海外文学おすすめ10選!初心者でも読みやすい名作や感動のベストセラー本

更新:2017.2.22

普段海外の作品を読みますか?手に取りづらいと感じている方、初めて海外文学を読むなら、時代が変わっても色褪せることのない名作がおすすめです。今回は、数ある文学作品のなかでも読みやすい10冊をご紹介します。

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大人になった今読んでほしい、海外文学の名作

J・D・サリンジャーの名作『ライ麦畑でつかまえて』は世界中で読み続けられています。村上春樹が新訳した『キャッチャー・イン・ザ・ライ』も有名です。主人公の16歳の高校生ホールデン・コールフィールドは、ペンシルヴァニアの高校を学業不振で退学処分になってしまいます。これで三校目となる退学処分を受け、生まれ故郷のニューヨークに戻ることに。そこには彼の居場所はなく、心が満たされることもありません。

著者
J.D. サリンジャー
出版日

大人の社会が建前ばかりで、嘘にまみれたインチキだと受け入れられないホールデン少年の孤独が、すごい勢いで辛辣に語られていきます。その心境は、少なからず誰もが大人になるときに通り抜けなければならないものでしょう。いまだに読み継がれているサリンジャーの不朽の青春小説は、道徳的に問題があるとアメリカのいくつかの州で発禁処分になった海外文学の一つです。

『ライ麦畑でつかまえて』という題名のイメージとはかけ離れた内容が、なおいっそうホールデン少年の孤独を際立たせています。大人になった今、あの青春のころの多感な感受性はなくなってしまったのでしょうか。未来との距離感に押しつぶされそうになったとき、少年の感性をもう一度のぞいてみませんか。読みやすいので、海外文学を読んだことがない方にもおすすめです。

朝目覚めると、自分は虫の姿になっていた

海外文学の名作を生み出したフランツ・カフカの『変身』。主人公であるグレーゴル・ザムザは、ある朝、目が覚めると大きな虫に変わってしまっていました。セールスマンで家族を支えていた主人公のザムザと、その彼を取り巻く家族や周囲の人々の驚きの日々が、想像力をかき立たせる静かな描写でつづられていきます。虫を気持ちの悪い存在として反応する人々の不安に、最後には共感せずにはいられなくなってしまいます。

虫になってみたいと、ふと考えることがあるかもしれません。フランツ・カフカは、自分のことを小さな虫のように思い、現代のネガティブな面を掘りあてた自分自身を終末であると言い、絶望を見つめ続けていました。オーストリアのプラハで暮らしたカフカは、何度も自殺を考えましたが、ついに自殺することはありませんでした。

著者
フランツ・カフカ
出版日
1952-07-28

ネガティブを代表する海外文学の作家といわれるカフカは、それでも多くの作家から尊敬されており、「現代の、数少ない、最大の作家の1人である」とフランスの哲学者サルトルも語る20世紀の重要な作家です。

生きることが苦しくて気持ちが落ち込んでしまうとき、時代のネガティブな面をもくもくと掘り起こしてきたと語る海外文学の巨匠・カフカを紐解いてみませんか。意外にもカフカの名作は、あなたに力を与えてくれることでしょう。

人生は、老若とともに海に浮かぶ

ヘミングウェイの『老人と海』は海外文学の名作中の名作。老漁師のサンチャゴは、長い不漁にめげず小舟に乗り、たった1人で出漁します。そこで想像を絶する巨大なカジキマグロと遭遇、老人は4日の格闘を繰り広げカジキを船にくくりつけ帰途につきました。そのカジギもサメに襲われ、港へ帰る孤独な老人の物語です。

広大な海での戦い、生と死や彼を慕う少年とのふれあいからこぼれる淡々とした老人の語り口は、情景が浮かび上がり、長い人生を感じさせる味わいとなっています。最後までその落ち着いた文章は変わることなく、自分自身と向き合い老いるということを感じさせられます。孤独とは、誰にも必要とされないことなのでしょうか。その孤独の先まで想像が広がっていくかもしれません。

著者
ヘミングウェイ
出版日

ノーベル文学賞作家であるヘミングウェイの小説は、アメリカ文学の古典ともいわれています。映画化された作品も多く、『老人と海』もアメリカでもっとも権威のあるピューリッツァー賞を受賞しています。海外文学ベストセラーであるこの一冊は、ぜひ押さえておきたいですね。ページ数もそこそこですので、初めて海外文学を読む方にもおすすめです。

自分をかたつむりのように感じたときに

ヘルマン・ヘッセが描く『車輪の下』の主人公は、真面目で優秀なハンス。彼は寝る暇も惜しんで猛勉強をし、神学校に入学します。ハンスはそこで1人の友人ハイルナーと出会い、今まで周囲の期待に応えようと自分を抑えてきた生き方に疑問を感じます。次第に頑張れば頑張るほど体調が悪くなっていきます。

ドイツ文学を代表するノーベル文学賞受賞作家であるヘルマン・ヘッセ。平和主義のヘッセの本は学校推薦図書などで読んだことがある方も多いと思います。学生の頃に有名な海外文学『車輪の下』を読んで、しばらく内容に引きずられた経験はありませんか。

著者
ヘルマン ヘッセ
出版日
1951-12-04

この物語の主人公と同じように、ヘルマン・ヘッセ自身も神学校に入学しました。しかし、半年後には脱走し、詩人になる以外の人生を否定して神学校を退学してしまいます。読後、85歳まで生きたヘッセが悩みながら歩んだ人生そのものにも、興味をそそられることでしょう。精神世界を深く掘り下げたヘッセの海外文学名作は、人生において普段は忘れている大切なことを思い起こさせてくれるはずです。

新しく希望に満ちた世界とは

農場で虐げられた動物たちが、革命を起こして飲んだくれの農場主を追い出し、農場の豚や馬やカラスたちの作っていく新しい社会で希望に満ちた世界がはじまります。しかし、その先にあるものは、やはり同じような独裁者に支配される世界でした。

イギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説である『動物農場』は、あらゆる種類の革命が権力略取の後にたどる変質の過程についての寓話として余すところなく描かれています。この海外文学の名作は、第二次世界大戦の終結の年1945年に出版されました。そのためか共産圏やイスラム諸国では発禁となっているそうです。

著者
ジョージ・オーウェル
出版日
2017-01-07

政治を扱った海外文学の最高傑作ともいわれ、読み始めると止まらなくなり、どんどんページが進みます。題名で敬遠してしまった人も一度読んでみると、想像もつかないおもしろい世界が広がっている作品です。平和な社会を過ごしていると、右へならっておけば平和は保たれているような錯覚に陥ってしまいます。権力を持つということは、どういうことなのかと改めて考えさせられる、おすすめの海外文学の名作です。

ちょっぴりおかしなアメリカ人たちの生活

アメリカ発の『いちばんここに似合う人』は、女流映画監督でもあるミランダ・ジュライによって執筆された短編集です。なんとも女性らしい目線と切り口とユーモラスな文体でアメリカに住む人たちのちょっぴりおバカな行動が書かれています。

短編集の最初を飾る「共同パティオ」は、アパートの共同スペースにまつわるお話です。主人公の女性はパティオ(中庭)を共有する夫婦と同じだけ家賃を払っているのだから、自分も同じだけ使おうと努力します。夫婦がいる日は一緒になってパティオで過ごしたり、旦那に夢の中でちょっとした恋愛を妄想してみたりとパティオでの生活を満喫します。

著者
ミランダ・ジュライ
出版日
2010-08-31

「水泳チーム」は、ある女性が水泳を知らない3人の老人に水泳を教えるという内容です。ですがそこはプールがひとつもない町。彼女はぬるま湯を注いだボウルに老人たちの顔をつけさせ、水泳の訓練をさせるのでした。決して水泳を習得し上達させる方法ではないのですが、老人たちは水泳を覚えるのが目的ではなく、何かを学ぶこと自体に喜びを感じているのです。どこかほっこりとするお話です。

その他にもセックスのテクニックを題材にした「動き」や、友達に妹を紹介してくれると言われてまだ見ぬ妹に恋をする老人を描いた「妹」など、独自の目線で書かれたユーモアたっぷりのお話が収録されています。

図書館員という職を与えられた少女の運命

スペインのジャーナリスト兼編集者であるアントニオ・G・イトゥルベが書き記した『アウシュビッツの図書係』は、実話に基づいて書かれた感動作です。第二次世界大戦のホロコーストという暗いテーマなので、悲惨な光景が続きます。しかしその中で懸命に生きて幸せを見つけようとした人の姿からは、感動と勇気をもらうことができるでしょう。

アウシュビッツ強制収容所で国際監視団の視察から逃れるために建てられた学校がありました。本書はその学校で図書館員に任命された14歳の少女ディタの物語です。彼女が図書館員として与えられた仕事は、ナチスの目からたった8冊しかない本を隠し通すことでした。

著者
アントニオ G イトゥルベ
出版日
2016-07-05

本書の舞台がホロコーストの現場となっているため、そのテーマは悲惨です。ナチスによって強制収容された人々が地獄のような生活を強いられる現場で、毎日繰り返された非道な実験や殺戮。それだけでも悲惨な生活ですが、本を持つことは収容者にとって非常に危険な行為だったのです。それは、命よりも銃弾のほうが貴重だとされていた場で、余分な物を所持するということは罪深いことだとされていたからです。

そんな危険な仕事を与えられたディダは喜びます。なぜなら本の世界だけが、この過酷な現実から逃れられる唯一の方法だったから。そんな少女が見つけた希望と、繰り返される毒ガス事件と死体の焼却という現実が織り交ぜられており、非常に胸打つ作品となっています。

宗教と命の在りようを問う

イギリス人作家イアン・マキューアンによる『未成年』は、日本では馴染みのない宗教問題を扱った問題作。守るべきは戒律か命かーー深い問題を問う、読後感の残る衝撃作です。

女性裁判官フィオーナのもとに、とある依頼が舞い込んできます。それは輸血を拒む少年に対して、必要な治療をする許可を求める病院側からの依頼でした。成人であれば、どんなに正当な治療でも自ら拒む権利がありますが、少年はイギリスの法律で成人と認められる18歳まで、わずか3カ月満たない年齢。フィオーナは自ら正しい判断が何か見極めるため、直接少年に会いに行くのでした。

著者
イアン マキューアン
出版日
2015-11-27

本書で扱っているのは「エホバの証人」という実在する宗教です。彼らは戒律上、輸血を受けることはできません。本気で神の存在を信じ、その戒律を頑なに守り続ける人も多いのです。そんな人たちに問うためにあると言っても過言ではない本書。本来は人生を豊かにするための宗教が、ひとりの人生を台無しにしていいものか、と訴えかけてくるようです。

現代に蘇ったヒトラーが巻き起こす論争

ドイツからは物議を醸し出した1冊をご紹介します。タイトルは『帰ってきたヒトラー』。現代に蘇ったヒトラーを題材にした風刺コメディです。本書にはたびたび、ヒトラーの高い能力を肯定する場面が出てきます。ヒトラーを悪魔としてでなく、ひとりの人間として描きたかったという作者の思惑があるそうです。

舞台は現代のドイツ。務めていたテレビ局をクビになったザヴァツキは、ヒトラーそっくりの男を見つけます。そこでサヴァツキは職場復帰の材料としてヒトラーに激似の男と旅をし、自撮りのロードムービーを作ることを思い付きました。しかし、ヒトラーに酷似した男は現代に蘇ったヒトラーその人だったのです。

持ち帰ったロードムービーはヒットし、トーク番組に出演したヒトラーは、その政治論が面白いと一躍スターに。しかし、ヒトラーネタをよしとしない局員たちの陰謀により、ザヴァツキとヒトラーは、テレビ業界から落とされてしまい……。

著者
ティムール・ヴェルメシュ
出版日
2016-04-23

本書の魅力は、蘇ったヒトラーを人々が激似男と勘違いすることによる騒動。ヒトラーの政治に対する鋭い見方が買われる一方で、ヒトラーネタだと見なされて論争となるドタバタは笑えます。第二次世界大戦から半世紀以上たった現代におけるドイツの実情を、本書を通して感じ取ってみるのもおすすめです。また、ヒトラーのイメージを壊したとしてネオナチから怒りを買い、ヒトラー本人が闇討ちに合うシーンはブラックユーモアを感じられることでしょう。

現代社会に進行する心の病気

女流作家ハン・ガンは、現代韓国文学を代表する作家です。今回はそんな彼女の集大成ともいえるべき『菜食主義者』をお届けします。

「菜食主義者」「蒙古斑」「木の花火」という3編の連作中編から構成される本作は、突然菜食主義者となってしまった女性を中心とした物語が描き出されます。なんの取り柄も欠点もない主婦ヨンヘは、あらゆる暴力に反抗するため、突然、肉の類を一切口にしない菜食主義者となります。家の冷蔵庫から一切の肉類を処分したヨンヘは菜食主義となったことにより、どんどんとやせ細っていき……。

著者
ハン・ガン
出版日
2011-06-15

菜食主義者となった女性が痩せ細っていく本作では、周りの人間関係も希薄になっていきます。その様子がハン・ガン独特の暗い目線で書かれており、現代社会の恐怖を感じられることでしょう。

引っ越し祝いに肉を口に入れることを拒否したヨンヘに義父が激怒。無理やり口に押し込もうとしますが、それを吐き出しただけでなく、自らの手首を切ってしまいます。伝統を押しつける側と、頑なに信念を貫き通そうとする側との対立をきっかけに、ヨンヘの精神が崩壊していくさ様は恐ろしいものがあります。

さらにこの他にも、家庭内暴力を受けたり、芸術肌を持つ姉の夫から精神を病んだことにより性的趣向の対象にされたりしてしまいます。その後、施設にいれられて、そのまま木になってしまいたいと願うヨンヘの物語は、現代社会が抱える闇そのものを映し出しています。現代人の不安や恐怖が見事に映し出された本書を、ぜひお楽しみください。

大人になった今なら、ご紹介した評価の高い名作は、つっこみを入れながら楽しく集中して読むこともできるでしょう。読みたい本は日々たくさんあり、時間は限られています。この機会に、海外文学を一気に読み進めてみませんか。

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