80年代・90年代に人気を博した「記憶鮮明」シリーズや『ぼくの地球を守って』の作者、日渡早紀作品のオススメ4選をご紹介。読むたびに考察が変わる深いストーリー構成と考えさせられるテーマは必見です。深読みしたくなる面白さを是非ご堪能ください。
日渡早紀は1961年生まれ、神奈川県出身の漫画家です。1981年『魔法使いは知っている』で白泉社のアテナ大賞を受賞したことをきっかけとし、翌年同作でデビューを果たします。代表作は1984年~1999年に連載された「記憶鮮明」シリーズや1987年~1994年の『ぼくの地球を守って』が挙げられます。
当時子供だった読者が大人になって読み返し、その作品の深さに改めて驚く、何度も読み返したくなる作品の数々。輪廻転生や現在と過去の因縁、クローンや超能力、複雑な恋愛関係など、「命」について考えさせられるのも日渡早紀作品の特徴です。
深いストーリー構成に是非どっぷりと浸かってみてください。
主人公・健は自作RPGのシナリオ作成に夢中な中学三年生。将来の夢はゲームのシナリオライターか漫画家と考える、夢に真っ直ぐな青年です。受験生にも関わらず頭の中はいつも自作ゲームの事でいっぱい。
ある朝、健は迷子と思しき幼稚園児・全と自宅の玄関前で遭遇します。全は初めて会ったにも関わらず、「高校受験 頑張ってくださいっ」と……。気になるもののその場を後にする健ですが、実は全は前世の記憶を持ち、さらには未来までも見透かしてしまう能力の持ち主だったのです!
- 著者
- 日渡 早紀
- 出版日
大ヒットした、「ぼくタマ」こと『ぼくの地球を守って』の次に1994年から連載が始まったのがこちらの『未来のうてな』です。ぼくタマファンの期待を一身に背負ったこの作品は時空を超えた深いストーリー展開で読み手を惹き付ける、SF仕立てのラブストーリーとなっています。現実逃避、パラレルワールドへの憧れ、輪廻転生などに興味のある方は是非ご一読を。
健の複雑に展開していく人間関係、ヒロイン・苺の小悪魔っぷり、全の一族・南一と敵対する一族・北一との争い、綿密に構成され目まぐるしく変わっていくストーリーに驚かされ、引き込まれること間違いなしです。「もしかしたらあの人は私と前世で何か関係があったかもしれない……」そんな妄想を膨らませたくなりますよ。
1982年に始まった「アクマくん」シリーズの文庫化された全4巻のうちのひとつ、第2巻『アクマくんブラック・ミニオン』。シリーズの中でも、こちらは若干シリアスな展開が特徴です。シリーズの途中、作風が変わり賛否両論あることも、また違った意味で気になる要素となっています。
閻魔大王の息子・アムカが人間界に行きたいと言い出したため、閻魔大王の怒りを買い、勘当されてしまいます。そして転がり込んだ先が普通の男子高生・史郎の家。アクマくんことアムカは天使への憧れ、そして人間への憧れを募らし、良い行ないをしようと奮闘しますが見事に空回り……。
- 著者
- 日渡 早紀
- 出版日
主人公・アムカ、アムカの婚約者・アシャ、落ちこぼれ魔女チャチャの三角関係、そして徐々に解き明かされていくチャチャの謎が気になって仕方がなくなります。何度も読み返したくなる個性豊かな登場人物たちが巻き起こすドタバタラブコメディーです。
悪魔なのに人間や天使に憧れを抱くアムカ。自分の住む世界を飛び出し、空回りしつつも前向きに頑張る姿に励まされた読者も多かったはず。元気で明るい登場人物が多く読んでいて晴れやかな気分になるので、落ち込んだ時などに読むのもオススメです。
アムカの三角関係がどう着地するのか結局最後まで語られませんが、そこがまた余韻を残す魅力。是非どちらとくっつくのか予想してみてくださいね。
『記憶鮮明』『そして彼女は両目を塞ぐ』『CIBI-01のYA!YA!YA!』『偶然が残すもの』『BIRTH』と続く、長期にわたって愛された「記憶鮮明」シリーズ。ニューヨークにあるビルが突然破壊されるという衝撃的な場面からストーリーが始まります。そこから展開される、クローンや超能力、転生など謎が多く興味深い問題の数々から目が離せません。
警察官は、死の直前にビル爆破の犯人の顔を目撃したとされている少女・パセリ・モーガンのクローンを3体作るのですが、クローンは記憶を完全に再現することができず。爆破事件の真相は闇の中へ……。映画のような謎の多いストーリーを推理しながら、近未来的なSFの雰囲気をお楽しみください。
- 著者
- 日渡 早紀
- 出版日
日渡作品で『ぼくの地球を守って』と人気を争う、『記憶鮮明』。誰しも一度はクローンや超能力に憧れを抱いたことがあるのではないでしょうか。近未来的なストーリーと作品が描かれた当時のレトロ感が混ざり、80年代の映画のような雰囲気が漂います。
魅力は何と言っても、急展開と謎の多さでドキドキさせられるところでしょう。ニューヨークのビル爆破と言えば、9.11を今なら想像できますが、『記憶鮮明』が描かれた当時はまだそれ以前のこと。クローンや超能力、突然の爆破など気になる要素がぎゅっと詰まっている中に「クローンは人間なのか?」という問いも混ざり、とても感慨深い内容となっています。
もしも自分のクローンが生まれたら、もしも超能力が使えるとしたら……、入り込んでついつい色々物思いにふけってしまう、そんなメッセージ性の強い作品です。
主人公の女子高生・亜梨子(ありす)を中心として、複雑に絡む7人の青年たちの物語です。亜梨子は草花や木と気持ちが通じ合うという、ちょっと不思議な女の子。自然豊かな北海道で生まれ育ちますが、大都会東京に引っ越してきてしまいます。
地味な性格のため高校で友達がなかなかできない亜梨子。私生活では何故か隣に住む男の子につけまわされ、意地悪をされ続けるという日々を送る羽目に。学校の中庭では男子生徒同士のまるで恋仲のような現場に居合わせてしまったりと、なかなか青春を謳歌できずにいました。
輪廻転生、それぞれの複雑な過去、恋愛、SFなど、色々な要素が練り込まれ、考えつくされた構成は圧巻です。
- 著者
- 日渡 早紀
- 出版日
- 1998-03-01
家族のチャキチャキした会話やテンション、お隣さんの息子・輪とのドタバタバトルで一見ギャグマンガかと思ってしまいますが、その先には予想を裏切るシリアスな展開が待ち受けています。「恐竜はなぜ絶滅したのか?」という唐突な会話や、月を見ると何故か「帰りたい」という気持ちにかられる亜梨子など、読み始めから伏線をにおわせる要素が多くあり、物語の世界観にどんどん引き込まれてしまうでしょう。
前世の恋人同士が生まれ変わってまた恋に落ちるという、少女漫画の期待を裏切らない「きゅん」とする場面もたくさん散りばめられています。驚くべき宇宙の過去、それに深く関係する登場人物たちの過去、そしてその影響を受け続ける現在の姿……。謎解きのような、張り巡らされた伏線の数々を楽しみながらご覧ください。
日渡早紀作品の特徴は、輪廻転生やクローンなど「生命」について考えさせられるところ。これは昔も今も変わらず、謎めいていて深い問題だと思います。もしかすると、あなたの家族・恋人・隣人は前世でかかわりがあった人物かもしれませんよ?そんな楽しい妄想を膨らませてくれる、作品の数々を是非家族や友達と楽しんでみてください。