現代ファンタジー小説おすすめ8選!冒険だけじゃない物語

更新:2017.2.8

ファンタジーと聞いて何を思い浮かべるでしょう。剣と魔法の世界だったり、妖精と悪魔の世界だったり、現実にはあり得ない夢物語だと思っていませんか。ファンタジーはもっと身近にも存在するんですよ。そんな現代のファンタジーをご紹介します。

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人の幸せとは何かを考えさせられるファンタジー『ブレイブ・ストーリー』

主人公の亘(わたる)は、RPGゲーム好きな小学校5年生。彼の住む町には、幽霊が出るという噂のビルがありました。ある日、亘はその幽霊ビルで要御扉(かなめのみとびら)の存在を知り、そこを抜けると現実世界とは違う世界、幻界(ヴィジョン)が広がっているのを目の当たりにします。

数日後、幽霊ビルで上級生に絡まれている転校生の美鶴(みつる)を助けようとした亘は、魔術を使って上級生をこらしめる場面に遭遇します。美鶴はその後姿を消してしまいますが、現実にあり得ない光景を見てしまった亘は、そのことは頭から離れなくなります。

ある日、突然の離婚宣言を受けた亘の母親が、ショックのあまり亘と共にガス自殺を図ります。それを知らず眠っていた亘は、美鶴の声で目を覚ますのです。「運命を変えたかったら、幻界へ行け」(『ブレイブ・ストーリー』より引用)美鶴の誘いに応え、亘は幽霊ビルの要御扉を抜け、幻界へ降り立ちます。家族の幸せを取り戻すため、願いを叶えてくれる運命の女神を探す旅に出るのです。

著者
宮部 みゆき
出版日
2006-05-23

ファンタジー小説なのに、ファンタジー感が薄いと思っていませんか?本格的なファンタジー世界はこのあとに待ち構えているのです。幻界をたびすることで亘は、 友情・愛情・自分の信じられるもの・信じられないものなど、 自分の様々な感情に目覚めてきます。そして、これらに目覚めることにより、自分が大人の階段を上っている自覚が芽生えてくるのです。

自分が守るべきものが分かった亘は、今まで以上に強くなることができるのです。 そういった感情に行き着くためにも、物語の半分近くを占める現実世界での大いなる前振りが、物語の最後に待ち受ける亘の決断を、深いものにしてくれているのです。

中国風の異世界で巻き起こるファンタジー小説シリーズ『十二国記』

現実世界と、それとは異なる「十二国」が舞台となっています。その名の通り十二個の国があり、中国の書物「山南経」に出てくる神仙や妖怪が存在する世界です。

それぞれの国には霊獣の麒麟が存在し、天の啓示によって王を選びます。王は永遠の命を授かり、麒麟の補佐のもと国を治めます。王の周囲を取り巻く官吏や、彼らが治める市井の民など、様々な立場の人間が過酷な運命を享受しながらも、懸命に生きる姿を描いています。

2017年1月現在10作以上が発表されていますが、今尚続く未完の大作ファンタジーです。それぞれの作品によって登場人物も出てくる国も違うのですが、作品ごとにお話が完結しているので、一作目から読まないとストーリーが分からなくなる、なんてことはありません。

同じ世界観の中で、一作ごとに国や主人公が変わっています。作品によっては、他作の登場人物が脇に出ていたり、時には同じ主人公で展開される場合もあります。

著者
小野 不由美
出版日
2012-06-27

初作の『月の影 影の海』の主人公である陽子は、四作目の『風の万里 黎明の空』でも主人公になっていて、もちろん裏でそのストーリーは繋がっているので、そこに陽子の成長の過程を伺うことができるのです。

二作目『風の海 迷宮の岸』の主人公となる泰麒も、この作品以降、様々な場面で顔を出すので、その作品ごとに違った泰麒を楽しむことができます。

漫画化・ゲーム化・アニメ化もされている人気作。十作もあると思うとハードルが上がりますが、とりあえずひとつ手に取ってみて、読んでみてください。

自分自身を見つめ直すことのできるファンタジー『カラフル』

死んでしまった主人公の「ぼく」は、抽選で当たったと天使に言われて人間界に戻ることを許されます。それは「小林真」という、同じ中学三年生の男の子として。それは前世の過ちを償うために、誰かの体を借りて行う「ホームステイの修行」でした。

平凡で幸せに見えた真の家族は、利己的な父、不倫を続けていた母、意地の悪い兄と分かり絶望します。学校ではいじめられっこで、友だちもいなかった真は、絵を描くことだけに没頭していました。描きかけの真の絵を完成させるために美術室に通う「ぼく」。徐々に周囲にも慣れ、始めての友だちも見つけます。

そんな中、釣りに誘われた父と会話を交わしたことにより、「ぼく」は家族に対して大変な思い違いをしていたことに気付かされます。

著者
森 絵都
出版日
2007-09-04

「人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。 この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷っている。」(『カラフル』より引用) 

陰鬱で色の無いような人生を送っていた真にホームステイしたからこそ、こんな風に思えたのでしょうし、これは誰もが生きていて、何となく頭によぎることだと思います。自分だけじゃなかったと、ちょっとした安堵すら感じます。

この作品には、魔法も、妖怪も出てきません。死んだ人間が別の体を与えられて生活を送るという、現実世界のファンタジー。だからこそ、人間味あふれた、最後にはホッコリできるストーリーに、読者自身が自分を投影しやすいお話になっているんだと思います。

人間臭いファンタジー小説『光の帝国―常野物語』

様々な能力を身につけ、温厚で礼節を重んじる常野一族。権力を持たず、世間の人々の中に埋もれ、ひっそりと暮らしている優しい人々。そんな彼らの、優しさと悲しみに満ちあふれた連作短編集です。

遠くが見えたり、聞こえたり、早い移動ができたり、未来のことが分かったり、と能力の話をすると一見エスパーがたくさん登場するSF作品のようにも見えますが、本作に登場するのはそんなスーパーマン的な人間ではなく、もっと普通のどこにでも居そうな人たちです。

著者
恩田 陸
出版日

ただ、扱っているテーマが重めのものが多く、読んだ後に妙に納得してしまう作品が少なくありません。世界の破滅を扱った『草取り』での「あのね、大変なことというのは目の前で、当たり前に起こっているものなんだよ。さあ大変なんて形では訪れてくれないよ。目の前で少しずつ少しずつあたしたちをごまかしながら切り崩してくんだよ。」(『草取り』より引用)という台詞は、普段の何気ない生活の中にも、おおいに言える真理だったりして、
日常と非日常がうまく交錯できていると感心させられます。 

それぞれ別の話ではあるのですが、登場人物が同じだったり、同じ人物でも別視点で切り取られていたりと、すべての物語は根底で繋がっているように見えます。

短編にしておくのは勿体ないくらい、どの話も面白く、続きが読みたくなるような広がりを感じさせてくれます。

ハンカチのご用意を忘れずに……。『消えてなくなっても』

雑誌の編集を生業とする青年「あおの」が取材で訪れたのは、どんな難病も治ると言われているキシダ治療院。ストレス性の病を抱えていた「あおの」は自らの療養も兼ねて、気さくな医師と診療所に居候している女性「つきの」と共同生活を送ることになります。

現代的な導入ですが、スピリチュアルファンタジーと銘打たれた本作。精神の病を持つ「あおの」の前に現れる河童や、邪気を払うことで病を治す医師など現代の民話のような要素が多く登場します。

著者
椰月 美智子
出版日
2014-03-07

自分の気持ちを押し殺してきた「あおの」と、心のままに振る舞って生きてきた「つきの」。そんな二人の対比が非常に印象的です。淡々と静かに流れていく日々の中で心を開いていく「あおの」の姿には心を揺さぶられる読者も多いのではないでしょうか。

また衝撃的なラストの展開は是非ご自分の手でページを捲り、読者それぞれの感性で受け取っていただきたい、そう思える作品です。お手元にハンカチをご用意してお読みください。

現実ではありえない設定なのになぜかリアル『オコノギくんは人魚ですので』

長編シリーズの第1巻。題名の通り、人魚の小此木くんが登場します。他にも「うじゃ」という謎の生き物が出てくるなど、現実味はありませんがなぜかさらりと読めてしまう、ファンタジーな世界観を存分に楽しめる作品です。

著者
柴村 仁
出版日
2012-12-25

 

主人公は海辺に佇む城兼高校に通う一年生、荻山奈津。「ナツ」と呼ばれる彼女はある日、席替えで人魚の小此木くんと隣の席になります。

ナツは写真部員ですが、かつてはれっきとした水泳選手でした。なぜ彼女が水泳を諦めなければならなくなったのかが、静かな展開と共に明らかになっていきます。いつも自由奔放に見える彼女が密かに抱えている闇も同時に見えてきます。そんな中読者の心の救いになるのが、ファンタジー要素たっぷりの人物(?)描写。人魚の小此木くんを筆頭に、餅のような変な生き物の「うじゃ」、変人で生物学マニアの飯塚エリオット諒など、強烈かつ微笑ましいキャラクターが脇を固めます。

また城兼町の海岸には人よりも大きいサイズのアザラシの群がいたりと変わった設定が。柴村ワールドにファンタジー要素をちょっとスパイシーに効かせた、展開を楽しめる作品です。

 

古本屋ファンタジー『緑金書房午睡譚』

高校に通わなくなって数か月。大学教授をしている父がイギリスに1年間行くことになったため、16歳の木守比奈子は、月島にある古本屋「緑金書房」に居候をすることになります。母の親戚だという金子緑朗が営むその古本屋は、どこか秘密めいていて、ひとりになると不思議な気配や視線を感じるようになるのでした。

どこで寝ているのかよくわからない緑朗や、同居しているはずなのに姿を見せない大叔母など、8つの秘密を前に、比奈子に事件が襲い掛かります。

著者
篠田 真由美
出版日
2012-06-07

「あちら」と「こちら」の世界を行き来するひとたち。「あちら」と「こちら」の世界をつなぐ古本屋「緑金書房」。ファンタジーな世界観と古本屋独特のノスタルジックな雰囲気が見事にマッチしています。

古本屋と本が好きな方に、ぜひおすすめしたいファンタジー作品です。あなたは「あちら」の世界に行けるでしょうか。

サスペンスのようなファンタジー『死者の書』

大好きな児童作家マーシャル・フランスの自伝を書きたくて、彼が暮らし愛したミズーリ州ゲイレンに、恋人サクソニーと共にやってきた元高校教師のトーマス。

気難しくて人嫌いだという噂のフランスの娘アンナから、自伝を書く許しをもらって、トーマスは街で取材を始めます。そこで彼は妙な違和感を覚えます。皆やけに親密で、何かがおかしいのです。

ある朝、少年がトラックに跳ねられる現場を目撃してしまいます。事故の後、町の人はトーマスに不思議な事を聞いてきました。「あの男の子、はねられる前は笑ってました?」(『死者の書』より引用)

著者
ジョナサン・キャロル
出版日

作者のジョナサン・キャロルの名を一気に知らしめた長編デビュー作です。

今まで紹介してきたファンタジー作品とは一線を画すダーク・ファンタジー。物語の前半は、どこがファンタジーになっているのかが理解できないまま読み進めるのだが、後半、それに気付いてからは、ページをめくる手が止まらなくなります。

第3部に入ってからは、物語の様相がガラッと変わります。第2部の後半からその予兆はあるのですが、様々なことが判明し、読者の頭の中でそれらが繋がり、一気に読み進んでしまうのです。物語の中で物語を書く話というのも、この作品の大きな特徴だと言えるでしょう。

「ファンタジー」とはどんなものか、お分かりいただけたでしょうか。ファンタジーに苦手意識をもつ方も、こんなに色んなファンタジーがあるのですから、自分に合ったファンタジー作品が、きっと見つかるはずです。ぜひ手にとってみてください。

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