日本人らしい「渋い飲み方探検隊」の自分は、時に本を酒の肴にすることもあります。例えば、ミステリーやサスペンスを読む時の僕の変なクセがありまして。ラストに近づいたら必ず一人で落ち着ける場所で晩酌をし、そして読了するのです。
ある時は家で焼酎とともに、ある時はツアー先のホテルでたこ焼き&ハイボールとともに。本を閉じてから、あれこれ想像を巡らせる、物語の世界に浸る時間がたまらなく好きだったりします。
そんな一人遊びが大好きな私ではありますが、僭越ながらあれこれご紹介させていただければと思います。どうぞご贔屓に。初回は「熟成を楽しむ4冊」を取り上げます。
文字を飛び越え映画化されたり、さらにそれがリメイクされたりするベストセラーな超大作も素晴らしいですが、今回ご紹介するものは、個人のミクロな感情にリンクしていくような側面を持っている4冊です。個人の人生の中で、近くに感じる時期もあれば急に遠くに感じる時期もあります。そんな不思議な距離感で本棚に居続ける。なんかそれだけで一つの芸術のごとし!
まさに自分の本棚にずっと置いておきたい本なのです。
群青の夜の羽毛布
あなたさえいれば何もいらない!と中高生の時に一度は異性にそう思ったことはありませんか? それは疑いもなく本気で、純粋にそうだったのだ、と。でも、それはいつからか言えなくなりますよね。当然のように。好きや嫌いの感情だけではなく、恋から「愛」になってまたその中に恋を求めるような、大人の恋愛の光から闇、そして人間の内面までをも描いたような小説だと思います。
山本文緒さんの小説は、登場人物の感情を説明していないようで、実は説明しているなと思うところが多くて好きです。そのあたりも年齢とともに(実経験を積むことで、作品に対する理解が深まる)わかってきて楽しめます。ただ、低血圧に淡々と進む文が少し怖い……。
女優
『失楽園』『ベロニカは死ぬことにした』などの脚本家である筒井ともみさんの小説。人気絶頂の時に突然失踪した女優の人生を、その姪が紐解いていくといった流れのお話です。最初に読んだ時は、ちょうど自分がメジャーデビューした2007年頃でした。夢の実現のために生き方を丸ごと変えていくべきだと思っていた自分と勝手にリンクさせた記憶があります。
誰しも、自分でも理解できない感覚を持っていると思います。それが年齢を重ねることで、もしかして少しわかってきたんじゃないかという瞬間が訪れる。もし、そこからさらに踏み込んで本質を知ろうとすると、最後の最後は自分自身と向き合うことになる。
それは、自分でも気づかない自分だったりするから信じられないこともあるし、辛い痛みを伴ったりする。でも、それが「自分を知る力」になるんだなと思ったのは、最近読み返した後の私。