ホラー作家岩井志麻子の著書おすすめランキングベスト5!

更新:2021.12.16

耽美で恐ろしい作風で知られる岩井志麻子。衝撃的なシーンも数多くありますが、その独特な雰囲気は他では味わえません。今回はそんな作品の中でも、特におすすめの5冊をご紹介します。

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岩井志麻子とは?

1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞で佳作を受賞したことをきっかけに、1986年に『夢みるうさぎとポリスボーイ』でデビューしました。その後、1999年に『ぼっけえ、きょうてえ』で第6回日本ホラー小説大賞、同作で第13回山本周五郎賞を受賞。2002年には『岡山女』で直木賞にもノミネートされました。

自らの作品を原作にした映画に出演したり、アダルトビデオの監督をしたりと、様々な顔を持つ異色の作家です。

5位: 岩井志麻子の世界を、短編集で満喫

明治の岡山の民家には必ずあったという「乞食柱(ほいとばしら)」。それは広い土間の梁を支えるための柱ですが、そのうち乞食が身を隠して物乞いをするようになったことから、その名前で呼ばれるようになりました。岡山の冬は厳しいので、乞食もこの柱の所までは土間に入ることが許されていたのです。

ある日、数えで16歳になった娘のサトが熱病に冒され、寝たきりになってしまいます。熱に浮かされながらサトが見たのは、乞食柱の向こうにいる細長い身体の影法師のようなものでした。それはサトに向かって手を伸ばしてきて、そうするとサトの熱はますます上がってしまいます。そうしてサトの夢の中にまで出てくるのです。

やがて熱は引きましたが、サトの足腰は立たなくなり、目も霞んでいました。そんなサトにずっと世話をしていた婆やんは、「何が見えるか」と聞きます。サトが「小さい蛇が見える」と答えると、婆やんは、「うちのサトはトウビョウ様のお使いになりました」(『魔羅節』「乞食柱」より引用)と言うのでした。

著者
岩井 志麻子
出版日

妖しく耽美的なショートストーリー8編からなる短編集『魔羅節』。貧しさの中で体験する不可思議で妖しい体験は、読んでいるうちにこの世界が現実なのか夢なのかがわからなくなるような、曖昧な世界観で包まれています。

「乞食柱」を始め、「きちがい日和」や「金玉娘」など、どれも衝撃的なタイトルを付けられており、一瞬、抵抗感を持つ人もいるかもしれません。しかしいざ読み出してみると、幻想的ともいえる世界が描かれており、独特な雰囲気の物語はつい読み進めてしまうことでしょう。岩井志麻子ワールドが思い切り楽しめる1冊です。

4位: 岩井志麻子の直木賞候補作

菓子製造の商売をしている宮一に囲われている妾のタミエは、ある日、商売がうまくいかなくなった宮一に刀で切りつけられ、左目を失ってしまいます。宮一自身も自らの喉を刀で突いて死んでいたため、タミエは両親ともども与えられていた家を追い出されてしまうのでした。

タミエの妾の給金を当てにして暮らしていた両親は嘆きますが、やがてタミエは失った左目で死者を見ることができるようになります。そこに活路を見出したタミエの両親は、タミエを「霊能者」として商売を始めるのです。ある日、タミエの元を、由子と名乗る女性が訪れます。由子と話しているうちにタミエは、由子の目にはタミエには見えない何かを見ているらしいとわかってきますが……。

著者
岩井 志麻子
出版日

グロテスクなのになぜか引き込まれてしまう文章で描かれる本作『岡山女』の世界には、岩井志麻子の魅力を存分に感じることができるでしょう。たとえば冒頭、タミエが宮一に襲われるシーンで、気を失っていたタミエが目を覚ましたときの描写に、次のようなものがあります。

「タミエの顔の左側から流れる血は固まり、破裂した眼球を布団に貼りつけていた」(『岡山女』より引用)

残された右目で見た自分の左目。思わず場面を想像してしまうとかなりグロテスクなのですが、不思議と耽美的な雰囲気が漂っていますね。

霊能者となったタミエの元には、由子を始め様々な人物が訪れます。生きている者も死んでいる者も、様々な苦しい思いを抱きながら日々を過ごしているのです。全体的には暗く重い物語ですが、その中にもどこか幻想的な空気を感じることができる幻想ホラー作品です。

3位: 実際の事件を元にした物語

岡山県の北の果てにある村は、僅か百人程度の近しい人しか暮らしていない閉ざされた村です。その村の中心にある暗い森。村人達はそこを「お森様」と呼びますが、どうしてそう呼ぶのかは誰も知りませんでした。

両親を亡くしたさや子と辰男は叔父の家で世話になることになりますが、さや子は叔父の仁平から密かにイタズラをされるようになってしまいます。しかしそれでも家を追い出されてしまっては困るので、逆らうことができません。弟の辰男もそのことに気が付いていますが、どうすることもできず、憎しみだけを溜め込んでいきます。他にも母が金のために男達に体を委ねていることを知りながら、どうすることもできない少年や、田舎を憎みながら田舎から逃げ出せない女など、様々な憎しみが渦巻く村はやがて「鬼」を作りだしていき……。

著者
岩井 志麻子
出版日
2001-07-03

閉ざされた空間の中で紡がれる物語は、全体的に暗く鬱々としています。それでも思わず読み進めてしまうのは、登場するキャラクター達にリアリティがあるからかもしれません。昔ながらの閉ざされた村独特の雰囲気や因習、そして集落の中心にある森が、物語の不気味さをさらに際立たせています。

「この岡山の北の果ての村で、何よりも暗い場所だった。
 そんな暗い森を囲むように、この集落はある。全戸、二十三。百人ほどの小さな集まりだ。元を辿ればすべて血が繋がっている」(『夜啼きの森』より引用)

村人を次々に惨殺するという「鬼」はどのようにして生まれたのか。元となる実際の事件があるからこそ、いろいろと考えさせられる作品です。

2位: 岩井志麻子が描く、一族の女達の耽美な人生

シヲは物乞いの母から生まれた娘で、自身も物乞いとして生きていましたが、ひょんなことから由緒正しい家の養女となります。物乞いの頃のシヲは汚れた身なりをしていたこともあってわかりませんでしたが、いざ養女となり身なりを整えると、シヲは誰もが認める美しい娘でした。

しかし、シヲの生んだ娘は馬面の父親に似て、母とは全く違う醜女でした。その娘もまた物乞いとの間に娘を産みますが、この娘、つまりシヲの孫は祖母譲りの美しい娘として生まれてきました。本作『べっぴんぢごく』は、シヲを始まりとした一族の、6代にわたる女達を描いた物語となっています。

著者
岩井 志麻子
出版日
2008-08-28

女達の淡々とした生活を丹念に描いた物語は、終始妖しい雰囲気に包まれており、その妖しさについ引き込まれて読み進めることができます。意外な展開を求めるよりも、女達の官能的とも切ないとも取れる人生を読みたいという人におすすめです。

独特な雰囲気に好みは分かれるかもしれませんが、因果に繋がれた呪われた一族の物語は壮大で、読み応えのある作品です。

1位: 岩井志麻子の代表作

目や鼻が左のこめかみに吊り上がっている醜女の女郎は、客に自分の身の上話を語ります。16歳で遊郭にやってきた女郎は、日照り村という通り名の村で生まれました。通り名の通り作物の育たない貧しい村で、40歳まで生きられたら良いほうです。そんな中でも女郎はさらに貧しく、牛以下の生活をしていたといいます。

女郎の母は、間引き専門の産婆でした。妊婦から子を取り出したり、生まれた子を絞殺したり、そんな仕事を女郎は4歳のときから手伝わされていたのです。幼い頃から体験し続けた水子との生活。血に塗れた話を淡々と語る女郎の寝物語です。

著者
岩井 志麻子
出版日
2002-07-10

「ぼっけえ、きょうてえ」とは岡山地方の方言で、「とても怖い」という意味。タイトル通り確かに怖い話なのですが、幽霊や妖怪が出てくるような怖さではなく、いわゆる人間の怖さが黒光りしているような物語です。

遊郭で働く女郎が自らの身の上話を淡々と語るさまは、残確で恐ろしいものを感じさせることでしょう。たとえば、間引き専門の産婆だった母を手伝ったと語る場面では、簡単な言葉に恐ろしい想像をかきたてられます。

「小まい頃は野菊や鬼灯摘みに行ったり、麦藁を縒ったりじゃけど、大きなったら……妊み女の手足を押さえる役目じゃったわ」(『ぼっけえ、きょうてえ』より引用)

恐ろしく残酷なので苦手な人は注意ですが、ホラーを読みたい人は、一度は手に取っておきたい作品です。

いかがでしたか? 恐怖と耽美の入り混じった世界は、読み進めていくうちに読者を怪しい世界へと誘い込んでくれます。この機会にぜひ手に取ってみてください。

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