異世界を様々な力や知恵を使って冒険していく物語は、いつ読んでもドキドキワクワクするものですよね。ここでは、おすすめの冒険ライトノベルをランキング形式でご紹介します。
大陸ファラディースは、悪魔と魔法と失伝機械群が支配する世界。そんな世界を、悪魔憑きの少年ソーマと少女悪魔メルヴィーユは旅をしています。旅の目的は、ソーマの実の兄への復讐。ソーマの兄は、悪魔を召喚し自らの故郷を滅ぼした人物だったのです。
ソーマは悪魔契約を交わしたメルヴィーユ、通称メルと共に兄探しの旅をしますが、その途中である事件に巻き込まれてしまいます。そしてそれは、ふたりが「世界の命運」を握る大事に関わらせていくことになるのですが……。
- 著者
- 上野遊
- 出版日
- 2014-01-10
悪魔契約という王道的な設定は、まず世界観に入り込みやすく、スラスラ読むことができます。アクションシーンなどは迫力満載で、かつグロテスクな部分もあります。
例えば、脱線した機関車の運転士が巨人に襲われたシーン。
「巨人が食べているものが視えた瞬間、運転士は悲鳴を上げていた。それは先輩運転士の上半身だった」(『D9』より引用)
思わずゾクリとしてしまうような描写も出てきます。
一方で、全体を通して、ライトノベルらしいちょっとエッチなコメディ要素もあります。悪夢にうなされたソーマが飛び起きるシーンは、お約束で笑えるもの。
「まっすぐに突き出した右手が何やら温かいものに触れる。女の胸だった。(中略)『――え? わ、悪い! ちょっと寝ぼけてたみたいで』無意識に少女の胸をまさぐり続けていた手を慌てて引っ込めると、そう弁解した』」(『D9』より引用)
王道で引き込む展開や多少グロテスクな描写、戦闘シーンのカッコよさ、そしてそれに緩急をつけるラブコメ要素がうまくミックスされています。軽い読み心地なので、ライトノベルらしい冒険ものを読みたい方にオススメです。
失われた魔法医療を駆使する主人公が友人のため、どんな妖病も治す霊石を探す冒険譚です。
かつて同一の存在であった医術と魔術。教会の信仰により、前者は体系化され、後者は失われてしまいます。しかし魔術でしか治せない病気、妖病は残り続けていました。その奇病にかかると身体能力が向上し、人あらざる能力に目覚めてしまいます。その姿は伝承の化け物のようで、人々から忌み嫌われ、教会に排除されていました。
- 著者
- 手代木 正太郎
- 出版日
- 2015-08-18
主人公、クリミアは失われた魔術を駆使する魔法医師です。持ち前の正義感で妖病の患者を治療しながら旅を続けていました。危険性を増した患者たちへの処置や手術は普通の人間のそれと違い、苛烈です。
自身も妖病に罹患しているヴィクターの協力を得ながら暴れる患者と闘っていくことになります。病原体の魔力で周りのものを投げつけてきたり、患部が手となり掴んできたりと、患者の心情に合わせてその抵抗は形を変えます。
忘れ去られた魔法を使うクリミアたちは忌み嫌われており、教会だけでなく、治療した患者など様々な人からも邪険にされます。そして彼らが遣わした刺客に命を狙われるのです。追手たちは肉体改造を施された異常な人間です。舌がどこまでも伸び、自在に操れる者。性ホルモンを操り、男女問わず虜にし、嬲り殺す者。思わず笑ってしまうような面白い設定から激しいバトルへと展開していくのです。
また患者を救おうとするクリミアと面倒だから殺そうとするヴィクターの掛け合いはコミカルで楽しく、妖病に罹った患者や教会の使いとのバトルは熱く、勢いのある作品です。ぜひ2人の旅の行く末を確かめてみてください。
主人公のライエルは、伯爵家の嫡男として生まれたものの、10歳になった頃には優秀な妹と比較され、蔑まれるようになってしまいます。そしてライエルは、妹のセレスとの戦いの末に敗北し、家も家族も何もかもを失い追放されてしまいました。
全てを失くしたライエルですが、ただ一つ、庭師から家宝の青い玉を受け取ります。その玉には、7人の歴代当主の記憶、そしてアーツという特殊能力が宿っていました。ライエルは家宝の青い玉、そして7人の当主と共に、冒険者を、そして皆に認められることを目指し、旅に出たのです。
- 著者
- 三嶋与夢
- 出版日
- 2015-12-28
先祖である当主と、蔑まれ続けたために卑屈な性格になってしまったライエルの会話はコミカルでおもしろいもの。彼の良き導き役を担うと同時に、ヘタレ度が高くて頼りない主人公に読者が感情移入しやすくなるクッションにもなっています。
7人もいるので一斉に話し出すと誰が何をしゃべっているのかわからなくなりそう、と思いきやそんなことはありません。それぞれの当主のキャラクターが際立っているので、すんなりと判別しながら読むことができます。
RPGのような世界観で、世間知らずのライエルがご先祖の力を借りながら成長していく様子は、冒険ものとしては王道のストーリー。わかりやすく、物語の世界にも入り込みやすいでしょう。序盤のライエルは頼りなさが強調されているので少しイラついてしまうこともあるかもしれませんが、そのぶん後半での主人公の成長が楽しめ、テンポの良いストーリーと共にぐいぐい読み進めていくことができます。
主人公の水瀬雫は、どこにでもいる普通の女子大生。しかしある日、突然見たこともない砂漠にひとり、放り出されてしまいます。どうしてそんなことになったのかもわからないまま砂漠で気を失ってしまった雫は、通りすがりの青年エリクに助けられました。そして自分が「異世界」にいることを知った彼女は混乱し、泣き崩れてしまいます。
- 著者
- 古宮九時
- 出版日
- 2016-08-10
雫がもと居た世界の言葉を教える代わりに、エリクも雫に助力してくれることになります。異世界に飛ばされたはずの雫は、なぜかその世界の言葉を理解することができたのです。こうして、雫は元の世界へ帰る方法を探し、エリクと共に旅に出ました。
主人公の雫は、突出した能力を持っているわけでもなく、かといって特別にダメなタイプでもありません。至って平凡などこにでもいる女の子です。彼女の内情は、クールな妹、それに近所でも美人と評判の姉と自分を比べ、自分自身に劣等感を持っています。
「容姿を含めて特に秀でたところのない自分は、自然体で何でもできてしまう姉妹とは違う。当たり前のように努力する。どこにでもいる真面目な学生の一人だ。(中略)日陰の存在と言うほどではないが、存在感が薄いとでも言うのだろうか」(『Babel ―異世界禁呪と緑の少女―』より引用)
自分に自信を持てない雫のキャラクターがリアルに描かれているので、読者も親しみを持ちながら物語を読み進めていくことができます。際立ったラブコメやハーレムなどはなく、言葉に重点を置きながら描かれる世界観はどこか落ち着きがあります。のんびりした気持ちでファンタジーを楽しみたい人にオススメです。
本シリーズの舞台となるのは、サンランド無統治国家の首都、エルデン。そしてその第九区、歓楽街クァラナドです。サンランド無統治国家とは、名前の通り君臨者による統治が一切存在しない国家であり、そのために法律というものがありません。そうなれば当然、あらゆる犯罪が横行する無法地帯となります。
そこで暮らす主人公のマリアローズは、孤独な「侵入者(クラッカー)」でした。侵入者とは、エルデンの地下にある「アンダーグラウンド」に入り込み、異界生物を倒し、装備品などを奪って売ることを生業にしている人達のことです。
そのひとりであるマリアローズは、最初は単独で働く侵入者でしたが、後に「ZOO」というクラン(チーム)に所属して活動することになります。マリアローズとクランZOOのメンバーは、アンダーグラウンドの最下層にレイピア「劫火」が存在しているとの情報掴み、最下層へと入りこんでいくことになりますが……。
- 著者
- 十文字 青
- 出版日
- 2004-11-29
RPGのダンジョンを探索しているような感覚で読めるストーリーは、冒険ものライトノベルとしては王道的。しかし描写に残酷性やグロテスクな印象の部分も多く、苦手な人は注意したほうがいいかもしれません。
例えば、数人に絡まれたマリアローズが男達に応戦するシーン。
「やたらと鼻がでかい男だ。その自慢の、かどうかは知らないけれども、醜悪なまでに目立つ鼻めがけて、すくい上げるように細身の剣を一閃させた。見事にこそげ落ちた。(中略)呆気に取られている男の右手を狙った。指だ。きれいに落としてやった。人差し指から小指まで、四本」(『薔薇のマリア』より引用)
戦闘シーンとして迫力がある一方で、想像するとなかなか暴力的な描写です。
主人公のマリアローズは、美しい真紅の髪とオレンジの瞳を持つ、誰もが振り返るような美貌を持っています。一見すると美しい女性なのですが、実は性別不明。本人は「女ではない」と主張していますが、作中では男に言い寄られるなど女っぽい描写が多くあります。そんなマリアローズは、主人公らしくなく、とにかく弱いのが特徴です。
そんな最弱の主人公が、団体戦で敵に挑むスタイルには新鮮味があり、おもしろく読むことができます。個性の光るキャラクター達の絡みはテンポ良く進むので、世界観にハマることができればぐいぐいと引き込まれていく作品です。
舞台は大きな大陸がふたつの連邦に別れ争う時代。ある日街で、仲の良い少年と少女がホラ吹きの老人と出会い、彼から「戦争を終わらせることができる価値ある宝」の話を聞きます。これをきっかけに、ふたりの少年少女の冒険が今幕を開けるのです。
ふたつの連邦に別れ争いが続く世界。東の連邦に暮らす、空軍兵のアリソン・ウィッティングトンと、学生のヴィルヘルム・シュルツは、共に「未来の家」という孤児院で育った仲です。ある時彼らは、街でホラ吹きで有名な老人と出会い、その口から「戦争を終わらせることができる価値ある宝」の話を聞かされます。
しかし話の途中、彼は役人と名乗る人物に連行されてしまいます。囚われた彼を探し出し宝の在り処を聞いたふたりは、追ってきた軍人ベネディクトを味方に加えながら、宝を求め冒険を繰り広げていくのです。
- 著者
- 時雨沢 恵一
- 出版日
後に「一つの大陸の物語」シリーズとして続編も刊行され、人気シリーズとなったこの作品は、ふたりの少年少女を中心に語られる王道のアドベンチャーストーリーです。映画『グーニーズ』のように、古くから受け継がれる少年少女による冒険活劇を描く感動作品は、今の時代となっても色褪せることはありません。そんな少年少女が織りなす冒険譚は、ある程度オチを想像させながらも、最後はちょっと意外な結末を迎える話になっていますので楽しみにしていてください。
そして本作品の最大の魅力、それはアリソンとヴィルふたりの関係です。まるでコンビ作品のお手本のようなふたりの関係は、この作品の要。勝ち気なアリソンと、柔和で博識なヴィル、対照的な性格だからこそ惹かれ合い、そして最高のバランスで釣り合っている関係性は、彼らのセリフの掛け合いを読んでいるだけで幸せな気分にしてくれるのです。アリソンに振り回されるヴィルが、いざという時には男らしさを見せたり、物語の重要な局面で博識っぷりを見せたりする姿は胸が踊ります。とにかく最高のコンビとなっています。
戦争という大きなテーマを抱え、一見重苦しい物語を想像してしまいがちですが、書かれている事実が同じことであっても、文章の表現によってその感じ方は大きく異なるもの。本作品でも、戦争中のけして平和とは言えない世界で、人が撃たれ死んでいく様が描かれます。それほど悲惨な印象は残らず、むしろふたりの少年と少女が冒険をしていく姿は物語を明るく、楽しげな雰囲気に包み込んでくれるのです。重いテーマを持たせながらも、あくまでライトに、重くなりすぎないように工夫された作品となっています。
昔話や童話を題材とする絵本には「少年と少女の冒険」というテーマが多いですよね。人の純粋な冒険心に訴えるこのテーマは、きっとこれから先も受け継がれ語られていくのでしょう。それだけの魅力を持ったテーマなのです。かつて夢中になって読みあさった童話や絵本のようなまっすぐな世界観を味わえます。
主人公の狩乃シャルルは、天ツ人の母とレヴァーム人の父を持つ混血児で、父を病気で亡くした後、母も殺されて、9才の時に孤児となってしまいました。しかしその後、飛行機の操縦を覚え、デル・モラル空挺騎士団一等飛空士になり、「サン・マルティリア最高の飛空士」とまで言われるようになりました。
- 著者
- 犬村 小六
- 出版日
- 2008-02-20
そんなシャルルはある日、次期皇妃であるファナ・デル・モラルをレヴァーム皇国皇子のカルロ・レヴァームの元へ届けるという極秘任務を命じられます。混血児であるシャルルと次期皇妃のファナは本来触れ合うことのない身分差がありますが、過酷な空の旅を続けているうち、だんだんとお互いに心を開いていきます。
身分違いの恋、空の旅、迫力のある空中戦、飛空艇で次期皇妃を届けるという任務など、ワクワクするような要素がたっぷりと詰まった作品です。それらの要素を表現する文章もとても美しく、知らない間に物語の世界へと引き込まれていきます。
幼いシャルルが孤児となり、飢えて死にかけながら空を見上げるシーンは、空に対するシャルルの憧れや素直な想いがそのまま伝わってきます。
「階級も貧乏も嘲りも蔑みもない、あの永続無限の空で生きられるなら、僕は他になにもいらない。なけなしの力を振り絞って、空へむかい片手を突き上げながら、僕はそんな声にならない叫びをあげた」(『とある飛空士への追憶』より引用)
身分違いの恋や空への憧れなどシンプルな設定がメインとなっている一方で、緻密に練り上げられた世界観は壮大。物語をぐいぐいと読み込ませてくれます。読後感も爽やかなので、気持ち良く読み終わることができるおすすめの作品です。気に入った方は続編の『とある飛空士への恋歌』もどうぞ。
いかがでしたか? 冒険ものは、現実にはあり得ないことだからこそ、物語を読んで楽しみたいジャンルでもあります。ぜひ自分のお気に入りの冒険ものを見つけてみてください。