「主人公が漫画家を目指す漫画」と言えば、あなたはどの漫画を思い浮かべますか?「漫画家マンガ」といえば、今や漫画界でひとつのジャンルとして成立するほど有名になりました。その中でも漫画家志望のあなたにおすすめの作品をご紹介します。
『DEATH NOTE』を描いた原作者と作家が再びコンビを組んで描いた漫画家マンガ。漫画家が主人公の作品と言えばこの作品を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
主人公は真城最高(ましろもりたか)と高木秋人(たかぎあきと)という男子ふたり組。ただし作中では読み方を変えてサイコウとシュージンと呼ばれることの方が多くあります。絵を描くことが好きで小学生の頃から賞をたくさん取ってきたサイコーと、秀才であり特に文才に秀でたシュージンがふたり一組で人気漫画家を目指すという話です。
サイコーはシュージンに漫画家になろうと誘われますが、最初は乗り気ではありませんでした。そんな折、サイコーがずっと片想いしていたクラスメイト、亜豆美保(あずきみほ)が声優を目指していることを知り、そのうえ亜豆もサイコーを想っていたことを知ります。
亜豆が関わる業界になら進みたいと思ったサイコーは漫画家になることを決意。そしてふたりは、「サイコーが漫画家になって、その漫画がアニメ化したら結婚しよう。ただしそれまでは直接会わないようにする」という約束を交わすのでした。
- 著者
- 小畑 健
- 出版日
- 2009-01-05
同年代の天才ライバルやコンビ解散の危機、漫画に対しての風評被害など数々の困難に立ち向かい、厳しい漫画界を駆け上がっていくふたり。作中では彼らが描いた漫画の内容が細かく描かれており、ふたりで相談しながら作品を作る描写が多いため、1から話ができあがっていく様が詳しくわかります。
また、少年ジャンプだけではないですが、漫画雑誌には読者にどの作品が面白かったかを問うアンケートがあることが多く、その順位によって掲載順の変更や打ち切りなどが決定されたりします。『バクマン。』ではそんな内情や出版社との契約制度なども詳しく描かれています。
ジャンプ編集部の裏側が事実に基づいて描かれており、社員や関係者でもない限り知りえない話が盛りだくさん。作品に登場する編集者達も実在の人物をモデルにしてるそうなので、ジャンプに持ち込みを考えている人にとっては最高の参考書ですよ!
漫画家の父を持つ青年、境田町蔵と編集者の父を持つ青年、長谷川鉄男がコンビを組み、漫画家を目指す物語です。商業漫画の世界を戦場に例え、「戦場」と「線上」をかけたタイトルを見るだけで面白そうだと思いませんか?
町蔵は仕事ばかりに集中して家庭に愛情がない漫画家の父親を嫌っていますが、話を書くことは好きなため小説を書いています。ある日、嫌っている父親を褒めた鉄男に怒り、彼の書いた漫画を破ってしまった代わりに自分の小説を破ってくれと差し出しました。
鉄男は漫画を描く才能に溢れた町蔵の同級生です。彼の父親は編集者で、同じく家庭を省みない人物。漫画家として町蔵の父親に憧れているものの、幼少期に描いた漫画を母親に否定されたことから漫画を描く意欲がわきません。そんな中で母親の病気の治療費のため漫画を描こうとしますがやはり上手くいかない……そんなときに町蔵の小説を読んで感銘を受けます。
「こんなものを破くなんてできないよ。俺にはできない」
鉄男が発したこの言葉からふたりの道は交わっていくのでした。
- 著者
- 日本橋 ヨヲコ
- 出版日
- 2016-08-12
小説を破るどころか境田の話にほれ込んだ長谷川は、一緒に漫画を描こうと誘います。作風が嫌いな父親に似ているがそれよりも優しくていい、と褒められたことに心動かされた境田はこれを受け入れました。原作と作画に分かれ、「自分たちが震える作品を描こう」と決めたふたりの成長していく様が描かれます。
ただし、ふたりが歩む道のりには様々な困難が待ち受けていました。漫画を描くことの難しさを実感し、さらに有名漫画家と敏腕編集者である父親という壁。そしてあることがきっかけで二人はコンビを解散します。
困難に次ぐ困難、成功からの没落、父親との確執……。
タイトルに「戦場」と入っているのに納得がいくくらい、漫画を書く苦悩や漫画家であることの難しさが多く描かれています。「中途半端な覚悟で漫画家にはなれない」と言われているような気になります。
漫画を描く際の技術面などにはあまり触れていませんが、キャラクターが皆熱い思いを持っており、発する言葉に重みがあります。漫画家を目指す人にとって、「漫画家になるにはこれくらいの熱量が必要なんだ!」と奮起させてくれる作品です。
1980年頃の舞台、主人公は芸大に通う焔燃(ほのお もゆる)。単行本の冒頭で「この物語はフィクションである」と書いてありますが、作者のプロデビュー前の実話を元にした作品になっています。
数々の有名作品が連載、アニメ化されていたことから、日本の漫画、アニメ業界の変革期と呼ばれたこの時代。巨匠だけでなく数多くの新人漫画家が人気を博していました。
燃はそんな時代だからこそ、プロの漫画家になるなんてたやすいと自信を持っています。そしてサークル活動や空手道場に通ってみたり、自動車学校に通ってみたりと漫画を描く描写が出てきません。
- 著者
- 島本 和彦
- 出版日
- 2008-02-05
そんな性格のため、いざ漫画を描いてみようとした際に原稿用紙の枠線の引き方すらわからず「プロの敷居は意外と高いぜ!」と驚いたり、後に『エヴァンゲリオン』のアニメ監督となる大学の同期、庵野秀明との才能の違いに落ち込んだりします。
ただし、何度も挫折しそうになりながら、何度も起き上がるのが燃なのです。根拠のない自信を持ってたくましく生きる燃は、思わず応援したくなる熱い男。漫画家になるにはこれくらいのポジティブさが必要なのかもしれませんね!
実在の人気漫画について熱く語られるシーンや漫画トリビアが多いことも本作をおすすめする理由。有名漫画家のあだち充や高橋留美子の作品を名指しで批評しており、漫画家が他の漫画家をどう思っているかを知られる貴重な作品です。漫画好きにはたまらない面白さに、「やっぱり漫画って面白いな」と思えること間違いなし!
作品自体が面白いのはもちろんですが、絶対に諦めないという姿に勇気をもらえます。
本作品は週間少年ジャンプが黄金期と呼ばれていた1980年代に、同誌で連載していた巻来功士が描く当時の舞台裏を描いています。『ドラゴンボール』『北斗の拳』『ジョジョの奇妙な物語』等、漫画界を牽引してきた作品たちがずらりと連載していた時期に同じ誌面に掲載されるというのは大変なことだったでしょう。そんな漫画界にとっての激動の時代がリアルに描かれています。
漫画家の自伝本なだけあって、多くの実在する漫画家が登場します。まず作者の学生時代編では、『シティーハンター』や『キャッツアイ』の作者、北条司が同じ大学の生徒として登場。コンクールで苦戦する巻来に比べ、北条は大学卒業と同時に連載が決まっています。
次いで『北斗の拳』の作者である原哲夫のアシスタントをするエピソード。このときには巻来はデビューが決まっていましたがジャンプではありませんでした。初めてジャンプで連載を持つプロの現場に足を踏み入れ、その大変さが描かれています。
そして、ライバルとして登場するのが『ジョジョの奇妙な物語』作者の荒木飛呂彦。作者の巻来功士は『ゴッドサイダー』を引っさげ、荒木飛呂彦と同時期にジャンプで連載を開始しましたが、当時の副編集長がホラー作品は1つでいいと発したため、この2作が生き残り争いをしたのです。
- 著者
- 巻来功士
- 出版日
- 2016-02-07
このように様々な有名作家が登場しますが、その描かれるキャラクターに注目してみてください。北条司は漫画連載も決めたうえに彼女がいたりという大学生活を謳歌している様子が描かれ、原哲夫は『北斗の拳』からのイメージでいうと男らしい男なのかと思いきや綺麗な顔立ちの美青年だったそうです。そして荒木飛呂彦はとても社交的で、ライバル同士なのに笑顔で話しかけてくるさわやかな青年。
このように、普段知りえない大御所漫画家の裏側が見られるのもこの作品の面白いところです。そして、巻来はこんな漫画家たちとの出会いによって変革を遂げていきます。
この作品で主に舞台となる少年ジャンプは、昔も今も漫画家を目指す人にとって憧れの舞台です。巻来も連載するなら少年誌!と決めていましたが、彼は元よりダーク要素が強い作品を得意としていたため、青年誌に移籍しました。そこからファンも増え、現在のように人気作家となったのです。
一般読者はあまり想像しないところですが、漫画は漫画家だけの力ではなく担当編集者の能力や人格が作品の出来に大きく影響するのです。担当が替わったとたん人気が出た、もしくは打ち切りになったなんて話は珍しいことではありません。
いい編集者に当たれば良し。ただしもちろん相性が悪いこともあり、その場合はとても苦労することでしょう。そんな編集者とのやりとりや駆け引きなどが多く描かれています。さらに、20ページの漫画を描くには何コマ必要なのかなど、技術的な面にも触れられています。漫画家になる前の参考書として是非読んでみてください!
主人公は高校生の伏見紀人。よくいる高校生らしく、日常はだらだらと過ごしていますが、漫画家になるという夢への情熱だけは人一倍持っています。
ある日憧れの漫画雑誌の出版社、「トーラス」に持込をしたものの酷評され、諦めたほうがいいとまで言われます。しかし彼の情熱は消えず、更に奮起。描きあげた作品はその年の新人期待賞を受賞するのです。
ただ漫画家への道が開けたと思ったのも束の間、同い年で大賞を受賞し、審査員からも絶賛される強豪ライバル、瀧カイトの登場で、その才能の違いにショックを受けます。しかし紀人は情熱の男。ライバルである瀧のアシスタントを勤めたり、作品の路線変更をしたりと自身のプラスになることにどんどんチャレンジしていくようになり、漫画家への道を駆け上っていきます。
紀人はインパクト溢れるキャラクターに囲まれている一見平凡な人間ですが、変に気取らずありのままの姿をさらけ出す姿は、人間らしさが溢れたもの。そして何事にも潔よいほどに全力投球な性格はつい後押ししたくなります。漫画が入選したときには思いっきり喜び、編集者に酷評されれば思いっきり落ち込む姿に思わず応援したくなることでしょう。
- 著者
- ハロルド 作石
- 出版日
- 2013-05-17
また、この『RiN』は漫画のことでなく、恋愛やスピリチュアル要素なども入った内容盛りだくさんの作品。ヒロインであり要所に登場する石堂凜は超能力者であり、人の過去や未来、オーラなどを見る能力を持っています。紀人とは前世で出会ったことがあり、物語が進むにつれてふたりの前世も明らかになっていくところも必見です。
また、紀人の家系に遺伝される病気と闘う紀人の姉、凜と出会う前から憧れていた同級生、チャラい担当編集者、謎の美人占い師、そして伝説の漫画家……。個性的で、ストーリーに欠かせないキャラクターが代わる代わる登場し、物語を盛り上げます。夢、恋愛、友情、ギャグがテンポよく切り替わり、「漫画家マンガ」としてだけではなく、また別の楽しみ方が出来る作品です。
漫画家志望の人に特におすすめな点は「漫画家になるためにどんな努力をするか」が描かれるシーンが多いところ。紀人が最初に持込をしたときに「線が汚い」と言われたことから、線を引く練習をイチからやり直したり。
またライバルの瀧は漫画家ゆえの不規則な生活に耐えるために毎日ランニングをしたり、さらに原稿をあげたあとは必ず映画を1本見て、仮眠をとったあとに本を1冊読んでいる……。いい漫画を描くためには漫画を描いているだけじゃだめだ!とも教えてくれます。
『かくかくしかじか』は、2015年に、マンガ大賞とともに、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した作品。筆者が美大に進み、彼女の人格形成におおいに貢献した恩師との出会いと交流、そして大学時代を描いた、ノスタルジックな成分の多い1冊です。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2012-07-25
現実世界での涙に対する「照れ」と、悲劇的な瞬間ほどなぜか淡々としてしまう彼女の人間味が、自分自身の記憶のように自然に染み込んできます。
なぜ、東村アキコは、驚異的なスピードで力のある作品を生み出すことができるのか? その体力・精神力の核となった成長の過程が丁寧に描かれています。
もちろん、いつもの、「秀逸なショートコント」を見ているような笑いも散りばめられて、非常に読みやすい作品でもあります。「ノスタルジー」を描きつつ「無駄な涙」を丁寧に排除し、背筋がピンと伸びるような恩師に対する「敬意」を描いた作品です。
漫画家になりたい人にとって大いに参考になるであろう作品ばかり!また、例え漫画家志望でなくても漫画好きであれば楽しめること間違いなしの作品です。漫画のことをもっと知って、いっそう漫画ライフを楽しんでみませんか?