ラビンドラナート・タゴールはインド人思想家にして詩人です。人間というものの本質を見極めようとした彼は、時には温かく時には厳しいことがで叱咤激励してくれます。そんなタゴールのありがたい言葉が聞けるおすすめの書籍をご紹介!
インドの思想家で詩人のラビンドラナート・タゴールは人格者として有名で、多くの尊敬を集めてきました。アジア人で初めてノーベル文学賞を受賞したことで有名です。他にもインドとバングラディッシュの国歌を作詞作曲していたり、学校を設立していたりと多くの功績を残しています。
タゴールは1861年にベンガル州カルカッタで生まれました。父親は宗教家でインドでも名が知られています。幼い頃は落第生で、当時イギリスの統治下にあってイギリス流の厳格な教育方針に馴染めず、何度も退学を経験していました。それからイギリスの大学に進学したものの、卒業にはこぎ着けられませんでした。その後はインドに戻って父親の設立した学校で教えています。
日本の自然を愛する美意識に感銘を受けており、日本人との交流も多かった彼。同じ思想家の岡倉天心とも交流がありました。それだけ日本を愛していたからこそ、第一次世界大戦での西洋に毒されたようなアジアの支配権の拡大などの行動も批判しています。
『ギタンジャリ』は100編にも及ぶ英文詩を載せた詩集です。タゴールがノーベル賞を受賞するにあたり、決め手となった記念すべき作品でもあります。神と愛をテーマにタゴールの人生観を書いた作品です。
- 著者
- ラビンドラナート タゴール
- 出版日
思想家が体験し見てきた生きる意味や物事の本質についての人生観を読むことにより、自分の知らなかった人生観や真実は勉強になります。たとえば「私が願うのは……」では何かを成し遂げようと頑張っている自分を慰めてくれるのではなく、自分自身で解決する力を与えてくださいと書かれたもの。これは神頼みではなく、神と共に歩み自分自身で解決する力を身に着けていかなければならないという宗教観の現れです。
原文と解説付きで初心者にも易しい作りになっているので、思想家の詩だからと言って敬遠せずに、手軽に手に取れる内容となっています。
『ベンガルの苦行者』は詩聖と呼ばれたラビンドラナート・タゴールが書いた寓話的な詩にベンガル出身の女流画家による絵を添えた絵本作品です。不死を求めて修行する若者と焚き木拾いの少女の交流が描かれています。若者の苦行を少女が温かく見守る愛の物語です。
- 著者
- ラビンドラナート タゴール
- 出版日
タゴールの詩が短い話にまとまっていて、難しいというイメージのある詩が身近に感じられる作品です。散文詩という一般的に使われるような文章で書かれているので、分かりやすく読める内容となっています。
不死という強大な力を手に入れるための苦行を続けた男が、少女との交流を通して愛を育む中でそれ以上に大切な物を見つけ行く過程が優しく描かれた本作は、これまで修行だけに明け暮れていた若者のもとに木の精霊のような娘が現れて無償の愛を捧げてくれます。その愛によって若者は自分に必要なのは不死という絶大な力以上のものだったと気づかされるのです。
仏教の生まれたインドの東洋ならではの神秘さを持ったファンタジックな絵は、詩聖の神々しい散文詩とマッチしています。まさに絵と詩が一体となった絵本です。
タゴールは思想家として1930年頃に世界各国を回り、講演を行っていました。その講演の内容をまとめたのが『人間の宗教』という著書です。タゴールの宗教観や人生観が散りばめられています。当時の著名人と多くの交流を持っていたタゴールがアインシュタインと行った会談が最後に付録として載せられているのも興味深いです。
- 著者
- ラビンドラナート タゴール
- 出版日
創作活動を続けていたタゴールだからこそ辿り着いた答えが書かれています。創作活動が陣痛を伴う難産だと言及したタゴール。彼は、そうした創作活動のひとつひとつが輝きを発し、その輝きが星々となって宇宙の歴史を物語っているのだと語っていました。思想や詩、宗教など常に何かを模索し生み出してきたタゴールだからこそ語れる魅力にあふれています。
また哲学的な内容が豊富にあり、勉強にも1冊。個人において真実を追い求めるなら有限であるが、人間全体として求めれば真実を知る可能性は無限にあるなど、思想家ならではの人間についての哲学に触れることができるのも魅力です。
『迷い鳥たち』はアフォリズムと呼ばれる短い詩によって人生や社会対する見解を現す形を取っています。ノーベル賞受賞のきっかけとなった『ギタンジャリ』同様に、タゴール自身が英文で書いた詩が日本語に訳されました。
- 著者
- ラビンドラナート タゴール
- 出版日
思想家という人生について考え続けた立場にあるタゴールが残した詩はシンプルな短い文であるからこそ、強烈な一撃となって読者に影響を与えてくれます。いつも見慣れた風景でも、まったく別世界に見えるような目から鱗の内容。世界中を回ってみたタゴールの価値観を知ることにより、手軽に世界を回ったような体験ができるのも本書の魅力です。
タイトルの『迷い鳥たち』が示すように、まるで自然の中を旅するような感覚に浸れます。それは歌を披露しては飛んで行く鳥たちや、紅葉した葉が落ちるさまなど、自然美を称えるような詩も多く載っているからです。本書に載っている詩がタゴールの日本滞在中に書かれたということが良くわかります。四季折々の自然美を大切にする日本人に感化されて書かれた詩はどこか私たち日本人の肌に近い印象を与える内容です。
『もっとほんとうのこと-タゴール寓話と短編』は晩年のタゴールが孫娘のために遺した短編10篇をまとめた短編集になっています。思想家として活動していた詩聖が幼い孫を読者に想定しているので、ストレートでわかりやすい内容です。
物知りな樹との対話をテーマに扱った「生命と心」やカブールから来たロホモットという男と幼い頃から親しくなった女性の交流が書かれた「カブールの人」、そして作家が孫娘に世の中にはほんとうのことともっとほんとうのことがあると人生観を話して聞かせる表題作の「もっとほんとうのこと」など優しくも厳しいほんとうのことが詰まった作品です。
- 著者
- ラビンドラナート タゴール
- 出版日
本書は子供でもわかる優しさと大人でも楽しめる厳しさという二面性を持った詩集です。その優しさの中で生きることや、真実との向き合い方をおじいちゃんの語り口で子供たちに教えてくれます。物知りな樹であったり、妖精であったりと、子供が楽しめるファンタジー感あふれるお話です。
そんな優しさとは反面に皮肉や宗教観も書かれており、大人にも突き刺さるようなことが書かれています。特に「神の絵」は信仰心と宗教に関して理論的に噛み砕いて教えてくれ、大人でも楽しめる内容です。小さな頃から大人に至るまで一生付き合える著書になっています。
思想家として人生の本質を追い求め続けたタゴール。そんな彼が模索という探究をしながら書き記し続けた詩が後世に残されました。人生について時には優しく、時には厳しく書かれた指南書のような詩集はおすすめです。