5分でわかる儒教の教え!概要や日本の歴史、弊害などをわかりやすく解説!

更新:2021.11.30

実は日本人の思想や生活に馴染んでいる「儒教」の教え。その具体的な内容をご存知でしょうか。この記事では、概要や「五常」という教えの内容、日本における歴史、弊害などをわかりやすく解説していきます。あわせてもっと理解を深めることができるおすすめの関連本も紹介するので、チェックしてみてください。

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儒教とは。時代や始祖など概要を簡単に紹介

 

紀元前6世紀の古代中国は、諸国が争いあう春秋時代。そんななか魯国に生まれた思想家の孔子によって体系化されたのが、「儒教」です。

堯・舜・文・武という古代の君子たちの政治を理想とし、周礼を重んじて仁義を実践し、上下の秩序を守ることを唱えました。

国同士が戦うなかで、武力によって他者を支配しようとする覇道を批判し、君子の徳によって政治をおこなう王道で天下を治めるべきだと主張したのです。

始祖である孔子の名を取って「孔子教」とも呼ばれ、仏教や道教と並んで中国を代表する思考となり、2500年以上にわたって東アジア各国に大きな影響を与えています。

儒教の教え「五常」をわかりやすく解説

 

儒教の教えに「五常」と「五倫」というものがあります。人は、「仁・義・礼・智・信」からなる「五常」の徳目を守ることで、「五倫」と呼ばれる「父子・君臣・夫婦・長幼・朋友」の関係を維持するよう努めなければならないという内容で、東アジアにおける倫理観の基本になっている考え方です。

では「五常」の教えを具体的に紹介していきましょう。

まず「仁」は、人を愛し、思いやることをいいます。孔子は「五常」のなかでも最高の徳目としていました。

「義」は、利や欲にとらわれず、世のため人のために行動することをいいます。日本の武将、上杉謙信が「義の武将」と呼ばれていることも有名です。

「礼」は、謙遜し、相手に敬意を払って接することをいいます。「仁」を具体的な行動にしたもので、後に人と関わるうえで守るべきことを意味するようになりました。

「智」は、偏らずに幅広い知識や知恵を得て、道理をわきまえることで、善悪を判断することをいいます。

「信」は、人を欺かず、また人からは信頼してもらえるように常に約束を守り、嘘をつかず、誠実であることをいいます。

これら5つの教えを守れば、父子・君臣・夫婦・長幼・朋友などの人間関係がうまくいく、という考えです。

日本における儒教の歴史

 

日本に儒教が伝わったのは、継体天皇が治めていた513年のことでした。朝鮮半島南部にある百済から、儒教の基本経典である「五経」を伝えるために来日したことがきっかけだといわれています。

ただ『古事記』には、これよりも前に孔子の弟子が編纂した『論語』が伝わっていたという記述もあり、正確な時期はわかっていません。

いずれにせよ、仏教が日本に伝えられたのは538年だと考えられているので、儒教のほうが仏教よりも早く伝わったといえるでしょう。

飛鳥時代、中大兄皇子の母親である斉明天皇は深く儒教に帰依していたことが知られています。また鎌倉時代から安土桃山時代にかけては、儒教から発展した「朱子学」が広まり、京都や鎌倉などの寺院などで盛んに講義や研究がおこなわれました。

江戸時代になると朱子学は官学とされ、初代将軍・徳川家康に仕えた林羅山をはじめとする林家の者が、教育政策を統括しました。5代将軍・徳川綱吉は文治政治を実施するにあたり、儒教を重要視して、湯島聖堂を建立しています。

朱子学とは別に儒教から派生した「陽明学」も広く学ばれ、大塩平八郎や吉田松陰、高杉晋作、西郷隆盛らに影響を与えました。やがて尊王攘夷思想に結び付き、明治維新への原動力となっていったのです。

儒教の弊害とは

 

儒教の教えは、為政者が理想の政治を実現するための思想哲学です。教え自体は納得がいくもので、たしかにこのような徳目に従って国家が運営されれば、理想的な世になるだろうと考えられます。

しかし現実はうまくいくことばかりではなく、儒教にも弊害といえるものが存在するのです。

たとえば、儒教では、親を敬うことが奨励されています。しかし亡くなった際の喪に服す期間が3年にもおよび、ボロボロに痩せ衰えてしまう人が続出しました。さらにその姿が周囲から賞賛されるようになると、親を敬い喪に服すことがパフォーマンスと化してしまったのです。

また同族を重んじる儒教では、一族の誰かが殺されれば報復をするのが当然とされていました。裏を返すと、報復されないためには、相手の一族を皆殺しにする必要があります。死刑をする際には「三族皆殺し」という、父方の一族、母方の一族、妻の一族すべてを殺してしまうケースがあったそうです。

さらに、儒教では上下の秩序を重んじています。すると上の者には媚び、下の者には傲慢に接するという差別意識が生まれやすくなってしまうのです。加えて、長幼の序を重んじるため、たとえ長男が無能で次男が有能だったとしても、後継者になるのは長男。努力をしてもしなくても結果は変わらず、競争が起こりづらくなります。

このように、儒教が掲げている教えは素晴らしいものである一方で、誰もが孔子が求めるような高潔な存在になれるわけではなく、実践にあたってはさまざまな問題が生じることとなりました。

初心者におすすめの一冊

著者
土田 健次郎
出版日
2011-12-15

 

本書は、儒教の成り立ちや教義、道徳、さらには儒教が生み出した政治観や歴史的意義についても解説している作品です。作者が早稲田大学でおこなっている講義の内容を、わかりやすく再構成したもの。「入門」とあるとおり、予備知識はなくても読むことができます。

日本人の思想や習慣には、実は儒教の考え方が深く根付いていて、その歴史や源流を学ぶ際には避けてとおることはできないことがわかります。また後半では、現代における儒教の意義にも言及。身近な教えだからこそ、時代に適したかたちにアレンジできるかが重要なのでしょう。

儒教に興味をもった方、まずは概要を学びたいという方に、最初に手にとってもらいたい一冊です。

儒教の経典『論語』を学ぶ

著者
出版日
1999-11-16

 

孔子と、彼の弟子たちの言行を記録した『論語』。本書には、原文、書き下し文、現代語訳が併記されていて、比較しながら読める構成になっています。学習のお供にしてもよいですし、単純に読み物としてもおすすめです。

『論語』の教えは宣教師を通じてヨーロッパにも伝わり、ヴォルテールやモンテスキューといった思想家たちに大きな影響を与えました。もちろん日本にも古代から伝わり、その教えは道徳や倫理の古典として我々の根底に根付いています。

あらためて読んでみると、至極当たり前のことが書いてあると感じる一方で、日常生活で逆境に陥った時に今一度立ち戻り、心を強くしてくれる作品だといえるでしょう。

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