猫が出てくるおすすめ小説ランキングベスト5!癒しが欲しい時に読みたい。

更新:2017.2.22 作成:2017.2.22

小説の中の猫は、そこにいるだけで私たち読者を和ませてくれる、そんな不思議な存在です。今回ご紹介する5作品は、実際に猫が好き、という方にはもちろんのことながら、少し息抜きがしたいという方にもおすすめです。

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5位:本を読んだ先にあるものとは

古びた、けれど品揃えには光るものがある夏木書店。その店主である祖父を亡くした主人公、夏木林太郎が毒舌な喋るトラネコに出会うところから『本を守ろうとする猫の話』は始まります。

トラネコはトラと名乗り、林太郎を3つの迷宮へ連れて行きます。本を守るため、林太郎の力が必要だと言うのです。不思議な門に誘われ、いきなり異空間に連れて来られる林太郎は、そこで異空間の主と対峙することになります。

ある迷宮では、一度読んだ本を読み返す必要はないと主張する主。また別の迷宮では、効率的に読書をするために本を要点だけにまとめるべきだと主張する主。そして、売れる本を作るためなら本の内容など何でもいいと主張する主。暴論ともとれるそれぞれの強い信念のせいで、本の扱い方を間違えている主たち。林太郎はそこで、ひるむことなく自分の考えをもって戦うことを選びます。

何かを愛する気持ちだけで相手の考えを変えることはできるのか。主たちの主張に読者は思わず心を持って行かれてしまいそうになりますが、林太郎の本への愛情がそれを引き留めてくれます。

著者
夏川 草介
出版日
2017-01-31

「本には大きな力がある。けれどもそれは、あくまで本の力であって、お前の力ではない」
(『本を守ろうとする猫の話』より引用)

この言葉には身につまされるものがあります。私たちの周りには多くの本がありますが、それを読むだけで終わりにしてしまうことも少なくないのではないでしょうか。本の持つ力を自分の考える力、前に進むための力に変えることで、初めてその本を読み切ったと言えるのでしょう。

幸いにも多くの本の中には、この小説のように本を読むことの本当の意味を教えてくれるものが存在しています。もしも何かの道に迷った時は、ぜひ手に取ってみてください。トラが林太郎をいざなったように、きっと得るものがあるはずです。

4位:家族のあり方を教えてくれる

両親を亡くした、血の繋がっていない兄妹である相田ユカリと陽一、そして猫の種田さん。ふたりと一匹の、温かい物語が描かれた『きみと暮らせば』を紹介します。

種田さんは相田家の癒し担当というポジションです。初めは猫を飼うことに反対していた陽一も、いつの間にか種田さんを受け入れて、種田さんも陽一の膝の上が心地よいようです。それにユカリは可愛い嫉妬を覚えてみたりと、猫好きにはたまらない空気が作品を包んでいます。

大きな事件や解かれるべき謎はありませんが、章ごとにどこか気づかされるものがあることは確かです。冒頭のくだりの意味が最後にぱっと繋がっていくのは、驚きも与えてくれます。

義理の兄妹であることなど、本人たちも、そして読んでいるこちらも忘れてしまうほどに仲の良いふたり。そんなふたりのやりとりは、終始のんきで、どこかクスっとしてしまう和めるものです。お互いのことを職場や学校で話題にしていたり、買い物のことで些細な言い合いをしたり、どの家庭の兄弟も身に覚えがあるのではないでしょうか。

著者
八木沢 里志
出版日
2015-12-03

ユカリが兄に女性を紹介したり、少年ムサシが雨の日にユカリたちがあげた傘を返しにきたり、近所のおじいさんの畑仕事を手伝うことになったり、兄妹の長所をそれぞれが見つけたり。素敵な要素がぎゅっと詰まった小説です。

「いつかすべての記憶が曖昧になってしまったとしても、幸せだと感じたこの気持ちだけは忘れないでいたい」(『きみと暮らせば』より引用)

終盤、ユカリと陽一の仲は一度引き離されそうになりますが、ユカリはそんな風に思います。幸せとは何か、家族とは何か、私たちが当たり前のことだと通り過ぎていたことを改めて考えさせてくれる、珠玉の名作です。

3位:忘れたくないことは誰かと共有しておけばいい

『思い出のとき修理します』に登場するのが、仕事を辞め、恋人も別れて新天地である寂れた商店街へと引っ越してきた主人公の明里。彼女がショーウィンドウにかかっていた「おもいでの時修理します」というプレートにちょっとした引っ掛かりを覚えたところから、この小説は始まります。

実際それは時計屋さんの看板だったのですが、明里はどうも不思議な印象を拭えません。そのお店のオーナーである秀司はのんびりとした男性で、時計を直すことでお客さんの欠けた思い出のピースを埋めてくれる人でした。

この作品は5つの短編小説で構成されています。その1つ目が、まさに猫にまつわるお話なのです。

秀司の店に入り浸っている、のらりくらりとした大学生である太一が、木箱を拾ってきたことから、明里もその謎に関わることになります。その木箱が何のために作られたのか、一体誰のものなのか。その箱を開けることで何とか手がかりを得た一同は、咲という女性に辿り着きます。

その女性はいなくなった父親と、黒猫の存在を重ねていました。黒猫をパパ、と呼んでいた幼い日の彼女は、どんな気持ちで木箱を作ったのか。そして黒猫のパパは、彼女の思い出の中でどのような役割を果たしているのか。

著者
谷 瑞恵
出版日
2012-09-20

「思い出が必要なのは、生きた人間だけだろう?」
(『思い出のとき修理します』より引用)

私たちは、生きていた証として思い出を抱いているのかもしれません。黒猫のパパは、それを教えてくれるために彼女と共に生きてきたのだと考えると、感慨深いものがあります。

他にもほんの少しの謎を含んだ短編小説が収録されています。そちらもぜひ、深く読み込んでみてはいかがでしょうか。

2位:幸せと、ほんの少しの切なさ

午後23時から午前29時、深夜だけに開店している不思議なパン屋さん。『真夜中のパン屋さん』に登場する、ブランジェリークレバヤシです。オーナーの暮林、職人の弘基の元に、女子高生の希実が預けられるところから物語は始まります。

希実は自分をあちこちに預けては遊び歩いていた母親の事を、産んだ子供を自分で育てず托卵してしまう鳥であるカッコウに例えています。奔放すぎる母親のせいでいじめにあっていても、学校を雑多な品種の雛たちが放り込まれた巣でしかないとどこか達観していて……かと思えば目に入るもの全てに怒りを覚えていたり、意外と世話焼きだったりと、思春期特有の感情の振れ幅が見てとれます。

この小説の魅力は、登場人物たちが皆どこかまっすぐに、自分は幸せな環境に置かれていると言い切れないところではないでしょうか。望遠鏡で外を眺める趣味から抜け出せなかったり、ホームレスだったり、うまく子供を愛せなかったり。ひとりひとりがほんの少しの歪みや悲しみを抱えていて、ブランジェリークレバヤシと出会う。そこから幸せに向って歩き出すことができるようになる、そんな小説です。

著者
大沼 紀子
出版日
2011-06-03

ある日この不思議なパン屋さんを訪れた少年こだまも、決して幸せとは言えない境遇に置かれていました。しかしそれでも文句を言わず、ひたむきに生きる様を見て、周りの大人たちは彼をどうにか助けてあげようと尽力するようになります。

「だって悲しいは、いっぱいあるし。だから楽しいを、たくさん拾って集めなきゃ。」
(『真夜中のパン屋さん』より引用)

こだまはそんな風に考えます。そんな風に考えることができるのは、こだまが子供だからではないでしょう。きっと、幸せを集められるのは幸せを信じている人だけです。

この作品には「猫」が一匹とひとり登場します。そのうちの一匹は、ぐーたんという名前の、飼い主に懐いているのか、飼い主を適当にあしらっているのかわからない、ふてぶてしい猫。そしてもうひとりの「猫」は少年こだまと関係のある人物です。その「猫」がこだまとの関係をどう築いていくのか、果たしてふたりは本当の幸せにたどり着けるのか。ぜひ、この小説に出てくる猫と一緒に幸せを集めてみてください。

1位:ひとつひとつの謎が二人の仲を縮めていく

1位は岡崎琢磨の『珈琲店タレーランの事件簿』。人気のシリーズ小説です。主人公のアオヤマは、恋人に振られて傷心のところ、何気なく入った純喫茶タレーランで自分が追い求めていた味を見つけます。彼がそこで働く聡明なバリスタ、切間美星と出会うところからこの小説は始まるのです。

突然起こった、アオヤマの傘が店内から消える事件。そして親戚の女の子の交際相手の浮気疑惑、小学生の不思議な行動、などなど、事件は続けざまに起こります。アオヤマはそれを解決しようと努力するのですが、どうやら事件解決の才能は無いようです。

となれば、ここは頭の切れるバリスタ美星の出番です。そう来たか、と読者を思わせる理路整然とした謎解きは、鋭い切れ味を持っています。彼女は考えをまとめる時にコーヒー豆を挽く事が多く、そのコリコリコリ、という音で、読者はこれから謎が解かれるのだな、と期待を煽られます。

コーヒーにまつわる名を冠した登場人物たちの、思わずクスっとしてしまう会話は必読です。作中にちりばめられているコーヒーについての豆知識も、くどすぎずさらりと読めてしまう、不思議な魅力を持っています。

著者
岡崎 琢磨
出版日
2012-08-04

ひとつひとつ、事件と呼ぶには大げさな、けれど登場人物たちにとってはとても大きな問題が次々と持ち上がり、その中でタレーランの看板猫であるシャルルも登場します。このシャルルは、とある事件の結果としてタレーランに引き取られることとなった野良猫です。けれども、この猫のおかげで事件に関わった少年はたくさんの人たちの優しさに触れるきっかけを貰うことができました。きっとこの先も、タレーランとそこに訪れる人々の心を繋ぐ幸福の猫となることでしょう。

「その謎、たいへんよく挽けました」
(『珈琲店タレーランの事件簿』より引用)

これはバリスタの美星が謎を解決する時に必ず言う、いわば決め台詞です。ぜひ、彼女の挽いた豆を味わってみてください。看板猫のシャルルにも思わず癒されてしまいますよ。

いかがだったでしょうか。今回ご紹介した小説たちを通じて、登場する猫たちに和み、そして時には深く考える、そんな時間を設けてみてください。