ラノベには様々なジャンルが存在しますが、作中の登場人物は10代が中心です。それはラノベが青春の要素を作中に多く取り入れているからではないでしょう。今回はその中から小学生が登場する作品をランキング形式でご紹介します。
まず題名からして誤解の無いよう説明させていただきたい本作。ダブルミーニングを含んでの題名で、その由来はバスケットボールの和名である篭球(ろうきゅう)と、休部(きゅうぶ)をかけての造語です。本作では湊智花をメインヒロインに、小学校女子バスケットボール部の部活動が描き出されていきます。
存続危機だった慧心学園女バスの臨時コーチを主人公の長谷川昴が引き受けたことで物語は動き始めます。昴は高校1年生で現役のバスケットボールプレイヤー。しかし自身の部が上級生の不祥事により休部となっていることから、様々な葛藤の末にコーチを引き受けることに。プレイヤーとして知略で勝負するタイプの昴はコーチに適任で、見事に廃部寸前の慧心女バスを導いていきます。主人公は現役のプレイヤーとしてコーチをすることに葛藤がありつつも、休部により自暴自棄だった自分に立ち直る切っ掛けをくれた慧心女バスを大事にも思っていたのです。
- 著者
- 蒼山 サグ
- 出版日
メインヒロインの湊智花は、主人公昴に淡い恋心を抱いていますが、鈍感な昴は中々その想いに気付きません。そもそも昴自身の部活の不祥事の原因として部長が小学生と交際したからという話があり、心理的な壁は相当高いものがあるのです。
小学生と高校生の交際と聞くとちょっと穿(うが)った見方をしてしまうでしょう。しかしヒロインの湊が小学6年生、主人公である昴が高校1年生ということから、年の差的に言えば3、4歳ほど。倫理的道義的な観点から様々な意見もあるかとは思いますが、3歳の差なら云々という考えもあるかもしれませんね。
明らかにロリータコンプレックスを題材の1つとし葛藤を描いている本作ですが、それ以上にバスケットボールのスポ根というジャンル分けが正しいように感じます。というのは、物語の比重として恋愛よりも部活動を中心に語られている印象だからです。当然萌え要素も多分にあり、可愛くて魅力的な女の子が沢山登場する本作ですが、いざ読んでみると、意外にもスポ根要素が詰め込まれているため良い意味でビックリするかも!?
聖クロニカ学園を舞台とした友達が少ない登場人物たちの青春物語です。その友達が少ない登場人物達が自分達のために「隣人部」を創設し友達を作っていこうという作品で、とにかく面白いキャラクターで話が盛り上げられていきます。
主人公羽瀬川小鷹は、ヤンキーのような外見から友達が全くいません。実際にはハーフによる金髪なのですが、ハーフの要素がそこにしか現れなかったことに小鷹の悲運はありました。顔はそのまま日本人の小鷹は金髪の日本人というかわいそうな外見になってしまったのです。しかしその実、仲間想いで自己犠牲も厭わない素晴らしい男なのですが……。
ヒロインの一人である高山マリアは、銀髪碧眼の10歳の幼女で隣人部の顧問。メインキャラクターの中では唯一、生徒ではなくシスターとして聖クロニカ学園に勤務しています。飛び級ができるほどの天才で、その才能ゆえに他人を見下す悪癖があり、友達が全くいません。小鷹のことを好いていて様々なアプローチをしますが、小鷹には全く伝わらずに悲しみに沈むことも……。
また別のヒロインの三日月夜空は、類まれな美貌を誇る割に、その不機嫌そうな振る舞いや極度の愛想のなさから友達が全くいません。実は小鷹を誘って隣人部を創設したのもこの夜空。どうやら過去に小鷹との接点があったようですが……。
そして3人目のヒロインとしてご紹介したい人物は、柏崎星奈(通称、肉)。彼女は金髪碧眼、容姿端麗、成績優秀となんでもできる完璧な超人です。しかし上から目線の言動や極度のナルシストが相まって、友達と呼べる人間は全くいないのです。そんな彼女は小鷹に恋心を抱きますが……。
- 著者
- 平坂 読
- 出版日
- 2009-08-20
この他にも一癖も二癖もあるキャラクター達が登場する本作ですが、その誰もが自身の強烈なキャラクターによって友達がいない、ないし多くありません。
また銀髪碧眼の幼女高山マリアに関しては、天才ゆえに両親から気味悪がられ愛情を十分に受けてこなかったことが、その後の人格形成に影響している節があります。しかしマリアはその愛らしい言動からファンも多く、作中に関しても小鷹に対してお兄ちゃんと呼ぶなど「萌え」の要素を非常に沢山含んでいるキャラクター。ですから女子小学生が出てくるラノベをお探しの方にはぴったりかもしれません。
隣人部の活動を中心に恋模様など青春を描いていく本作は、自らの個性を大事にしつつも、そのことで生じる周りとの軋轢に苦しんでしまう学生の苦悩も同時に描写されています。自分の個性や友達関係は学生時代、多くの方が悩んだことですよね。そういった面も描き出しつつ、主人公小鷹を中心に繰り広げられる青春ラブコメディーをぜひお楽しみください。
言わずと知れたライトノベルの金字塔。その独特な世界観や個性的な台詞回しは一度読んだら病み付きになります。
本作の世界観は、日本が舞台。「怪異」という奇妙な事象に関わった少女達と出会い、その事件を解決していくという物語です。主人公である阿良々木暦は「怪異の王」と呼ばれる吸血鬼に咬まれた元吸血鬼。紆余曲折を経てほぼ人間に戻った阿良々木は、「怪異」に引き寄せられるように様々な事件に遭遇していくのでした。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2006-11-01
本作については勧善懲悪の妖怪退治もの、というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実際「怪異」と対峙してバトルが起こるようなことは、あまりありません。あってもアクション自体に重きを置いてないようには感じます。そのような中で本作最大の魅力は、言葉の掛け合いにこそあるのではないでしょうか。作品自体に関しても登場人物同士の会話が主体になっているのです。
また主人公暦の会話相手が限定されている点も、本作の特徴の一つ。特筆して多いのは戦場ヶ原ひたぎ、次に羽川翼、そして八九寺真宵です。とりわけ第2話「まよいマイマイ」から登場する八九寺真宵との会話は秀逸なのです。
「話しかけないでください。あなたのことが嫌いです」「……………」(『化物語』より引用)
道に迷っている八九寺に、暦が親切心から話しかけるシーンです。この後の軽妙な掛け合いの魅力は、実際読んでみないとお伝えすることができません。ぜひ「一人」の時に読んでいただき、確かめていただきたいと思います。一人でというのは、周りに人がいるとニヤニヤしているところを見られることになりますからね。
さらに八九寺というキャラクターに関しては、会話の面白さだけでなく、作者が八九寺を小学校高学年の見た目と設定したことにも面白さがあります。ツインテールの愛らしい容姿と、冗談を交じりのちょっとエッチな会話が八九寺というキャラに特徴ある魅力を持たせているのです。
そんな魅力的なキャラクターが数多く登場する本作ですが、作者である西尾維新は『化物語』を100%趣味で書いた本だと評しています。確かにどこか商業的な香りが薄いような感覚を受けるのです。しかしこういったどこかインディーズ的なノリも相まって本作品の魅力になっているのではないでしょうか。
バトルがないファンタジー世界をコンセプトにした作品です。作中における優劣を全てゲームによってつける設定は、ライトノベルにおいても新しい試みだったのではないでしょうか。
現実世界における天才ゲーマー「 」(くうはく)は空と白による義兄妹のコンビで、あらゆる手段を用いても誰も絶対に勝つことができません。そんな彼らに、テトと呼ばれる送り主からメールが届きます。そのメールを発端に異世界へと召喚されたふたりは、全てがゲームで決まる「盤上の世界」でその頭角を現していき……。
ライトノベルにおいて異世界へ召喚される通称「異世界もの」はそれほど珍しくありません。本作においても異世界に召喚され、その世界の事件に関わっていく……。と、ここまでは本道ですが、冒頭先述した通り、対戦方式に直接的なバトルを用いないことに、本作最大の斬新さがあるのです。
ゲームによる勝敗はともすれば、緊迫感が少なく物足りない印象を受けがちですが、本作においてはそれが直接世界の行く末に影響を与えてしまうのです。このようにやり直しの効かない真剣勝負としてゲームを描くことで、作中に真剣な緊迫感が生まれていきます。
また登場人物については、キャラクターや関係性に特徴があります。主人公空が18歳に対して、ヒロイン(もう一人の主人公)白は11歳と少し年の差が離れています。しかし白は超天才的な頭脳をもって精神的な幼さを少し感じ難い設定になっているのです。その分、時折見せる年相応の反応は可愛らしく、義兄の空に淡い恋心も抱いています。
主人公とヒロインが義兄妹で、しかも妹は兄が好きなど多少倫理的な問題は感じられますが、品行方正なばかりでは物語が面白くありません。さらにコメディタッチな描写も多く、楽しみながら読める作品に仕上がっていますよ。
主人公である九頭竜八一は、16歳の若さで将棋界の超メジャータイトルである竜王を奪取します。当然作中においても突拍子がない出来事として話題になりますが、別タイトルで10代での戴冠は実際現実にありました。
このように現実と作中の出来事を微妙にリンクさせ、一見非現実的に感じさせつつも実際起こり得るギリギリのラインを巧みに描く本作『りゅうおうのおしごと!』。日本将棋連盟の若手によるプロジェクトチームが一部監修を行っていることもあり、将棋ファンにとっても興味深い内容になっています。
八一は竜王になると同時に、その重すぎる重責とプレッシャーに耐えきることができず、公式戦で連戦連敗を繰り返してしまいます。勝率は三割。そんな失意の八一の前に小学生の雛鶴あいが現れ、弟子入りを申し込んでくるのです。八一に想いを寄せる姉弟子の空銀子の反対にあいながらも、あいから確かな才能を感じ取り内弟子入りを許可します。しかしあいは小学3年生、若干9歳とどう考えても問題は山積で……。
- 著者
- 白鳥 士郎
- 出版日
- 2015-09-12
ライトノベルとしては珍しく将棋を題材とした本作ですが、将棋といっても決して重苦しかったり堅苦しい雰囲気はありません。むしろどちらかと言えば作中の雰囲気は軽く、連敗中の八一にしてもあまり悲壮感というものは表立って表現されていないのです。
公式戦での緊迫感等や将棋の良さは十分に出ていますが、会話等はやはりライトノベル特有の軽妙なもの。それらは痴的ユーモア……。いえ、はっきりいって本作の冒頭から下ネタが連発されるのです。しかしそれも不快にならないレベルで、将棋という重くなりがちな題材を楽しい雰囲気に変えることに一役買っているといえるでしょう。
雛鶴あいをはじめとして全員女子小学生の将棋の研究会、八一が言うところの「JS研」なるものも作中で開催されたり、何かとJSに脚光を浴びせる本作。しかし当然八一は少女趣味やロリコンではなく、女子小学生たちの無邪気で可愛らしい様子が健全に描かれている点が、本作の魅力の一つでしょう。
もちろんそれだけでなく、将棋ファンの読者にも十分満足のいく仕上がりです。盤面での一手に掛ける想いや、自らの戦術に対するプライドや悩みなど、将棋に真剣に取り組んだ方ほどのめり込んで行ける熱い作品となっています。一見してわかり難いですが、将棋は自らの全てをぶつける熱い熱い盤上の真剣勝負なのです。
ロリコンと揶揄されることや、雛鶴あいの親が内弟子になったことに対して訪問にくるなど、盤面に集中できない八一はスランプを乗り越え、竜王の座を無事守り通すことができるのでしょうか。読者も手に駒を握った臨場感で楽しむことができる作品です。