最強すぎるシャチの生態5選!天敵、知能、性格などをわかりやすく解説!

更新:2021.12.11

パンダのような模様とイルカのような人懐っこい性格で水族館などでも人気のシャチ。人間とコミュニケーションを取れることから、その知能の高さが分かります。また、「海の王者」とも呼ばれ、高いジャンプをすることでも有名です。この記事では、そんな彼らの生態を、大きさとスピード、天敵、餌、知能、性格にわけてわかりやすく解説していきます。また、その魅力がわかる関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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シャチの生態や特徴を詳しく解説!

鯨偶蹄目マイルカ科に分類される生物です。哺乳類のなかでは人間に次いで広範囲に生息しており、北海道の根室海峡や知床半島近海、和歌山県近海など、日本を含む世界中の海に分布しています。めずらしい白いシャチが北海道の根室海峡で2頭並んで泳ぐ姿が確認されたときには、ニュースにもなりました。

学名の「Orcinus orca(オルキヌス・オルカ)」は、ラテン語で「冥界からの魔物」という意味。英語は「Killer Whale(クジラ殺し)」といい、自分より遥かに大きい獲物を狩ることができる能力から名付けられました。

ちなみに和名の「シャチ」は、魚の胴に虎の頭を持つ空想上の生物「鯱(しゃちほこ)」が由来です。

彼らの祖先は、約4000年前に存在したバシロサウルスという大型の海生哺乳類であると考えられています。その後生息地ごとに種が枝分かれしていきました。

広い範囲を回遊しながら哺乳類を狩るトランジェント、狭い範囲で暮らすレジデント、南極のロス海に生息するロス海シャチなど複数の種に分類され、これらは体の大きさ、ヒレの形状、色、アイパッチと呼ばれる目の周りの白い模様などに違いが見られます。

そのため研究者の間では、マイルカ科シャチ属とひとつの分類にくくるのではなく、もっと細分化する必要があるのではないかという見解も出ているのです。

ただどの種も共通して、強い結束力を持つ「ポッド」と呼ばれる群れを形成し、基本的にはメスが率いています。

寿命は、野生下ではメスが50年前後、オスが30年前後です。最長ではメスが90年生きたという記録も残っています。

一方で、飼育下では30年弱です。このことから、彼らにとって群れで生活をすることは非常に重要で、単独行動が多大なストレスに繋がっているのだとわかります。

高い知能と狩猟能力を持つことで知られるシャチですが、具体的にはどのような特徴があるのでしょうか。ここからは具体的な生態を紹介していきます。

 

シャチの生態①とにかく大きくて速い!

全長はオスが6〜9m、メスが7〜8m、体重は5〜8tと、マイルカ科のなかで突出した大きさを誇ります。

体が大きいと動きも遅くなりがちですが、彼らはなんと時速60~70kmと海洋哺乳類のなかでも最速で泳ぐことができます。ジャンプ力も非常に高く、海面から4m以上も跳ね上がる姿が確認されており、その巨大な体からはまるで想像できない俊敏性をもっているのです。

さらに持久力もあり、群れで狩りをする際は先頭集団が疲れたら第2集団が前へ出る、第2集団が疲れたら第3集団が前へ出る、といったように隊列を組みかえて進みます。そうすることで速度を落とさず、また余計なエネルギーを使うことなく獲物を追い詰めることができるのです。

 

シャチの生態②天敵は自然界には存在しない!

海洋生物の食物連鎖において、頂点に君臨しているシャチ。他の生き物が彼らの子どもを襲おうとしても、群れでしっかりとガードをし、返り討ちをするので、サメでさえ手を出すことはできません

またシャチの肉は重金属である水銀や、化学物資であるPCBなどが含まれるうえ、筋肉質で固いため食肉になりにくく、そのため人間も天敵にはなりません。

ただし、北米西岸に生息している群れを研究した結果、人間が彼らを間接的に殺している可能性があることがわかりました。噴気孔から、偶蹄目の体内には存在しないはずのサルモネラ菌などが検出されたのです。

感染経路は明らかにはなっていませんが、人間による海水汚染が一因ではないかと考えられています。

 

シャチの生態③サメさえ食べる!?

彼らが獲物とする生物は、クジラ、アザラシ、トド、イルカ、ペンギン、魚、カモメと多岐にわたり、生息域やグループごとに狩猟方法も異なります。

アザラシを捕らえる場合は突進して素早く狩る、魚群を狙う場合は時間をかけて群れで囲い込み、逃げ場をなくしてから一気に襲い掛かる、といった戦略の高さが特徴です。尻尾に毒を持つエイですら、捕食してしまいます。

シャチと並ぶ海のハンターといえばサメが挙げられますが、なかでも獰猛なことで知られるホホジロザメを彼らが捕食しているという驚きの事例も報告されました。

2017年、南アフリカの西ケープ州に3体のサメの死体が打ち上げられ、調べてみると肝臓や心臓といった臓器だけが綺麗に切り取られており、衰弱死ではなく他の生き物の手にかかったことがわかりました。

サメの肝臓には栄養価の高いスクワレンが含まれています。これまでもシャチが鯨の舌だけを食べるなど、好みの部分を選んで食していたことが確認されていたため、彼らがサメを襲っているという見解が浮上してきたのです。

サメは体を仰向けにされると瞬間的に意識を失う性質を持っており、おそらく偶然この生態を知ったシャチが戦略を駆使してターゲットにしたと考えられています。サメを食べることで彼らの体にどのような影響があるのかについては、調査がすすめられているところです。

 

シャチの生態④知能はどれくらい?

シャチの知能の高さがもっとも顕著に表れるのは、狩猟のテクニックと、群れのなかで見られる社会性でしょう。イルカと同様に仲間同士で会話ができ、情報共有をすることで多種多様な狩猟方法を編み出していったと考えられています。

また驚くべきことに彼らは生息区域ごとに「方言」を持ち、これによって仲間かどうかを聞き分けます。さらに配偶者を探す時は、近親交配を避けるために異なる言語を使う相手を選ぶという生存戦略ももっているのです。

群れに対する帰属意識が非常に強く、仲間が襲われていると全力で報復に向かい、亡くなった際には死を悼みます。また怪我をしている個体が狩りに出る場合は誰かがサポートにつき、獲物を分け与えるなどの行動も確認されており、高度な社会性をもっていることがわかるでしょう。

また同じ群れの仲間でなくても、集団からはぐれて単独行動をしている個体に獲物を届けたり、保護して面倒をみることもあります。このような行動の理由として、シャチの脳には人間が感情を処理する際に使う「紡錘細胞」という神経細胞があることが挙げられます。

 

シャチの生態⑤性格は?人間との関係も

人間が本当の意味で彼らのことを理解したのは、1964年にカナダのバンクーバーで初めて生きた個体を捕獲した時だといわれています。

もちろんそれよりも前から存在は知られていましたが、それは獰猛なハンターという一面だけでした。長い間、暗い海に潜む恐怖の象徴と考えられていたのです。

ところが捕獲されたシャチは、見物にやってきた大勢の前でリラックスした態度を見せ、与えられた魚を食べ、人間を襲おうとはしませんでした。どうやら言葉を使ってコミュニケーションをとっているらしい、ということが判明したのもこの時です。

彼らに対して抱いていた印象は180度変わり、生態を理解しようという動きが強まりました。

その後水族館での飼育もはじまり、その高い知性と勇敢な性格から驚くほどの早さで芸を覚え、ショーのパフォーマーとしても活躍するようになります。人気もどんどん高まっていきました。

ただ2021年現在は、シャチのショーについて否定的な意見が多く挙がっています。きっかけとなったのは、2010年にアメリカの水族館で飼育されていたオスの個体が、女性トレーナーをプールに引きずり込み溺死させる事故でした。

これは後に「ブラックフィッシュ」というタイトルでドキュメンタリー映画となり、彼らが人口飼育下で多大なストレスを受けていることを多くの人が知るきっかけとなりました。

水族館で気軽に会えなくなったとしても、野生で幸せに暮らしてほしいという考えが徐々に広まっており、今後シャチと人間の関係は新たな局面を迎える可能性があります。

 

貴重な資料をふんだんに載せた総合ガイド

著者
水口 博也
出版日
2015-01-15

生息地や食性での分類ごとに、暮らしや生態について詳しく紹介しています。「ビジュアル百科」というタイトルの通り、美しくも勇猛な写真が楽しめる1冊です。

本書には、彼らを1種類に分類すべきではないという根拠が記載されています。なかでも歯の形態の比較は興味深く、ティラノサウルスを連想させる牙を持つトランジェントは特に別種として扱うべきだと主張しています。

学術的な内容だけでなく、コラムが充実してるのも特徴です。映画「フリー・ウィリー」でキャスティングされたケイコという名のシャチがたどった悲劇など、人間の行動によって運命を左右される彼らについても知ることができます。

生態について深く知ることができるとともに、関わり方についても考えさせられる内容です。

 

シャチの繁殖に成功した水族館の奮闘記

著者
井上 こみち
出版日
2009-03-01

日本国内で初めて、それも2世代続けての繁殖に成功した千葉県の「鴨川シーワールド」。本書はそこで働く海獣の獣医師を通して、彼らの魅力に迫っていきます。

1970年に最初のシャチを迎えましたが、そのわずか3年後に死亡。当時は生態や飼育方法も詳しくわかっておらず、繁殖は夢のまた夢だったそうです。しかしスタッフたちは、水族館の利益のためではなく、「愛するシャチの子どもが見たい」という情熱に動かされて繁殖に乗り出していきました。

自らが幼いころに母親と離ればなれになったため、子育ての方法がわからないお母さんのステラ。人間の手を借りながら、娘ラビーの面倒をみます。そんなステラの姿を見ながら育ったラビ―は、やがて自らも母となり、立派に子育てをしていくのです。そして野生下と同じように、強い絆で結ばれた群れとして暮らすようになります。

2世代続けて水族館内で繁殖に成功した快挙の裏には、彼らにストレスを与えることなく飼育をしたヒントが隠されているのかもしれません。
 

高度な知能と社会性、そして肉食動物としてのワイルドさを併せ持ったシャチは、我々に親しみと畏敬を抱かせてくれる動物です。知れば知るほど、その生態の虜になってしまうのではないでしょうか。紹介した本を読めば、彼らについてより深く知ることができます。ぜひ手に取ってみてください。

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