絵本作家であり、児童文学者・工学博士・技術士の肩書をもち、様々な賞も受賞している多才な「かこさとし」の作品は、その作風も才能同様幅広いものになっています。
かこさとし(加古里子)は、1926年に福井県に生まれ、東京大学工学部を卒業後、民間の化学会社に入社し研究所勤務を続けながら、社会福祉活動や児童向けの活動を行っていました。絵本を最初に手がけたのは1959年です。1973年退職後もフリーで多方面への活動を続け、絵本などの児童書の他、昔ながらの子供の遊びの本や、絵本作成の方法を解説した本など、多数の作品があります。
かこさとしの絵本は、様々な才能や活動の幅の広さを物語るように、科学の魅力を伝えるものやユーモラスなキャラクターが登場するものなど、作風もまた幅広いものになっています。画風は、シンプルだけどカラフルで、何度読んでも飽きません。愛され続ける理由は、ここにあるのではないでしょうか。
かこさとしは「伝承遊び考」シリーズでは菊池寛賞、日本児童文学学会特別賞を、『遊びの四季』では日本エッセイスト・クラブ賞を受賞しています。また、絵本を通じて、子供たちに科学の魅力を伝えたとして、日本化学会より特別功労賞も授与されています。
なんでも欲しがる子どものだるまちゃんと、だるまちゃんにはないものをいっぱい持っている友だちのてんぐちゃんとの間で繰り広げられる、とても可愛く子どもらしいやりとりをユーモアいっぱいに描いたかこさとしの人気絵本。対象年齢は、読み聞かせで3才くらいからです。
だるまちゃんが欲しがるものを探すために、協力してくれるだるまちゃんの優しいお父さんや、だるまちゃん自身のアイデアのおかげで、てんぐちゃんの持っているものと同じようなものがそろいます。たとえ同じものを持っていなくても、他の物を代用として見立てることを学べます。最後は、家族みんなで協力して達成するというところも、子どもには大きな意味があるのではないでしょうか。
お父さんが出してくれるだるまちゃんの欲しがるものと同じようなものを、ページいっぱいに並べられるシーンは、どれもとてもカラフルでかわいらしく、かこさとし作品の楽しみでもあります。ひとつひとつ、欲しい物との共通点や違うところを見つけながら、読み進めてみてください。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
- 1967-11-20
だるまちゃんは、日本の伝統玩具であるダルマをモチーフにしており、真っ赤でふっくらしたフォルムから短い手足が出ているかわいらしいキャラクターです。だるまちゃんの友だちも、日本各地の伝統玩具などがモチーフになっています。日本ならではの伝統玩具をキャラクターにすることで、子どもたちも昔ながらの玩具を知ることができ、親しみを持つこともできるのではないでしょうか。
あそんでいるうちに迷子になってしまった「こまった」こぐまが、いろんな「こまった」をかかえてる動物に出会い、それぞれの動物に起きた「こまった」をみんなで助け合いながら解決して、笑顔になっていくというお話です。対象年齢は、読み聞かせで3才くらいからです。
それぞれ「こまった」をかかえたみのむし・こざる・ことり・こじかも登場します。みんなそれぞれの「こまった」をかかえていますが、自分のことだけではなく、助け合ったり、知恵をだしたり……。みんなの「こまった」を解決していく姿は、大人でも心があたたまります。また、表紙にも描かれている、歩けない動物たちをこぐまが背中に乗せてあげる姿も、やさしい気持ちになります。
- 著者
- かこさとし
- 出版日
- 2017-03-03
最後の「こまった」に遭遇したこぐまたちは、今まで以上にチームワークを発揮し最高の笑顔になります。ひとつひとつ乗り越えてきたからこその最後のチームワークは感動します。「こまった」ことはたくさん起こるかもしれないとけど、みんなで助け合うことで乗り越えられるし笑顔になれるという、大人になっても忘れてはいけない大事なことを教えてもらえる。そんな絵本になっています。
からすのまちのいずみがもりで、パンやさんを営むからすの一家(おとうさんからす、おかあさんからす、赤ちゃんからす4羽)が、みんなでパンをつくり、パンやさんを盛り立てていく姿を描いたアットホームな絵本です。対象年齢は、読み聞かせで3才くらいからです。
4羽の赤ちゃんカラスは、色は黒くなく、それぞれの色にちなんだ名前がついています。茶色のチョコちゃん、赤色のりんごちゃん、黄色のレモンちゃん、白色のおもちちゃんです。おとうさんからすとおかあさんからすは、4羽の世話をしながら朝早くからパンを焼いていたので、焦げてしまったり半焼きだったりと失敗が続き、お客さんがだんだん減ってしまいます。
やがて、元気に育った4羽の子どもたちと、子どもたちの友だちの意見を取り入れ、うさぎやパンダ、車や飛行機、えんぴつやたいこなど、いろんな形のパンを家族でたくさんつくり、いずみがもりのからすたちを巻き込んだ騒動を起こしながら、からすのぱんやさんは大人気になります。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
かこさとし作品の醍醐味である、ものが並べられるシーンは、今回はたくさんのパンなので、かわいらしさと同時に香ばしいパンの香りがただよってきそうです!おいしそうなパンの味をひとつひとつ想像するのも楽しい絵本です。
いずみがもりのたくさんのからすたちも登場するのですが、からす一羽一羽がとても個性豊かなので、パン同様、それぞれ一羽一羽をじっくり見て、表情や身に着けているものから、キャラクターを想像して楽しむのもいいのではないでしょうか。
また、4羽の子どもたちが成長して、それぞれお店をひらくことになるつづきのおはなしシリーズもあります。チョコちゃんの「からすのおかしやさん」、リンゴちゃんの「からすのやおやさん」、レモンちゃんの「からすのてんぷらやさん」、おもちちゃんの「からすのそばやさん」です。どれもとっても魅力的ですので、あわせて読みたいかこさとしの絵本ですよ。
いちべえぬまで仲良く平和に暮らしている、かえるのおかあさんと101匹のおたまじゃくしの赤ちゃんたちが、赤ちゃんのうちの1匹が起こしたあることをきっかけに、親子の深い絆を再確認していく姿を描いた作品です。対象年齢は、読み聞かせで3才くらいからです。
101匹もいるおたまじゃくしの赤ちゃんたちには、それぞれ1ちゃん、2ちゃん、3ちゃんと、数字のなまえがついています。ある日、めだかと遊んでいた101ちゃんがいなくなってしまい、おかあさんがたったひとりで探しに行くことに。
途中、タガメに襲われながらも ザリガニにつかまっている101ちゃんを見つけ、なんとか101ちゃんを逃がしますが、おかあさんは気絶してしまいます。逃れた101ちゃんは急いで残りの100匹に知らせに行き、みんなで無事におかあさんを助けます。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
敵役のザリガニやタガメ、味方役のメダカやカワトンボやアメンボなど、水の中やその周辺に生息するその他の生物の紹介にもなっていて、現在ではなかなかふれあう場所や機会がないので、水の中にはどんな生物がいるのかを知ることもできます。
かえるのおかあさんは、たった1匹のためにひとりで探しに行き、敵に襲われながらも勇敢に立ち向かって、101ちゃんを助ける姿は、胸を打たれます。101匹の赤ちゃんひとりひとりに対する愛情の深さと、101匹の赤ちゃん全員とかえるのおかあさんとの絆を強く感じられるでしょう。読み聞かせた子どもたちにも、親子の絆を伝えられる絵本です。
えんどう豆のかわいらしい一家の子どもたちが、あさ起きてからよる寝るまでの何気ない楽しい日常を、細部にこだわって描かれた、とてもほっこりする絵本です。対象年齢は、読み聞かせで2才くらいからです。
えんどう豆の5人の子どもたちが、朝起きるところからはじまるこの作品は、子どもたちの日常を追いながら、シーンごとのとてもカラフルで細部にこだわって描かれている絵は、かこさとしの絵本らしいものになっています。主人公の一家だけではなく、街やにこにこえんにでてくる豆たちが、とってもかわいらしいです。
日常の動作やお手伝い、食事や食事の後の一家団欒の様子など、ありふれた風景のようですが、癒されるえんどう豆のキャラクターの絵の中に、言葉では表現していない、子どもたちに気付いてほしいことなどが描かれているところは、かこさとし絵本ならではのユーモアのセンスを感じられます。
- 著者
- かこ さとし
- 出版日
- 2017-02-01
姉妹作品とも言える、「あかですよ あおですよ」という絵本もあります。この作品も、ユーモアいっぱいのたこのキャラクターが登場し、たこの学校でのお絵かきの時間を描いたものです。タイトル通り、いろいろな色をつかってみんなで絵お描いていくという、こちらもカラフルでとっても楽しい作品なので、併せて読んでみてはいかがでしょうか。
日本は水資源が豊富な国として知られています。大なり小なり、身近な場所に川は流れているでしょうし、ほとんどの方が川の音を聞いたことがあるはずです。
では、その川はどこから来たものでしょうか。山に源流があって……と大人は想像はできるでしょう。では山の水はどこから来ているのか、どう循環してきたのか。本書では、その循環を可視化し、分かりやすく、そして親しみやすく解説しています。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
- 1966-09-01
絵本を開くと、真ん中に存在感いっぱいに川があり、その周囲には川を取り囲む環境が描かれています。
川は、流れる場所によって姿を変えます。山奥で雪解けや雨から出来た小さな流れは、山を下ってダムへ注ぎこんだり、勢いで岩を砕いたりしながら平野へと降りていくのです。
はじめの小さな流れから、大きく変わっていく姿は、驚きを持って見ることができます。
川は、平野へ流れ込むころには、すっかり穏やかなものとなり、田んぼに引かれて作物を育てることもあれば、釣りや水遊びなどにも親しまれています。ここでも堂々と描かれる川と、その両岸の住まいの様子が描かれ、人の生活の中に川が存在しているんだ、とページいっぱいに語られているのです。
そして最後に辿り着くのは、大きく広がる海です。遠く高い山から始まった流れが、様々に姿を変えながら旅を続け、最後に到達した姿がこの大きなものでした。自然だけでなく、人の営みとも関わりながら姿を変えていく川の姿が克明に描かれ、楽しんで学ぶ事が出来る絵本です。
普段のくらしや生活について考えることはありますが、いま立っている、あるいは座っているこの大地そのものに思いをは馳せることはそうそう無いでしょう。存在があまりにも当たり前すぎて、なかなか深く考える機会がありません。
そこでこの絵本です。子供へと読み聞かせながら一緒に学べる、知的好奇心を満たしてくれる絵本となっています。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
- 1975-01-20
『地球』というタイトルから、壮大で難しそうと思われる方もいるかもしれません。実際に後半では少し難しい単語も出てきます。しかし、だからといってタイトルだけで敬遠するのはあまりにももったいない絵本です。
本書が触れるのは、地球の内部の事だけではありません。地上で暮らす私たちや、土の様子、虫など身近なものから、それらが大地に与える影響、そして地表から地球の中心部までがどういうふうになっているのかが描かれます。
断面図のページは圧巻の一言。美しい地球の姿と、その内側がどうなっているのか、ひと目でわかるようになっているのです。
子供たちにとって難しい単語が出てくるかもしれませんが、そうしたものを子供と一緒に調べる事で、知らないことに出会うわくわく感と、分からないものへの向き合い方を一緒に学ぶことができるでしょう。
子供の食事の好みが出てくるのはいつごろでしょうか。食べるのが大好きな子もいれば、苦手なものが多い子もいますよね。
なぜ食事をしなければいけないのか。もし子供からそう尋ねられたら、どのように答えれば良いのでしょうか。
その答えとなるのがこの絵本です。説明ではなく、ユーモラスな物語にして、食事が私たちの体にどんな影響を与えてくれるのかが描かれています。
- 著者
- かこ さとし
- 出版日
- 1976-10-01
表紙をあけた瞬間から、おいしそうな食事の数々。ご飯にパンに目玉焼き……朝ご飯を思わせる爽やかなラインナップです。この食べ物たちは、これから人に食べられて、長い長い旅に身を投じます。旅のお供は黄色いカバン。これは食べ物それぞれが持つ栄養を表していて、どうやって体に取り込まれるのかを教える役目をもっています。
かわいらしく描かれる食べ物たちは、遊びに行くような明るい表情で体内を巡ります。食道を通って胃に入り、腸に揉まれて排泄されるのです。その一つ一つは、まるで遊園地のアトラクションのようで、とても楽しそうに映るでしょう。
栄養が吸収される部位で、黄色いカバンは吸い取られてしまいます。ここで私たちの体になるんだよ、と話してあげれば、そのとき食べ物がいた場所が栄養を集める部分なんだとわかるでしょう。
消化の旅を追ったのですから、さいごは当然、排泄です。ひょっとするとこのシーンが子供には人気かもしれません。ご飯を食べてから排泄にいたるまで、体のなかでどんな旅がなされているのか、子供たちは楽しく学べるはずです。
「歯磨きをしよう」「歯を大事にしよう」など、虫歯の標語は数多く、子供たちも何度も聞いたことがあるはずです。
では、歯はからだにとってどれくらい大事なものなのでしょうか。どうして虫歯になるのか、歯がないとどうなるのか、歯磨きにはどんな意味があるのか。そんな歯のことを、子供たちにわかりやすく教えてくれる絵本です。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
- 1972-03-01
まず目をひくのが、指をさして笑いあう子供の表紙。その笑顔にはきれいな白い歯が覗いています。この本は、いつまでもこうして笑いあうための絵本です。
この本では難しい言葉は一切使わず、柔らかくかみ砕いた言葉で様々なことが説明してあります。
それぞれのページには歯に対する問いかけが書いてあり、ページをめくると、答えが書いてある仕組みになっています。疑問を持ち、その答えを知る、この繰り返しで子供たちは学ぶ事ができるのです。
少し周囲を見渡してみれば、いろんな道具があることでしょう。刺すもの、掴むもの、すくうもの……用途は様々に分かれています。使う人、使う目的によっても、道具はそれぞれ違います。
道具の仕組みと、その成り立ちに触れる絵本です。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
道具の存在は、私たちの暮らしには欠かせません。お箸やコップ、おもちゃ箱などの身近な道具から、工事現場で使われるような大規模で特殊な道具まで、その用途に分けて描かれています。
本書では、スプーンと同じページにパワーショベルが書いてあるのです。大きさはまったく違いますが、この2つは同じ性格の道具なんだということがわかります。
また、大きな道具を作るための道具があることにも気づくでしょう。赤ちゃんの小さな手にも収まってしまうくらいの歯車が、大きな道具を支えているのです。
この絵本を読んで周りを見渡してみたら、様々な役割を果たしている道具たちに気づくはずです。
総じて、かこさとしの絵本は、個性豊かなキャラクターが織りなす、知らず知らずのうちにいろいろ学べるものばかりです。優しいタッチの細かな描写の絵と、日常に近い出来事をストーリーにすることで、子どもたちにもわかりやすく、心に響きやすいのではないでしょうか。長年愛されているかこさとし作品を、ぜひこの機会に手に取ってみてください。