せなけいこのおすすめ絵本5選!やさしさあふれる貼り絵が魅力

更新:2017.4.15

独特な貼り絵画法、パッと目につく原色使い、そして可愛いキャラクターのウサギやおばけたち。「あっ!この絵見たことある!」と思われる方もきっと多いはず。そんなせなけいこの絵本は大人になっても童心を甦らされるあたたかい作品でいっぱいです。

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子供に作ったお手製の絵本がきっかけで絵本作家になったせなけいこ

1932年、東京。せなけいこは5人兄弟の長女として生まれます。絵を描くこと、本を読むことが大好きだったせなは、幼少期に本棚にあった父親の本に絵を描いてしまい、母親にひどく叱られるという、なんとも憎めない苦い経験の持ち主でもありました。

そんなせなの1番の宝物は、父にせがんで何度も何度も読んでもらった武井武雄の『おもちゃ箱』という絵本でした。のちに、武井と運命的な出会いを果たしたせなは、社会人として働く傍ら、武井の門下生となります。せなけいこ、19歳の時でした。

厳しい武井の指導のもと、せなは貼り絵の魅力と出会います。貼り絵によって自分の世界観がこれまで以上に出せることを知ったせなは、自分の息子の為に‟お手製”の絵本を作ります。それはにんじん嫌いの息子に向けて作られた『にんじん』というタイトルの絵本でした。

この絵本が編集者でもある知人の目にとまり、ある日「何冊か描いてみませんか?」と声がかかります。絵本作家せなけいこの誕生の瞬間でした。絵本作家になりたいと、ひたすら絵と向き合って18年目の出来事でした。
 

せなけいこの作品と言えば、このおばけが人気!

インパクトある真っ黒い表紙に、ギョロリと光った大きな目、こちらをあざ笑うかのような赤い口、血の気のない真っ白い体。せな作品の中でも読者を最も釘付けにしてしまうキャラクターが、この‟おばけ”ではないでしょうか。

一見、可愛らしくも見えるこのおばけですが、実は子供が読む絵本のわりにはラストが不明瞭で
‟えっ……?”と思った次の瞬間、背筋がゾワゾワッと寒くなってしまう内容なんです。

それにしても子供っておばけを怖がるのに、どうして興味をもつのでしょう……?せな自身もおばけに‟会いたい!”と言うほどおばけが大好きで、もともとは怖がりの息子に‟怖い、でも可愛い”と、そんな友達になれるようなおばけを描いたら喜ぶだろうかと思いついて出来たのがこのおばけなんです。

著者
せな けいこ
出版日
1969-11-20

とけいが なります ボン ボン ボン……
こんな じかんに おきてるのは だれだ?
ふくろうに みみずく 
くろねこ どらねこ (『ねないこ だれだ』より引用)

『ねないこだれだ』の文章はかなり簡潔で、これから一体なにが起きるのか、読者をグイグイと引き込んでいきます。色使いも、せな作品の中では暗く落ち着いたトーンのページが多く、それは‟夜”を表しているからなんでしょうが、大人が読んでも心理的に何か迫ってくるものを感じます。

怖いのに興味をもってしまう、そんなおばけに対する子供の心理に目をつけたせなけいこの傑作です。

大人もつい夢中になってしまう、せなけいこの絵本

‟てんぷら”は身近な食べ物で、小さな子供からお年寄りまで好まれるお料理ではないでしょうか。
さつまいもやかぼちゃ、お魚のてんぷらも最高ですよね。‟ん?なんだろ、これ……?”絵本のタイトルを読まれて戸惑われた方も多いのではないでしょうか。

『おばけのてんぷら』は、せなワールドの中でもユーモア感たっぷりの作品です。‟おばけって、あのおばけ?”、‟おばけをてんぷらにしちゃうの?”、考えれば考えるほど想像力がふくらみます。うさぎのうさこがてんぷらを作ろうとしたいきさつや、てんぷらを作っていく工程が細かく描かれていて、クスッと笑えます。

てんぷらを揚げる音、そしててんぷらのいい匂い。読んでいる私達もてんぷらを作りたくなる気持ちにさせられます。

著者
せな けいこ
出版日

また、このうさこのキャラクターが‟超”がつくほどマイペースで、クスッと笑ってしまうポイントのひとつだと思います。てんぷらを作るのに材料を買うのですが、お小遣いをすべて使ってしまいます。それでも「まあ いいや。」とまったく気にしない様子。うさこの頭の中はもうてんぷらを作ることだけなのです。

てんぷらのいい匂いに誘われて、山から下りてきたおばけがうさこの家に忍び込みます(この忍び込み方も必見です!)。おばけはうさこに見つからないようにちょろちょろ飛び回っててんぷらをつまみ食いするのですが、うさこはまったく気がつきません。気がつかないどころか「てんぷらって ずいぶん なくなるのが はやいなぁ!」なんて呑気なことまで言っています。

さて、この結末はどうなるのでしょうか?おばけはうさこにてんぷらにされてしまうのでしょうか?うさこはおばけの存在に気づくことが出来るのでしょうか?奇想天外、でもほんわかした気持ちになれる絵本です。

子供にも、お母さんにもメッセージを込められたせなけいこの絵本

小さい子供にはいつか‟いやいや期”が訪れます。登場人物のルルちゃんもまさに‟いやいや期”真っ只中の女の子です。表紙の怒った顔のルルちゃんもインパクトがありますが、この作品に登場するすべてのキャラクターが怒った顔をして登場するという一風変わった作品でもあります。

なんでもすぐに「いやだいやだ」というルルちゃんに、母さんも、抱っこするのを「いやだ」と言います。おいしいおやつも、悪い子のお口に行くのも「いやだ」。お空のお日様も、雲に隠れて雨ばかり降らします。毎日保育園に履いていくクツも、大事なくまちゃんも、みんなルルちゃんに「いやだ」と言い出します。

著者
せな けいこ
出版日
1969-11-10

足を広げ、体全体で怒りを表していたルルちゃんですが、最後のページのルルちゃんは、人差し指を口にくわえ、寂しげな表情で佇んでいます。みんなから「いやだ」と言われ、悲しくなったのでしょう。相手に「いやだ」と言われたら、どんな気持ちになるか、相手に言われて初めて‟傷つく”ことを知ります。

そうしたら ルルちゃんは どうするの?

絵本のラストはそんな問いかけで終わっています。‟こうしなきゃダメなんだ”という教えは一切ありません。それは小石を池に投げるかのように、相手の心ににポーンと投げかけて終わっているのです。子供たちの受け止め方は様々です。子供の目線になって考えるせならしい作品です。

そしてまたこの作品は、せなから子育てをするお母さんたちに向けてもエールを送っているかのように感じます。‟大丈夫ですよ、お母さん頑張って”と。

メッセージ性の強い作品

ケンカや争い事はいつも小さな出来事から始まります。『おひさまとおつきさまのけんか』の冒頭も‟はじまりはちいさなことだった”から入ります。それはある日、おつきさまが遅刻をしてしまうという、どこにでもある本当に小さな出来事だったのです。

待ちくたびれたおひさまは怒っておつきさまに怒鳴りつけます。それがきっかけで、おひさまとおつきさまの仲に溝ができてしまいます。そしてついに‟戦争”を始めてしまうのです。

せなけいこがこの作品を作ったきっかけはイラク戦争でした。戦争はすべてをなくしてしまいます。戦争から生まれるものは‟悲しみ”だけです。

著者
せな けいこ
出版日

なんにも なくなった 
まっくらな 
そらの したで
ちいさな どうぶつが 
ないていた。

おひさまもおつきさまも滅んでしまった真っ暗な闇の中で、大粒の涙をこぼして2匹のネズミが泣いています。印象的なシーンです。最後のページでは、せなけいこが‟これはよその宇宙の話で、私達の地球ではまさかこんなことないよね、まさかね”と念押しな口調で語りかけます。

現代を問う、メッセージ性の強い絵本です。

せなけいこワールドが出来上がるまでのエピソードを集めた本

もちろん子供も楽しめますが、これはどちらかというとお母さん向けの絵本で、せなけいこの自叙伝でもあります。『にんじん』、『ねないこだれだ』、『いやだいやだ』、『あーんあん』、せなの作品に登場する人物は、どこか憎めなくて、そして誰もが経験しているようなエピソードを抱えています。キャラクターのほとんどが、せな自身を綴っていると言っても過言ではないでしょう。

また、せなとその母親とのビミョーな関係にもふれており、思わず笑えてしまうエピソードもあります。

‟母親の反対があったからこそ、今の道に進むことが出来たのかもしれない、「いいことねぇ。けいこちゃん、お描きなさい」と言われていたら、きっと絵描きにはならなかっただろう。”

この母あってこの娘あり、まさにそんなエピソードです。

著者
せな けいこ
出版日
2016-07-13

この本の中で、せなが興味深いことを語っています。

‟私の絵本は子供の為のもの、実際子供を見ていないと、何を喜ぶかわからない。頭で考えて「こうすれば子供にわかるだろう」なんて作っても、本当に子供が目の前にいるときのアイデアとは何かが違う。”

せなの視線はいつも子供たちにむけられていたんでしょうね。自分の子供が大きくなってからは、図書館で読み聞かせをしたり、保育園に行って子供たちと遊んだりもしたそうです。常に‟子供と対等”、せなが一番大切にしていたことです。

幼少期とから絵本作家になるまでの道のり、母親になって子供に向けられた深い愛情、貼り絵に想いを込めた作品作りの裏話、自身の生い立ちをユーモアたっぷりに語ってくれています。

せなけいこの作品はどれを見ても表紙のタイトル、デザイン、色使いなどに驚かされます。それはいくつになっても‟童心”を忘れないせなが「どう?驚いた・・・?」と、いたずらめいた様子で私たちにメッセージを投げかけているのかもしれません。どこかあたたかい気持ちになれるせなの貼り絵は、私達が大人になって忘れていた何かを思い出させてくれるような気がします。絵本作家であり、子供を愛するひとりの母親でもあったせなけいこの作品にあなたも是非一度触れてみて下さい。あなたも貼り絵の世界に魅了されるかもしれません。

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