レオ・レオニのおすすめ絵本10選!名作『スイミー』は親子で読みたい

更新:2021.12.8

レオ・レオニ独特のおだやかな色彩で描かれているやさしい絵本たち。かわいらしいキャラクターは、子どもたちにも大人気!今回は、読むと疲れた心が癒されるような絵本をご紹介します。親から子へ伝え続けてもらいたい名作ばかりです。

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哲学的ストーリーを芸術的なセンスで描く絵本作家レオ・レオニ

レオ・レオニは、1910年にオランダで生まれた絵本作家です。裕福な家庭に生まれたレオニは、たくさんの美術品に囲まれ、芸術的才能を育んできました。第二次世界大戦が始まるころ、ユダヤ人のレオニは、ヨーロッパからアメリカ合衆国に亡命することに。

アメリカに渡ってからは、広告代理店や、新聞社などで、グラフィックデザイナーとして活躍。1959年に『あおくんときいろちゃん』を出版し、絵本作家としてデビュー。以後、1999年に亡くなるまで、約40冊の絵本を出版しています。

レオ・レオニのすべての作品に言えることですが、読んでいると、物語の奥底に隠された何かを感じます。その何かは、一度読んだだけでは、明確になりません。何度か読んでいるうちに、ある日突然、そういうことだったのか!と気がつく日が来るのです。隠されたメッセージを紡ぐのは、レオ・レオニ独特のおだやかな色彩で描かれたかわいらしいキャラクターたち。まずは、絵本を楽しんで読んでみてください。

読むだけで心が癒される?親子代々読み続けてほしい名作絵本

長年、小学校の国語の教科書に採用されているので、レオ・レオニの作品の中でも認知度が高い『スイミー』。仲間のさかなたちが、一ぴきのこらず食べられてしまうという始まりがとても衝撃的な、ちいさなかしこいさかなのおはなしです。

一人ぼっちになったスイミーが大きく暗い海を泳ぎ続けるシーンでは、「頑張れスイミー!」と、心の中で思わず応援してしまいます。読み聞かせをしていても、子どもたちのドキドキ感が伝わってくる場面です。

著者
レオ・レオニ
出版日
1969-04-01

レオ・レオニの絵本の中でも、絵の美しさが秀逸の作品。淡い色彩で描かれた、どこか悲しげな海の世界が広がり、ページをめくるたびに、心が癒されていくような感覚を味わえます。

仲間を失い、たった1匹だけ生き残るという悲しい体験をしたスイミー。海の中でたくましく成長し、新たな仲間を見つけたとき、以前の悲しい体験が生かされるのです。

子ども時代に、ぜひ、読んでほしい絵本。大人になって再びこの作品を読み返すと、レオ・レオニの『スイミー』に隠された物語の奥深さに、改めて驚かされます。親から子へ伝え続けてほしい不朽の名作です。

癒される!愛すべきおとぼけねずみのはなし

とぼけた表情がかわいい、ねずみのフレデリック。絵本を開いたとたん、ほんわかとしたネズミの世界に心が癒されます。仲間のねずみたちが、冬ごもりに向けてせっせと働いているのに、何もせずボーっと日々を過ごしている。そんな、ちょっとかわったねずみのお話です。

実は、フレデリックは、何もしていないわけではなかったのです。

「さむくて くらい ふゆのために ぼくは おひさまを あつめてるんだ」(『フレデリック』から引用)

それって働いてるの?と疑問に思いつつも、ネズミたちは冬を迎えます。

著者
レオ・レオニ
出版日
1969-04-01

長い冬ごもり。石垣の下のねずみたちの家では、蓄えた食料が少なくなっていきます。暗く寂しい気持ちになり、おしゃべりをする気力もなくなるねずみたち。そんなとき、フレデリックは、集めてきたものを仲間に披露します。

おひさまのもえるような金色のひかり。朝顔や野イチゴの緑の葉っぱの色。詩のように美しいことば。フレデリックの集めてきたものは、実態のないものばかり。それでも、暗い冬ごもり生活を、明るく照らしてくれるものばかりでした。

この物語は、芸術の存在意義を的確に表していると評することもできます。しかし、子どもたちには、難しい説明は必要ありません。ネズミたちのユーモアにあふれた生活を、楽しそう!と、感じる感性さえあればそれでいいのです。レオ・レオニの絵本を読んで感じた温かみを、ひとつずつ集めて、心の財産にしていきたいですね。

子どもの想像力を養う色の絵本

あおくんは、絵の具のしみのような、ただのまるです。きいろちゃんは、きいろいまる。二人は、仲の良いお友達。

あおくんときいろちゃんが、泣いたり、喜んだり、オレンジちゃんと遊んだり。ちいさな子どもたちと、同じような一日を過ごすおはなしです。

絵だけ見ると、極限まで抽象化されたシンプルな世界。パパとママなど、ただの棒のような絵の具のしみです。しかし、レオ・レオニは、まるの形一つ一つにまでこだわって描いています。レオニマジックとでも言うべきか、読んでいるうちに、棒とまるが本当の家族のように見えてくるから不思議です。

著者
Leo Lionni
出版日
1995-08-24

子どもたちは、あおくんときいろちゃんのことを、すぐに大好きになります。頼もしいことに、2才位の幼児でも、ちゃんと想像力を使って、あおくんときいろちゃんを、理解してくれます。二人が喜べば、子どもたちも大喜び。

ところが、あおくんときいろちゃんの場合、喜んで抱き合うと緑になってしまうのです。なんで?と聞かれると思うので、読み聞かせをする際は、色の三原色について、おさらいしておくといいでしょう。色絵の具の場合、三原色は、黄色、赤紫、空色。絵の具や紙粘土で、それぞれ色を混ぜて、何色になるのか、子どもと一緒に実験してみても楽しいですね。

心にズドンと突き刺さる、せつなさとやさしさ

ねずみのアレクサンダは、人間に嫌われ、ほうきで追い払われる毎日。レオ・レオニが描く一人ぼっちのねずみ、アレクサンダが、友達をみつけるお話です。

アレクサンダの見つけた友だちは、おもちゃのねずみウィリー。屋敷の女の子のお気に入りのおもちゃ。あたたかい部屋の中で、愛され、ちやほやされて過ごしています。

はじめての友だちウィリーのことを、大好きになるアレクサンダ。でも、愛されて過ごすウィリーのことを、ちょっぴりうらやましく思います。

著者
レオ・レオニ
出版日
1975-04-01

レオ・レオニの絵本の中でも、ファンタジーの要素が大きい作品。魔法のとかげや、紫の小石が鮮やかな色彩で描かれており、芸術的センスを刺激されます。

さみしそうなアレクサンダを見ると、せつなさを感じ、胸が痛むはず。ほのぼのとした絵で描かれているのに、不思議です。絵本の中から、せつなさを感じることで、レオニの作った物語の世界に、どんどん引き込まれていきます。心が弱っているときに読むと、涙してしまうかも。

紫の小石を持っていくと、願いをかなえてくれるという、魔法のとかげに出会ったアレクサンダ。魔法のとかげに、お願いした願いとは……?心あたたまるラストは、ぜひレオ・レオニの絵本で確かめてください。

自分探しで見つけたカメレオンの本当の幸せとは?

どうぶつにはそれぞれ色があります。金魚は赤色。ブタはピンク。ぞうは灰色。でも……「カメレオンだけは べつ。いくさきざきで いろがかわる」(『じぶんだけのいろ』から引用)

じぶんだけの色を探した、カメレオンのお話です。

カメレオンって、不思議な動物ですね。どうして体の色が変化するのか?子どもと一緒に調べてみても楽しいと思います。科学の世界に興味を持つ、きっかけになるかもしれません。

著者
レオ・レオニ
出版日
1978-04-01

この物語のカメレオンは、自分の特別なところに気がつかず、他の動物は、いいなぁと思っているのです。ころころ色が変わってしまうなんて、すごい特技なのに。自分の長所には、なかなか気がつかないもの、かもしれませんね。

カメレオンが探していた、じぶんだけのいろって、何でしょうか?自分らしさを受け入れるということなのかもしれません。まずは、ありのままの自分を受け入れてみないと、何も始まらないですよね。

レオ・レオニのメッセージをどう受け取るかは、人それぞれ。読んでみて、自分はどう感じるのか、試してみてください。

言葉を紡ぐ不思議な木のものがたり

「あいうえおのき」と呼ばれている木には、数年前までたくさんの文字たちが暮らし、葉っぱから葉っぱへと飛び移りながら楽しく過ごしていました。

しかし、ある嵐の日、仲間の文字が一部、風に吹き飛ばされてしまいます。それを見て恐ろしさに怯えきった残りの文字たちのもとへ、後日へんてこな虫がやってきました。虫に「言葉」を作ることを教わると、文字たちは恐怖を克服し、少しだけ強くなります。

次にやってきたのは見たこともない毛虫。毛虫は「文」を作れと言い出して……。

著者
レオ・レオニ
出版日
1979-04-01

葉っぱに住みついている不思議な文字たち。最初はみんな好き勝手をしてバラバラで、仲間を風に飛ばされてしまうという、怖い体験をします。怯えた文字たちのところへやってきたへんてこな虫は、「いぬ」「ねこ」「はっぱ」「ちきゅう」など、ことば(単語)の力を文字たちに教え、風が吹いても飛ばされなくなった文字たちに自信を持たせました。

ところが、ある夏の朝現れた毛虫は文字たちに「文章」を作るよう助言します。単語をつなげて意味のある文章を作り喜ぶ文字たち。しかし文字たちは更なる難題を出されるのです。

「なにか だいじな ことを いわなきゃ だめだ」(『あいうえおのき』より引用)

さて、文字たちはどんな文章を綴ったのでしょうか?あなたならどのような言葉を綴りますか?

何でも測れるって本当?

この物語の主人公は小さな緑色の虫、「しゃくとりむし」。

ある日しゃくとりむしは、はらぺこのこまどりに食べられそうになってしまいます。こまどりの自慢の尾の長さを測ることで難を逃れたしゃくとりむしは、こまどりに連れられて他の鳥の元へ。

フラミンゴに、おおはしに、さぎに……様々な鳥の体の1部の長さを、順調に測っていくしゃくとりむし。しかしある朝やってきたナイチンゲールが彼に測らせようとしたのは「わたしのうた」でした。

さぁ、どうしましょう?

著者
レオ・レオニ
出版日
1975-04-01

しゃくとりむしが、鳥たちご自慢のパーツを次々を測っていく様子は、見ていてとてもほのぼのとし、温かい気持ちになります。首を測ってもらったフラミンゴ、くちばしを測ってもらったおおはし、足を測ってもらったさぎ……、しゃくとりむしのおかげで、みんな嬉しそうでした。

そして順調にどんなものでも測っていたしゃくとり虫でしたが、難題が突き付けられます。測るものは「ナイチンゲールのうた」。測れなければ朝ごはんに食べられてしまうというのです。

歌を測れとは難しい!いや、不可能な依頼ですね。あなたならどのように解決しますか?

作品の中でしゃくとり虫は、いいことを思いつきます。それは一見、測っているように見せかけて……。しゃくとり虫はとても頭の回転が速いようですよ。ちょっとずるいような気もしますが、見事な解決方法にあっぱれ!ぜひ解決方法を読んでみてくださいね。

木と2匹のねずみの1年を描く

ねずみの双子ウィリーとウィニー、そして喋る木ウッディの1年を描いた物語です。

1年の始まる1月1日、ウィリーとウィニーははじめて歩いた雪の中で"ほうき"を持った雪ねずみを見かけます。ところが「ほうきじゃないわ」という声が……!なんと、木が口をきいていたのです。

2月になり、ねずみの2匹が再び戻って来てみると、雪ねずみは溶けてなくなり、木だけがまだそこに居ました。

3月、4月、5月……2匹のねずみと1本の木は何をするのでしょう。

著者
レオ レオーニ
出版日
2000-01-01

縦28.8cm × 横14cmの、木のような縦長の本です。縦の比率が多いことにより作画のねずみと木のバランスがとても良く、木を下から見上げたり、木によじ登ったりして交流する3人の姿がいきいきして見えるでしょう。

1月に出会い、2月にお互いの身の上を話し、順調に季節を楽しんで終わるのかと思えた夏。ウッディは火事に遭います。危ないところで難は逃れましたが、可愛い動物たちの物語を満喫している中でドキッとさせられる瞬間です。

「にんげんて、たばこや たきびの火に、きをつけないんだもの。たくさんの木が、やまかじで しぬの。木は うごけないから」(『いろいろ1ねん』より引用)

6月、ウッディが発したこの言葉に人間の身勝手さを深く反省させられます。幼児が読むととても素朴で可愛い童話で、大人が読むと人間の身勝手さへの警告。とても奥の深いぜひ親子で読んでいただきたい1冊です。

レオ・レオニが教えてくれる、それぞれの輝ける場所

森のおわりにある池で出会った、1匹のおたまじゃくしと小魚の物語。

おたまじゃくしと小魚は大の仲良しです。ある朝おたまじゃくしは、自分の体に小さな足が生えているのに気が付きます。何週間か経つと大人(カエル)となり水の中から草の生えた岸に這いあがっていきました。成長しても池の中に住み続ける小魚は、世の中を見てまわることのできるカエルが羨ましくて仕方がありません。

月日が経った頃、小魚はカエルのように世の中を見てやろうと岸へジャンプし……。

著者
レオ・レオニ
出版日
1975-04-01

「かえるは かえる、 さかなはさかな そういう ことさ!」(『さかなはさかな』より引用)

おたまじゃくしがカエルへと変化を始めた頃、小魚に言った言葉です。まさにこの本の主題であり、人間である私たちも心に深く刻み込んでおく必要がある言葉でしょう。

陸に住むカエル、水の中でしか生きていけない魚。どんなにあがいても変えることの出来ないことが、世の中には存在します。それを肝に銘じ、自分の置かれた状態でベストを尽くして生きていく、ということの大切さを教えてくれる物語です。

一方で、外の世界見たさに陸に上がってしまう魚の勇気と行動力には、讃頌(さんしょう)されるべき点もあります。ただし、命を落としかねない危険な行為です。魚のこの行動からは、己のことを良く知ることがいかに大切であるかを学ぶことが出来るでしょう。

海の中の世界しか知らない小魚が想像する「とり」「牛」「人間」はとても滑稽な姿をしています。しかしカエルから聞いたそれらの姿とは一致しているのです。その食い違いぶりに子どもはもちろん、大人は感心しながら笑ってしまうことでしょう。

大人から子供まで自分を見つめ直すきっかけ作りに読んでみてくださいね。

「仮面」を通してレオ・レオニが伝えたかったこと

仮装に夢中になり過ぎて我を見失ないそうになったのねずみたちの物語。

美味しい食料が確保でき、天敵にも見つからず平和に暮らすのねずみたちの元に、ある日まちねずみが通りかかります。まちねずみから「マルディ・グラ(ざんげかようび)」という楽しいお祭りの話を聞かされたのねずみたちは、自分たちもやってみることにしました。

仮面を被り、暗い茂みに隠れて脅しあった結果、平和だったのねずみの村は憎しみと疑いでいっぱいになってしまい……。

著者
レオ・レオニ
出版日
1979-04-01

物語に出てくる「マルディ・グラ」は、日本ではあまり馴染みがありませんが、アメリカ、カリブ海の各国、南アメリカ、ヨーロッパ各地で行われているカトリックの祝賀行事です。近年では宗教色が消え、物語の中でまちねずみが言うように、音楽や仮装パレードが中心に行われています。

マルディ・グラを行うはずだったのねずみたちは、仮装に熱が入り過ぎたために自分たちを見失い、恐ろしいケダモノであるかの如く振る舞い始めてしますのです。ケダモノのいる村にはびこるのは憎しみと疑いばかり。

そんな村の状況を打破するのは何の変装もしていない「ただののねずみ」です。仮面1つで人格まで変わってしまう怖さ、仮面を付けず本当の自分でいることの重要さが学べます。

猜疑心に満ちた時、大人にもぜひ手に取っていただきたい1冊です。

レオ・レオニの絵本の奥底に隠されているメッセージ。これが正解というものは、ありません。作品を読んで、どう感じるかは人それぞれ違うもの。自分なりの回答をみつけて、心の財産にしてもらいたいなと思います。

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