ライトノベル(以下、ラノベ)の人気は、今や衰えを知りません。作品も多種多様、星の数ほど出版されています。しかし、そんなにたくさんあるとどれを読んでいいのかわかりませんよね。ここでは、ラノベのなかでも本当に面白い「名作」と呼ばれるラノベ作品をご紹介します。
城南大学大学院で「ハイブリッド素材」の研究開発をしている山口貴久は、恋人の緑川百合子とのデートのため、大学の研究を切りあげて待ち合わせ場所へ向かいました。いつも通りの日常でしたが、それは突如起こった事件であっという間に失われてしまいます。
恋人の百合子が、悪の組織である「ユニコーン」と正義の味方である「ガーディアン」の戦いに巻き込まれ、死んでしまったのです。しかも百合子を殺したのは、ガーディアンがユニコーンの戦闘員に放った攻撃。世間は百合子の死に対して、運の悪かった事故で、正義の味方に非があるなどと言う人はいません。しかし貴久はそれを認めることができず、正義の味方に復讐することを誓い、悪の組織である「ユニコーン」との接触を図ります。
- 著者
- 高畑 京一郎
- 出版日
このラノベは一言で言うと、ショッカー戦闘員視点で見る『仮面ライダー』です。「ユニコーン」≒「ショッカー軍団」、「ガーディアン」≒「仮面ライダー」と考えていただくとわかりやすいのではないかと思います。
主人公の貴久は正義の味方「ガーディアン」を倒すため、「ユニコーン」の戦闘員になろうとします。先ほどの『仮面ライダー』に置き換えると、一般人が仮面ライダーを倒すためショッカーになるとうするということです。
現実的に考えて、もしショッカーのような組織があったとしたら、一般人が接触をはかることはきわめて難しいでしょう。なぜならアジトなどがバレてしまったらショッカー軍団は仮面ライダーや警察、自衛隊などに制圧されてしまうおそれがあるからです。本作でも「ユニコーン」は謎の組織で、ボスが誰なのか、アジトがどこなのかなどは一切わかりません。それを貴久は、わずかな手掛かりをたよりに調査を進め、1巻のラストでは「ユニコーン」の幹部に接触することに成功します。
ネタバレになってしまいますが、2巻では戦闘員(ショッカーのようなもの)になるための訓練が描かれます。『仮面ライダー』では一瞬でやられてしまうショッカーですが、その裏には厳しい訓練があったのです。この訓練課程もめちゃくちゃ面白いです。
また、男性向けラノベとしては珍しく、女っ気がないのも特徴。貴久をはじめ、登場するキャラクターのほとんどが男で、恋愛要素はかなり薄めになっています。純粋に男達の戦う物語を読みたい方にオススメのラノベです。本編が気に入った方は、外伝も傑作なのでぜひ読んでみてください。
電波新聞部に所属している中学2年生の浅羽直之は、夏休み最後の日になっても一切宿題をやっていませんでした。でもそれは、夏休みの間、さんざんUFOを探して山籠もりをしたからです。
電波新聞部部長である水前寺邦博(すいぜんじくにひろ)とともに夏休み中、ずっとUFOを探していた直之でしたが、何の収穫も得られず、夏休みも残り13時間になった今、せめてもの夏の思い出作りに、学校のプールに忍び込むことを思いつきます。
しかし、そこにはすでにスクール水着を着た少女がいて……!?
- 著者
- ["秋山 瑞人", "駒都 えーじ"]
- 出版日
夜の学校のプールで謎の美少女と出会うという、ボーイミーツガールらしい出だしから始まるラノベです。いわゆるセカイ系の代表作としてタイトルを挙げられることもあり、SF要素も多く盛り込まれてはいますが、やはり少年と少女の一夏の物語として読むとより楽しむことができるでしょう。
プールで出会った少女、伊里野加奈(いりやかな)は、鞄の中に大量の薬を入れていたり、手首に銀色の玉が埋め込まれていたりと、様々な謎が提示されながら物語は進んでいきます。この辺りの謎が明かされていくと同時に、物語は日常から非日常へと展開されていくことになります。
文章力にも定評があり、特に情景描写はとても美しいです。キャラクターの台詞や絡みだけでなくその周りの風景を丁寧に描いているあたりは、ラノべらしくないと感じる方もいるかもしれませんが、本作においてはその丁寧な描写が物語に深みを与えています。
初出は2000年であり、少し古いラノベに振り分けられますが、今の中学生や高校生が読んでも充分に楽しめるでしょう。また、当時読んだ方がもう一度手に取ってみると、また新しい視点から楽しむことができるので、既読済みの方も再読してみてはいかがでしょうか。
ジャガイモのような形をした大陸は「ロクシアーヌク連邦」と「ベゼル・イルトア王国連合」という2つの国によって、東西に分断されていました。それぞれが統一を目指して戦争を繰り返していましたが、今は休戦していて少しだけ平和な時代……というのは表面上のことで、争い続けた両国に仲良くするという考えはありませんでした。
そんな時代に生きているヴィルヘルム・シュルツ(ヴィル)は、ロウ・スネイアム記念上級学校5年で、その頭の良さから教師にも一目置かれる存在でした。ある日、ヴィルがいつものように授業を受けていると、突然、学校の競技場に空軍の飛行機が着陸して……!?
- 著者
- 時雨沢 恵一
- 出版日
少年少女が冒険して成長するというストーリーは王道的で、文章も設定も難しくないので、普段あまり本を読まない方や、ファンタジーやSFに馴染みのない方も、シンプルに楽しむことができるでしょう。一方で、ラノベによくある萌え要素はありますが、ギャグやハーレム、エロなどの要素は少なめなので、そういったものを期待している方には少し拍子抜けしてしまうかもしれません。反対にそういうものより少年少女の冒険やファンタジーを楽しみたい方には嬉しいですね。
タイトルにもあるアリソンは、17歳ながら空軍のパイロットとして働く明るい少女で、ヴィルとともに育ったという過去があります。元気なアリソンに対し、ヴィルはおっとりしたタイプで、アリソンに振り回されることも多いキャラクターです。しかし、そんな振り回したり振り回されたりという関係は、ボーイミーツガールの王道でもあり、2人がその関係からどう変化していくかが、見どころの1つでもあります。
戦争という背景もあり、空軍の飛行機なども出てきますが、ミリタリーものというほどマニアックな描写をされていないので、読んでいてわからなくなるということは少ないでしょう。それは世界観や文章力も同じで、絶妙なラインでわかりやすく描かれているので、ファンタジー好きにしかわからない、ラノベ好きにしか通じない、などといったことがなく、幅広い世代に楽しめる作品です。さくさく読めるので、本に慣れている方ならあっという間に読み終えることができるでしょう。
子供の頃から宇宙人とか超能力とかそんな非日常に憧れを持っている「俺」は、ぼんやりとしているうちに何か起こりそうだった1999年も過ぎ、県立高校に無難に進学しました。新しい教室で、ありがちな流れで始まる自己紹介。
そんなよくある光景をぶち壊したのは、「俺」の後ろに座る生徒が発した言葉でした。「東中学出身、涼宮ハルヒ」と、よくある出だしから始まった自己紹介をきっかけに、「俺」の日常はビミョーにとんでもない方向へと転がり始めて……!?
- 著者
- ["谷川 流", "いとう のいぢ"]
- 出版日
高校に入学し、振り分けられたクラスでの自己紹介とよくある日常の風景から物語は始まりますが、そんな日常が、涼宮ハルヒの「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい、以上」という一言によって、少しずつ崩れていきます。
このラノベシリーズは文庫本で11巻まで発売されており、『涼宮ハルヒの憂鬱』から始まり、全てのタイトルに「涼宮ハルヒの~」と付いています。1巻、2巻などの表示がないので、順番に読みたい方は事前にタイトルをチェックしておくとよいでしょう。順番は、「憂鬱」、「溜息」、「退屈」、「消失」、「暴走」、「動揺」、「陰謀」、「憤慨」、「分裂」、「驚愕(前)」、「驚愕(後)」となっています。
「ビミョーな非日常」と銘打たれているように、日常の中に絡んでくる超常現象もがっつりとファンタジーやSFの世界というよりも、あくまでも日常の延長線にあるものといった感じです。登場するキャラクターもストーリーを支えるしっかりとした個性を持っており、安心して最後まで読むことができます。
1巻の『涼宮ハルヒの憂鬱』を読んで、普通に面白いくらいじゃない?と思った方、騙されたと思って4巻の『涼宮ハルヒの消失』まで読んでみてください。
17歳の高校生である戒崎裕一(えざきゆういち)は、ある日ウイルス性の急性肝炎にかかり入院してしまいました。そこまで重病ではないものの、最低でも2ヵ月の入院、その間激しい運動やストレスが溜まることは禁止、という生活を送ることになります。
しかし、1ヵ月が過ぎる頃には徐々に回復し、ひたすら眠るだけの規則正しい生活を持て余すようになりました。退屈でたまらなくなった裕一は、夜になるとこっそり病院を抜け出し、友達の部屋で過ごすようになります。そして明け方にまたこっそり病院へ帰るのですが、裕一の行動に気が付いた元ヤンの看護師の亜希子さんに待ち伏せされ、見事に捕まってしまいました。裕一の運命は……。
- 著者
- 橋本 紡
- 出版日
2003年に第1巻が刊行された後、2006年までに全8巻が刊行されています。ライトノベルのジャンルでは珍しく、ファンタジーやSFの絡まない普通の日常を描いた作品で、不治の病を患った少女と少年の恋愛ストーリーです。後に、漫画化、アニメ化、テレビドラマ化など、幅広いメディアに展開されました。
高校2年生の戒崎は、A型肝炎を患い入院したことがきっかけで里香に出会うことになります。何事も考え過ぎる性格の彼ですが、夜中に病院を抜け出すなどと言った大胆な行動をすることもあります。
すでに他界している、ギャンブルと酒と女が好きな父親のことを嫌っていましたが、同時に父親の言っていた「おまえもそのうち好きな女ができるんやろな。ええか、その子、大事にせえや」という言葉がずっと心に引っかかっていました。
そんな裕一と出会った秋庭里香(あきばりか)は、幼い頃から心臓の病気で入院生活を送っている17歳の少女です。気難しくわがままな性格で、周りを困らせることもありますが、裕一と交流をするうち、しだいに心を開いていくようになります。病気であるからこその里香の葛藤を丁寧に描いた部分は、本作の見どころの一つといえるでしょう。
里香だけではなく、病気の彼女の力になりたいけどなれず、自分の無力さに苦悩する裕一の姿なども、とても瑞々しく描かれています。ライトノベルらしい気軽に読める軽さもありながら、一般文芸でも通じる恋愛物語です。二人がどのような結末に向かっていくのか、ぜひ手に取って確認してみてください。
ネット上で噂になっている「首なしライダー」。いつものように仲間達と「仕事」をしていた男の前に、それは不意に現れました。バイクもドライバーも全て黒に包まれた「影」のようなそれは、さらに異様なことに、痛めつけた人間を手にぶらさげていたのです。それが「仕事仲間」だと気がついた男達はいきり立ちます。
しかし、荒っぽい仕事をしているはずの男達は、「影」の前に次々と倒れていきます。そのあまりの異質さに戦慄する男達の運命は……?
- 著者
- 成田良悟
- 出版日
- 2004-04-10
視点があちこちに移り変わるのが特徴の群像劇作品であるため、もしかしたら分かりづらいと感じてしまう方もいるかもしれません。とにかくキャラクターが多く、また、多いだけではなく複雑に絡み合っているので、読み解くのも混乱しますが、そこに面白さを感じることのできる方にとっては、とてもハマるラノベ作品です。
「首なしライダー」ことセルティ・ストゥルルソンも個性の強いキャラクターですが、他にも、内気ながら非日常な出来事に強い憧れを抱いている高校生の竜ヶ峰帝人(りゅうがみねみかど)、池袋最強の男平和島静雄(へいわじましずお)、人間観察が趣味の情報屋折原臨也(おりはらいざや)など、様々なキャラクターが登場します。
数は多いですが、1人1人のキャラクターにとても個性があり、それぞれがエピソードの中で生き生きと動いて、さらにそれらのエピソードが有機的に絡み合っていく構成はとても素晴らしく、読み終わった時に思わずなるほどと思ってしまう方も多いはずです。
池袋を舞台にしているので、その土地に馴染みのある方であればさらに楽しむことができますし、本を片手に池袋へ遊びに行くという楽しみ方もいいかもしれませんね。
統合防疫軍JPに所属している初年兵であるキリヤ・ケイジは、絶望的な戦場で重傷を負い、そのまま死んでしまいます。しかし、次にキリヤが目を覚ました時、そこは「出撃前日の朝」で、周囲の人間もキリヤがすでに経験したような行動をくり返しており、キリヤは自分がタイムループをしていることに気が付いたのでした。
- 著者
- 桜坂 洋
- 出版日
- 2004-12-18
しかしタイムループをしても、敵であるギタイは毎回同じ行動をくり返すわけではなく、少しずつ行動を変えていきます。そのためにキリヤは何度もギタイと戦い、殺されますが、時間をくり返すと「記憶だけが蓄積される」ことを知り、ギタイを倒すために能力を利用して自分自身を成長させていくのですが……。
トム・クルーズ主演でハリウッド映画が作られたことでも有名で、筒井康隆などの作家からも賞賛を浴びた作品です。
主人公達の敵であるギタイは、ヒトではないバケモノです。「ヒトが垂直に立てた棒だとすれば、ギタイの外形は樽である。それに合計四本の短い手足と一本の尻尾がついている。ぶくぶくに膨らんだカエルの溺死体が立ち上がった格好だと、ぼくらはいつも言っている」(『All You Need Is Kill』より引用)その正体は、異星人が地球に送りこんだ土木作業用ナノマシンでしたが、棘皮動物に取りこまれたことでバケモノへと進化したのでした。
キリヤは戦場で圧倒的な戦力を誇る少女、リタ・ヴラタスキと出会い、共闘することになります。戦場で少年と少女が出会い、ともに戦いながら未来へ向かっていくストーリーは、ボーイ・ミーツ・ガールものとしても面白く読むことができるもの。テンポが良く分量も少な目なので、SFの世界を一気に楽しみたい人におすすめです。
ある日、ひとりの少年の前に、空から少女が落ちてきました。その姿は、昔恋心を抱いていた相手にそっくり。
それだけでも不思議な出来事なのですが、彼女は少年に向かって、「自分は爆弾だ」と言い……⁉
- 著者
- 古橋 秀之
- 出版日
いきなり好きな女の子の姿をした爆弾が降ってきた……というなんとも荒唐無稽な設定の表題作をはじめ、記憶が退行してどんどん幼児化してしまう謎の病気にかかってしまう話や、死んだ恋人と何度も遊園地で遊ぶ話など、不思議な短篇が収録されています。
いずれもあらすじだけ聞くと「?」となってしまいますが、内容はどれもちょっぴり切なくなるボーイ・ミーツ・ガール。
爆弾を名乗る少女は一見するとライトノベルらしい萌えキャラですが、「トキメキ」が一定数溜まると世界を滅ぼす規模の爆発を起こしてしまうというとんでもないもの。その結末は切なく、思わずホロリとしてしまう読者も少なくないでしょう。
行商人のロレンスは、その職業柄、一年のほとんどを荷馬車で旅をしています。そんなロレンスが訪れたのは、麦の収穫と豊作を祈願した祭りが行われている村。そこでは、狼の姿をしたホロという豊作の神が信じられていました。ロレンスにとっては昔から馴染みのある村であり、もちろん祭りのことも知っていましたが、村の人間ではないため参加したことはありませんでした。
どことなく寂しさを覚えながら村を後にしたロレンスは、その夜は野宿をすることに決め、荷台で寝ようと思います。しかしそこには、何とそこには見たこともない美しい娘が裸で毛皮にくるまって寝ていたのです。しかもその娘の頭には獣の耳が付いていて……!?
- 著者
- 支倉 凍砂
- 出版日
- 2006-02-10
支倉凍砂のデビュー作であると同時に、コミカライズやアニメ化などもされている人気シリーズです。
物語の舞台は、中世ヨーロッパ風の異世界ですが、いわゆる魔法のようなものは描かれず、ロレンスを中心に異世界での商売を扱った物語です。ロレンスの荷台に紛れ込んでいた獣耳の少女・ホロのような神様や、人間のように知性を持ち、時には人間に化けることもできる獣がいるなど、ファンタジーならではの設定もありますが、そういう種族がいるというだけで、異世界の日常を描いたラノベであることに変わりはないでしょう。
ロレンスが行商人としてビジネスチャンスを嗅ぎつけていくために巻き込まれる事件や、商談や取引を巡る駆け引きなど、ミステリーやファンタジー要素の他に、経済やビジネスについて深く語られているのも特徴です。
誠実に商売に取り組むロレンスと、普段は美少女ですが本当の姿は人間を丸のみすることもできるくらい巨大な狼であるホロの恋愛も見どころ。2011年に一度完結しましたが、2016年から続編の『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』がスタートしています。
高校2年生の始業式を迎えた高須竜児は、憂鬱で仕方がありませんでした。成績はまあまあだし、遅刻も欠席もしないし、喧嘩だってしない普通の高校生である竜児ですが、彼は生まれ持った目つきの悪さのせいで、いつも周囲に誤解されてしまっていたのです。
提出物を忘れたことを謝りに職員室に行けばさすまたを持ち出されそうになったり、肩がちょっと当たれば命乞いをするような勢いで謝られたり……そんなことの繰り返しである竜児は、新しい環境でまた誤解を解くところから始めなければならないことにうんざりしていましたが、そこで小さいくせにやたらと凶暴な逢坂大河と出会い……。
- 著者
- 竹宮 ゆゆこ
- 出版日
- 2006-03-25
アニメ化もされた人気ラノベで、「このライトノベルがすごい!」に何度もランクインしたことがあり、最高では2位を獲得しました。
主人公の竜児の悩みは、目つきが悪いこと。作中で「釣り上がっている、三白眼である(中略)青みがかかった白目の部分がギラギラと強烈な光を放っている。色の薄い黒目は小さく、見る対象を斬り殺そうとしているみたいに鋭く動く」と書かれているように、竜児に悪気はなくても、周りには常に威圧感や恐怖を与えてしまいます。
また、一見すると人形のように可愛く男子からもモテる少女の大河も、その見た目からは想像できない凶暴さを秘めており、名前と小柄な体格から「手乗りタイガー」とあだ名を付けられるほどです。しかし、本人は小柄な体格や大河という名前にコンプレックスを抱いて、自分に素直になれないところがありました。
彼らのように、登場するキャラクター達はそれぞれ悩みやコンプレックスを抱えて生きています。そんな中で、不器用ながらも一生懸命に成長していく主人公達の姿はもちろんのこと、学校の教室での細かなところまで気を遣われた細部の描写が、より共感度をあげている一因となっているのでしょう。
ファンタジー要素がないラブコメラノベなので、純粋に現実世界の物語を楽しみたい方にもオススメです。
高校2年生の井上心葉(いのうえこのは)は14歳の頃、「謎の天才覆面美少女作家」として世間を騒がせたことがありました。ほんの気の迷いで新人賞に応募した初めての小説。それが大賞を受賞し、ベストセラーになり、ドラマ化に映画化にと、日本中に知れ渡る話題作になってしまったのです。
本当は自分は美少女どころか男だし、落書きみたいな小説しか書けないのに……と、心葉は世間に恐縮しっぱなしの日々を送り、とうとうストレスで倒れ、不登校になり、天才覆面美少女作家は1年あまりで姿を消したのでした。
その後、心葉は普通に高校へと進学します。1年の時に文芸部部長の天野遠子(あまのとおこ)に引っ張り込まれるまま文芸部に所属することになりますが、遠子にはある秘密がありました。それは、遠子が本のページを千切ってむしゃむしゃ食べてしまう美食家だということ。
心葉は彼女の好きな肉筆の物語を作るため、日々せっせと原稿用紙に筆を走らせています。そんなある日文芸部に、1年生の竹田千愛(たけだちあ)が恋の相談にやってきました。なぜ文芸部に恋の相談?と戸惑う心葉でしたが……。
- 著者
- 野村 美月
- 出版日
- 2006-04-28
2006年から2011年にかけて発表されたシリーズで、全部で16巻刊行されています。「このライトノベルがすごい!」では数年に渡り、作品部門やキャラクター部門、イラストレーター部門など様々な部門で入賞を果たすなど、幅広い評価を得ました。漫画化や劇場アニメ化などもされた人気シリーズです。
主人公・天野遠子は、物語をこよなく愛する高校3年生ですが、彼女の愛し方とは「食べてしまう」こと。好きな本のページを千切ってむしゃむしゃと食べてしまう「文学少女」です。性格は無邪気で天然、わがままな部分もあり、様々な事件に首を突っ込んでは、心葉を振り回しています。
もう一人の主人公・井上心葉は、かつての「謎の覆面美少女作家騒動」で、ある重大なトラウマを背負ってしまいました。高校に進学後は普通の高校生として生活していましたが、ひょんなことから遠子が「文学少女」であることを知ってしまい、半ば強制的に文芸部に入部させられてしまいます。しかし、遠子に振り回されつつも交流をしていくうち、しだいに心を開いていくのでした。
遠子が純文学好きの文学少女であることもあり、各巻は太宰治の『人間失格』やエミリー・ブロンテの『嵐が丘』などの名作をベースに進んでいきます。ミステリー仕立てなので、様々に起こる謎を解決していく様子にももちろん面白さがありますが、遠子を始めとしたキャラクターの魅力が本作を牽引していると言っていいでしょう。
もちろんベースとなる作品を知らなくても楽しめますが、知っていればより楽しむことができるかもしれません。普段からライトノベルを愛読している方はもちろん、ライトノベルにはあまり馴染みがないけど読書は好き、また純文学が好き、という方にぜひ手に取ってもらいたい一冊です。
春休み前の終業式を終えた阿良々木暦(ああらぎこよみ)は、ひょんなことから羽川翼のパンツを見てしまいます。実は、翼は、暦が密かに好意を寄せている少女で、そのために収まりの付かなくなってしまった暦は、その夜、密かにエロ本を買いに出かけました。
しかし、出かけた先で暦が出会ったのはエロ本ではなく、四肢を失い瀕死の状態になった美少女でした。少女は自分のこと吸血鬼と名乗り、暦は彼女を助けるため、自らの血を与えるのですが……。(『傷物語』あらすじより)
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2006-11-01
主人公の暦と、その周囲にいるキャラクターの個性は非常に強く、そんなキャラクター達の掛け合いが、本編とはまったく関係なくくり広げられるのもこの作品の特徴です。
シリーズ全編に登場する暦を始め、表向きは病弱な令嬢ですが実は相当なツンデレである戦場ヶ原ひたぎや、ツインテールの幽霊少女の八九寺真宵(はちくじまよい)など、シリーズを通して多くのキャラクターが登場します。
緻密に練られたストーリーももちろん面白いですが、お気に入りのキャラクターができれば、それに関わる物語だけを追いかけて読むなど、キャラクターそのものの魅力を楽しめる方にとっては、よりこのシリーズを楽しむことができるでしょう。
刊行順と物語上の時系列がバラバラなので、読んでいて物語の時間がどこだかわからなくなってしまった方は、もう一度、時系列順に追いかけてみても楽しいかもしれません。時系列順に並べると「傷物語」、「猫物語」、「化物語(上)・(下)」、「偽物語(上)・(下)、「傾物語」、「鬼物語」、「猫物語(白)」、「終物語(中)」、「終物語(上)」、「囮物語」、「恋物語」、「憑物語」、「暦物語」、「終物語(下)」、「続・終物語」、「花物語」、「愚物語」、「撫物語」、「業物語」、「結物語」となっています。
『化物語』か『傷物語』から読み始めるのがおすすめです。
「試験召喚システム」。それは、学力低下に歯止めをかけるために考案されたシステムで、「テストの点数」がそのまま「召喚獣の強さ」になるというもの。そんなシステムが導入された文月学園高等学校に通う吉井明久は、テストの結果、最低ランクのFクラスに振り分けられてしまいました。
文月高等学校では、最高ランクのAクラスは冷暖房完備、リクライニングシートや冷蔵庫まで揃った教室である一方、最低ランクのFクラスは卓袱台と座布団と、設備にも格差があります。そんな中、本来は才女である姫路瑞希が、体調不良でテストを途中退席してしまったために、明久と同じFクラスにやってきます。そんな彼女のため、明久は悪友とともにAクラス設備を強奪する計画を立てますが……!?
- 著者
- ["井上 堅二", "ファミ通文庫編集部", "葉賀 ユイ"]
- 出版日
「バカと美少女達による学園エクスプロージョンラブコメ」と銘打たれているラノベで、文字通り、バカが爆発したような勢いと笑いに満ちたライトノベル。ここでのバカはもちろん褒め言葉です。
主人公の明久をはじめ、彼の相棒的存在の坂本雄二などバカ達の掛け合いは読んでいてとにかく笑ってしまい、同時に憎めないキャラクター達に共感を覚えることも多いでしょう。もちろんヒロインで病弱キャラの瑞希やツンデレキャラの島田美波など、ラノベらしいキャラクターが揃っています。
また、学力と召喚獣の強さが比例するのであれば、最低レベルであるFクラスの明久達に勝ち目がないと思うのですが、それをも覆すFクラス達の戦い方は予想外のものが多く、笑いの中にも驚きがたくさんあるラノベになっています。
ギャグに好みは分かれる部分もあるかもしれませんが、息抜きしたい時や気分転換をしたい時など、深く考えるよりもとにかく笑いたい時に読んで頂きたい作品です。
幼い頃から、音楽評論家の父が使い捨てるオーディオ機器をいじっていた結果、すっかり修理や組み立てが趣味になってしまった「ぼく」――桧川直巳(ひかわなおみ)、通称・ナオは、その日もジャンクヤードにやってきていました。
そこで聞こえてきたピアノの音。音色に導かれるように向かった先にあったのは、ゴミ山の中に埋もれたピアノを弾く1人の少女でした。彼女の使っていたレコーダーを直してあげたことをきっかけに言葉を交わす2人でしたが、帰り道、ナオはふと、彼女のことを思い出して……。
- 著者
- 杉井 光
- 出版日
ラブコメラノベではありますが、描かれている萌え要素がそこまで過剰ではありません。ゴミ山の中で出会ったナオと少女――蛯沢真冬(えびさわまふゆ)の、音楽を通した交流がメインに描かれています。真冬のツンデレな性格にはライトノベルらしい萌えもありますが、誇張されているというよりも自然なスタイルなので、違和感なく読むことができます。女の子達の過剰な萌えを期待するよりも、クラシックやロック好きの方が楽しめるラブコメラノベです。
音楽とストーリーが有機的に絡み合っていて、音楽がただの小道具になっていないので、音楽好きにとってはとても満足いくものになっています。特に演奏シーンは素晴らしく、専門的な用語を使いつつもわかりやすく描かれているので、ついつい引き込まれてしまう感覚を味わうことができます。
実際に存在するクラシックやロックの曲が出てくるので、知っている方は曲のイメージがよくわかり、さらに物語を楽しむことができるでしょう。もちろん知らなくても楽しめますが、せっかくなので調べて聞いてみるのも楽しいかもしれません。
高校1年の佐藤洋(さとうよう)は、ある日、何気なく立ち寄ったスーパーで半額弁当を買おうとしました。しかし、弁当に手を伸ばした瞬間、洋は何かに弾き飛ばされ、気が付けば精肉コーナーの前に倒れていたのです。
何が起きたのかわからないまま、とにかく空腹を何とかしたい洋は、かろうじて残っていた半額シール付きのおにぎりへと手を伸ばします。しかし、洋の手が掴んだのはおにぎりではなく、柔らかな女の子の手。その手の持ち主は、白粉花(おしろいはな)。互いにカップうどんを買い、おにぎりは半分こして食べることにした二人は、公園で食事をともにすることにしました。
そこで洋は、花から弁当コーナーで何があったのかを聞きます。花いわく、弁当に半額シールが貼られた瞬間、集まってきた人の塊の中から男の人(すなわち洋)が跳ね飛ばされてきて、次に気が付いた時には人だかりは弁当とともに消えていたというのですが……。
- 著者
- ["アサウラ", "柴乃 櫂人"]
- 出版日
2008年から2014年にかけて全12巻が刊行されており、2012年には「このライトノベルがすごい!」で3位を獲得しました。スーパーの半額弁当を巡って超人的なバトルがくり広げられる、という個性の際立った世界観が人気を集め、アニメ化もされたシリーズです。
主人公の佐藤洋は、寮暮らしの高校1年生。ひょんなことから半額弁当をめぐるバトルに巻き込まれ、その後は自分からその争いの中へと飛び込んでいくようになります。不可抗力を含め、ヒロインたちにたびたび変態行為を行ってしまうため、戦いの二つ名に「変態」と付けられてしまうなど、やや不憫な面も目立ちます。
そんな洋をバトルの世界へ引き込んだ張本人でもあるのが、槍水仙(やりみずせん)です。高校2年の彼女は、二つ名を「氷結の魔女」と呼ばれ、その世界では有名な存在でした。負けず嫌いであると同時に寂しがり屋でもあり、仲間外れにされるとすねてしまうというやや子どもっぽいところもあります。洋、それに白粉花(おしろいはな)を勧誘し、バトルの世界へと引き込みました。
半額の弁当を手に入れるという誰でも経験できるような日常のワンシーンを、これほどまで激しく熱いバトルストーリーへ昇華させた本作、初読の方は誰もが驚きを感じるのではないでしょうか。バトルシーンの迫力と熱量には、思わず引き込まれてしまいます。
本作はそんなバトルだけではなく、ちょいエロありのラブコメ要素も詰め込まれています。ギャグやキャラクターに好みが分かれることはあるかもしれませんが、一度ハマると抜け出せない面白さのある一冊なので、ぜひ一度チェックしてみてください。
21歳の狩乃シャルルは、デル・モラル空艇騎士団の一等飛行士。9歳の時に孤児になり浮浪生活を送っていましたが、その後、教会の神父に拾われ、そこで飛空機の操縦を覚えたという過去があります。
そんなシャルルが、ある日、次期皇妃であるファナ・デル・モラルを婚約者の元へ届ける極秘作戦「海猫作戦」のためのパイロットに任命されます。本来であれば出会うはずのない支配層のファナと身分の低いシャルルは、互いに反発し合いながらも、過酷な旅を続けるうちにだんだんと心を通わせていき……。
- 著者
- 犬村 小六
- 出版日
- 2008-02-20
犬村小六は本作を描くにあたって、『ローマの休日』や『天空の城ラピュタ』をイメージしたと語っており、その言葉通り、身分を超えた気持ちの交流や空中戦などが詰め込まれた、ボーイミーツガールありのファンタジーラノべです。
高い身分に生まれたファナと、被支配層であるシャルルは正反対の存在ですが、それぞれがその立場故の悩みを抱えており、葛藤する様子は、空の描写と相まってとても切なく描かれています。王道のストーリーと設定で最後まで安心して読むことができ、また、1巻で完結しているので、気軽に本を読みたい時によいでしょう。普段、あまり読書をしない中高生にオススメするにもよいラノベかもしれません。
王道といっても、先が読めてつまらないとかそういったことはなく、むしろ王道だからこそ細部の丁寧さが光っています。本来は出会わないはずの2人が、「空」で交流していく様子は、「空」が自由の象徴としてうまく表現されています。読後感は切ないながらもとてもさわやかなので、心地よい読書を楽しみたい方にオススメのラノベです。
高坂京介は、いたって普通の男子高校生。むしろ波乱を嫌い、普通であることを望んでいました。
彼には桐乃という中学生の妹がいます。スポーツ万能で成績優秀、雑誌のモデルまでしている完璧な彼女とは、ものすごく仲が悪く、まともに口もきかないようになっていました。
しかし京介は、ひょんなことから桐乃の秘密を知ってしまい……!?
- 著者
- 伏見 つかさ
- 出版日
- 2008-08-10
タイトルからは、ライトノベルによくある可愛い妹キャラもの……と思うかもしれませんが、本作のポイントは兄妹の仲が悪いということ。妹の秘密を共有することで、徐々に打ち解けていくのです。
主人公の京介は可もなく不可もなくを目指す普通志向の男子高校生ですが、ある日、妹の桐乃が萌えアニメや美少女ゲームが好きな「隠れオタク」だということを知ってしまいます。彼女が周囲に自分の趣味を言えずに悩んでいたことを知ると、裏の友達づくりや創作活動の協力などをするようになるのですが……。
全体的にはオタク要素満載のギャグコメディ。いわゆる「オタク用語」もたくさん登場するので、馴染みのある方はより楽しめる内容になっているでしょう。
夏休みの補習がおこなわれている高校で、女子生徒の吉野が4階から転落して死亡しました。飛び降り自殺と処理されましたが、由良彼方という少年はその死の真相を探ろうとします。
飛び降りの目撃者である榎戸川・旭と接触し、真実へと近づいていくのですが……。
- 著者
- ["柴村 仁", "也"]
- 出版日
「青春ミステリー」と銘打たれた本作。「青春」というとどこか爽やかなイメージがありますが、本作は高校生のもっとも暗くて柔らかな部分を突いたようなダークな雰囲気を醸し出しています。
自殺とされた吉野の死の真相は、とても痛々しく、闇を抱えたものでした。
全体は2部構成になっていて、前半は由良と榎戸川が死の謎に迫るストーリー、後半は亡くなった吉野の視点で描かれるストーリーです。
由良は容姿端麗な美少年なのですが、その言動は一見するとバカらしいものばかり。何を考えているのかよくわかりません。しかし物語が進むにつれて、彼の振る舞いがだんだんと不気味に感じられるのです。
少年少女の切なくて痛く、そして愛おしい感情に触れてみてください。
「ナーヴギア」。それは、装着したヘッドギアを通し、視覚や聴覚、触覚、嗅覚や味覚に至る全ての五感にアクセスすることができるハードのことです。完全な仮想現実へ入ることを、人は「完全ダイブ(フルダイブ)」と呼ぶようになりました。
そんなナーヴギアをハードとしたゲーム「ソードアート・オンライン」は、VRMMO(仮想現実大規模多数人オンライン)という初めてのジャンルのゲームとして開発され、多くのゲーマー達を魅了していました。ゲーム中毒者であるキリトもその1人でした。
ある日、いつものようにゲームを楽しんでいたキリトでしたが、突然、ゲームの世界からログアウトすることができなくなり……!?
- 著者
- ["川原 礫", "abec"]
- 出版日
アニメ版や劇場版も人気のある作品なので、アニメからこの作品を知ったという人も多いかもしれません。アニメでは描かれなかった部分を楽しめることはもちろんですが、原作ならではのスピーディさや、より深いキャラクターの気持ちを知ることができるでしょう。
仮想現実のゲームが舞台ではありますが、本来ゲームであれば死んでも簡単に生き返ることができるところ、ゲームの中で死ぬと現実でも死ぬという縛りをつけたことで、キリト達の戦いに緊迫感を与えています。
主人公のキリトをはじめ、回を追うごとに増えていくヒロイン達の個性的なキャラクター達に魅力があるのはもちろんのこと、その内面の部分の描写も丁寧に描かれているので、思わず感情移入してしまう事も多いでしょう。また、仮想現実という現実ではないからこそ、多くの人達と生まれる繋がりを感じることができるなど、設定を上手に活かした展開になっています。
文庫本で19巻(2017年4月現在)と長いラノベ作品ですが、世の中もどんどんバーチャルがより身近になっていく中で、もしかしたらこういうこともあるのかもしれない、なんて思いながら一気に読めてしまう作品です。
毬井ゆかりは、「ニンゲンがロボットに見える」という不思議な紫色の目を持った少女。その少女の親友である波涛学(はとうまなぶ)、通称ガクによって物語は語られていきます。ガクは一見すると少年のようにも見えますが女の子で、ゆかりのことを「かわいい」と思っています。
- 著者
- うえお 久光
- 出版日
- 2009-07-10
ゆかりは「ニンゲンがロボットに見える」という力を、基本的には周囲に隠して暮らしています。とはいえ、やはりその力ゆえに取ってしまう行動から、周囲は彼女のことを「変人」として扱っていました。しかしそれがゆかりを孤独にしているかというとそうではなく、「むしろ彼女は好かれている」(『紫色のクオリア』より引用)のです。
「どこか浮世離れした彼女のキャラはいわゆる『不思議ちゃん』として好意的に受け止められていて(中略)マスコット的存在ですらある」(『紫色のクオリア』より引用)
物語の前半は、そんなゆかりの力を使って事件を解決していくという話で、最初は不思議な女の子とその親友である語り部のガクとの日常系の物語かなと思うかもしれません。しかし、後半に差しかかるにつれて様相は本格的なSFへと変わっていきます。
タイトルでもあるクオリア(感覚質)を始め、並行宇宙や量子力学、哲学、そして魔法少女など、実に様々な要素が豊富な知識とともに描かれており、読みごたえは充分です。しかし決して難しく書かれているわけではないので、SFに慣れていない人でも充分楽しめるでしょう。
また、1巻で完結しているのも読みやすさの1つ。勢いのまま一気に読み終わることができます。
高校2年の羽瀬川小鷹(はせがわこだか)は、ある日体操着を忘れたことに気が付きます。図書室で本を読んでいたため、辺りはすっかり夕焼けに染まり、人もまばらの校舎を歩いて、小鷹は自分の教室へと向かいました。
すると、教室の中から聞き覚えのない声がしてくることに気が付きます。小鷹が今の学校に転校してきて1ヵ月、同じクラスにこんな声の生徒がいたかと不思議に思いましたが、そこにいたのはクラスメイトの三日月夜空(みかづきよぞら)でした。
いつも不機嫌オーラを出して一人でいる彼女の、明るい笑顔としゃべり声に面食らう小鷹でしたが、さらにもう一つ、あることに気が付きます。それは、彼女が携帯で話しているわけでもなく、一人で会話をしていたことでした。まさか夜空は見えざる何かと話していたのではと思った小鷹は……!?
- 著者
- 平坂 読
- 出版日
- 2009-08-20
2009年に第1巻が刊行された後、2015年までに全11巻が発表されました。2011年の「このライトノベルがすごい!」では第2位を獲得、同年に最も売れたライトノベルです。
主人公の羽瀬川小鷹は、イギリス人と日本人のハーフですが、彼にあるのは「くすんだ金髪」という特徴だけ。しかもその特徴のせいで、幼少の頃からヤンキーだと誤解を受け、友達を作ることができないまま過ごしてきました。聖クロニカ学園に転校してきた時も、様々な要因が相まってすっかりクラスで浮いた存在になっています。
そんな小鷹のクラスメイトの三日月夜空は、中性的顔立ちの美少女ではあるものの、普段から不機嫌オーラ全開でいるためにクラスから浮いており、彼女もまた友達のいない存在でした。そんな夜空は、度々「エア友達」と会話、つまり「友達と話しているように聞こえる独り言」を言っていたのですが、そこを偶然、小鷹に目撃されてしまいます。そのことがきっかけで、夜空は小鷹を巻き込み、友達を作るための部活「隣人部」を作りました。
「残念系青春ラブコメ」のキャッチコピー通り、いろいろな理由で友達のいない「残念」なキャラクターたちがラブコメを展開する、ライトノベルらしい作品です。ギャグやちょいエロなどの要素も含め、物語は終始明るい雰囲気で進んでいくので、最後まで明るい気持ちでサクサクと読み進めることができるでしょう。
物語を掘り下げるよりも、どんどん前進していくような展開になっているので、気軽に楽しく読むことができます。キャッチーなタイトルと、物語を引き立てるイラストにもぜひ注目してください。
舞台は私立山星高校文化研究部、通称「文研部」です。ある日、文研部に所属している桐山唯と青木義文は、数十分お互いの魂が入れ変わる体験をしました。唯と義文はその体験を他の部員である主人公の八重樫太一、永瀬伊織、稲葉姫子に相談しますが、荒唐無稽であると笑われてしまいます。しかしその話の後、今度は太一と伊織が入れ替わってしまい……。
部員5人の中で続く「人格入れ替わり」。人格入れ替わりの真相、5人の運命はいかに!?
- 著者
- 庵田 定夏
- 出版日
- 2010-01-30
「ココロコネクト」シリーズは文研部に起こる様々な現象、それに対する文研部の絆を描いたラブコメラノベです。『ココロコネクト ヒトランダム』では人格入れ替わりですが、思ったことが相手に伝わってしまう「感情伝導」や幼くなってしまう「過去退行」といった現象が文研部を襲います。
「ココロコネクト」シリーズのヒロインは伊織と姫子です。この作品のラブコメは現象によって影響を受け、相手に隠していた気持ちが伝わってしまいます。そんな状況の中でどんな恋愛をくり広げるのでしょうか。唯と義文の関係も必見です!
見所は文研部の絆です。様々な現象によってお互いに隠していたトラウマや性格が明らかになっていきます。その度に仲違いや勘違いが生じますが、それを乗り越えた後の絆はとても強固になっています。困難を乗り越えるような青春ストーリーが好きな方におすすめのラブコメラノベです!
さらに比企谷八幡は、高校生活について書いた作文のことで、国語教師の平塚静に呼び出されていました。それは、作文にリア充は爆発しろ、などとテロリストの犯行声明のようことを書いたからでした。
美人な静の迫力に負けて作文を書き直すことを約束した八幡でしたが、静はペナルティとして奉仕活動をするように言いつけ、ある場所へと連れて行きました。そこにいたのは、斜陽の中で1人文庫本を読んでいる美少女・雪ノ下雪乃でした。
- 著者
- ["渡 航", "ぽんかん8"]
- 出版日
人気ラノベ作品で、2014年、2015年、2016年には「このライトノベルがすごい!」の作品部門で1位を獲得するだけでなく、男性キャラクター部門では主人公の比企谷八幡が1位になるなど、作品はもちろんキャラクターも愛されているライトノベルです。
人付き合いが苦手で友達ができないあまり、ぼっちを極めようとしているひねくれた八幡と、同じように人付き合いが苦手なタイプでありながら物事に正論で向かっていく雪乃が、衝突しながらも少しずつ成長していくという、とても青春らしいストーリーは素直に面白く読めます。
上記したように八幡の人気はとても高いですが、ヒロインの優等生で自分にも他人にも厳し過ぎるために孤立している雪ノ下雪乃や、ギャル系ファッションの明るい性格で人当りもよいものの、八方美人な自分にコンプレックスを抱えている由比ヶ浜結衣など、キャラクターの魅力は八幡に負けるものではありません。
八幡をはじめ、不器用でひねくれているのにどこか納得できる考え方に、不思議と共感を覚えてしまう、共感度の高いライトノベルです。
魔法が現実の技術となった近未来。魔法を教育する魔法科高校を舞台にしたのが『魔法科高校の劣等生』です。物語は達也と深雪、劣等生と優等生の兄妹が入学するところから始まります。
この作品の魅力は設定の緻密さです。どうやって魔法を発動するのかがこと細かに描かれており、その設定がそれぞれの登場人物が使う魔法やバトルに個性を与えています。たとえば深雪の得意技は「冷却魔法」、達也のクラスメイトであるレオンハルトは「硬化魔法」を得意としています。バトルのなかでもそれぞれの登場人物らしい、個性的なアクションが見られます。
- 著者
- ["佐島 勤", "石田 可奈"]
- 出版日
ある魔法科高校に、通常魔法が使えない劣等生の兄と、完全無欠の優等生として扱われる妹が入学しました。妹の深雪は秘密主義家系である四葉家の跡継ぎとして有望視され、そのボディーガードとしての役割を兄である達也が担っています。本作では、そんな束縛された人生から、自分たちを自由にしようとする奮闘の物語がその根幹を成しています。
もともとはオンライン小説として連載され、累計3000万PVを達成した作品。劣等生の兄と優等生の妹というラノベらしい設定もありながら、背景には作り込まれた世界設定もあり、SF作品としても楽しめるかもしれません。
魔法科高校では優秀な一科生と二科生がはっきりと区別されており、二科生は劣等生の烙印を押されています。主人公達也も二科生、つまり劣等生です。しかし、あくまでこの区別は試験の成績によるもので、実戦で彼は圧倒的な力を見せつけます。
そんな達也の妹である深雪は一科生、それも主席入学という絵に描いたような優等生です。しかし、魔法の力で劣っているとはいえ、達也がただの劣等生ではないことを一番よくわかっているのも深雪です。二科生であるという劣等感に苛まれている人物に対して、深雪ははっきりと告げます。
「わたしの敬愛は、魔法の力故ではありません。少なくとも、俗世に認められる魔法の力ならば、わたしはお兄様を数段上回っています。ですがそんなものは、わたしのお兄様に対するこの想いに、何の影響力も持ち得ません。」(『魔法科高校の劣等生2 入学編(下)』より)
深雪の達也に対する愛情もこの作品の見どころの一つです。
達也をはじめ、特定の分野においては圧倒的な才能を見せる劣等生たちの活躍が手に汗握る、アクションファンタジーラノベです。
人々と精霊が善きパートナー同士として暮らす世界。その世界にある大国「カトヴァーナ帝国」は、隣接する「キオカ共和国」と戦争状態にあります。
そんな中、帝立高等学校では卒業式が行われていました。卒業生であるイクタ・ソロークは、式典は昼寝をしてサボり、その後に行われる会食だけ参加しておいしい料理にありついていました。
他の生徒からも「ロクデナシ」と呼ばれるイクタ。一方、高等学校を首席卒業した優等生のヤトリシノ・イグセムは、教師や級友からの期待を一身に受けています。一見、正反対の二人。しかし、二人の間には他の人は知らない密約が交わされており……!?
- 著者
- 宇野朴人
- 出版日
- 2012-06-08
電撃文庫より2012年に第1巻が刊行された後、2014年には漫画化、2016年にはアニメ化されるなど、高い人気を誇るシリーズです。
物語の世界には、「四大精霊」と呼ばれる火、水、風、光の属性を持つ精霊が存在しており、人々のパートナーとして暮らしています。とはいえ、精霊達はあくまでも人とともにあり、その力で人をサポートしている存在であり、物語上の戦いの主体は基本的に人間だけの力です。
主人公のイクタ・ソロークは、周りから「講義も実技もサボッてばかり。その時間に何をするかといえば、昼寝と徒食と女漁りとくる。ろくでなしの見本品、ごくつぶしの免許皆伝」と評されるほど怠け者ですが、後に「常怠常勝の智将」と呼ばれるようになるほど、軍師としての才能に秀でた人物です。
そんなイクタが自分の半身とも呼べるほど信頼しているのが、ヤトリシノ・イグセム、通称ヤトリです。ヤトリは名家であるイグセム家の長女である自分に葛藤を覚えながらも、軍人として非常に優れた才能を持っており、その実力は誰もが認めるところ。優等生で真面目な性格をしていますが、イクタと言い合いをするなど17歳という年齢相応の行動を見せることもあります。
そんな二人をはじめ、登場するキャラクターはいずれも個性的で明るく、戦記ものでありながら暗くなりすぎずに読める理由となってます。また戦記ものとして、イクタたちが活躍する戦場の様子や戦術は、この作品のなかでも最も注目してほしい見どころです。ただストーリー上、キャラクターが容赦なく死んでしまうので、苦手な方はご注意ください。
全体的にギャグや恋愛の要素は少なめで、ファンタジー戦記ものの方へ重きが置かれています。戦術を駆使して戦うイクタ達の活躍を、ぜひチェックしてみてください。
拡声器を手に演説を繰り返す謎の美少女がいました。彼女の名前は神楽日毬といいある目的から街頭演説を繰り返しています。その目的とは、日本政治の頂点に君臨し、この国を根底から変えることでした。
活動の成果がまったく出ない日毬に、主人公織葉颯斗は現実を突きつけるように、メディアに露出していない政治家なんて、存在していないのと同じだと言い放ちます。
考えた末、日毬は颯斗とタッグを組み、芸能事務所「ひまりプロダクション」のアイドルとしてメディアを席巻するスターを目指していくのです。
- 著者
- ["至道 流星", "まごまご"]
- 出版日
難しい政治・経済の世界噛み砕き、それを「面白い」と思わせるレベルまで再構築しているのが魅力です。アイドルというラノベ読者に対して分かりやすいキーワードと、政治という題材がコラボし、なんとも言えない楽しさのある作品ともいえるでしょう。事務所の力が大きいとされる芸能界で、力を持たない日毬と颯斗がのし上がっていくさまは見ていて痛快です。
ゴールデンウィーク最後の日。梓川咲太は、妹に頼まれた本を借りにやってきた図書館で、バニーガールに遭遇します。当然、そんな所にバニーガールがいるわけがなく、最初は幻かテレビの撮影か何かだろうと思う咲太ですが、どうやらそうではなく、本当に1人の、野生のバニーガールなのだとわかります。
しかも、そのバニーガールは咲太以外の人の目には見えていないようでした。それだけでも充分に驚きなのですが、さらに驚いたことに、そのバニーガールは、咲太と同じ高校に通う1つ上の先輩・桜島麻衣で……!?
- 著者
- 鴨志田 一
- 出版日
- 2014-04-10
図書館にバニーガールという異色の取り合わせから始まる不可思議なラノベで、予想のできない展開に驚きを隠せない方も多いでしょう。この物語には、「思春期症候群」と呼ばれるものが存在しています。それは、心の問題がそのまま痣などの目に見える形で現れたり、誰の目にも見えない透明人間のようになったりするものですが、物語上でもこの症状については本気にする人はほとんどいません。
この「思春期症候群」は、物語においてとても重要なキーワードになるのですが、最後までこの設定がとてもうまくいかされており、その結末に切なさを覚える方は少なくないはずです。
デリカシーはないけどお人よしな咲太や、咲太の妹でブラコンな花楓(かえで)、そしてヒロインで元有名子役の麻衣など、どこか未完成で微笑ましいキャラクター達の温かさが、物語全体を通して伝わってきて、読後感もとても温かい余韻を味わえます。ちょっと一息つきたいとき、温かい気持ちになりたいときに、ぜひ手に取ってみてください。
15歳でプロ棋士になった九頭竜八一は、現役中学生棋士、そして若干16歳で将棋界の最強タイトルを保持する存在として、将棋界では有名な存在でした。しかし、その栄光も「竜王」を獲得した時までで、以降は連敗続きの日々を過ごしていました。
そんなある日、師匠との対戦に勝利を収めるものの、やはりネットではクズ呼ばわりされていることをチェックし、もやもやとした気持ちを抱えたまま、八一は帰宅します。一人暮らしの部屋にはもちろん誰もいないはずなのですが、なぜかそこには小学生のかわいい女の子が正座をしていて……!?
- 著者
- 白鳥 士郎
- 出版日
- 2015-09-12
将棋に関する優れた著作や記録に対して与えられる将棋ペンクラブ大賞も受賞した、将棋界を舞台にした将棋ラノベ。題名の「りゅうおう」とは「竜王」のことで、実際の将棋界にも存在するタイトルのことです。
冒頭はかなり衝撃的で驚きを隠せない方も多いと思いますが、そこでビックリして本を閉じてしまうのはもったいない作品です。将棋に関してはかなり緻密に描かれており、とてもリアリティがあり、将棋を知っている人でも知らない人でも充分に楽しむことができるでしょう。
主人公の八一は、中学生でプロデビュー、16歳でタイトル保持者になるなど華々しい騎士生活をスタートされるものの、公式戦では連敗続きとなってしまい、「負ければ『竜王に相応しくない』と叩かれ、勝てば『将棋がつまらない』と叩かれ、どうしてここまで嫌われてしまったのかまったく理由がわからない」と、追い込まれています。登場人物はライトノベルらしくインパクトの強いキャラクターが多く、主人公が少し霞んでしまうくらいですが、それがかえって八一の人間味を強調し、共感できるキャラクターになっています。
ヒロインの雛鶴あいが小学生なので、ロリっ子に関しては好みが分かれるところでもありますが、将棋に関しては天才的で無邪気やあいはとても可愛らしいキャラクターです。読めばきっと将棋をやりたくなる、将棋エンターテイメントです。
希望する進学先や就職先に100%進めるうえ、髪型や私物などの校則もすべて自由な「高度育成高等学校」。最新設備が整い、毎月電子マネーまで支給されるという全国屈指の有名校です。
新入生の綾小路清隆は、Dクラスに配属されました。どうやらこの学校では入学試験の成績に応じてクラス分けがされるそうなのですが、そこにはさらに秘密が隠されていて……。
- 著者
- 衣笠彰梧
- 出版日
- 2015-05-25
最新設備がそろい、将来も約束され、さらに現金代わりに使える電子マネーも支給されるという夢のような学校。しかしそこは、試験や生活態度などによって支給されるポイント額が変わる、根っからの「実力至上主義」の学校だったのです。
綾小路清隆は、とある事情から入学試験で手を抜いており、そのため最低のDクラスに配属されてしまいました。最高位のAクラスがさまざまな優遇を受けるのに対し、Dクラスは支給ポイントも少なく、「不良品」と呼ばれる問題児が集まっています。
そんななか彼は、少しでもポイント額をあげるため、クラスメイトと協力して試験やイベントに取り組んでいきます。学校のシステムや制度などにやや難しさを感じる方もいるかもしれませんが、ストーリー自体には難しい設定はありません。
物語が本格的に動き出すのは2巻以降なので、1巻から続けて読むことをおすすめします。
橋場恭也は、ゲームディレクターとして細々と働いていましたが、ある日会社が倒産。職を失って実家に帰るも、活躍している他のクリエイターたちを見ると苛立ちが止まらない……という煮え切らない日々を送っていました。
いつものようにふて寝していた彼が目覚めると、そこはなんと10年前の世界で……⁉
- 著者
- ["木緒 なち", "えれっと"]
- 出版日
職も夢も失った主人公が、なぜか10年前にタイムスリップし、自分の人生をやりなおすというリメイクストーリーです。しかも移動した先は、彼が実際に送った人生とは少し変わっていて、本来は落ちていた芸大に合格していました。
恭也は、10年後の自分のようにならないためにも、芸大に通いながらもう1度人生をやり直します。後悔しているがゆえに一所懸命になる姿は主人公らしく、読者も感情移入して読むことができるのではないでしょうか。
また、登場する2人のヒロインも魅力的。ひとりはロリ系な世話焼きキャラで、もうひとりはギャル系な真面目キャラと、王道なのがいいですね。
ギャグとシリアスのバランスもちょうどよく、気持ちよく最後まで読むことができるでしょう。芸大が舞台なため、芸術や創作のネタが豊富に含まれているのも見どころです。
いかがでしたか?たくさんあるラノベですが、初めて読む方はまずみんなが認める名作から選ぶのも1つの手ですね。ぜひライトノベルを好きになって、たくさんの物語を楽しんでみてください。