優れた能力を持ちながら普通の生活を望む一方で本人の意志とは関係なく周囲はそれを許してくれません。
最強武偵のアリアと普段はただの一般人・キンジが巻き起こすアクションラブコメディーとなっています。
元々最強の武偵であるアリアと一定の条件下でのみ優れた能力が発動するキンジ。デコボココンビの二人が凶悪犯に立ち向かうアクションストーリーは爽快!しかし至るところに散りばめられるラブコメ要素も見逃せません。これには特殊能力が発動する条件が関わってきます。
キンジの能力が発動するのは性的興奮したときで作中ではこの特殊能力を「ヒステリアモード(HSS)」と呼んでいます。HSSは子孫を残すという本能が発動の原点であり、性的興奮によって身体能力や思考能力、思考速度が著しく向上するというもの。外見に変化が見られないのに強くなる、まさにチートというにふさわしい能力になっています。
強力過ぎる能力の発動条件はあまりにも動物的なものであり、多感な時期の男子高校生には少々恥ずかしい条件です。さらに発動中はいかなる条件であっても優先すべきは「女性を護ること」で、これによってキンジ自身が危険にさらされることもあります。ハーレム状態であるキンジなので、すこし「ザマアミロ」と思うこともあります。
普段は女性と接することを避けているキンジですが、HSS中は女性に対してキザになり、甘い言葉を連発します。周囲はこの実態を知らずにキンジを「女嫌い」や「たらし」、「根暗」と揶揄しているので「ザマアミロ」と思うこともありますが、そんなところには同情してしまいます。そんな風にキンジに感情移入できるところもこの本の魅力です。
本作はチート主人公だけでなく美少女やラブコメ、バトルアクションなどラノベに求められる要素がふんだんに盛り込まれ、ラノベの王道が好きな方にはおすすめの作品です。
怠惰を好む主人公イクタは、怠けることができる図書館司書の職に就きたいと考えます。そのために昔馴染みで軍部の名家の娘ヤトリとある約束を交わしました。その約束とはヤトリが司書のポストを提供し、イクタが軍の士官試験でヤトリを手伝うというもの。
ヤトリとイクタは無事軍の1次試験を合格し、2次試験場所に向かう船に乗ります。しかし嵐によってその船が沈没し、2人と乗客は敵国に漂流してしまいます。そんな2人を含めた漂流者の中には自国の姫の姿が……。イクタは智謀を巡らし、その窮地を救いますが、自国の姫にその実力を見せてしまいます。しかしそのことが原因でイクタは軍人の道を歩むことになってしまい……。
- 著者
- 宇野朴人
- 出版日
- 2012-06-08
この作品の特徴は魔法と科学兵器の両方が存在しているところです。魔法に戦況を動かすような力はないものの、戦闘と日常生活で重要な存在として描かれています。一方、科学兵器の中には戦況を動かしてしまうものがあります。そのため科学の知識があるイクタは怠けたい性分であるのに、戦いで重宝されてしまいます。
いつも飄々としているイクタですが、実は暗い過去を持っています。その暗い過去がイクタの性格やヤトリとの仲に関係しているのです。そんなイクタの過去と苦悩に胸を痛めます。
何度も自軍を勝ちに導く軍師イクタですが、後にライバル軍師が登場します。2人はお互い顔が見えない場所から軍を指揮し、将棋のように相手の次の手を考えながら戦っていくのです。相手の軍師の実力を信頼し、より優れた戦略を考えていく頭脳戦が見所です!
「そんな『噂』がここに一つ。インターネット上で、まことしやかに囁かれる『 』(くうはく)というゲーマーの噂だ。曰く――二八〇を超えるゲームのオンラインランキングで、不倒の記録を打ちたて。世界ランクの頂点を総ナメにしているプレイヤー名が〝空欄″のゲーマーがいる、と」(『ノーゲーム・ノーライフ』より引用)
嘘か本当かわからないインターネット上でそんな噂が囁かれている天才ゲーマーは、確かに実際に存在していました。しかしその正体は、18才の空と11才の白という義兄妹でした。
しかもふたりは、ゲームは天才的ですがニートでヒキコモリでコミュ障でお互い以外とはうまく話すことすらできない兄妹。毎日薄暗い部屋に籠ってゲームばかりしています。
「とっくに昇った太陽が遮光カーテンから落とす光だけがぼんやり照らす部屋で。二人は言う。『……にぃ、就職……しないの?』『――おまえこそ今日も学校、いかねぇの?』『……』『……』以後、二人の間に会話が交わされることはない」(『ノーゲーム・ノーライフ』より引用)
そんなゲーマー兄妹の元へ、ある日突然「生まれてくる世界を間違えたと感じたことはないか」という内容のメールが届きます。不審なメールであることは間違いありませんでしたが、彼らにとって現実の世界は「クソゲー」であり、メールの内容に共感を覚えます。
そのことを知ったメールの送り主は、ふたりを異世界へと呼び寄せました。召喚した世界、そこはあらゆることがゲームで決定付けられるという「盤上の世界(ディスボード)」という世界でした。
「盤上の世界(ディスボード)」において、現実では社会に馴染めなかった空と白は最強の存在になります。しかし、このふたりは「2人」でいないと力を発揮できないという弱点があります。その弱点が、物語にハラハラ感を与え、さらに面白いものへとしてくれています。
重要なモチーフであるゲームの描写も、駆け引きや策略がうまく描かれており、つい先が気になってどんどん読み進めてしまいます。異世界召喚ものという設定はメジャーなぶん、読み慣れている人はある程度ストーリーの先がわかってしまう部分もあるかもしれませんが、読み進める度に用意されたサプライズがあるので最後まで楽しんで読める作品です。
凰沢暁月(おうさわあかつき)は16歳の高校生で、元はぐれ勇者です。元というのは、暁月は5年前に異世界アレイザードへ召喚され、数々の困難を乗り越えた後に魔王を倒した「真の勇者」だったからです。
そして今、彼は現実の世界へ戻ってきます。しかも魔王から託された魔王の娘・ミュウと一緒に帰ってきたのです。
- 著者
- 上栖 綴人
- 出版日
- 2010-05-01
現実世界には、異世界から戻ってきた若者を保護するという「BABEL」という国際教育機関があります。暁月とミュウはその日本支部へと入学することになります。もちろんミュウが魔王の娘ということは秘密なので、現実世界では暁月の妹の凰沢美兎と名乗ることになりました。
物語の冒頭でアレイザードにいた頃の暁月の話が勢いよく描かれていますが、この作品のメインはあくまでもその後、つまり異世界に召喚された勇者の後日譚なのです。
「――そして、これが新たな物語の始まり。凰沢暁月。一六歳。高校一年生。職業・元はぐれ勇者。(中略)そんなこんなで、エンディングから一転、そのまま二周目に突入して。帰還した現実世界で、強くてニューゲーム、スタート」(『はぐれ勇者の鬼畜美学』より引用)
異世界召喚ものでありながら、異世界から帰ってきたところから物語が始まるというアイディアが新しく、まず目を引きます。そのため、暁月は異世界で強くなった後なので、最初からとにかく強い設定になっており、そして彼のキャラクターの特筆すべきはエロいこと。
女性が泣いているのは許せないという考えの持ち主であり、泣き止ませるためにはセクハラまがいのことも平気でやります。さらに物事を深く考え過ぎずに力で敵を倒していく様は、いっそ清々しく魅力的。そんな有無を言わさない力があるのが暁月なのです。
学園ファンタジーでもあるので設定自体はそれほど複雑なものではなく、またストーリーやキャラクターもしっかりしているので、普段あまりライトノベルを読まない人もさくさく読み進めることができる作品です。
主人公の少女・ユナは15才。株を大当たりさせて数十億も稼いだ後は、学校にも通わずひたすら家に引きこもってゲームばかりしているゲーマー少女です。
そんなユナはある日、ゲームのアップデートキャンペーンで、「クマセット」という装備を手に入れます。着ぐるみみたいな装備を見て、最初は装着するのをためらったユナ。しかしアンケートに答えた途端、クマセットの装備を一式装着させられた状態で見知らぬ森の中に立たされていました。
- 著者
- くまなの
- 出版日
- 2015-05-29
最初はゲームの世界だと思ったユナでしたが、そこへ「神様」からメールが届きます。
「アンケートの結果、君は当選しました。(中略)君がいる場所はゲームの世界ではありません。わたしが管理する異世界です」(『くまクマ熊ベアー』より引用)
異世界にクマセットを装備したユナが入り込み、チートな能力で敵をなぎ倒し困っている人達を助けるというお話です。彼女がゲットした装備の効果が実にチートです。
「アイテム名:クマセット 右手:黒クマの手袋(譲渡不可) 左手:白クマの手袋(譲渡不可) 右足:黒クマの靴(譲渡不可) 左足:白クマの靴(譲渡不可) 服:黒白クマの服(譲渡不可)」(『くまクマ熊ベアー』より引用)
この装備いずれも使い手のレベルによって効果がアップするという装備なので、ゲーマーのユナにとってこれほど最強な装備はありません。
とはいえ、このチートな能力を手に入れたユナが魔王のようなボスを倒しにいくというようなストーリーになるのかというとそうではなく、困っている人を助けるという何となくほのぼのとした日常系に近いストーリーです。チートな主人公なのにのんびりとした雰囲気を楽しみながら読むことができる新鮮な作品です。
超能力が科学として存在する世界で、主人公の上条当麻は学生寮で一人暮らしをしています。彼は右手に「幻想殺し(イマジンブレイカー)」という力を生まれつき持った人物で、いつも面倒くさそうな雰囲気を漂わせたキャラクター。
ある晴れた日に布団を干そうとした当麻がベランダに出ると、そこには既に白い布団が干してありました。しかしそれは布団ではなく、白い服を着た少女だったのです。
- 著者
- 鎌池 和馬
- 出版日
- 2004-04-10
「謎だ。しかも意味不明だ。女の子は、なんか鉄棒の上でぐったりバテてるみたいに、腰の辺りにベランダの手すりを押し付け、体を折り曲げて両手両足をだらりと真下に下げている」(『とある魔術の禁書目録』より引用)
純白のシスター服を着た少女は、自分のことを「禁書目録(インデックス)」と名乗り、科学の世界とは違う魔術の世界から逃げてきたのだと言います。最初は少女の言うことを信じられずにいた当麻でしたが、2人の前にいきなり本物の「魔術師」が現れ、当麻は今までとは違う世界へと関わっていくことになるのです。
主人公の当麻を始め、空から降ってきたシスターのインデックス、ヒロインの1人である御坂美琴や、名前の分からない学園都市NO.1の超能力者である一方通行(アクセラレータ)など、物語には魅力的なキャラクターがたくさん出てきます。
また、学園異能ものでありバトルものであり、またハーレム要素や中二要素など、ライトノベルの魅力が全て詰め込まれたようなストーリーは、ライトノベル好きの人にも、ライトノベル初心者の人にも楽しんでもらえるでしょう。
基本的には当麻がバトルを繰り広げて困難に打ち勝っていく展開になるのですが、その一方で、先の読めないストーリー展開は早く次のページをめくりたくなります。読んでいて熱くなれるライトノベルです。
魔法というものが体系化され、国力として一般的に見なされるようになった架空の近未来。国立魔法大学付属第一高校、通称・魔法科学校は成績優秀な生徒を集めた一科生とその補欠、ニ科生で構成された高校です。あるとき魔法科高校に一組の兄妹が入学してきます。それが主人公・司波達也とヒロイン・司波深雪。
- 著者
- ["佐島 勤", "石田 可奈"]
- 出版日
兄の達也は欠陥を抱えるニ科生の劣等生(ウィード)、そして妹の深雪は一科生で完全無欠の優等生(ブルーム)でした。この二人が入学してから平穏だった学校は一転、波乱の日々が巻き起こります。
血の繋がった兄妹が織りなす本作は「魔法」と名付けていながらもSF要素の強い作品です。作中で使用されている魔法は超能力のようなものなのでファンタジーだけでなくSF好きにも受け入れられるストーリーになっています。
達也はクールな性格なのに重度のシスコン、深雪は才色兼備で完全無欠だが深刻なブラコン。お互いがお互いを思いやっている様は美しい兄妹愛のようですが、行き過ぎたシスコン・ブラコンはありえないほどの嫉妬で埋め尽くされています。
そのあたりにラブコメか、と思うような展開もありますが、やり過ぎ感あふれるシスコン・ブラコンのおかげでどこかコメディータッチになっているもの特徴的。
劣等生である達也ですがそれは魔法実技のみで、能力的にはかなり優秀な人物でもあります。クールでイケメン、優秀なのに重度のシスコンというギャップに萌え要素があり、優等生である深雪も完全無欠でありながら達也のこととなると周りが見えなくなる様は恋する少女のようで親近感が湧きます。
王道ラブコメではなく、行き過ぎた兄妹愛は後半でまさかの展開になり、読者を驚かせてくれます。ファンタジーやSFなどが好みの方におすすめ。もちろん魔法を使用した競技大会など学園ものの要素も楽しめる作品です。
「これはゲームであっても遊びではない」。2022年、仮想空間への接続機器「ナーヴギア」が開発されました。これによって完全なるバーチャルリアリティが実現。主人公・キリトはナーヴギアを使用したVRMMORPG「ソードアート・オンライン」、通称「SAO」をプレイします。
- 著者
- ["川原 礫", "abec"]
- 出版日
ゲームの世界に入り込み悪友であるクラインとゲームを満喫していると、キリトはログアウトできないことに気付いてしまいます。混乱する中で二人はゲーム開始地点である広場に転送され、驚愕の事実を知らされました。
広間に集まったのは1万人ほどのプレイヤー。そしてゲームマスターからこの「SAO」がデスゲームであることを告げられます。ゲームからのログアウト方法は「SAO」の舞台、浮遊城アインクラッド最上部・第100層のボスを倒してゲームクリアすることでした。
ファンタジーの世界などではなく、登場人物が実際にゲームの世界を体感するというストーリーになっています。ゲームの世界をリアルで体感する、ゲーム好きにとってはワクワクせずにはいられない物語です。主人公のキリトは「黒の剣士」という二つ名を持ち、さまざまなプレーヤーと力を合わせながら戦い続けゲーム攻略に挑みます。
ネットゲームRPGをプレイしたことがある方は本作を読むことでキリトの立場に立ち、実際にネトゲをプレイしているかのような感覚を体験することができますが、ネトゲをプレイしたことがない方でも楽しむことができるような構成になっています。ネトゲを知っているのと知らないのでは内容の捉え方に違いが出てくるかもしれない、面白い作品です。
ネトゲをまったく知らない、ゲームに興味のない方にとってはゲーム知識のいらない視点もあるので理解しやすく、じゅうぶんに楽しめる作品となっています。主要キャラの魅力だけでなく敵キャラの存在感もはっきりし、大規模なネットワークに取り込まれた仮想空間を舞台とするサイバーパンクとして読み応えがあるものではないでしょうか。
また、描写については戦闘や激昂、会話などの心情描写も巧みで読めば読むほどに引き込まれてしまいます。仮想ゲーム世界のなかでさまざまなキャラの動きや心情がうまく絡み合い、ストーリーの進み方や展開も見どころの一つとして挙げられます。
いかがでしたか? 強い主人公が活躍する物語には読み終わった時の爽快感があります。ぜひ自分の好きな強いキャラクターを探してみてください。