エッセイスト・作家・タレントとして幅広い分野で活躍する阿川佐和子。数々のベストセラーを生み出し、2018年4月からは小説『正義のセ』がテレビドラマ化されることも決定しています。そんな彼女の才能とユーモアがあふれる作品のなかからおすすめの6冊を厳選してご紹介していきましょう。
1953年、作家・阿川弘之の長女として東京で生まれた阿川佐和子。タレントであり、小説家であり、エッセイストでもあります。
大学を卒業した後、1981年からテレビ番組「朝のホットライン」でリポーターを務めました。これをきっかけに報道番組のアシスタントやキャスターなど、さまざまな番組に携わるようになります。
1998年から「ビートたけしのTVタックル」にMC「悪党党副総裁」として出演し、共演者からバラエティタレントとしての才能も引き出され、活躍の幅を広げました。
作家としては1999年に檀ふみとの往復エッセイ『ああ言えばこう食う』で講談社エッセイ賞を受賞。2000年には小説『ウメ子』で坪田譲治文学賞を、2008年には連作短編集『婚約のあとで』で島清恋愛文学賞を受賞しています。
2012年に発表したエッセイ『聞く力―心をひらく35のヒント』で年間ベストセラー総合1位を獲得。大ヒットとなりました。
作家だった父・阿川弘之の才能を受け継ぎ、エッセイや小説をはじめ幅広い分野で素晴らしい作品を生み出して続けているのです。
2018年4月からは小説『正義のセ』がテレビドラマ化されることが決定しています。
雑誌「クロワッサン」の連載をまとめた食エッセイ。ただの外食のレポートやグルメ本というわけではなく、阿川佐和子自身が作る様々な料理や、母親が作った家庭料理などについて語られています。
小さい頃から食べることが大好きで、「食欲こそが人生だ」と語る彼女のエッセイだけあって、とにかく美味しそうな話ばかり。
- 著者
- 阿川 佐和子
- 出版日
- 2013-03-28
自分の冷蔵庫を漁って作る簡単な酒の肴から、ローストビーフ、ホヤ貝など、食欲がそそられる話が盛りだくさん。また、大雑把なレシピや失敗談など、思わず笑ってしまうエピソードも。読めば、阿川佐和子の貪欲なほどの食への関心がわかります。もしかしたら、彼女はただの食いしん坊かも……?
本書はリラックスしながら読めるので、息抜きに最適です。しかし空腹時に読むのは要注意!間違いなくお腹が空いてくるので、気をつけてください。
関連シリーズの『娘の味-残るは食欲-』、『魔女のスープ-残るは食欲-』も合わせて読んでみてください。
2011年から雑誌「小説 野性時代」で連載されていた小説です。
東京下町の豆腐屋の娘として育った主人公の竹村凜々子。幼いころから正義感が強く、小学生の時に経験したある出来事がきっかけで検事を目指すようになりました。
晴れて念願の検事になれたものの、正義感だけではうまくやっていけるはずはなく……。
執筆のきっかけは、阿川佐和子がゴルフ場で偶然女性検事と出会ったことだったそう。2018年4月からは吉高由里子主演でテレビドラマ化されることも決定しています。
- 著者
- 阿川 佐和子
- 出版日
- 2016-08-25
凜々子の性格は良くいえば真面目、悪くいえば融通がきかない、といったところでしょうか。不器用であまりにまっすぐすぎる彼女の姿に、やきもきしつつも応援したくなります。
正面からぶつかっていくそのやり方は、作者である阿川佐和子の生きる姿とも、どこか重なるように思えます。
新人検事としてだけでなく、友人の裏切りや恋人との別れなど、凜々子の周りでは次々とトラブルが発生……しかし彼女は常に全力、一所懸命に生きていくのです。
働く女子は特に必読!続編も出ているのでぜひあわせて読んでみてください。
一緒に住んでいた叔母が還暦前に恋に落ちて家を出て行ってしまい、ひとり暮らしになった35歳独身の主人公。そんな彼女の家に突然ふたりの独身男性が上がり込みます。
年齢、境遇、性別までも違う3人の男女の共同生活を中心に、話が展開していく長編小説です。2010年には坂井真紀主演で映画にもなりました。
- 著者
- 阿川 佐和子
- 出版日
- 2008-05-28
ある日突然始まる、主人公の女性とふたりの男性との同居。全く違う3人の唯一の共通点は、スープが好きなところです。また、3人がしている約束は、夕食を作る当番の人は必ずスープを作るということ。食べることが好きな阿川佐和子らしく、登場する料理の一つ一つが本当に美味しそうなところにも注目ですよ。
急激な物語展開があるわけではないのですが、ページをめくる手が止まらなく、引きつけられます。ラストもはっきり明言しないことで、いろいろなことを読み手側に想像させてくれる、ほんわか心温まる小説です。
2015年8月に94歳で天寿を全うした、阿川佐和子の父・阿川弘之。『春の城』『山本五十六』をはじめ、多くの作品を世に送り出してきた作家でした。『強父論』は、そんな父親の一周忌に出版された本です。
今は亡き父を偲び、とにかく美談満載……なのかと思いきや、怖くて強い父親との思い出や、父親と娘との深い絆を思わせるエピソードがたくさん綴られています。
- 著者
- 阿川 佐和子
- 出版日
- 2016-07-29
阿川佐和子の父・阿川弘之は、いわゆる「亭主関白」で、男尊女卑の権化のような人だったそう。とにかく横暴で、怒られることは日常茶飯事だったとのこと。最初は『恐父論』というタイトルにする予定だったというほど、とても怖い父親だったようです。
そんな父親の悪口をこれでもかというほど書いているのに、内容は愛情に溢れているのです。父親をほとんど褒めていないように見えますが、その素晴らしさが言葉の端々で感じられます。読み終わった後、思わず自分の父親や祖父のことを考えてしまうかもしれません。
「週刊文春」で20年以上続く連載対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」をはじめ、数多くのインタビューを手がけてきた著者。
彼女が経験してきた、聞くことに関する成功談・失敗談などの具体的なエピソードや、彼女が仕事で心がけていることなどが書かれているのが『聞く力ー心をひらく35のヒント』です。2012年の年間ベストセラー1位にして、それ以降も売れ続けるロングセラーの新書となっています。
- 著者
- 阿川 佐和子
- 出版日
この本は、ハウツー本のような強い主張やテクニックが書かれているのではなく、また即効性があるようなものでもなく、あくまで阿川佐和子がこれまでの経験から学んだ教訓がヒントとして示されています。解釈は読者次第です。
今まで阿川佐和子のインタビューを見たことがある人は、他の人のインタビューと比べて独特だと感じたのではないでしょうか?自然体というか、ユーモアに溢れているというか……。その背景にあるものや秘訣が、この本を読んだら見えてくると思います。
本書の実践編である、『叱られる力 聞く力2』も合わせて読んでみてください。
生物学者の福岡伸一との対談本。生物の分野には疎い阿川佐和子が聞き手となり、いろいろな質問を投げかけることによって、専門的な生物学が専門外の人にもわかりやすく解説されています。
趣味の話、絵本や文学などの本の話まで、生物学だけについて語られているのではなく、幅広い分野のことが書かれている本です。
- 著者
- 福岡 伸一 阿川 佐和子
- 出版日
- 2011-10-24
センス・オブ・ワンダーとは不思議さを感じ取る感性のことで、福岡伸一は子ども時代にセンス・オブ・ワンダーに出会い、これを失わずに生きることの重要性を主張します。二人の子どもの頃の体験がそれぞれ語られているので、とても興味深く、読みやすいです。
また本書は、生と死、科学進歩という深いテーマをはじめ、多岐にわたるテーマについて語られています。日本を含め、世界中の国々が直面している問題について言及されていて、多くのことを考えさせられる本です。
上にも書いたように、本書では阿川佐和子が聞き手に回り対談が進んでいます。相手の話したいことを引き出す、彼女の聞く力に感心させられること間違いなしです。上で紹介した阿川佐和子の『聞く力』の実践を見る、という意味でも楽しめるかもしれません。
以上、阿川佐和子のおすすめ本を6冊ご紹介しました。いかがでしたか?彼女の魅力溢れる本はまだまだ他にもたくさんあるので、ぜひ手に取って読んでみてください!