紡木たくのおすすめ漫画ランキングベスト5!『ホットロード』の作者

更新:2017.2.18 作成:2017.2.18

少女漫画雑誌『別冊マーガレット』を舞台に活躍した漫画家紡木たく。2014年に実写映画化された『ホットロード』をはじめ、数々の人気作を発表し、多くのファンを生みました。今回は繊細かつ透明感が魅力の紡木作品を5作、ランキング形式でご紹介します。

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繊細さと透明感、青春を描き切る紡木たくとは?

集英社刊行『別冊マーガレット(略称:別マ)』。日本でも有数の漫画雑誌ですが、その別マを代表する漫画家が紡木たくです。わずか単行本4冊で、売上700万部を叩き出したとされる『ホットロード』をはじめとした作品は、人気作の多い別マ史上においても、今なお色褪せることなく輝いています。

紡木たくは、1964年8月2日生まれ。1982年3月号『別冊マーガレット』にて、『待ち人』でデビューを果たします。本記事タイトルでも触れている『ホットロード』は20年以上の時を経て、2014年に実写映画化。その他の作品も文庫化、電子化されており、『ホットロード』以外の作品も評価されている作家です。

作風の特徴は、その線の細さ、薄さからくる透明感。そして、ひたすら描き込んでいく技法とは異なる余白を丁寧に使った描写は、登場人物達が物語の中で魅力に感じた光を浮かび上がらせます。それは闇夜の中に浮かび上がるバイクのテールランプのような物質的な光から、他者から貰った気持ち温まる言葉のような光を感じた雰囲気のようなものまで様々。紡木たくが作品に纏わせた空気感ごと鑑賞したいですね。

5位: 紡木たくの描く家族の形『小さな祈り』

紡木たくの短編集です。表題作の短期連載「小さな祈り」以外にも、文庫版には読み切りだった「これからも ずっと…」「his love」「隆司永遠」が収載されています。若者たちの恋愛を描いた「これからもずっと…」「his love」「隆司永遠」も紡木たくワールドを味わえる作品ですが、今回ご紹介したい作品は表題作「小さな祈り」です。

著者
紡木 たく
出版日

父を早くに病で亡くした3人家族が舞台。ママは親族からの扶養の申し出を断り、1人で息子の昭と娘の真を育てています。

「パパの思い出を持ってるのと 何も持ってないののちがいだけだよ ただそれだけだよ」(『小さな祈り』より引用)

父を失った経験を持つ昭と、父と共にいた記憶を持たない真。真がただそれだけ、という小さな差は、けれども昭と真の2人を大きく隔てていました。そしてその隔絶はママとの関係にも影を落とします。ママの誕生日に起こる事件や、昭とママとのケンカなど。真はそんな家族との状況に苦悩します。

真と昭、そしてママの3人が胸に秘めたこんな家族でいたい、こんな人でいたい、こうしたい、そんな小さな願い。ほんの小さな願いのはずなのにすれ違っていく家族を、最後に繋いだ「小さな祈り」とは?

どこかすれ違ったままの優しい子・昭と、いい子・真の2人の兄妹が、幼少期から大人になるまでの成長物語。真を成長させるのは、恋愛だけではありません。彼女の人生で課題になっているのは、乗り超える障害物ではなく、すれ違い。だからこそ単純にいかないのですが、淡い恋物語を読んだときとは違う余韻が長く響く作品です。

4位: 後の大作につながる、紡木たく珠玉の名作短編集『やさしい手を、もってる』

4位からは、電子書籍版もある作品から選出しました。本作『やさしい手を、もってる』も短編集となります。表題作の他には、神奈川エリアの中高生の恋愛を描いた「あのひとの車で…」「横浜・14才・由子」と、大学生の男女の出会いがテーマの「新しい友だち」が収録されています。

著者
紡木 たく
出版日

「やさしい手を、もってる」は、半グレ中学生の晴美と、晴美の中学校にいたころから「遊び人の慎ちゃん」と呼ばれていた暴走族の慎也のお話。2人は、慎也と同じ集会に集まる晴美の同級生乾の紹介で付き合っています。

高校に行くか悩む晴美と、高校に行かず職もなく走りに明け暮れる毎日の中で、中学時代、卒業式に教師に言われた言葉が気にかかる慎也。慎也さえいてくれればいい、他に何もいらないと言ってはばからない晴美ですが、慎也の暴走族卒業式の話を境に2人の関係はこじれていってしまいます。

2人の恋模様から見えてくるテーマは、優しさとは何かです。自分の将来への不安と今やりたいことの狭間で2人は恋していきます。これは、2人が1人の人として本当の恋を掴むまでの物語です。

紡木たく作品としては『ホットロード』誕生前に、暴走族の少年と恋する少女にスポットを当てた本作。『ホットロード』に繋がっていく作品とも見ることができます。ただ、危うさを抱えた少年少女達を繊細なタッチで描くという点においては共通していますが、晴美と慎也の物語は読み切りということで連載とは違う趣があります。ぜひ両作品、読み比べてみてください。

3位: 駆け抜けていった青春物語、紡木たく最大のヒット作『ホットロード』

「もしかしたら一生のうちで なにも見えないで走ってしまう時は ほんの一瞬かもしれない」(『ホットロード』より引用)

連載期間1年5か月、単行本全4巻で公称売上は累計700万部。少女漫画史上、単行本1巻あたり150万部以上を売り上げた漫画は指折り数えるほどしかありません。本作『ホットロード』は、とてつもない勢いで世間を席巻した作品といえるでしょう。

著者
紡木 たく
出版日
1995-08-18

主人公は、14才の和希。ママの誕生日に万引きで捕まるところから物語は始まります。父親はもうおらず、ママは高校時代から好き合っている男と不倫関係。自分は好きじゃなかった人との子どもなんだ、と自己肯定できずにいる和希は、あまり良いとはいえない家庭環境の中で、心は荒み、まるで投げ割ったグラスのように尖っていました。

そんなある日、和希は横浜からの不良高校生絵里に連れられ、地元湘南の集会に出入りするようになります。ママと衝突しながら、一歩ずつ今まで知らなかった世界へ足を踏み入れていく和希。そこで出会ったガソリンスタンドで働く暴走族春山から、こう誘いを受けます。

「オレの女にならない?」(『ホットロード』より引用)

春山に反発しながらも、どこか気にかけてしまう和希ですが、春山には他に好きな女である美穂子の影がちらついていて……。周囲からの影響もあり、付き合っていくことになった和希と春山の恋の行く末はいかに。

最初はただのやり場のない心の棘を抱えていた和希が、髪の脱色に始まり、自虐的に徐々にグレていく様子は、紡木たくの繊細な描写によって、グレに共感を持てない方の心にもすっと入ってきます。人気があるからと物語をずるずる引き延ばしたりすることもなく、青春を走り抜ける若者たちを一気に描き切った紡木たくの最大のヒット作を、ご堪能ください。

2位: キレイなうたにあこがれて『机をステージに』

『別冊マーガレット』1985年8月号から11月号まで連載された本作。何かに熱中にすることもなく、夢もなく、他人には悩みはないと言いつつも、そこそこ悩んでいる高校1年生佐藤真紀がこの物語の主人公です。

著者
紡木 たく
出版日

真紀が目で追ってしまうのは、入学式でケンカ騒動、新入生歓迎会で先輩の機材を奪ってゲリラライヴを敢行した高屋くん。真面目なクラスで、過ぎていく日々に何か物足りなさを感じる真紀は、高屋くんのバンド「マーガレット」のキレイなうたが忘れられないのでした。

「高屋くんをはじめて見たとき こわれそうなひと…って そんな感じがしました」(『机をステージに』より引用)

特別距離が縮まる訳でもなく、真面目なクラスの中で浮かんだ状態の高屋くん。そんな折、ある日突然、高屋くんの相棒で、真紀に冗談ばかり言ってくるようになったカンサイから、ピアノが弾けるということで「マーガレット」に誘われて、物語は急速に始まっていくのでした。マーガレットに誘うカンサイと、マーガレットに女はいらないという高屋くん。真紀の人生はどう変化していくのでしょうか。

主人公は真紀ですが、高屋くんの描写も多く、特にカンサイとの友情シーンは恋愛とは違う憧憬ものです。人が人を理解するということはどういうことか、今を生きるとはどういうことか。刹那的な今を生きることを選んだグレの世界観とは異なる、ただ少し反抗的な高校生が今を生きる姿に光を当てた不朽の名作です。

1位: 人生の友になりうる、紡木たく渾身の作品『瞬きもせず』

舞台は海と山に囲まれた、山口県のとある町。そんな町にある少しのんびりした県立高校に、自転車で40分かかるもっとのんびりした町の中学校から進学してきた、かよ子。テニス部にも入り、少しずつは慣れてきたものの、どこか気恥ずかしさも持ったままの高校生活でした。

ある日、何の変哲もない手紙を授業中に回すやりとりの中で、かよ子宛に好きな人がいるかどうか、恋バナの手紙が届きます。手紙のやりとりが数度行なわれた後、屋上に呼び出してきたのは、クラスで気になっていた紺野くんだったのでした。

サッカーに、バイトに、頑張っている紺野くんを見て、男の子に慣れていないこともあり、毎日緊張するかよ子。送ってもらったり、夏祭りに行ったり距離は縮まるのに、2人の隙間は縮まりません。そうしているうちに、かよ子は紺野くんを誤解させてしまうのです。「かよ子にフラれた」と。

著者
紡木 たく
出版日

こんな始まりの第1章(単行本1巻相当)と、その後高校3年間+αを描いた第2章(単行本2~7巻相当)に分かれる、かよ子と紺野くんの恋愛物語。2人の距離は、離れては近づき、寄せては返していくかのように揺れ動きます。2人付き合うことへの迷いと不安。そして、この山口の小さなまちで暮らす生活を終えるか、続けるか。常に終わりを意識させられながら進む物語は、どこに終着するのでしょうか。

「いつか このせまいところから 出る日がくることも 口には出せないけど なんとなくわかりかけてきました 夢はおわるのではなく きっと変わりながら続くもの」(『瞬きもせず』より引用)

本作は舞台が山口ということもあり、全編セリフは山口弁で描かれています。どこか愛らしく、透き通っていて、西日本の言葉に馴染みがなくとも心に染み込んでくる会話。かよ子と紺野くんだけではない、魅力的な友人たちや後輩たちとの人間ドラマも必見ですよ。青春を生きる読者には理解と共感を、青春を生きた読者には淡い暖かい感情を。様々な感情を惹起させる本作を、紡木たく作品の中で1番手とさせていただきました。

紡木たくの作品をランキング形式で5作、ご紹介しました。青春時代の悩み、葛藤、反発、そういった複雑な感情を繊細に描いた作品群。2014年の映画化を機に、親子2代で『ホットロード』を鑑賞された方もおられるかと思いますが、ぜひ他の作品も手にとってみてください。朽ちることのない青春時代の空気を感じられるのではないでしょうか。