いがらしゆみこ作品の持ち味は、そのきらびやかな世界観と人物の心理表現の巧みさ。彼女の作品は時を経てもその魅力が色褪せることがなく、新たなファンを獲得し続けています。
1950年北海道旭川に生まれた、いがらしゆみこ。1968年彼女が高校3年生のときに、集英社『りぼん』に掲載された『白い鮫のいる島』で、早くも漫画家としてデビューしました。東京の高校に編入学して卒業した後は、講談社『なかよし』の専属作家として活躍します。
その後も子ども向けの作品だけでなく、レディースコミック誌や女性誌にも活動の幅を広げていった、いがらし。仕事内容も、小説やドラマのコミカライズ、漫画原作など多彩なものになっていくのです。
多くの名作を生み出している人気の漫画家ですが、一世を風靡した名作漫画『キャンディ・キャンディ』(原作者・水木杏子)。同作では、講談社漫画賞を受賞しました。またいくつかの作品は、テレビアニメ化もされています。
今回はそんな大人気少女漫画家いがらしゆみこの、必ず読むべき名作ランキング5をご紹介します。
いがらしゆみこが煌びやかな絵柄で描く、素晴らしくロマンティックな西部劇です。講談社の『なかよし』で、1979年4月号から1980年12月号まで連載されました。
主人公は、3人姉妹の末娘メイミー。彼女は、少年ジョニーに心惹かれていきました。けれどもある晩、ジョニーは突如として西部へと旅立ってしまいます。それから数年後、メイミーの家族も西部に引っ越すことになるのです。メイミーとジョニーの関係は、どうなっていくのでしょうか?
- 著者
- いがらし ゆみこ
- 出版日
子どもの頃、引っ越しなどで生き別れた気になることってありますよね。そしてその人と再会したら、どうなるのだろう……。そんな思いを抱いたことのある人ならば、本作品に間違いなく感情移入してしまうことでしょう。
少女漫画と西部劇という意外な組み合わせの本作は、時が経っても新鮮な魅力を放っています。また、メイミーの朗らかな可愛らしさがとても魅力的です。主人公の目線で語られるこの物語の内容は、銃撃戦があったり殺し合いがあったりと、ただ明るいだけではないのですが、その分、さまざまな感情が深く心に残る作品になりますよ。
知らない人はいない児童文学の傑作。本作も、いがらしゆみこによってコミカライズされています。
ある兄妹が孤児院から男の子をひきとることにしました。けれども、やってきたのは赤毛のアンという11歳の女の子。アンは空想家で感激屋、そしてとってもおしゃべり。そんな彼女は、学校で親友ができたり、「にんじん」と言われて登校拒否したりと、さまざまなことを経験しながら成長していきます。
- 著者
- ["L・M・モンゴメリ", "いがらし ゆみこ", "高橋 美幸", "Lucy Maud Montgomery"]
- 出版日
自分の赤毛にコンプレックスを持っているような、普通の女の子の代表的なキャラクターと言っても過言ではない主人公のアン。そのコンプレックスにどのように向き合っていけば良いのか。多くの少女たちにとって、そのモデルのような作品です。
空想家でロマンティックなアンの視点から語られるこの作品の世界では、思春期の女の子が持つ繊細な感性がとても巧みに表現されています。そんなアンを生き生きと描き出しているので少女漫画家としての力量を感じられる、いがらしゆみこを語るときに外すことができない作品をぜひお楽しみください。
本作は、主人公の名前は一緒なのですが「赤毛のアン」シリーズとは全く関係のない物語です。講談社『なかよし』で、1984年10月号から1986年1月号まで連載されました。
アンの大好きなパパとママは、別居していました。アンはふたりを仲直りさせるために、ボーイッシュな女の子とおしとやかな女の子という2つの性格を演じ分けて、あの手この手で作戦を考えていきます。そこに年ごろの女の子にありがちな恋愛や三角関係などが絡んできて、物語がどんどん複雑なものになっていき……。
- 著者
- いがらしゆみこ
- 出版日
- 1985-05-03
本作は、状況に応じて2つの役柄を演じ分けるアンの姿を描き分ける、いがらしゆみこの画力が光る作品です。また変身願望を持つ人なら、アンの器用な姿に憧れの感情を抱くことでしょう。本作の主人公アンは、多くの女の子を引きつけて離さない魅力を放っているのです。
複雑な人間関係のなかで、アンはいったいどうなってしまうのか?ドキドキの展開が読者を待っています。アンの仲直り作戦がうまくいかなかったり、アンを陥れる罠にひっかかったりもしながらも、次第に強くてしなやかな女性へと成長していきます。逆境を切り抜ける、ひたむきなヒロインの姿が印象的なサクセスストーリーなので、爽快な読後感があなたを待っていますよ。
落合薫の原作で、ナポレオンの妻であるジョゼフィーヌ・ド・ボアルネの生涯を描いた作品です。『プリンセスGOLD』で、2011年10月号より2014年1月号まで連載されていました。
カリブ海にあるマルチニーク島に生まれた、主人公のジョゼフィーヌ。彼女はある日、占い師から「王妃以上の存在になる」と告げられます。激動のフランス史に咲く一輪の薔薇、ジョゼフィーヌ。彼女の壮大な物語が、彼女に生涯仕えた使用人アガトの視点を通して描かれていきます。
- 著者
- 落合 薫
- 出版日
- 2012-05-16
執事カフェなどが流行るなど、お嬢さまと使用人の関係に憧れを持つ女の子って多いですよね。本作は、そんな女の子の夢を叶えたようなお話です。お嬢さまのジョゼフィーヌと使用人のアガトの関係は、深い信頼によって結ばれています。歴史の大きな波に飲み込まれながらも、その中で常にきらきらと輝き続けるジョゼフィーヌ。そしてそれを陰に陽に守り続けるアガト。
いがらしゆみこの持つロマンティックな世界観が、フランス激動の時代のドラマティックさとベストマッチした名作中の名作です。本作を読んだら、誠実で献身的なアガトの姿に恋してしまうかもしれませんよ。
いがらしゆみこの1番の出世作ともいえる作品(原作・水木杏子)。大変な人気作で、単行本の累計発行部数は、なんと1200万部!1976年から1979年にはテレビアニメ化もされました。
物語の舞台は、20世紀初頭のアメリカとイギリス。運命に翻弄されて孤児になった少女キャンディが、たくさんの人びとの愛情を受けながら苦難に立ち向かい、成長していく姿が美しく描き出されていきます。
- 著者
- ["いがらし ゆみこ", "水木 杏子"]
- 出版日
主人公のキャンディは運命に翻弄されながらも、いつも明るくて行動力があり、そんなに美女というわけでもないのですがイケメンたちにもモテモテ。多くの女性の願望を体現したような愛されキャラクターなのです。さまざまな出来事が起こる本作を読んでいると、次第にまるで自分自身がキャンディになったような気持ちを味わうことができることでしょう。
日本だけでなく、他のアジアやヨーロッパなどでも人気を博している、国際的な作品でもあります。日本に住んでいながら、本作を読んだことがないのはもったいなすぎるといってもいい作品です。
いがらしゆみこの世界は、多くの女の子の理想が詰まっています。また、その表現力の高さや物語の完成度の高さは、日頃、少女漫画を読まない人にもぜひ読んでもらいたい作品です。改めて彼女の作品を読めばその新鮮さに驚くことでしょう。「古きをたずねて新しきを知る」という格言が思い出されるような作家なのです。
今回ご紹介した作品のなかで、もし読んだことがないものがあったらぜひ読んでみてくださいね。その面白さは折り紙付きですよ!