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無料で読める青空文庫!隙間時間におすすめの短編5選!

更新:2020.11.30 作成:2017.3.20

青空文庫で読める小説の中から5作を紹介します。芥川龍之介、夢野久作、横光利一、坂口安吾、宮沢賢治の、ぜひ読んでほしい名作をピックアップしました。

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無料で読める青空文庫へようこそ!

青空文庫では、著作権の切れた作品が、ネット上で無料で読めます。今回はそんな青空文庫の中から、読みごたえがあり、なおかつ気軽に読める五作品をご紹介します。

真実が交錯する不可解な殺人事件『藪の中』

芥川龍之介の作品で、1922年の「新潮」に発表されました。黒沢明監督の映画『羅生門』の大筋も、この『藪の中』がもとになっています。盗人、藪の中で死んだ男、その妻の3人が事件に関与していますが、3人の発言は食い違い、真相は「藪の中」へと消えていきます……。
著者
芥川 龍之介
出版日
2009-08-12
3人の発言の焦点は、誰が男を殺したかと言うところにあります。しかし、3人とも発言が一致しません。しかも「自分が殺したのではない」ということを主張するのではなく、「自分が殺した」と主張しているのです。(殺された男は巫女の力を借りてまでも発言しています。)

『藪の中』には、真実を定めることの難しさを教えられます。あちらをたてればこちらがたたず、こちらをたてればあちらがたたず、舞台は現代から遠く離れていますが、現代の世の中においても、通じるものがある作品となっています。

海岸に流れ着いた3通の手紙『瓶詰の地獄』

1928年に雑誌「猟奇」に発表された夢野久作の短篇小説です。とある島に流れ着いた、ビール瓶の中に詰められた3通の手紙が、物語の骨子となっています。3通の手紙を読み進めていくにつれ、意外な事が明らかになっていきます……。
著者
夢野 久作
出版日
2009-03-25
この作品はネタバレをするとあまり面白くないので多くは語りませんが、「第一の瓶」の手紙を見ると、どうやら2人の人物が海へと飛び込もうとしているという内容です。しかも、助けが迎えに来ている中で……。不可解な内容の手紙の謎を早く解きたくなってしまいます。

この異様にも見える状況設定をリアリティを持って読ませる力は、夢野久作の本領なのだろうなと、感心してしまいます。

不条理を推し進める「機械」

横光利一の『機械』は1930年9月に『改造』に発表されました。発表当時から話題となり、小林秀雄や川端康成、さらには日本を跳び越えてサルトルなどの海外の文学者にも評価を得ています。ネームプレート作業場での男達の行動を「私」の視点から描いています。(この「私」の視点は「四人称」であるとされることが多いです。)
著者
横光 利一
出版日
1969-08-22
「私」、軽部、屋敷の3人は、ネームプレート作業場で働いていますが、「私」は人間関係が進んでいく中で欺瞞や不信の感情が生まれてきます。

こうした感情の発生過程はなんなのか。それは「機械」的に自らの中に外圧的に生まれてきたのではないか、そんなことを感じさせます。

化学薬品の描写による冷静な理性的目線、ネームプレートの工場という匿名的で単純な労働環境、段落分けの少ないとめどなく続く文体、こういった要素が最終的に一つになり、「機械」のようにシステマティックに、物語を、そして「私」の心理を推し進めていくのです。

戦時下の屈折した安らぎ『白痴』

坂口安吾の作品で、1946年の「新潮」に掲載されました。研究界隈では『堕落論』との関連がよく考察されています。戦時下の鎌田が舞台のこの作品には、どこか退廃的な雰囲気が流れつづけています。間違いなく坂口安吾の代表作です。
著者
坂口 安吾
出版日
1949-01-03
主人公伊沢の家に住みつくようになった白痴の女。戦時下のどこか翳りを見せる雰囲気の中、伊沢は、白痴をあるときには求め、あるときは醜悪に感じながらも、警報が鳴り響く中、最終的には白痴と命を共にすることを決意し、戦火の中を二人で逃げ出します。

白痴の女性とは一体何だったのか、考える一つの鍵として「動物」があるように思います。「白痴」にはところどころで、家畜などの動物が出て来ます。こうした動物と白痴の女生とを隔てているものはなんであるのか、そこにこそ、伊沢の感じる白痴の魅力の一端が隠れているのではないでしょうか。

「白痴」の変奏とも考えられる「戦争と一人の女」もあわせて読むと、より安吾の世界を楽しめるかもしれません。

猫は見かけで判断してはいけません『猫の事務所』

宮沢賢治の作品で、1926年に雑誌「月曜」に発表されました。実は賢治の作品は死後に発表された作品が多いのですが、本作は数少ない賢治の生前発表作となっています。猫たちがでてくるかわいらしさもありますが、メッセージ性も強い作品となっています。
著者
宮沢 賢治
出版日
猫のための歴史と地理をまとめる事務所で働くかま猫は、見た目が悪く、他の同僚の3匹の猫から目の敵にされながらも、一生懸命働きます。しかし、3匹の猫の策略により、頼りにしていた事務長からも裏切られた瞬間、窓の向こうに獅子が現われます。

「そんなことで地理も歴史も要つたはなしでない」という獅子の言葉は、現代においても通じる示唆を与えてくれます。迫害するもの・されるものが存在している状況で、果たして地理や歴史が何になるでしょうか。むしろ、地理や歴史こそが、差別を作り出すことにはなっていないでしょうか。そんな大きなテーマやメッセージを、賢治が現代に向けて投げかけているような気がしてならないのです。

こうした名作が無料で読めるなんて、青空文庫は大変ありがたいサイトです。今回紹介した作品以外にも、名作はたくさん眠っているはずです。ぜひ暇な時間が出来た時には、青空文庫から名作を探してみてください。