本屋さんや図書館で子供に読んであげる絵本をゆっくり選びたくても、子供連れの場合、なかなかそうはいきません。かと言って、片っ端から借りたり買うのも……そんな方にぜひ参考にして頂きたいです。
「あはは」と笑うおひさまの下で、木、鳥、花、虫、魚、動物も「あはは」と笑っています。笑い顔はどれもまぶしいまでに爽快です。口を大きくあけているので、笑い声がこだまして聞こえてきそう。それに何だかポカポカ気持ちまでもあったかくなってきます。
ビタミンカラーである黄色を基調とした絵本で、笑顔と元気を与えてくれます。
- 著者
- 前川 かずお
- 出版日
今日の天気は晴れ!それだけで誰もが明るくなります。動物や草花、昆虫にとってもきっと同じでしょう。
おひさまにはそれだけのものすごいパワーがあります。おひさまはまぶしくて直視できないので、実際におひさまの表情が笑顔かどうか確認できませんが、おひさまを浴びたもの達の笑顔から推測するに、きっと満面の笑顔なんでしょうね。
赤ちゃんと言えども、口調や表情から感情を読みとることができるそうです。この絵本に出てくる笑顔は口を大きくあけて目を細め 、「あはは」と笑っています。絵本の登場人物の笑顔や笑い声だけでなく、パパやママの笑顔や笑い声も赤ちゃんに届いたら、赤ちゃんもきっと笑顔になることでしょう。
このお話の中に一人、ふてくされ顔の男の子が出てきます。どうしてふてくされてるのかはわかりませんが、早くも次のページでは
「ぼくも あはは
おかあさんも あはは」
(『おひさま あはは』より引用)
と、笑顔に。
子供は喜怒哀楽が激しいですし、その転換も早く、大人はついていけません。どうして怒っていたのか、どうして機嫌がなおったのか、結局よくわからずじまいですが、今が笑顔ならそれでよし!の繰り返しの子育てな気がします。子供が笑顔に戻ったら、子供の笑顔を浴びて沢山パワーをもらって、一緒に笑いたいですね。
「ノンタン」は、茶目っ気のある白いネコが主人公の大人気シリーズです。明るく元気なノンタンがみんなを惹きつけ、一緒に遊んでみたくなること間違いなし!
この絵本ではノンタンを通して、表情や感情を学べます。リズム感があるフレーズなので、楽しんで読め、それによりノンタンの表情がよりいっそう引き立ちます。
ページをめくると全然違うノンタンの顔が出てくるのも魅力の一つ。次はどんな顔かな、と期待感を持って楽しめます。
ノンタンの顔を横で眺める昆虫たちにも注目!昆虫たちの名前、全部わかるかな?
- 著者
- キヨノ サチコ
- 出版日
- 1987-08-27
ノンタンが笑ったらママも同じような笑顔を見せ、ノンタンが泣いたらママも同じような泣き顔を見せることで、色々な表情を見せてあげたいものです。ママにとっては顔の体操で、笑われてしまうかもしれませんが、幼い子供はどの顔の表情でも喜んでくるはず。
そして少し大きくなったら「嬉しい時には笑顔になる」「悲しい時には涙が出る」という感情と表情の相関についても教えてあげたいものです。その際は、今日あったことを話しながら教えてあげるとわかりやすいかもしれません。
「ママ、今日あなたがご飯を全部食べてくれたのが嬉しくてこんなニコニコ顔になっちゃった。ノンタンもニコニコ顔だね。どんな良いことがあったんだろうね」、「お友達に意地悪した時のあなたの顔はこのノンタンの顔と同じになってたよ。ノンタンのこの顔見てどう思う?」、「今日、公園で転んだときにノンタンのこの顔と同じになってたよ。痛いときには涙がでるよね。ノンタンも転んだのかな?」などなど。
このように冷静に今日の自分の表情や子供の表情を振り返って見ると、「一日中怒ってばかりいたな」とか、「笑顔が足りなかったな」と反省させられることもしばしば。
もっと子供が成長してくると、子供の方から「ママのあのときの顔は鬼のようで、つのがはえてたよ。」などと指摘されるようになってきます。鏡を持ち歩いているわけではないので自分の表情を見ることは出来ませんが、 そう言われた時は恐らく子供の言うことが正しく、反省の余地がありそう。
いかんせん、感情が表情にでる方が人間味があっていいですよね。成長に応じてノンタンと一緒に顔の体操を楽しんでください。
この絵本を読むまでは、大抵の人は、だるまは「赤くてドーンとした丸いおきもの」というくらいにしか思っていなかったはず。そんなだるまが脚光を浴びることになったのはこの絵本のおかげと言っても過言じゃないでしょう。
だるまに短い手足がはえて、まゆは下がり、目は小さく丸い。手足があっても「ぎこちない動きしかできないでしょう」というところが何とも可愛い!
それに文字もポップで可愛いんです!
「だるまさんが転んだ」の遊びをモチーフに展開するお話が、すべての人を笑わせます。
「だるまさん」シリーズとしては他に「だるまさんの」「だるまさんと」があります。
- 著者
- かがくい ひろし
- 出版日
「だるまさんが」の部分は、からだを左右に振りながらよみたくなってしまいます。この「だるまさんが」は何回も出てくるのですが、実はだるまさんの顔は毎回違うので、出来ればだるまさんと同じ顔をして読んで、「次はどうなるのかな?」という子供の期待感を最大限に高めたいところ。そして「パッ」とページをめくると……。
「アッハッハッハ」という子供達の笑いが起こります。「ズコッ!」とか「なんだ~変な顔!」というコメントもあるかもしれません。
笑い声を存分に聞いたら、また始まる「だるまさんが」……。
子供達にとっては永遠に続いて欲しい絵本でしょう。大人にとっても、子供の期待を裏切らないオチに、一緒になって笑えるはず。
1対1の読み聞かせでも楽しいですが、大勢の子供の前での読み聞かせにもむいています。
子供が「もう一回読んで!」と何度もせがむこと間違いなしの絵本で、同じシリーズの他の絵本もあわせて楽しんで欲しいです。
水遊びが大好きな動物である、ぞう、かば、わに、かめが登場。
丸みを持たせた動物の体に淡い色使いで、何だかホッとします。わにくんも歯が丸く描かれているためか、全く怖そうなイメージはありません。みんな仲のよい友達なのがわかります。
ぞうくんはみんなを散歩に誘いますが、「ぞうくんの背中に乗せてくれるな いいよ」と歩きたがりません。みんなちょっとズボラですね。でも、ぞうくんはみんなと一緒がいいのか、快諾し、みんなを次々に背中に乗せて、散歩を続けます。
みんなから「ぞうくんは力持ちだね」と言われて悪い気はしないぞうくん。みんなの「楽ちん楽ちん」という心の声が聞こえて来そうです。
でもさすがに重くなってきて……おっとっとっと……。
「うわーっ」
「どっぼーん」
(『ぞうくんのさんぽ』より引用)
池に落ちてしまいます。
でもそこが池だったことで、水遊びが大好きなみんなはさらにご機嫌になって、結局、散歩も水遊びも両方楽しむことができるのでした。
- 著者
- ["なかの ひろたか", "なかの まさたか"]
- 出版日
- 2006-05-20
歩けるようになって、家の近所を散歩。これは今まで抱っこやベビーカーで通っていた場所と同じであっても、子供にとってはまるで違う世界に来たような感じでしょう。
自分の足で、なおかつ、自分のペースで歩く。目線も全然違いますし、わざわざ段差のあるところに行ったり、興味のある所に寄り道したりと、毎日同じルートを歩いても、決して毎日同じではありません。
さらに散歩の途中でお友達に会ったらどうでしょう。ぞうくんのようにご機嫌に「一緒に行こう」と友達を散歩に誘いたくなることもあるはず。それに友達に褒められたら、調子にのって、無理なことも引き受けちゃうかも。
ぞうくんがみんなを背中に乗せて、重そうに「のっしのっし」と歩いていてつまずくシーンは、スローモーションで再生しているかのようで面白い!一番下のぞうくんがつまずくとどうなってしまうのか、子供でもわかりやすい描写です。一番上だったかめくんが一番遠くに飛ばされてしまいました。
池に落っこちた場面では、一瞬、みんな何が起こったかわからなくなっているかのように固まってしまいます。一時停止されたかのような絵になっていて、これまた面白いです!
次のコマではもうみんなご機嫌。一瞬びっくりしたけど、散歩も水遊びも出来て良かったね。
色々な動物の家族が仲良く食卓を囲んでいる様子をコミカルに描いた絵本。
まず、それぞれの家の外観から、住んでいる動物を推測することから始めます。動物の特徴をデフォルメした家が笑いを誘います。表札代わりに動物の顔の旗が各家についているので、住んでいる動物を当てることは難しくないでしょう。
それぞれの家の中をのぞかせてもらうと、あらあら、みなさんお食事中。何を食べているのか、注目!ぞうさんは「りんごとバナナ」、きりんさんは「野菜サンド」といったように、実際の動物が大好物な食べものが並んでいるようです。
食卓を囲んでいる家族の人数にも注目!ねずみさん一家は全部で何匹いるのでしょう?こんなに大勢のお腹を充たすためには、それはもう、ながーいながーいパンが必要でしょうね。
多田ヒロシのねずみさんシリーズとしては他に「ねずみさんのくらべっこ」「ねずみさんのおかいもの」があります。
- 著者
- 多田 ヒロシ
- 出版日
ページをめくる度に出てくる「家族揃って笑顔で食卓を囲むシーン」が、「幸せの象徴」のように思えます。動物の種類を変えつつも、この光景が何度も出てくることで、説得力も感じます。
家族がみんな揃って笑顔で向かい合っていること、大好物が沢山テーブルに並んでいること。どちらかが欠けていたら、幸せとは言えない気がします。
ねずみさんは、ながいパンを持って家路を急いでいます。家族がお腹をすかせて待っているからでしょう。ようやく着いたお家で、ながいパンを大勢の家族と分け合って食べる。ねずみさんが親として頑張っている姿を見て、自分も頑張らなくっちゃ、とパワーがわいてきます。
さてさて、ねこさんのお家だけ、家の外観だけの紹介しかされていません。ねこさん一家の食卓には何が並んでいると想像しますか?ねずみさんが、ねこさんの家の前を猛スピードで走って逃げたことがヒントですよ!ねずみさんはこれからも、ねこさんの家の前だけは猛スピードで走って通り過ぎることでしょう。
今日、家族揃って食事をとれましたか?共働きが増え、また、子供が大きくなるにつれて帰宅時間がバラバラで、家族全員揃っての食事が難しくなっています。朝食だけでも、休日の食事だけでも、家族揃って笑顔で食卓を囲み、幸せを実感したいものです。
「そらまめくんのベッド」は、実際のそら豆で言えば、そら豆のさやのことです。そら豆の裏表面には真っ白なワタがついていて、そら豆を寒さや乾燥から優しく守っているそうです。
このお話で「そらまめくんのベッド」は、まさに「みんなを優しく守ってくれる存在」そのもの。
ある日、そらまめくんのベッドがなくなってしまいます。やっと見つけた時には、ベッドの上にうずらがどっしりと乗っかって、たまごをあたためていました。この時ばかりは自分の宝物を少しだけ貸してあげることにし、見張っていると……。
「やった! たまごが かえったぞ。ぼくの ふわふわ ベッドで ひよこが うまれたー!」
(『そらまめくんのベッド』より引用)
ベッドが戻ってきたお祝いのパーティーを友達がしてくれます。その後、そらまめくんは宝物を友達に貸してあげるのです。
この絵本の作者の中屋美和は、人気シリーズ「くれよんのくろくん」の作者としても知られており、「そらまめくん」シリーズは他に「そらまめくんのおうち」「そらまめくんとめだかのこ」「そらまめくんとながいまめ」「そらまめくんのぼくのいちにち」などがあります。
- 著者
- なかや みわ
- 出版日
- 1999-09-30
自分の宝物を他の人に貸してあげることは出来ますか?宝物が壊されてしまわないか心配なので、大人も子供も、自分だけのものとして独占したいと思うのは当然のことです。
では、自分の子供の宝物を、子供の友達が貸して欲しいと言った時、子供にはどのように伝えますか?幼稚園や保育園にあるみんなのおもちゃであれば、「みんなのおもちゃだから順番ね。次はお友達に貸してあげてね」ということができるでしょうが、自分の子供のものだった場合、どうしますか?
これは難しい問題です。子供は友達に貸してあげるべきなのか、大切な宝物だから貸せないよと断るべきなのか。
そらまめくんは、最初は宝物を貸しませんでした。貸さなかったことで友達から「僕らにベッドを貸してくれなかったばつさ」と陰口を言われました。
でも、ベッドがなくなって困っているそらまめくんに、陰口を言った友達の方が先に「自分達のベッドを貸してあげる」と申し出ます。ただ、その時は自分のベッドがなくなったショックと友達のベッドは自分に合わないので、やっぱりあのベッドでなくっちゃダメだと思い、そらまめくんは友達の優しさに気がつくことはできませんでした。
それが、そらまめくんのベッドが見つかって戻ってきた時に、友達がこれまで心配してくれていたこと、ベッドが見つかって良かったと友達がパーティーを開いてくれたことで、そらまめくんの気持ちが変わります。
もちろん、うずらのひよこが自分のベッドで生まれるという感動的なシーンを見たこと、すなわち、ベッドがある意味違う使われ方をしたのを見て、一段と「僕のベッドはすごい」と得意になったのも影響しました。
他の人に僕の宝物を貸してあげたら、僕の宝物の良さに気づいたみんながもっともっと喜んでくれて、僕も嬉しくなるんじゃないか、と思ったに違いありません。
この絵本を読んで、宝物を貸せるか貸せないかの前に、子供には、子供自身の気持ちと友達の気持ち、まずはそれぞれの立場の気持ちを理解させたいな、と思いました。
バーバパパは1970年代にフランスで登場して以来、世界中で愛されています。
子供から「バーバパパの絵を描いて」「バーバパパが車に変身した絵を描いて」などと頼まれた人も多いはず。バーバパパはピンク色の風船を膨らませたような体系で、自由に姿をかえられるという面白さは、まさに元祖「癒し系ゆるキャラ」。
パパのキャラクターに加え、人間味溢れるストーリー、シリーズで登場する個性的なバーバパパファミリー、見てるだけで楽しくなるようなカラフルな色使いが人気の秘密であると言えます。
バーバパパが何に変身するのかも見所の一つで、シリーズを制覇して読みたいものです。
- 著者
- ["アネット=チゾン", "タラス=テイラー"]
- 出版日
バーバパパは庭で生まれます。フランソワとはすぐ仲良しになれましたが、大きすぎてうちにはおいておけないと追い出された先の動物園ではうまくいきません。結局、動物園からも追い出されてしまい、行くところもなく、ひとりぼっちの寂しさを味わい、泣いてしまいます。
バーバパパはとても寂しがり屋。バーバパパの泣き顔を見ると、思わず抱きしめて頭を撫でてあげたくなります。
でも、寂しいとただ泣いていたわけではありません。動物園では友達ができるようにと、友達と同じ形に姿を変えてみるも、だれにもわかってもらえず……「友達になるということは、姿、形を合わせることではない」というメッセージにハッとさせられます。
シリーズを通して言えることですが、「居場所がないのはとても辛いこと」という強いメッセージを感じます。バーバパパ自身が居場所がなく寂しい思いを経験したためか、自分の居場所のみならず、他の人の居場所もちゃんと作ってあげよう、残してあげようと考え、みんなが共存できる最良の方法を、バーバパパなりの堅苦しくない愉快な方法で模索、実行していく姿が、おばけなのに人間味溢れ、慕われるんでしょうね。
みんなが友達に囲まれて、幸せに暮らせるバーバパパの世界を、子供と一緒に楽しんでください。
小さい女の子が憧れるような「ある日突然目の前に白馬に乗った王子様が現れて恋に落ちる」というシンデレラストーリーとはかけ離れたお話ですが、モノトーン調の絵本で派手さが全くない分、しろいうさぎとくろいうさぎのお互いを思う気持ちの真剣さがにじみ出ています。
多くを求めず、ささやかな幸せを「幸せ」と思えるということは、何事にも感謝でき、「心が満たされている状態」と言えるのかもしれません。
- 著者
- ガース・ウイリアムズ
- 出版日
- 1965-06-01
しろいうさぎと楽しく遊んでいる中で、くろいうさぎがたまに座り込んで見せるとても悲しそうな顔。挿絵のくろいうさぎの目からは今にも涙がこぼれ落ちそうです。くろいうさぎは願い事をしていました。
「これからさき、いつも きみといっしょに いられますように!」
(『しろいうさぎとくろいうさぎ』より引用)
くろいうさぎにとっては、しろいうさぎとの楽しい毎日が明日も続くのか、不安だったに違いありません。しろいうさぎにくろいうさぎのその強い願いが伝わります。
「じゃ、わたし、これからさき、いつも あなたといっしょにいるわ」
(『しろいうさぎとくろいうさぎ』より引用)
今度はくろいうさぎにしろいうさぎの決意が伝わります。
たんぽぽの花を耳にさしての結婚式。モノトーン調の絵に黄色いたんぽぽが栄えます。
もう決して悲しい顔はしなかったという、くろいうさぎ。近くのささやかな幸せに気づけること、そして、明日への不安がないことこそ、最高の「幸せ」と言えるでしょう!
この絵本は、王子様話に染まってしまった子供にも、「色んな価値観があっていいんだよ」というメッセージを伝えるためにも読みたい一冊です。
最初は「大きくて高い木に登ってみたい」という程度でしたが、かおるの空想はどんどん膨らんでいきます。
幹の太い大きな大きな木にはしごをかけて、かおるの小屋を作ることに。中には台所、隣の部屋にはベッドも置いて、小屋の上にはリスの家、鳥のかけすとやまがらもいます。さらに上には見晴らし台も……。
「かおるは、まるで いま その 木に のぼっているような きもちに なって わくわく してくるのです。」
(『おおきな きが ほしい』より引用)
かおるは、この壮大な空想を自分の頭の中にだけ留めて楽しむ、ということはせず、絵に描いて、お父さんに説明を始めます。
自分で設計した「お気に入りの場所」を、大人に頼らず、自分の力で作りたい、そんな真剣な子供心がたっぷり詰まったお話です。
絵本を読み進めると、絵本の向きが左右の見開きではなく、上下の見開きで読む形に変わります。このしかけが、かおるの大きな木を、よりいっそう大きく表現していて面白いです。
子供は自分の秘密基地作りの参考に、大人は子供心を思い出すきっかけにもなるので、ぜひ楽しんで読んで頂きたいものです。
- 著者
- 佐藤 さとる
- 出版日
子供は、「子供だけの秘密の場所」に憧れます。おそらく、自立心が芽生え始めると、大人の干渉を受けることなく、自分が主体となって何かをしてみたい、という感情がわいてくるからでしょう。
一方で日常生活はほぼ大人の管理下にあります。そういったことから、裏山やちょっとした洞穴などに秘密基地を作ろうという考えに至ります。実際に子供の頃に秘密基地を作ったことのある人は多いはず。
かおるが小屋を大きな木の上に作ったのは「高い位置からものを見たい」という憧れからでしょうか。そして「鳥になったみたいだ」と表現したところでは、自由を手に入れたかのよう。
自分一人で作れるホットケーキを台所で焼いて食べる、というところでは、自立心を感じます。
ここまで来ると「僕は一人前だから大丈夫」と自信たっぷりなのかと思いますが、そうではなく、心配性な部分を垣間見せます。「高い=危ない」とお母さんから言われてしまわないように安全にも気をつかっているあたりや、ホットケーキが上手に焼けず、焦げたときに備えて煙突を設けたりしているところが子供らしい一面、可愛いじゃありませんか。
それに、小屋に妹を連れてきてやろうと考えたり、りすや鳥にも大きな木を使わせてあげようとしたりするあたりは、やはり自信のなさの表れ、全くの一人は不安なんだろうなと感じます。
お父さんはかおるの話を面白がって聞いてあげました。一生懸命話す子供の姿に成長を感じたことでしょう。
子供と一緒に空想の世界である「大きな木の上にあるかおるの家」を訪れて、ぜひ風や季節を感じてみてください。
まあちゃんは、うっかりものでなまけもの。そのキャラクターがこの絵本を面白くしています。
まあちゃんは、メロンあめとえんどうまめを一緒に埋めてしまいます。
暗い土の中で始まる、外見は似ているけれど違うものである、メロンあめとえんどうまめの小競り合い……お互いに違うものだと認識していますが、お互いが何者か知らないので、ののしりあいに。
メロンあめを舐めてみることで、ようやくメロンあめがどういうものかを知るえんどうまめ。舐められたことでメロンあめはなくなってしまい、えんどうまめは大きく育ちます。さて、収穫したえんどうまめのお味は?
そんなに甘くて美味しいえんどうまめが出来るんだったら、一度、メロンあめとえんどうまめを一緒に埋めてみたいものですね。
- 著者
- たかどの ほうこ
- 出版日
- 1988-04-15
この絵本を読んだ最初の感想は、「最後にはちゃんとうまくやっちゃう、こういう子っているよね」とまあちゃんの要領の良さに皮肉が出てしまいました。それに、子供にこの絵本を読んで、「まあちゃんみたいに、なまけて水をあげなくても、えんどうまめは育つんでしょ?」と聞かれたらどう答えようかと心配になっちゃいました。これはもう、この絵本の世界に入り込んで、まあちゃんに振り回されている証拠ですよね。
さて、メロンあめとえんどうまめ、確かに外見は似ていますが、それ以外については全然違います。お互い何者かわからないことから、ののしりあうのですが、人間同士にこのことを置き換えて考えてみてください。
同じ人間でも、文化や思想が違う。お互いの文化や思想を知ろうともしないでののしりあうのではなく、えんどうまめがメロンあめを舐めてみたように、一度異文化に足を踏み入れてみたりすることや、コミュニケーションを重ねることで、相手の良さがわかることもあるんじゃないかな、というメッセージにも取れました。
土の中で1対5で対峙するメロンあめとえんどうまめのコミカルな絵に注目です!
以上、定番のおすすめ絵本を10冊紹介させて頂きました。
定番絵本が長く愛されているのには理由があります。
自分が子供のころに読んでもらったり、自分で読んだなぁと記憶が残るほど面白かったり印象的だったもの、幼稚園や保育園で先生に読んでもらった絵本のことを家に帰って一生懸命に話す子供を見て、自分も読んでみようと手にした絵本。
沢山の絵本がある中で長く愛されている絵本は、こういったサイクルにのっかっているものです。
一度このような定番絵本を読んでみてはいかがでしょうか。