少女漫画家のひとり、末次由紀は恋愛ものが多い「少女漫画」のイメージを覆すような、熱い少女漫画を数多く生み出す作家。『ちはやふる』だけではない!末次由紀のおすすめ作品をご紹介します。
少女漫画雑誌で活躍する、日本の女性漫画家。高校1年のときに講談社のなかよし新人まんが賞佳作を受賞し、漫画家デビューを果たします。
その後、読切が雑誌「別冊フレンドDX Juliet」に掲載され、それ以降は順調に「別冊フレンド」などで作品を発表し初連載も掲載されていました。しかし『エデンの花』にて盗用があったことが発覚。2005年以降、2年間は活動を停止していました。
2年後に雑誌「BE・LOVE」にて読切作品『ハルコイ』と謝罪が掲載され復帰。
その後に描かれた、競技かるたを題材にした『ちはやふる』が代表作となりました。本作は第二回マンガ大賞を受賞し、このマンガがすごい!オンナ編でも第1位を獲得、講談社漫画賞少女部門を受賞するなど数々の賞を総なめにし、実写映画化、アニメ化もされました。さらに2018年にはこの作品で作者初となる原画展が開かれるなど、その勢いは止まりません。
作品の盗用は全国ニュースになるなど大きな騒動となりましたが、本人がその事実を認め、誠意ある謝罪とその実力で漫画家として復帰しました。その実力は、ぜひ実際に作品で確認してください。
まずは映画化だけでなくアニメ化もされ、さまざまな賞を受賞した競技かるたを題材に描かれた少女漫画です。活動休止後に連載されたこの作品は、末次由紀の代表作となりました。
主人公は、「クイーン」を目指す綾瀬千早。千早が小学生のときの夢は、姉の千歳が日本一のモデルになること。しかしある日、転校してきたクラスメイト・綿谷新にこう指摘されます。
「自分のことでないと夢にしたらあかん」
(『ちはやふる』より引用)
その言葉をきっかけに自分自身の夢を探しだしました。そして競技かるたの魅力に気づいた千早は、幼馴染の真島太一も引き込んで競技かるたの日本一になるべく邁進していきます。月日は経ち、千早は高校に進学。しかし、そこには競技かるた部がありませんでした。
千早はなんとか同志となる仲間を見つけ、かるた部を設立します。クイーンになるという自身の夢を叶えるため、彼女は日々突き進んでいくのです。
- 著者
- 末次 由紀
- 出版日
- 2008-05-13
友情、出会い、別れ……。それらを情熱的に描いた、この作品。その熱気は少女漫画の枠を超え、まるで少年漫画のようだと評されるほどです。
末次由紀の漫画に対する熱意もあってか、この『ちはやふる』は競技かるた会にも影響を及ぼすほどの話題作となりました。マニアックなテーマですが、端々に共感できる箇所があり、読者から熱い支持を受けています。
熱血スポーツ漫画ともいわれるこの作品。少女漫画だからと避けずに、いろいろな世代の方に読んでもらいたい漫画です。
タイトルは、とあるチョコレート店のお店の名前です。一郎と二郎というイケメン兄弟が経営するこの店のチョコレートには、「食べると恋が叶う」というジンクスがあります。そんなふたりが作るチョコレートを求めて、お店には連日いろいろなお客さんがやってきます。
- 著者
- 末次 由紀
- 出版日
- 2009-12-11
主人公はどちらかというとお客さんたち。クーベルチュールのチョコレートが、悩みや想いを包み込んでくれる、心温まる短編集です。基本的に1話完結なので読みやすいですよ。
おすすめの作品は「夏味」。ふたりの経営するクーベルチュールに雇われた森田さんは、割烹着の似合う、いわゆるおばちゃんです。元駄菓子屋経営をしていた森田さんは腕を買われて働いているのですが、裏方に徹しています。
一郎と二郎、ルックスがいいふたりより見劣りがするから、と引け目を感じているからです。家に帰ってもしんとした部屋でひとりきり。駄菓子屋を経営していたときの、子供たちの声を思い出して過ごしています。
ある日接客担当の二郎が風邪をひいてしまい、急遽表に出ることになった森田さん。兄弟目当てで来ていた女性客に戸惑い、気後れしていた森田さんに声をかけたのは……。
一郎と二郎の生み出すチョコレートから繋がっていく、人々の関係。イケメン兄弟となれば主人公とされがちですが、末次由紀の手にかかれば店に来たお客さんたちをつなぐ架け橋のような存在になります。彼らの作るチョコレートが、迷っている人たちの背中をそっと押してくれるよう。優しい気持ちになれる作品です。
本作は「指輪の片想い」、「美彩食堂」、「ハルコイ」、「ななつの約束」の4編が収録された、末次由紀の短編集です。表題作の「ハルコイ」は、引っ込み思案な23歳の保育園の先生・のんちゃんと、着物教室で知り合った50代のご婦人・綾子さんのお話です。
のんちゃんから「好きな人ができた」と相談された綾子さんは、内気なのんちゃんの力になりたくて奔走します。好きになった人が働いているレストランに一緒に行ったり、電話番号を聞く後押しをしてくれたり。
でものんちゃんは同じ保育園の先生から、綾子さんのしていることが「ご婦人の暇つぶし」と言われてから、その言葉が妙に引っかかってしまいます。
- 著者
- 末次 由紀
- 出版日
- 2007-12-13
ある日、事件が起こります。なんと綾子さんが勝手に、のんちゃんのデートの約束を断っていたのです。このことをきっかけに、ついにのんちゃんは怒ってしまいます。そしてふたりは、仲違いすることに…。
しかし、しだいに綾子さんの真意がわかっていきます。それを知ったとき、のんちゃんはどういう行動に出るのでしょうか。
少女漫画といえば恋愛ものが多いなか、この作品は年齢を超えた友情がテーマの漫画。おばさまから小さい子供が主人公のものなど、幅広い年齢層の登場人物が描かれています。そしてどの作品も、心が温まるものばかり。
人とのつながりや思いやりの大切さを思い出させてくれるような、末次由紀の醍醐味が詰まった短編集です。なんだか疲れているなあ、慌ただしいなあ、と感じているなら、ぜひ1度読んでみてくださいね。
家の都合でお嬢様学校から共学に転校してきたゆずは、あまりの雰囲気の違いに戸惑います。そんななか、同級生でお向かいに住んでいる樫尾という男子と共同で、柴犬を世話することになります。
ゆずはしだいに樫尾に惹かれていきますが、彼には遠距離恋愛中の彼女がいました。ゆずは自分の気持ちに嘘はつけず、樫尾に告白するも振られてしまいます。しかし徐々に樫尾もゆずのことが気になっていき……。
- 著者
- 末次 由紀
- 出版日
- 2004-08-11
全2巻ですが、綺麗にまとまっていてとても読みやすい作品となっています。切ない漫画が得意な末次由紀ですが、この作品は切ないながらも、同時に温かみも感じることができます。
ゆずが初めて自覚した恋心。けれどすでに「彼女」という障害がありました。1番になれないとわかっていても健気に頑張るゆずの姿は、つい応援したくなるもの。『100%の君へ』というタイトルは、物語が進むに連れわかってくるもので、気づくとその理由にはっとさせられます。
この物語には忘れていた青春の純粋さを思い出させる、爽やかな読後感があります。ふたりが飼っている柴犬の「柴」の可愛さにも注目です。
主人公で高校1年生の「こころ」は数年前まで目が見えなかったのですが、手術で視力を回復することに成功します。彼女にとっては、見えるもの全てが新鮮に映りました。
そんななか彼女は、真という人物と出会います。真は1学年上の先輩で、人の心が読める超能力を持っていました。その能力がゆえに人間不信に陥っている真と、純粋なこころ。ふたりは次しだいに惹かれあい付き合うことになります。
- 著者
- 末次 由紀
- 出版日
しかし、こころはある日から人の心が読めるようになります。真の超能力が伝染したのです。責任を感じた真は、こころの前から姿を消してしまいます。そして月日が経ちふたりは再会するのですが、真はすっかり雰囲気が変わってしまっていて……。
超能力を持っていたために何も信じることができなかった真は、純粋なこころと出会ったことで、どれだけ救われたのか計り知れません。だからこそ真がそばにいることで、こころに超能力が移ってしまうとわかったときの絶望は、想像に難くありません。
こころを守るために離れていった真は、超能力を理解している叔父とともに過ごすことになります。しかし、そこでもさまざまな苦悩が待ち受けているのです。相手を想い合うがゆえに、すれ違うふたり。見ていてもどかしく、また切なくなります。
揺れ動く心や葛藤をみずみずしく描いたこの作品は、末次由紀初期の代表作の1つです。超能力の話でもありますが、同時に真とこころの成長を描いた物語でもあります。読者は、悲しみを乗り越えて成長していくふたりをそっと見守りたくなるはずです。
掲載されていた当時大好きだった!未だに大事に読んでいる!というファンも多いほど、根強い人気のある作品です。
いかがでしたか?末次由紀の作品は人間味に溢れた温かいもの、そして情熱を感じる作品など、魅力的なものばかり。ぜひ読んでみてくださいね。