秀良子のおすすめ漫画ランキングベスト5!絶妙な空気感が良い

更新:2021.12.17

派手さはないものの、日常の中で起こる心の揺れを丁寧に描く作家秀良子。彼女は丁寧な作風で良質な作品を生み出し続けています。そんな絶妙な空気感が心地よい秀良子のBL漫画も含めた5作品を、今回はランキング形式でご紹介いたします!

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空気感を生み出す作家、秀良子

秀良子が漫画を描き始めたのは小学校低学年から中学年の頃。『BANANA FISH』や『アーシアン』、『寄生獣』、『究極超人あ~る』等の作品を読んで育ちました。BL作品との出会いは『富士見二丁目交響楽団』シリーズを中学の頃友人に借りて読んでいたからだそうです。

2010年に一迅社からBL漫画『イケメン君とさえない君』でデビュー。そのデビュー作から既に独特の空気感を生み出していたのは読んでいた作品のどれもが代えがたい空気感があるものだったからではと思います。

BLジャンルの中で秀良子の作品はというと派手な方ではなく反対に地味な方だと言えます。しかし物語や登場するキャラクターの繊細な心理描写でファンをしっかりとつかんでいきました。その繊細さが過激で派手なBLで慣れたファンたちをも引き込む力となったのでしょう。

今回ご紹介する作品のうち『宇田川町で待っててよ』は代表作と呼ぶべき作品です。「このBLがやばい!2014年版」で5位に選出、ドラマCD化そして実写映画化もされています。

その他にも少年誌等活躍範囲を広げている秀良子。BL初心者にも読んでもらいたい作品を含めた5冊をご紹介いたします。

5位:ポジティブ×ネガティブ=バカップル

『ネガティブ君とポジティブ君』は藤原(メガネネガティブ)と橘(茶髪ポジティブ)のカップルを描いたBL漫画。ただのカップルではありません、バカップルです。

橘のポジティブさがすごくて、中盤までは「少しだけ度が外れた友情モノ」として読もうとしたら読める気がする作品です。中盤からは学生モノ(思春期)らしく、どうしたら男同士は出来るのかという命題に悩んだりしています。

藤原のネガティブさも本当に絵にかいたようなネガティブさ。そこへ対橘専用?の心配性が加わっているので、「もう少し前向きに考えたらいいと思うよ?そんなだから急性胃炎で倒れるんだよ。」と肩をポンとしてあげたくなります。

著者
秀良子
出版日
2011-03-15

秀良子はよく正反対の人間をカップルにさせますが、この2人はとても解りやすいですね。しかも表紙だけ見るとネガティブ藤原の表情が嫌そうでポジティブ橘の笑顔がその差を際立たせています。

でも、藤原は頑張れば背筋も伸ばせるし笑顔だって作れてコミュニケーションだってとれます。反対に橘は人に頼らない癖が幼少期についてしまったのでポジティブで天真爛漫に見えるけど実はそうでもないんです。

そんな2人が出会った番外編は巻末に掲載されています。本編を読んだ後にこの番外編を読むと、胸がぎゅうっとなるくらい切ないです。

過激なシーンも濃いシーンもないのでBL初心者に読んで欲しいおすすめの1冊です。

4位:好きすぎて世界を憎みたくなる恋

『リンゴに蜂蜜』の続編『彼のバラ色の人生』が4位です。

「ふたりはたぶん付き合ってるような なんかそんな感じです。」
(『彼のバラ色の人生』より引用)

と付き合ってるのか違うのか非常にふわっとしたところから始まるこの作品ですが、コマノと結ばれた後、夏樹が考えたのはこの恋の終わりでした。普通はこれからの幸せな出来事とかを考えるかと思います。しかしコマノは元々ノーマルな男性で、夏樹はゲイ。何かあれば男女の恋より簡単に終わりがきてしまいます。

コマノの母親の襲来後、別れないと宣言するもそこから夏樹はただひたすらコマノとの思い出を作ろうと考えます。思い出があれば寂しくないから、自分には結婚も子供も無理だから、と高校の時に感じたという夏樹。……もうここでツライです。

著者
秀 良子
出版日
2012-05-20

「好きだ お前が好きで 好きで 好きで
世界を憎んでしまいそうになる」
(『彼のバラ色の人生』より引用)

夏樹は今までの経験から、何でも1人で抱え込んでしまうのでしょうが、恋愛は2人でするものだと思います。

「なんで俺の未来を夏樹さんが決めんの? 
俺の未来は俺のもんなんだけど
俺の気持ちを無視して勝手に決めないでよ」
(『彼のバラ色の人生』より引用)

このコマノの台詞はその通りだと思います。勝手に決めて勝手に別れる覚悟までされてるというのは勘弁してほしいですよね。

『リンゴに蜂蜜』よりもしっかり恋愛漫画です。当然それなりにやることはやっていますので、BL初心者向けとは言い難いです。言い難いんですが……読んでいくうちに夏樹の感情とシンクロして、切なくて胸が苦しくなるというのは読んで体験してもらいたいです。

3位:自腹×オノマトペで伝わる美味しさ

『おしゃべりは、朝ごはんのあとで。』この作品はBLではなく、秀良子自身が自腹で美味しい朝ご飯を食べるべく東奔西走するコミックエッセイです。

TVのバラエティ番組の様に勝負に負けたら自腹ではなく、最初から自腹ありきの企画です。普通はそう言った企画なら近場で美味しいものを探そうとすると思います。しかし秀良子は違いました。1回目から自腹でフランスはパリに朝ごはんを食べに行っています。

ラデュレでの朝食では同行した友人が食べているフレンチトーストを口にして

「じゅんわり ふんわり もっちり…」
(『おしゃべりは、朝ごはんのあとで。』より引用)

著者
秀 良子
出版日
2013-09-30

感想を全てオノマトペ(擬音語)で表していますが、読んでいるこちらにもきちんと伝わってきます。ああ…美味しそう…と読みながらお腹が減ってきます。

2巻になるとオールオノマトペではなく、しっかりした食レポになっていくのも読んでいて楽しいところのひとつです。食レポがしっかりしていくなか、美味しさのあまりまた語彙力が下がってオノマトペが出てくると「それだけ美味しいんだな」と判断できて面白いです。

食べ物だけではなく、その取材先の人々が醸し出す空気感をも味わえる作品となっています。

2位:金曜日はカレーの日

主人公の松田夏樹は大学2年生。付き合っていた年上営業マンが結婚するからと振られたところから物語は始まります。

夏樹は1学年下のコマノからカレー部に入らないかと誘われます。最初女性だと間違って声をかけたコマノですが、なんだかんだと夏樹に付きまとうようになります。そんな時、大学までやってきた件の営業マンとの痴話げんかをコマノに目撃されました。

しかし、そこでコマノは引くこともなく、逆に深くつっこんでくる訳でもなく今まで通りに接してきます。夏樹にしてみたら今まで身近にいなかった種類の人間です。

著者
秀 良子
出版日
2011-02-20

さて、夏樹の性的指向は幼い時から男性に向かっていました。そのことで、からかわれたり陰口をたたかれたりしています。

小中学校で疲れた彼は県外の高校へ進学するも好きになった同級生を3年間眺め後悔し、大学で好きになった人はカワイイ女子にもっていかれ最終的には

「しばらくして俺はネットで知り合った10歳上の営業マンにすべてをささげた 
はじめて男に恋愛対象として扱われて
手足がしびれた」
(『リンゴに蜂蜜』より引用)

という恋愛をした結果、その営業マンは結婚するけど付き合ってくれとか言ってくる始末です。そんな営業マンとのことを吹っ切らせてくれたコマノ。

自分が作るリンゴと蜂蜜が入ったカレーは甘くて美味しいとコマノは言います。だから今度は夏樹がコマノと一緒に笑顔でカレーを食べられることを願いつつ、是非続編の『彼のバラ色の人生』を読んでいただきたいなと思います。

1位:愛されワンピで初めて恋を知る

学校では俗に言うリア充グループに属している八代が女装をして繁華街の雑踏で立っているところを、百瀬が見つけます。

「骨ばった肩で男だと気づいた
顔をみて八代(クラスメイト)だと気づいた」
(『宇田川町で待っててよ』より引用)

何故八代が女装をしているのかと色々考える百瀬ですが同時に八代に対して、制服を持ってきたり付き合おうと言ったりと行動が非常にストーカーっぽい……。しかし女装した八代のことをすんなりと受け入れて更に「カワイイ」と言ってのける大物とも言えますね。

八代が女装を始めたきっかけは半年程前に付き合っていた彼女に女装させられたことでした。そこから女性用ファッション誌を読んだり、通販で服を購入したり……。百瀬にバレたことで「やめよう」と思うのにやめれないところまで八代は女装から抜け出せなくなっていて……。

著者
秀良子
出版日
2012-10-25

スクールカースト上位にいる八代と下位で陰キャラで何を考えているのか解らない百瀬。好みも何もかもが違って八代が女装をしていることさえ知らなければ、きっとただのクラスメイトで終わっただろう2人の青春ラブストーリー。

2位と4位で紹介した『リンゴに蜂蜜』『彼のバラ色の人生』の夏樹がゲイであると最初から提示されているのに比べると、この2人はただの男子高生です。ちょっと元カノが頭がゆるかったせいで女装に目覚めてしまった八代と、八代の存在を眩しく思っていた百瀬。どちらも最初から男性に性的指向があったわけではありません。

だからこそ気になっても認めたくない、認めたくないけれど自分が求めているものが何なのか解ってしまっている八代の葛藤はリアルに感じます。このリアルさとBL特有のファンタジーっぽさの匙加減が絶妙で独特の空気感を生み出しています。

空気感を生み出す作家、秀良子の代表作。この機会に是非読んでみてはいかがでしょうか。

いかがでしたでしょうか。秀良子作品はBLでもふんわりと始まりを匂わせるものが多く、少々物足りなさを感じるかもしれませんが是非1度手にして頂けたら嬉しいです。

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