泣けるファンタジーライトノベルおすすめ9選!

更新:2017.3.22

ファンタジーとは現実と一線を画し、様々な世界で時には特殊な能力を持った登場人物が活躍していきます。しかしどんな物語にも苦悩や葛藤があり、打ち勝つことによって得られる達成感があります。そこには常に涙有り。そんなファンタジーラノベを紹介します。

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夢と現実、葛藤する猫に涙なしでは見られない『猫の地球儀』

本作は主人公として猫が登場する、宇宙を舞台としたSFファンタジーです。いわゆるラノベに分類されている本作ではありますが、その物語は意外に重厚で、会話を主体とした文間に空白が目立つラノベとはまた一線を画します。とは言え軽口で語られる物語は軽妙でもあり、読んでいて抵抗感はありません。

冒頭、クリスマスと呼ばれる少女型ロボットの回想から始まる本作ですが、基本的に人間の登場人物が出てこない異色の物語で、主人公も猫、名を幽(かすか)と言います。

人類が滅亡した後の世界を描いており、人類(作中における呼び名は天使)が残したコロニーで進化した猫たちの世界です。一見して猫が主人公というのは読者側として感情移入が難しいのではないかと感じますが、猫が使役するロボットは人型であることも多く、感情移入という面において十分補われているなという印象です。

実際主人公、幽の相棒であるクリスマスは少女型ロボットでありながら、感情が豊かで義理深く、幼い容姿とも相まって愛おしいキャラクターです。しかしクリスマスは幽の前の持ち主から使命を託され、待機を命じられてから40年以上も箱の中で待ち続けるなど健気で可哀そうなエピソードも持っています。

作中で多くは語られない40年、どれほどの不安な気持ち、寂しい気持ちで待ち続けた時間だったのでしょうか……。

著者
秋山 瑞人
出版日

コロニーの中でも非常に優秀な猫である幽はスカイウォーカーという秘密の役目を担っており、コロニーから地球(作中においての名称は地球儀)を目指している謎が多い猫です。

地球儀を目指す猫は異端とされ、コロニーの統治組織、大集会から徹底した弾圧をうけることになります。地球儀とは死んだ猫が向かう場所とされており、宗教組織を兼ねる大集会から教義に反するという理由で徹底した弾圧が行なわれます。現実世界でいう宗教弾圧に近いものを感じますね。

宗教問題は中世からすでに人類の歴史としてそこにあり、本作においてその命題に一石を投げかける、社会性のある内容になっています。本作においては主人公サイドに科学を、大集会を始めとした統治組織サイドに宗教を配置している物語で、その二律背反する対立構造を元に物語が展開されていきます。

物語が進むにつれて明らかにされる、幽が地球儀に向かわなければならない本来の意味とは一体何なのでしょう。そして真実に近づく幽に、仲間の死、自身への脅威が降りかかり……。果たして幽は様々な悲しみを乗り越えてスカウォーカーとしての使命を果たすことができるのでしょうか。

冗談を交えながら軽妙に進む物語は次第に随所にどこか陰鬱な雰囲気を漂わせて、それは仲間の死と共に顕著に表れます。ネタバレを含むので割愛しますが、ある「仲間」の死はそれまでの「仲間」のキャラクターと相まって物語に強烈な影を落とします。

その死は作中の登場人物達に様々な問題を投げかけます。夢を追うのは現実に誰かの想いを犠牲にすることもある……。そのことに気付いた幽達はそれでも地球儀を目指すのか、そこには何があるのか、悲しみを秘めながら前に進む猫たちの心情は涙無しには語れません。

最近いつ泣いたか覚えていないかも、そんな方に手にとっていただきたい泣けるファンタジーラノベです。

最後があるとすれば、教えてください、その願いを……。『テルミー きみがやろうとしている事は』

皆さんの学生時代一番の思い出はなんでしょう?緊張感でいっぱいだった部活動での大会、勉強を頑張ったテスト、友達との何気ない毎日、恋人とのデート、それとも修学旅行でしょうか。

滝川廉治のファンタジーラノベ『テルミー』では、学生時代の最も大切な思い出の1ページとなるはずだった修学旅行、それが悪夢になった瞬間から始まります。

月之浦高校の2年、鬼塚輝美は修学旅行中に大事故にあい、自身はなんとか助かったもののクラスメイトは全員、事故死という不遇の死を遂げることになるのです……。

輝美は事故死した24人のクラスメイト全員の願いをその身に宿すことになり、自身と合わせて25人分の精神を一身に引き受けます。そしてその24人分の最後の願いを叶えるという残された者の贖罪が始まるのでした……。

著者
滝川 廉治
出版日
2010-07-23

クラスメイト全員の死というのは読者側にも相当な心労を与えます。元気で明るい登場人物達が活躍する小説が好きだという方は、あまり普段読まない内容のラノベかもしれません。鬱々とした展開が多くみられます。しかし、その中で随所にみられる温かさはまさに本作において最も伝えたいことなのではと感じました。

輝美は25人分の精神を確かに負担として持て余してはいるものの、その願いの強さに感じ入いり、クラスメイト達の想いを助け出したい、それを「自らの想い」として日々の学校生活を送るようになります。

怪我で修学旅行を欠席していたため、幸運にも事故にあわなかったクラスメイトの灰吹清隆は、そんな輝美を助け、自らも24人の想いを遂げることに協力していくのでした。

遺品を身に着けることで輝美はクラスメイトの人格を交換できるようになっており、その能力を駆使して最後の願いを叶えていきます。願いの大小はあるにせよその強さは皆同じで、中にはエロ本を処分してほしい、そんな願い事も……。しかし笑い話のような、そんな願い事にも深い想いがあるのです。自分の嗜好を知られたくない、どうしても両親、そして「妹」にその「本」の内容を知られるわけにはいかない、自分が死んだ後に重ねて家族を悲しませたくない、そんな一心からくる最後の願いだったのです。

彼は空想の世界においてその欲望を果たし、現実の何物も傷つけないことを選んでいました。自身の死に準備ができなかった彼は輝美にその後始末を最後の願いとし、聞き入れた輝美は最後を迎えて尚、家族を傷つけまいとする彼の優しさに触れるのでした。

冒頭不遇の死を遂げたクラスメイトを、死後一人一人掘り下げていくという独特の手法をとっているところが、このラノベの特徴ですが、死後のクラスメイトを深く知れば知るほどに、すでに亡くなっている事実が立ちふさがり、読んでいる側もより悲しみをリアルに感じます。

死という事象を前面に出し、作中においてもそのことを中心に描かれていますが、このラノベのコンセプトはそれと合わせてもう一つ、「故人の優しさ」にこそあると思っています。

死とは誰しも避けることはできないですが、もし死後に何か一つできたら……。皆さんもそんな想いを馳せながら、このファンタジーラノベを読んでみるのはいかがでしょうか。

そこには当たり前のように、吸血鬼の君『ヴァンパイア・サマータイム』

「暗いのに彼女の眼だけは明らかだった。灰色の瞳が伏せられてヨリマサから逸れた。それを合図に彼は彼女の唇に唇を近づけた。」(『ヴァンパイア・サマータイム』より引用)

人間とヴァンパイアという禁断の愛を描いたファンタジーラノベです。主人公である山森頼雅は、昼間コンビニでバイトをする普通の高校生。ヨリマサは、夜の住人、吸血鬼達も自分たちと何ら変わらない高校生だと改めて気づくのでした。作中の設定においてヴァンパイアは禁忌の存在ではなく、人間と世界を二分する存在として描かれています。昼間は人間の世界、夜間は吸血鬼の世界として。

学校においても同様で、ヨリマサは人間として昼間学校に通いますが、吸血鬼の少女、冴原は夜間から学校に通います。実家のコンビニでバイトをしているヨリマサは、よく見かけていた冴原とちょっとしたことで知り合いになります。

バイト中から気になる存在だった吸血鬼の冴原に話しかけられ、ヨリマサは動揺しますが?!

著者
石川博品
出版日
2013-07-29

他作品においてヴァンパイアという存在は基本的に恐れられるものとして登場し、仮に種族感を越えた愛が芽生えたとしても、そこには種族間の壁が最大の障害として立ちはだかるのが常です。

しかし『ヴァンパイア・サマータイム』においてはあくまでも吸血鬼と人間は身近な存在であり、作中でも述べられていますが少なからずハーフも存在しています。ありそうでなかった設定として逆にオリジナリティーを感じる吸血鬼の設定ですね。

とはいえヨリマサ達高校生にとって吸血鬼はやはり近くて遠い存在、そこにいるのは知っているけれど昼夜が完全に逆転した彼らの世界は、意外なほど交わることの少ない世界でした。中には吸血鬼に偏見を持っている学生も少なくなく、人間と吸血鬼の交際というのは中々一般的とは言えないもののようです。

そんな中でヨリマサと冴原はお互いの恋を育んでいきます。ヨリマサ視点と冴原視点から構成されており、各々のお互いに対する想いが高校生らしくて好感が持てます。変な厭らしさはありませんが、所々煽情的な表現も多く、ヨリマサの高校生らしさをよく表現できています。

昼間出歩けない吸血鬼と人間のデートは基本夜中になってしまいます。真っ暗な道、真っ暗な水族館、真っ暗な海、夜目の効かない人間視点ではどうしても種族的なすれ違いはでてきてしまいます。

しかし人間同士の交際においても大小のすれ違いは起こり得るものです。同じ人間は存在せず、完全に分かり合えるお互いも、本来存在することはあり得ません。大事なのはそんなお互いをどの様に擦り合わせて、納得していくかではないでしょうか。このラノベにおいて、それは大事なファクターとして語られています。

高校生の二人はまだまだ未熟で、だからこそかけがえのない時間を二人で過ごすことになります。実は賛否あるラストシーンですが、ある意味で高校生らしさを作中で表現しているともとれます。それは冴原の吸血衝動に起因していて……。段々と悩みを深めていく冴原、そしてヨリマサはそんな冴原に寄り添いますが、冴原は、そして二人は、ラストどのような決断を下すのか。そのラストに涙必須のファンタジーラノベ、おすすめです。

ミステリアス・ボーイミーツガール『廃線上のアリス』

少し昔、日本には大小さまざまな鉄道会社があり、その鉄路はいたるところに張り巡らされていたのです。

時代の移り変わりとともに廃線を免れない鉄路は数多くありました。膨大なそのレールや枕木は撤去されずに、今尚いたるところに存在しています。草に埋もれ、土をかぶり、枕木は朽ちていますが目を凝らすと確かにそこには道が存在し、衰退の象徴としてあり続けるのです。

そんな廃線上で、突然主人公と少女が出会うところからこの物語は始まります。

引き籠りになってしまった譲羽郎は自分と母親を捨てた、愛媛県に住むかつての父を頼り、都内から岡山県、そこから上小湊駅を目指します。ちなみに上小湊駅は作中における架空の駅であり、実際には存在しません。

上小湊駅に降り立った羽郎は、裸足で廃線上を歩くミステリアスな少女、アリスと知り合いになるのですが、その後羽郎は噂で廃線上の幽霊の話を聞かされ、先ほどのの少女こそが幽霊なのではと疑い始めます……。

著者
マサト 真希
出版日
2014-11-03

不思議な少女アリスに羽郎は強烈に引かれていきます。心が近寄っていくのを感じる羽郎ではありましたが、廃線上の幽霊の話が頭から離れません。ミステリアスなアリスの正体に確信が持てない羽郎は……。

都内に残してきた14歳の義妹が登場し、事態は更に混迷を深めていきます。羽郎の引き籠る原因となった事件とは、そして自分を捨てた父の真意とは一体なんだったのでしょう。

悩みに悩みが重なりどんどん塗りつぶされていく羽郎ですが、アリスとの絆を信じ、苦悩を乗り越えることでそれらを青春の思い出に変えていくことができるのでしょうか。アリスとの甘い恋模様を主軸に描かれますが、登場人物達の苦悩がリアルに描写され、甘くも切なさを感じることができる良質な青春ラノベです。

物語の中心にこそ入ってこない鉄道ではありますが、そこかしこの描写で登場し、物語にアクセントを加えていきます。上小湊駅は実在しないと前述しましたが、実際にはその元になった駅はあるらしく、ファンの間では聖地になっているとか、旅行がてら本を片手に、廃線上の幽霊を探しにいってみるのもいいかもしれません。
 

諦めと覚悟を背負った少女達の戦いと、青年の願い『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』

「獣」と呼ばれる化け物に脅かされ続け、滅びかける空上の世界。壊れかけの戦いを強いられ続ける妖精族の少女達と、かつて存在した地上の、最期の人間族の生き残りである主人公の青年ヴィレムが織りなす、かけがえのない日々が描かれた物語です。

著者
枯野 瑛
出版日
2014-10-31

異世界を舞台としたファンタジーです。世界はかつて人間が支配しており、それを嘆いた神「星神」が人間を滅ぼそうとしていました。人間達が対抗すべく使用していた武器「聖剣(遺跡兵装)」は、悲劇的で。絶対的な背景を持ち合わせた者でしか使うことができませんでした。それに選ばれた者は勇者と呼ばれ、彼らは必ず不幸でした。

主人公・ヴィレムは、大量生産型の「聖剣」しか使用できない準勇者です。ヴィレムも勇者たちとともに戦いましたが、正体不明の「十七種の獣」が現れ、地上と人間は滅ばされました。残された生き物は、空上にある浮遊島に逃げ、暮らすことになりました。

しかしヴィレムだけは呪術の反動で石化してしまい、生き延びます。呪術を解いてもらい、その時の借金を返す日々が始まりました。そんな中、ある日偶然出会った蒼髪の少女と、異種族の友人が紹介してくれた仕事が、彼を変えていきます。

蒼い髪の少女の名前は、クトリ・ノタ・セニオリス。彼女を含めた妖精兵と呼ばれる少女達は、「聖剣(遺跡兵装)」を使用し、その儚く不安定な命を生きていました。

なぜ生きるのか、困難だと分かっていてもなぜ手を伸ばすのか。本作でそれぞれの答えを見つけてみてはいかがでしょうか。

独特な夏の雰囲気。どこか明るい「終わり」のラノベ『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』

世界に蔓延した「喪失症」。この病にかかると、人の記憶と記録が少しずつ失われていきます。最初は名前、次に顔や顔を写した写真、さらに病が進むと色や影も失い、最後は存在すらも消えるというのです。この病は発症する原因も治療法もなく、少しずつ、ゆっくりと世界を滅ぼしていきます。

著者
萬屋 直人
出版日
2008-03-10

そんな世界を、スーパーカブに乗ったふたりの少年少女が旅をしていきます。彼らもまた喪失症を患い、旅に出たのでした。日常を捨てて旅に出た彼らが目指すのは「世界の果て」です。そんな場所があるのか、そして辿り着けるのかもわからないまま、行く先々で様々な人と出会いながら旅を続けていきます。

タイトルの「滅びゆく」という言葉からシリアスな物語をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、全体的に明るく、前向きなのがこの作品の特徴です。登場人物達は病にかかっていることに悲観するのではなく、病を前向きに捉えています。

「全てを捨てて旅に出ないか。そう問われて、即答できる者はどれだけ居るだろう。でも、僕は答えた。あの日の情景は写真のように鮮明に記憶に刻まれている。全てを捨てて旅に出ないか。そう問われ、僕は是(イエス)と答えた」(『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』より引用)

夏の北海道の広大な土地をふたりの少年少女がバイクで旅をしていくさまは、本の中から爽やかな夏の空気が漂ってきそうな気さえします。いつか自分も世界も消えてしまうとわかりながら、旅先で人と出会い成長していくロードムービー的なストーリーを読んだらその切ない気持ちと共に自分も旅に出たい気持ちになるでしょう。

絆を取り戻していく幼馴染たち『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』

メインとなる登場人物は、主人公・宿海仁太を含めた6人。幼馴染であった本間芽衣子が突然亡くなり、傷を負った彼らは、絆さえも失ってしまいます。しかし主人公・仁太の前に、亡くなったはずの芽衣子が現れることで、変化が起こっていくのです。

著者
岡田麿里
出版日
2011-07-20

本作は、アニメと並行して連載された現代ファンタジーです。メイン登場人物は、宿海仁太、本間芽衣子、安城鳴子、松雪集、鶴見知利子、久方鉄道の6人です。全員幼馴染で「超平和バスターズ」というグループを結成して遊んでいました。しかし芽衣子が事故で命を落としてしてから、メンバーはばらばらになります。

時は流れ、引きこもり気味だった高校生・仁太の目の前に、芽衣子が現れます。触れられないことと、他の人には見えないこと、ものを動かすことはできる、ということから彼女が幽霊であるとわかります。彼女は仁太に「お願いを叶えて欲しい」と言うのです。仁太は、かつて大切な仲間だった芽衣子の願いごとを叶えるために、もう一度絆を取り戻すために変わっていきます。

少年少女が抱える悩み、悲しみ、そしてそれを乗り越えていく素晴らしさが表現された作品です。

4人の見習い魔女たちが守りたかった日々『楽園の魔女たち―賢者からの手紙』

コメディ要素の強いファンタジー。魔女見習いの少女4人の物語です。明るくアップテンポな会話や文章ですが、それぞれの少女達は悲しい過去を抱えています。そんな彼女たちが覚悟を胸に、成長していくストーリーです。

著者
樹川 さとみ
出版日

主人公は、個性ある少女たちです。冷静沈着でなにを考えているか分かりづらいサラ・バーリンや、美少年に見える外見を気にするファリス・トリエ。帝国の後継者であるために、兄に暗殺者を送り込まれているダナティア・アリール・アンクルージュ。そして、婚約者が海で失踪し、政略結婚させられそうになったところを家出してきた、幼女に見える人妻、マリア・ド・パルマ―シュ。物語は、この4人を主軸として進みます。

師匠に依頼された仕事をこなしたり、問題を解決したり、師匠不在の楽園を守るために奔走したりと大忙しの彼女たち。その中でそれぞれが抱える悩み、悲しみ、葛藤を互いに知っていきます。

解決できないことばかりの世界で苦しみながら、願うことだけは自由と信じて、彼女たちは前を向き続けるのです。

源氏物語を題材にした泣けるファンタジーラノベ『"葵" ヒカルが地球にいたころ……』

「文学少女」シリーズにて人気を博した野村美月の意欲作。このシリーズは、作中において実在の小説をもとに展開していく設定で、その独特な世界観が話題を呼びました。

本作『ヒカルが地球にいたころ……』に関しても作中において源氏物語を骨子として据えることにより、会話が主体のラノベらしさを残しつつ、芯を感じる独特な雰囲気の作品に仕上がっています。

そんな本作の主人公、赤城是光は根が優しく、人情に厚いながらその顔を凶悪そのもの、誰も怖がって近寄ってくれません。一方もう一人の主人公、帝門ヒカルは是光とは一見真逆で女心を知り尽くし、端正な顔立ちと相まって派手な女性関係の学園の王子様的存在でした。

平安学園に通う2人はひょんなことから友人関係を気付きそうになりますが、突然ヒカルに死が訪れて……。

著者
野村 美月
出版日
2011-05-30

不可解な死を遂げたヒカルは幽霊としてこの世に留まることになり、自らの未練を是光に晴らしてほしいと願うのでした。

生前よりも死後に交友を深めていく2人は、次第に親友となっていきます。いつか確実な別れが訪れると確信しながら2人は憎まれ口を言い合いつつ、とても楽しげです。不良と誤解され、友達のいなかった是光も、女性に囲まれて同性の友達がいなかったヒカルも、お互いの存在を認め合うようになります。

ヒカルは成仏するためにはこの世に残した女性関係の問題を清算してほしいと是光に頼みます。過去のトラウマを引きずる是光は女性関係の願いに辟易しますが……。

そんなヒカルの願いの一つが許嫁である葵との約束でした。葵は由緒正しい家柄で、生前のヒカルを少なからず想っていました。しかしながらヒカルの女癖の悪さを許せずに、素直になれないジレンマに囚われていましたが、ヒカルの突然の死により、その想いを正直に伝えることは永遠にできなくなってしまいます。

ヒカルの死後現れた是光に関しても、不審な人物と当初全く相手にしていませんでしたが是光の実直さに触れて、次第に心を許していきます。そして最後にはヒカルと、その約束を果たすのでした。

是光の実直さとヒカルの軽薄さが良いコントラストで語られる本作ですが、ヒカルの死や是光の女嫌いの原因等、所々にシリアスな雰囲気を漂わせます。全体の印象としては優しい雰囲気の中にどこか影を感じさせる、そのような印象ではないでしょうか。

本作において源氏物語を作中に盛り込んでおり、人名や学園の名前などがそうですね。他にも当然ストーリーに多分に散見され、源氏物語とこのラノベを合わせて読んでも非常に面白いと思います。

以上、5作の泣けるファンタジーライトノベルを紹介しました。どれも涙なしには読めない作品ですので、ぜひ手にとってみてください。

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