皆さんの好みであるジャンル「恋愛」と「ファンタジー」。今回はその2つをミックスさせた作品から、厳選した5作をランキング形式で紹介していきます。
時空を越えた二人の男女の愛を描いた、恩田陸の恋愛小説です。本作の見所は、収録された5つの章において共通して登場する主人公「エドワード」とヒロイン「エリザベス」の関係にあります。
ある時は父親の借金と母親の死で全てを失った元大学教授と、重篤な病の身となりがらも、彼に会おうと残り僅かな命を燃やし続ける12歳の少女。ある時は戦争で傷ついたところで、祖父の日記で見たひとりの美しき女性の出会いを求めて軍を脱走する兵士。またある時は共にイギリスの王家に生まれた身でも、決して結ばれない関係の二人……。
このように、時や場所を超えて何度も出会い求め合っても、最後には必ずと言っていいほど悲しい別れが待っています。そんなどれだけ手を伸ばしても、決して届かない想いに終わってしまう二人の物語には胸が締め付けられることでしょう。
- 著者
- 恩田 陸
- 出版日
- 2004-01-28
しかし、そんな届かぬ手の物語でも、それぞれ切なくも心温まる結末が用意されているのがもう一つの見所となっています。それらの結末が気になりましたら、本作に収録された5つの物語にぜひ触れてみてください。必ず、皆さんを感動させてくれると思いますよ。
体が徐々に塩へと変わってゆく死の病「塩害」により、すべてが塩に覆われゆく世界に住む男と少女の恋愛を描いた作品。電撃ゲーム小説大賞を受賞した有川浩のデビュー作です。
主人公の秋庭高範は、かつて航空自衛隊で名を馳せた凄腕の空尉でしたが、ある理由で塩害で崩壊しかけた東京の新橋に住んでいました。そんなある時、小笠原真奈が街で暴徒に襲われている所を助けたところ、彼女は塩害で両親を失った孤児であるため、仕方なく一緒に暮らすことになります。
そしてさらに現れた見知らぬひとりの男に「世界とか、救ってみたいと思わない?」と、誘いを持ちかけられたことから、二人の運命は大きく変わっていき……。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2010-01-23
本作の見所は、塩で崩壊していく世界の中における主人公とヒロインの生きていく姿にあります。塩害によって警察や自衛隊、内閣は機能停止に陥り、二人が住む東京も退廃しています。生きるために、自分より弱い相手を狙った空き巣や強盗が日常茶飯事となっており、まさに弱肉強食の世界となっていました。
塩害で両親を失い、自分を守ってくれるものがいなかった真奈は、食われる側の立場でした。しかしそこを「放っておくのも寝覚めが悪い」と、秋庭に素っ気無い形ながらも助けられるのです。真奈は彼に恩義を感じ、やがて共に生活をすることで想いを寄せていくようになっていきます。
秋庭と真奈の恋の行方、そして二人の運命は、どんな方向へと転がっていくのでしょうか。気になった方はぜひ手に取って確かめてみてくださいね。
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人気No.1恋愛小説家・有川浩のおすすめ文庫作品ランキングベスト10!
有川浩の作品はあらゆる世代からの人気が高く、映像化したものも数えきれないほど。本好き読者による2011年の好きな作家ランキング女性編では、堂々の1位を獲得している作家。そんな有川浩の人気作品をご紹介します。
アメリカの田舎町で出会った少女と吸血鬼の恋を描いたシリーズ作。原書は全4巻ですが、翻訳版では原書1冊を数冊に分ける形で全13巻が刊行されています。訳は小原亜美、イラストはゴツボ×リュウジが担当しています。
「きみは自分のことがぜんぜん見えていない。きみはこれまで会った誰とも違うんだ」(『トワイライト』より引用)
謎めいた美少年エドワード・カレンは、母親の再婚によって田舎町フォークスに転校してきた主人公の少女ベラ・スワンにそう言い放ち、敵意を示し、徹底して距離をとります。初対面の彼になぜそこまでされるのか理解できず、ベラは困惑していましたが、ある時、彼に命を助けられることになり、その際に人間離れした力を目の当たりにします。不可解に思って調べたところ、彼が吸血鬼であることに気づいてしまうのです。
- 著者
- ステファニー メイヤー
- 出版日
- 2005-08-10
吸血鬼に、人間の血を吸う恐ろしい怪物のイメージを持っている方は多いでしょう。ベラもエドワードの正体が吸血鬼だとわかった時、そのイメージが頭に思い浮かび、恐怖し、戸惑っていました。しかし彼の美貌に心を奪われるあまり、ベラは徐々に恋い焦がれていくのです。
一方で、最初はベラを敵視していたエドワードも、次第に彼女に興味を持つようになります。人間と深く交わってはならないという吸血鬼の掟に抵触していると知り、理性では駄目だと叫びながらも、ベラに想いを寄せていく……。そんな葛藤しながらも、互いを激しく求めようとする「禁断の恋」というに相応しい二人の様子が、本作の魅力となっています。
人間と吸血鬼という一線を越えた恋に落ちるベラとエドワード。彼らの周りでは、様々な目的や思惑を持って他の吸血鬼や人間たちが動き出し、次々と事件が起きます。二人の運命と恋の行方から目が離せなくなる作品です。
世界遺産の神社に住んでいたが、東京へと移ることになった少女を描いた荻原規子の現代ファンタジー小説シリーズです。
主人公の鈴原泉水子は、熊野古道の神社に住んでいました。しかし高校進学を機に親など周囲の強引な勧めによって、幼馴染の相楽深行と共に東京へ向かいます。そして修学旅行先で「姫神」と呼ばれる存在と遭遇し……。
- 著者
- 荻原 規子
- 出版日
- 2011-06-23
自分のために学校を決められた深行に対して申し訳なく思っている泉水子と、父親によって同じ学校へ転校させられたために彼女を嫌っていた深行。当初二人の相性は最悪と言っていいものでした。
しかし学園生活を共にしていく中で、迷惑かけたくないと言いながらも、泉水子は深行に頼ってきます。そして一方の深行も、なんだかんだ言いながらも彼女を気にかけており、彼女がピンチの時になると必死になって体を張ることが多くなっていくのです。
最初は最悪な相性だった二人が距離を縮めながら、「姫神」との出会いの後に次々と起こる事件を共に乗り越え、成長していく姿は読み応え抜群です。世界遺産の故郷から東京へと送られた二人の数奇な運命の軌跡を、ぜひ本シリーズで確かめてみてください。
都会に憧れ、故郷の田舎町を離れて奇々怪々なニューヨークにやってきた女性が、魔法使いの会社の社員となって働く物語を描いた作品です。
主人公のケイティはテキサスを離れ、ニューヨークへとやってきました。そんな彼女が見たニューヨークは、まさに「奇々怪々」の一言に尽きる世界。背中に妖精の羽をつけて宙を飛びながら会社に通勤する妖精のOL、時々ちょっくら出かけてきては姿を消す教会の屋根の上のガーゴイル像……。
そんなある時、ケイティは通勤途中の地下鉄でひとりのハンサムな男性を見かけ、ついつい見惚れてしまいます。直後、もうひとりの男性に「自分の会社に来てみないか」と、声をかけられます。その頃、自分が働いている会社における女上司のヒステリーには我慢の限界だったため、男性の会社に転勤。しかしなんとそこは「魔法製作所」と呼ばれる、魔法使いの社員たちが魔法に関わる商品の研究、開発や販売をしている場所だったのです。「魔法製作所」には、地下鉄で見たハンサムな男性も社員のひとりとして働いていて……。
- 著者
- シャンナ・スウェンドソン
- 出版日
- 2006-07-11
主人公の女性は、ごく普通の一般人。魔法が使える訳でもなければ、魔法に関する知識を持っていません。ところが、魔法に対する「抵抗力」を持つ存在として、魔法使いたちの会社に歓迎されたり、魔法を使った詐欺などの悪質な商売を見破ったりします。魔法を主題としたファンタジーで、妖精やガーゴイル、魔法使いといった登場人物が大半を占める中、魔法の知識がない一般人が主人公の立ち位置を占め、活躍をしている点が本作の意外な発想であり、見所です。
こうして、魔法製作所の社員として再スタートを果たし、さらにあのハンサムな男性とも良い関係を持つようになったケイティ。しかし、彼女を待っているのはそんな好ましいことばかりではありません。魔法製作所と対立するある組織との抗争に巻き込まれ、さらにその「抵抗力」を持っていることから、抗争の中心人物とされてしまうのです。その後の彼女がどうなってしまうのか気になった方は、ぜひ本書を手にとって確かめてみてくださいね。
魔法と魔法使いを主題とした世界なのに、どこにでもいるごく普通な一般人の女性を主人公にした本作。不思議でコミカルな物語を、この機会に楽しんでみてください。
今回は、恋愛とファンタジーをミックスさせた作品をランキング形式で紹介しました。興味が湧きましたら、皆さんも一度確かめてみてください。