『ヤング・アダルト』というジャンルをご存知ですか? Young Adult(YA)とは、中高生や大学生などのティーンを指す「若い大人」のこと。彼らを対象に書かれた、児童書と一般書の間に位置するジャンルに当たります。 青春もの、ミステリー、SFとバラエティ豊かなYA小説ですが、やはり切り離せないのが学校生活。そんな学校生活に欠かせない仲間や友だちとの関係を描いた作品をピックアップ! クラスや幼なじみ・近所の友だち、部活(風変わりな部、運動部、珍しい文化部)の仲間を描いた大人も楽しめる5冊です。
- 著者
- 森 絵都
- 出版日
- 2014-05-14
『クラスメイツ』はタイトルのとおり、クラス24名全員の視点で描かれる連作短編形式の作品です。上下巻にわたる長編ですが、全24章からなっているので少しずつ読み進められ、気がつけばあっという間に読了してしまいます。
上巻〈前期〉では、色んな境遇で様々な性格の、でもどこにでもいそうな生徒たちが順番に出てくるだけのお話かなと思うのですが、下巻〈後期〉に入るとところがどっこい、細かく散りばめられた伏線が見事なまでに回収されていきます。
そして秀逸なのが、この上下巻で1年A組の1年間を丸々描いている点。グループ同士うまくいかなくなったり事件も起きたりするけど、最後には「いいクラスだったな」「クラス替えで寂しいな」、とこっちまで寂しくなってしまいます。クラス替えとか席替えとかこういう雰囲気だったよね、と懐かしくなる1冊でもあります。
- 著者
- 石川 宏千花
- 出版日
- 2011-01-21
容姿も頭もいい、勝ち組男子が主人公のお話です。
主人公・亮太の親友・公平がちょっと電波な方向へいってしまうのですが、それを除けば大きな事件が起きるでもなく、あまり起伏がある物語構成ではありません。中学生男子のなんでもない日常のお話です。
主人公がスクールカースト上位に位置するようなキャラで、そういった意味ではちょっと珍しい作品です。最初からイケイケで、このリア充が! と思わなくもないです。が、ティーンズらしく悩んだり成長したりしていき、最後にはうるっとさせられる展開も。ネタバレになるので何が起こるかは書けませんが、友情や先輩への憧れなどを丁寧に描いた作品です。
男の子たちの青春群像劇なのですが、もしかしたら女の子の方が読んでて面白いかもしれません。
- 著者
- 笹生 陽子
- 出版日
- 2010-11-02
「ぼっち部」という、ひとりぼっちばかりが集まった部活のお話です。そんなあらすじを紹介すると、「どうせぼっちが寄り集まって、最後は友だちがたくさんできるんだろ?」と思うかも知れませんが、むしろ一向にぼっちたちの距離感が縮まらないまま物語は進みます。
友だちを作り損ねたぼっちの女子高生のチナツは、たまたま通りかかった華道家元のマスノくんに連れられ、部員が1人しかいない部の部長や、ネット越しの参加者などが集まる「ぼっち部」に入ることになります。
「一致団結」「協調性」といった単語とは縁のない超個人主義のぼっちたちは、本当に好き勝手。そんな中、マスノくんを中心に日常の謎を解いていくことになります。
周囲に合わせるのもいいけど、好きに生きるのだってアリだよねと思うんですよ。ぼっちだってなんとかやってける! とある意味、心強くなるお話でもあります。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2010-02-10
2010年には映画化もされ、コミカライズもされている剣道女子の青春小説。
宮本武蔵マニアで勝ち負けがすべての時代遅れ女子・磯山香織と、楽しく剣道をやりたいお気楽不動心・西荻早苗の2人の女子高生が主人公。価値観が正反対の2人のやり取りが非常に面白いのはもちろん、剣道や武士道といった和の心についても考えさせられます。
この作品は、主人公たちが高校1年生の16歳である『武士道シックスティーン』を皮切りに、高校2年生の『武士道セブンティーン』、高校3年生の『武士道エイティーン』、高校卒業後の『武士道ジェネレーション』と続きます。
年齢を重ねるにつれ、考え方が変わり、新しいものを受け入れていく主人公たちの成長は読んでいて清々しく、また自身を振り返させられる部分も多分にあります。特に、時代錯誤も甚だしく手のつけられない性格だった香織が、精神的に成長したりしなかったりする部分を見るのはとっても微笑ましくて目が離せません。そんな香織が変わっていくのも、友だち、先生、兄弟、両親あってこそ。読んでいて、自分に影響を与えてくれた人の顔を思い出さずにはいられなくなります。
- 著者
- 伊豆 平成
- 出版日
- 2013-10-11
杉基イクラのマンガ『ナナマルサンバツ』のノベライズ作品です。私自身がマンガの方ではなくノベライズからこの作品に入ったので、小説としてピックアップしました(マンガの方ももちろんオススメ!)。
ひかえめな性格の文学少年・越山は、ひょんなことからクイズ研究会に入部。次第にクイズの面白さにのめり込み、やがて同じ目標を持った仲間たちと切磋琢磨する日々へ、という青春部活ものの王道です。
この作品の面白いところは、あまりなじみのない「クイズ研究会」が舞台であること。クイズって部活になるの? なんて最初は思っていましたが、汗と涙が飛び散る体育会系でびっくり。
クイズそのものに関する知識やうんちくももちろん満載。タイトルは、早押しのクイズ形式である「7○3×」に由来しています。読んだら早押しボタンを叩きたくなること請け合いです!
学生時代にこんな熱い青春を送りたかった、友だちが欲しかった、なんてついつい思ってしまうこの5冊。そんな青春時代を送った人もそうでなかった人も、もう一度あの頃の気持ちに戻ってみませんか?