話題の若手漫画家である彼女。“彼女”と描いたとおり、名前の印象からくる予想とは反した性別で、女性の作家さんです。そんな彼女の作り出す独特の世界観に、ドハマりする読者が続出!1度読むと他の作品も読破したくなること間違いなし。シュールに淡々と描かれているのに、かなり意味深で心に刺さるストーリーは必見です。
1987年生まれ、宮城県出身の漫画家です。2009年に『赤い朝』がちばてつや賞一般部門に入選。それを皮切りに多方面から注目を浴び始めます。現代社会の抱える問題を独自の目線で描いた作品が特徴です。
読み始めから醸し出される不思議な雰囲気に、読み手はすぐに取りこまれてしまいます。一見シュールなギャグマンガかと思ってしまいますが、実はかなり深い!短編が多く、短時間で読めるのですが、とにかく余韻がすごい!1つでも作品を読むと、宮崎夏次系作品すべてを読みたくなってしまいます。
人との距離感、自分の存在意義、大事な人の死、現実との向き合い方など、考えさせられるストーリーは読み手で受け取り方がまったく異なると思います。友達や家族に勧めたくなる漫画家です。
「僕は 虫ケラだから」そう心の中でつぶやく主人公・武勇伝は、父親が他界し母親は死んだとされていましたが、実際は行方不明という不憫な男子学生。親戚の家にお世話になり、肩身が狭いのかコンビニでお弁当をもらう生活。バイト先では、叱責され続けます。
父親の遺言が吹き込まれたテープで、母親は整形に狂った鬼女だと知り、今更母を探す気も興味もない武勇伝でしたが、偶然母親を発見してしまいます。そこから、ふつふつと湧き上がる感情……。悲しみ、怒り、真実を知りたいという気持ち、いろいろが混ざり混乱した武勇伝は、母親の頭を目がけ持っていた傘を振り上げ……!?
「明日も触らないね」など9話収録の短編集です。
- 著者
- 宮崎 夏次系
- 出版日
- 2014-05-23
とにかく、心に刺さる作品です。不思議な絵とテンポ、説明の少ないストーリーが逆にわかりやすく心に響きます。一見シュールな漫画のようですが、含みを持った深いストーリーと主人公の心理描写にぐっと引きつけられ、この漫画の持つ世界観に引き込まれます。
本当に主人公が可哀想……。セリフは少ないのですが、主人公の強がりや虚勢、混乱に心を締めつけられます。そして運命のいたずらのような、母親との偶然の再会……。
主人公の本当の気持ちを想像したり、恋を応援したり、母親の存在への心の持って行き方を……主人公とともに考えてみたくなります。もしかすると、今後の自分自身の生き方にも何か影響をもたらす作品かもしれません。
俺様系な彼氏・ダンと彼女・のぞみの物語です。ダンがのぞみを嫌味っぽくののしり、怒りながら家を出ていくシーンから始まります。そしてその日、ダンは電車に引かれ死亡……。
突然の出来事に状況を呑み込めずにいるのぞみ。彼氏が死んだにも関わらず、悲しみにも暮れず、淡々と毎日を過ごします。そんなある日、のぞみはダンの遺書を発見し……?
「死」をテーマに淡々と描かれたストーリーに心を打たれる!「ダンくんの心配」他8話収録。
- 著者
- 宮崎 夏次系
- 出版日
- 2012-11-22
読み始める前にティッシュの準備をオススメします。淡々と、本当に立ち止まることなく描かれるストーリーですが、気付くと涙が……。悲しくもあり、温かくもある感動のストーリーです。
カッコつけたがりの嫌味な男、そんな印象のダン。読みながら「偉そうな言葉を並べて隠していても、本音はきっともっと子供っぽい思考の持ち主なんだろうな」そんな予想をしていたのもつかの間、ダンが死にます。しかも、事故なのか自殺なのか分からない電車事故で。
本来なら、彼女であるのぞみは泣き崩れそうなところですが、泣きもしないどころか落ち込みもしません。しかし……実際に身近な人の死に直面した場合、のぞみのように呑み込めないものなのかもしれません。そして空気を読めない妹が描かれることによって、さらに増す虚無感。「人が死んでも世界は何事もなく回る」そんな真実を突き付けられた感じがします。
人の死は取るに足りないものなのか……?
突然学校を辞めた主人公の女子・大学。最後の日の帰り道、おさげの男子・轟が後を追いかけて来て「大学さんのジャージや上履きを……隠していたのは僕です。」と告げます。そして、なぜか家までついて来てしまいます。
不思議な家に住む大学は不思議な祖父と暮らしており、その生活も不思議なもの。祖父は大学を家に閉じ込め2人で暮らしますが、突然この世を去ってしまいます。遺言状に書かれ、指示されたボタンを押すと……?「線路と家」など8話収録の短編集。
- 著者
- 宮崎 夏次系
- 出版日
- 2013-08-23
大学は何者なのか、そしてそれ以上に気になる祖父の存在。大学への罪の意識か、毎日足を運ぶ轟。それぞれが何を考えているのか、いろいろな憶測を呼ぶ作品です。
孫娘に対する歪んだ愛情を持つ祖父、目標もなく敷かれたレールを進む大学、クラスメイトのパシリのような轟。この3人の心情、そして心の変化を深く考えているうちに不思議な世界に迷い込んだような感覚に落ちます。
些細なことから芽吹いた信頼関係がいつの間にか恋愛に変化し、青春を感じさせるところも見どころです。
人それぞれ受け取り方、感じ方が違うと思うので友達同士で意見交換をするのも楽しそうですね。
かなりショッキングな内容で、上記3作とはまた違った雰囲気の物語です。主人公・柊一の両親はよくわからない宗教にハマり狂ったような生活、1人暮らしを始めた姉は引きこもりと化していました。1人まともな主人公が翻弄され、彷徨う……心にズシリとくる作品です。
元々両親は喧嘩が絶えず、それに比べれば宗教に狂っている今の方がマシだと考える主人公。主人公の精神を心配した学校の先生の勧めで、1人暮らしの姉のアパートを初めて訪ねます。しかし、主人公が目にしたのは部屋の中に段ボールで秘密基地を作り引きこもる姉の姿で……。
- 著者
- 宮崎 夏次系
- 出版日
- 2015-09-23
現実を直視できずに逃げるのか、見て見ぬふりをするのか、もしくは戦うのか……。作者が何を伝えたいのか、何を描いたのか、伝わり方は読み手それぞれかもしれません。家族や友達、バイト先などいろいろな世代で読んでみて、考察すると面白いかもしれません。
普通に考えればおかしいと判断できるような悪徳宗教にハマってしまった両親。「判断できなくなるほど、切羽詰まり、病んでしまったのかな……」そんな事を考えているとどんどん漫画の深みにハマっていきます。どんな意味が込められているのか、どうすればこんなひどい状況を回避できたのか……。
漫画とは思えないストーリーの深さ、読み終わった後の何とも言えない気持ちを味わってみてください。
気になるものはありましたか?ハッキリ言って、全てオススメです。淡々と描かれる短いストーリーでも、心にもたらす余韻はかなりのもの。本屋さんに立ち寄った際には、ぜひ宮崎夏次系の作品をチェックしてみてくださいね。