日本の昔話これだけは読んでおきたい!おすすめの定番絵本5選!

更新:2021.12.18

絵本は子供たちにとって新しい世界への扉となる重要なツールです。新しい、珍しいものに惹かれるのは自然なことですが、古くから愛され続けている日本の昔話は子供たちにいろんなことを教えてくれます。日本の昔話のなかでもおすすめの絵本を紹介します。

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やさしい心で花がさく昔話『はなさかじいさん』

心やさしい老夫婦の元に現れた犬を、老夫婦は大事に育てます。心やさしい老夫婦の隣には、いじのわるい老夫婦が暮らしていました。あるとき犬は畑をほりながら「ここ掘れワンワン」と鳴き始めます。おじいさんがその場所を掘ると、大判小判が次々に現れ、おじいさんはあっという間に大金持ちになりました。

その様子を陰で見ていたいじのわるいおじいさんは犬をさらい、同じように金目の物を探すよういいます。犬の掘った場所を探すとガラクタばかりがでてきたので、いじわるなおじいさんは腹いせに犬を殺してしまうのです。

犬の亡骸が埋められた場所からは立派な木が生えて、瞬く間に大きな木に成長しました。その木もまた、心やさしい老夫婦に富をもたらしてくれる奇跡の木でした。しかし再び、意地の悪いおじいさんがその木からできた臼を横取りし、壊して燃やしてしまいます。燃え残った灰を夢に出てきた犬の言う通り枯れ木に撒くと、灰のかかった場所から見事な花が咲くのです。

心やさしいおじいさんの起こした奇跡は、誰もが笑顔になれる素敵なものです。長く愛され続ける奇跡の昔話を、たくさんの子供に絵本で読み聞かせてあげたいものですね。

著者
["石崎 洋司", "松成 真理子"]
出版日
2012-02-24

『はなさかじいさん』は、心やさしいおじいさんといじわるなおじいさんの間で繰り広げられる昔話です。うれしい気持ちや悲しい気持ち、そしてくやしい気持ちなど、読んでいくうちにたくさんの気持ちの変化を感じられます。

かわいい犬がいじわるなおじいさんに殺されてしまう悲しい場面もありますが、その悲しみを乗り越えておじいさんが花を咲かせる時、読んでいる人も何かを乗り越えた先には幸せがあると感じられるのではないでしょうか。

物語のラストシーンで、いじわるなおじいさんが自分の行いによってひどい目にあってしまうところでは、読んでいる人の胸がスッとする爽快感を味わえることでしょう。子供たちにとっても、たくさんの感情の変化を味わえるこの昔話は、心に残る絵本になると思います。

日本最古のSF『かぐやひめ』の不思議な世界

日本最古の物語と言われる竹取物語をベースに作られた『かぐやひめ』。かぐやひめとおじいさんが初めて出会うシーンは印象的で、この絵本を読む前と呼んだ後では、竹林を見る目が変わるかもしれません。

おじいさんが竹林の中で出会った光る竹を切ってみると、美しい女の子供が入っていました。その美しさは成長すればするほど目をみはるほどのものになります。美しく成長したかぐや姫が求婚してくる男たちに世にも珍しい宝物を持ってくるよう言いますが、その宝物も、子供たちの想像を刺激する不思議なものばかり。

最後には育ててくれたおじいさんとの悲しい別れもありますが、出会いと別れはこの世の常です。そんな教訓を子供たちに伝えられる、そして昔の日本にタイムスリップしたような気分にさせられる、不思議な昔話です。

著者
["舟崎 克彦", "金 斗鉉"]
出版日
2009-07-31

美しい日本の風景を背景に、かぐやひめが成長する姿を楽しむことのできる素敵な絵本です。昔の日本人が着ていた着物や、古い作りの家を子供たちに見せることができて、目でも楽しむことができます。

物語は、少女が大人の女性に成長する様を丁寧に描いていますので、お姫様にあこがれる小さな女の子におすすめです。多くの男性に求婚されたかぐやひめがどんな選択をするのか、それぞれの男性が個性的で、そこも見所になっています。

昔話『かぐやひめ』の作者は不明ですが、もしかしたら月に住む宇宙人が書いたのかもしれない。そんな空想を子供と一緒に楽しむことも出来るすてきな絵本です。

きれいな日本語が耳に残る昔話『つるのおんがえし』

いわさきちひろの絵が好きで手に取る人も多いことでしょう。『つるのおんがえし』は助けたつるが、おじいさんとおばあさんの家の子になり、自分の羽を使って布を織ってくれる道徳的なストーリーの昔話です。

物語の内容もさることながら、それを彩る挿絵が柔らかく優しい雰囲気を醸し出しています。冷たい雪が降る夜に、助けたつるが可愛らしい女の子に変身しておじいさんの家を訪ねてくる絵は秀逸です。つるが化けた女の子の澄んだひとみは、読み聞かせてくれる優しい人の声と一緒に子供たちの心に残ることでしょう。

著者
松谷 みよ子
出版日
1966-10-01

現代を生きる子供たちの多くが本物を目にしたことのない鶴を見せてあげられる。それもこの絵本の魅力だと思います。

絵本の中に出てくる機織りの音も、「ちんからとん」という言葉が耳に残ります。お話を読み聞かせた子供が、大人になっても響きを覚えていられるような素敵な日本語が詰まっている、それもこの絵本の魅力です。そして何より、自分の身を犠牲にしてまで恩返しをする鶴のけなげな姿が、子供たちの心を動かすのではないでしょうか。

わるものをやっつけろ!昔話『かちかちやま』

一生懸命日々を生きるおじいさんとおばあさんに、突然の不幸が訪れます。おじいさんが捕まえて帰ったたぬきが、おばあさんをだましてころし、おじいさんをひどい目にあわせてしまうのです。

物語の途中では、おばあさんがたぬきに打ちころされてしまう悲しいシーンもあります。その悲しさの反動から、わるものをやっつけるための強さを持ったうさぎがより頼もしく目に映ることでしょう。

うさぎは悲しみに暮れるおじいさんの話を聞いて、たぬきをこらしめようと立ち上がります。とても賢いうさぎですので、かちかちやまでたぬきの背中に火をつけた後は、とうがらし山に行って別のうさぎに扮します。そして別のうさぎに扮したうさぎは、何度もたぬきをだましていき、最後にはどろでつくった船にたぬきをのせて川にこぎ出すのです。

著者
おざわ としお
出版日
1988-04-20

おばあさんを汁に入れておじいさんに食べさせるというとんでもない悪事を働いたたぬきが、うさぎの知恵によってだまされ、痛い目にあう姿は痛快です。うさぎがたぬきをだますために使ったかやという植物は、昔の日本の家の屋根に使われた素材です。かやぶき屋根という言葉があるように、昔の日本に絵本の中で触れることができるというのはこの絵本の魅力の一つだと思います。

物語の最後をしめる「どんとはらい」という言葉は東北地方の方言ですが、東北以外に住む子供たちには耳に新しく、新鮮に響くのではないでしょうか。

かわいらしいイラストで楽しむ昔話『かにむかし』

このお話は『さるかに合戦』という名前で覚えている人のほうが多いかもしれません。『かにむかし』の内容は『さるかに合戦』とは少し違います。登場人物に大きな違いはありませんが、物語の途中で、最初に出てきたかにが死んでしまいます。

かにが拾ったかきの種から、大きなかきの木が育ちます。木に登れないかにはかきを取ることができず、さるが横取りしてしまいます。憎たらしいさるは、下でかきをよこせと言うかにに青い実をぶつけてしまうのです。死んでしまった親がにのかわりに、子がにたちが仲間をつれてさるをこらしめるシーンは痛快です。

著者
木下 順二
出版日
1959-12-05

はやく芽を出さないとちょん切る、はやく実をつけないとちょん切る。かにの脅し文句でかきの木がぐんぐん育つ姿は滑稽で、クスっと笑えます。喋るはずのないかにの気持ちや、切られては困るというかきの木の気持ちが伝わり、登場するキャラクターに愛着がわくシーンです。

表紙はいくつかの色が使われている挿絵ですが、中身は墨汁と朱液をベースに描かれたような素朴な挿絵で構成されています。シンプルだからこそ、かきの実のツヤやさるの毛並みに味があって印象的です。

かにの育てた柿の実を横取りしたさるをこらしめるかにの仲間たちも、可愛らしいイラストで描かれています。焼き栗が背中にあたり、小さなかにたちにハサミで挟まれ、蜂に刺されてさんざんな目にあわされる猿の顔は、読む人の気持ちをせいせいさせてくれるのではないでしょうか。

日本の昔話はどれもこれも魅力的で、どの絵本を選ぼうか悩んでしまいます。昔の日本人がどんな家に住み、何を食べ、どんな生活をしていたのか。絵本を読みながら子供に伝えることができます。小学校低学年の子供なら、振り仮名を頼りに自分で読み進めることができる絵本ばかりです。兄弟で、上の子が下の子に読み聞かせるのもおすすめです。どうせ朗読の練習をさせるなら、日本の昔話を選びたいですね。

ここで紹介させていただいた絵本は、心の変化を味わえたり、美しい挿絵を見れたり、耳に残る美しい日本語に面白おかしいキャラクターなどなど、どの物語も一度は子供に読み聞かせてあげたい名作ばかりです。

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