昔話などにも登場するオオカミ。『3匹の子ブタ』や『赤ずきんちゃん』など、悪役のイメージが強いのではないでしょうか。しかし実際は、気を許した相手にはとてもかわいい行動をとります。彼らは情に厚く、感情豊かな動物なのです。この記事では、そんなオオカミの生態や種類ごとの特徴、群れ社会の仕組み、ボディーランゲージなどを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
ネコ目イヌ科イヌ属に分類されるオオカミ。コヨーテやジャッカル、イヌなどとの交配も可能なことから、近縁種や亜種がたくさん存在します。さまざまな種類がいるように見えるイヌも、実はオオカミの亜種だと考えられているのです。
一般的に「オオカミ」というと、「タイリクオオカミ」を指すことが多いようです。個体数も多く、北半球を中心に広い範囲に分布しています。
体毛はグレーの場合が多いですが、種によっては黒っぽいものや白っぽいものも存在します。胴体の長さは100~160cm、体高は60~90cmほどです。体重は25~50kgで、オスの方がメスよりも一回り大きいそうです。イヌ科のなかでは最大で、過去には体重が約90kgの個体がいたという記録が残っています。
運動能力に優れており、最大で時速70kmものスピードで走ることができます。ただ持久力はあまり無いので、獲物を追いかける時など大抵は時速25~40kmほどで走るそうです。これくらいの速度であれば、20分は走り続けることができます。
寿命は野生下で約8年、飼育下では約15年です。日本では野生のオオカミは100年以上前に絶滅してしまったため、見たい場合は動物園に行くのがよいでしょう。
どのような種がいるのでしょうか。主なものを紹介します。
名前のとおり北極圏にいる種類で、白い体毛をしています。オオカミのなかでは比較的温厚な性格をしており、関係を築けば人間に懐くこともあるようです。
アラビア半島やイスラエル、イラク、サウジアラビアなど温暖な地域に生息する種類です。生息数はわずか700匹ほどと推測され、幻のオオカミとも呼ばれています。砂漠地帯の気候に適応できるよう体は小さく、オオカミのなかでも最小です。
家畜化されたイヌの起源ではないかという説もあります。
大きいものでも体重は40kgほどの比較的スマートな種類です。キツネのような見た目をしており、それほど荒々しさは感じさせません。
家畜を襲う害獣として扱われ狩猟対象となったことから、1989年頃に個体数が激減しました。ノースカロライナ州やフロリダ州を中心に保護活動がおこなわれています。
かつて日本の本州、四国、九州に生息していた種類です。1905年に捕獲されたのを最後に絶滅したと考えられています。
詳しいデータが残っていませんが、多きさは中型犬ほどで、脚力が強かったようです。四季のある日本の環境に対応できるよう、夏と冬で体毛の色が異なっていました。
彼らは厳しい序列をともなったコミュニティを形成し、生活しています。一夫一妻制で、つがいで群れのトップに君臨し、その下に10頭ほどを従えるそうです。繁殖行為をできるのはトップのつがいのみで、狩りの作戦や実行のタイミングなども指揮します。
ただこの序列は不動ではなく、個体の性格や戦闘能力などによって入れ替わることもあるようです。他の動物のようにオス同士が直接争うことはほとんどなく、お互いに威嚇行動などをして力を見極め、トップを決めていきます。
力の強さだけを重視するのではなく、性格や態度などもあわせて総合的に判断するそうで、これはオオカミならではの特徴だといえるでしょう。
ちなみにオスは、成長すると群れを離れて単独行動をとることがありますが、メスはずっと群れに定着しています。こうしてトップとなるつがいを入れ替えつつ、それぞれの役割をまっとうしながら効率よく狩りをして生きているのです。
強くて獰猛なイメージもあるオオカミですが、実はとても情に厚く、感情表現も豊かです。積極的にコミュニケーションをとる習性があり、気を許した相手には甘噛みをするなど、かわいらしい行動をとることもあります。
またボディーランゲージを使って感情表現をすることでも有名です。たとえば怒っている時は耳をたてて唇をめくり上げたり、相手に服従する時は仰向けになって寝転がったりします。
さらに、自分の世話をしてくれた人間や愛情を注いでくれた人間のことも忘れないそうです。飼育下から野生に戻されたオオカミと月日を置いて久しぶりに再会すると、尻尾をふって喜びの表現をし、体をすり寄せてくることもあるようです。
このような性格だからこそ人間社会に馴染み、長い歴史のなかでイヌへと派生していったのでしょう。
- 著者
- ジム&ジェイミー・ダッチャー
- 出版日
- 2014-05-02
アイダホ州にある自然保護区域で、約6年にわたりオオカミの群れと暮らした夫妻のドキュメンタリーです。密着することでわかる生態を記すとともに、厳しい序列のなかで懸命に生きる勇ましくも美しい姿が写真で収められています。
仲間の死を悼んだり、友情を大切にしたりする様子は、まるで人間のように感情豊かです。命を燃やす彼らの姿を堪能できるでしょう。
またオオカミは、ネイティブアメリカンの間では精霊として信仰されていたそうで、今日まで数々の神話や伝承が残されています。本書にもそのいくつかが収録されており、読み物としても楽しめる1冊です。
- 著者
- ニック・ジャンズ
- 出版日
- 2015-04-01
本書の舞台はアラスカの町。ある日突然、町に1匹のオオカミが現れました。徐々に人々の暮らしに溶け込んでいく様子が写真とともに綴られた作品です。
彼はロミオと名付けられ、その街で約6年間生活をしました。野生でありながら、危険を顧みず人間と関わろうとするオオカミ。表紙にもあるように、異種であるイヌとも関係を築いていきます。
やがてロミオの存在は町の人々に大きな影響を与えるようになり、価値観を変えていきます。その様子はたった1匹の野生動物とは思えないほどでした。奇跡ともいえる6年間の記録をぜひご覧ください。