宇宙が舞台のSF海外小説おすすめランキングベスト5!文庫で持ち運べる星

更新:2021.12.16

今では科学が進歩したくさんの宇宙船が飛び立っています。けれどまだまだ私たちにとって宇宙は未知の世界。そんな宇宙を舞台にした物語を読んで空想に耽ってみませんか。

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5位:主人公が辿りつく『たったひとつの冴えたやりかた』とは

主人公は宇宙航海を夢見る少女コーティー。16歳の誕生日に両親からプレゼントされた小型宇宙船を改造し、みんなには内緒で1人宇宙に飛び立ちます。

コーティーは連邦基地で聞いた、人々が行方不明になったという星系に向かうことにします。向かう途中、冷凍睡眠から目覚めたコーティーは自身の脳にイーアという生命体が寄生していることに気がついたのです。そのシロベーンと名乗るイーアとコーティーの物語が綴られていきます。

脳に寄生しているため姿の見えないシロベーンですが、コーティーを通じて発声しふたりは会話をすることができるのです。生態系の違う彼らですが意気投合し、友情が生まれます。しかし寄生主との共存方法を知らないシロベーンはやがて自分がコーティーの脳を食い荒らしてしまうことを知ります。その事実を知ったときふたりのとった行動は……。

著者
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
出版日


生まれも育ちも違う者たちが仲良くなっていく姿は、SFという非日常の物語でありながらもどこかほっとします。しかしラストでふたりが考えた最善の方法、『たったひとつの冴えたやりかた』には衝撃を受けるはずです。もし自分が同じ立場に立ったら、その選択をすることができるのでしょうか……。勇敢な主人公の姿に、もの哀しくも心温まるストーリーです。

本作のテーマの1つは「愛」。家族への愛、友人への愛、恋人への愛といろいろな愛の形がありますが、キリスト教では神様からの愛を無償の愛と呼ぶそうです。宇宙で出会った異なる生命体のふたりがお互いを思いやった行動は、自己犠牲の上にある無償の愛を感じさせます。

4位:現代・過去・未来をつかさどる宇宙の物語『タイタンの妖女』

お笑い芸人の太田光が「今までに出会った中で、最高の物語」と評している本作は、作者カート・ヴォネガットも1番好きな作品としてあげています。

「実体化現象」というものを見るために、ある邸の周りに群衆が集まっているシーンから物語は始まります。ラムファード家で起こる奇跡を一目見ようと人々は集まってくるのです。

かつてラムファード家の主ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは愛犬とともに、火星から2日の距離にある時間等曲率漏斗と呼ばれる螺旋の中に自家用宇宙船で飛び込みました。そしてそれから時間が経ち、現在は波動現象としてのみ存在しているというのです。59日ごとに1時間、その螺旋が地球と交差するときにラムファードは地球上に実体化します。この現象が「実体化現象」と呼ばれているのです。

著者
カート・ヴォネガット・ジュニア
出版日
2009-02-25


これだけ聞くと難しい概念や用語が出てきて理解しにくいと感じるかもしれません。しかしストーリーを読み進めていくと、共感できる登場人物や、人間そのものをテーマとしたエンターテイメント性のある本作品に夢中になっていくはずです。

過去、現在、未来を知ることのできるようになったラムファードの予言により、翻弄されていく大富豪のマラカイ・コンスタント。地球から火星、水星、タイタンと旅し、行き着いた先に待つ人類の究極の運命とは……。

ラムフォードはにこやかに「君はいずれ私の家内と火星で結婚するだろう」と告げます。普通なら笑ってこんなこと言えませんよね。ラムフォードは波動という存在形式になり、色々なものを超越してしまったのでしょう。一方コンスタントやラムフォード夫人は、意識的に運命を変えようと試みます。しかし皮肉にも、もがけばもがくほどラムフォードの予言通りに物事が進んでいくのです。

ヴォネガットは本作品の中で、何不自由ない生活をしていたひとりの人間の人生を人類の在り方の例とし、人間の愚かさや、悲しみ、喜び、大切なものは何かということをシニカルかつユーモラスに問いかけてきます。人生について、1度立ち止まって考える機会を与えてくれる作品です。

3位:火星を舞台にしたショート・ショート『火星年代記』

レイ・ブラッドベリの代表作で、1950年に出版されました。当初は物語は1999年から始まりましたが、1997年に出版された改訂版では31年繰り下げて2030年から始まる物語となっています。

改訂版では2030年1月から2057年10月までの期間を年代順に27の短編で構成している連作短編集となっています。第1章のロケットの出発から始まり、第1次探索隊、第2次探索隊と火星に飛び立ちますが、帰ってきた人はひとりもいません。

著者
レイ ブラッドベリ
出版日
2010-07-10


それでも人類は第3次探索隊を火星に送り、徐々に火星に定着していきます。やがて火星には地球人の町がつぎつぎと建設されるのですが、その間に地球では核戦争が起こり……。人類は最終的に何処を目指していくのでしょうか。

章ごとに地球人の視点で話が展開したり、火星人の視点で展開したり、登場人物も様々です。しかし全編を通し共通しているのは、異なる人種の対立や植民地化、核戦争といったテーマ。シリアスな内容で読みづらそうに感じますが、各章それぞれが短い短編なので手軽に読みやすいものとなっています。第1章は詩のような幻想的な文体で、ブラッドベリの描く宇宙に引き込まれていくことでしょう。

『火星年代記』が書かれてから歳月がたちましたが、時代を越えても読者を惹きつけるのは、ブラッドベリが作品の中で普遍的な人間の姿をテーマとしているからなのではないでしょうか。SFでありながら純文学を読むようなテーマと文体のレベルが高い1冊です。

2位:スペースオペラの原点『火星のプリンセス』

表題作をはじめ、「火星の女神イサス」「火星の大元帥カーター」の3編が収録されています。もともとエドガー・ライス・バローズの著した、火星を舞台にした物語シリーズは11冊ありました。本作は、それを合本版としてまとめたうちの1巻です。

物語はエドガー・ライス・バローズのはしがきから始まります。バローズは叔父であるジョン・カーターの死後、彼の手記を手にし、その内容を知ることになります。

著者
エドガー・ライス バローズ
出版日


主人公ジョン・カーターは年齢がわかりません。幼少の記憶もないという不思議な人物です。南北戦争で南軍の騎兵大尉だったカーターは、戦争ですべてをなくし逆境を打開しようと金鉱を探しにアリゾナへ行きます。ある夜星を眺めていたカーターは突然暗闇に飲み込まれ、気が付くと火星に転移していたのです。

火星では緑色の肌で4本の腕を持つ異形の緑色人や、赤銅食の肌を持ち地球人と見た目が似ている赤色人などが戦争に明け暮れていました。カーターは何度となく命の危機に遭いますが、地球より重力の小さい火星で、跳躍力や腕力といった面で超人的な力を発揮し活躍を見せます。

そんな中でカーターは、火星ヘリウム国の王女で絶世の美女デジャー・ソリスと出会います。本の表紙に描かれている女性が彼女です。このソリスとカーターは恋に落ちていきます。

スペースオペラの原点と名高いこの作品ですが、それにふさわしくカーターの未知の星での冒険と恋が読者をわくわくさせてくれます。ストーリーは典型的なヒーロー物語ですが、それでも作者の想像力や表現力により、古さを感じさせないことも魅力の1つです。

子供のころ1度は憧れるヒーローですが、歳をとるにつれて徐々にわくわくハラハラする気持ちが薄れていってしまいますよね。そんな時にはこの作品がおすすめ。子供から大人までが楽しめる活力あふれるお話です。

1位:まず読んでほしい!SF小説の代表作『2001年宇宙の旅』

アーサー・チャールズ・クラークによって書かれた小説です。スタンリー・キューブリックとともに、アイデアをまとめたストーリーをもとにして1968年4月に映画として、同年6月に小説として発表されました。

物語の詳細は映画と小説とでは異なり、映画には個々の事象についてほとんど説明がないので、ぜひ小説で読んでいただきたい物語です。

恐竜の治世も終わった太古の昔、地球にある日突然謎の人工的物体「モノリス」が現れます。「モノリス」は生命体に進化をもたらす役割があるのです。その「モノリス」を人類の祖先である「ヒトザル」が発見し、道具を使うことを覚え進化をたどります。

著者
アーサー・C. クラーク
出版日


それから長い年月が経ち、人類が宇宙へと旅立てる技術を手に入れたとき、また「モノリス」が現れます。今度は月の上で。そして人類の次の目的地は土星となり……。まるで人類は古代から「モノリス」に行先を示されているようです。

ディスカバリー号で土星へ向かう途中には人工知能による反乱が起こります。

「ヒトザル」が道具を使うところから始まり、ものすごいスピードで人類は進歩してきました。その発展した技術により人類の生活は向上してきましたが、皮肉なことにその技術により人類は滅びる可能性をも持ち合わせてしまったのです。

1968年当時から見た未来の科学技術や宇宙の描写が、作者の想像力の豊かさを感じさせます。

人類の進歩はめまぐるしく、壮大です。しかしそれよりも壮大な宇宙を舞台に描かれた本作品を読むと、地球はちっぽけで、人間はもっともっと小さく見えてきます。

宇宙において人類はとても小さな存在で、それでも進化し続けていく人間の存在意義を考えさせてくれる普及の名作です。

いかがでしたか。単にSFといっても内容は様々で、ファンタジーのような話もあれば、勧善懲悪ヒーローのような話もあり、哲学的な問いかけを持っている話などバラエティ豊かな作品たちです。今では科学が判明してしまった事も、小説が書かれた当時だからこそ想像し描くことのできたストーリーたち。時代を越えても色褪せることのない内容に読んでいて感動すること間違いないでしょう。日常を抜け出してSFの世界を楽しんでみてください。

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