世界的にも有名な絵本『はらぺこあおむし』の作者エリックカールは、この物語のほかにも40冊以上の絵本を手掛けています。彼の作品は鮮やかな色彩と色を重ねづけしたり、色塗りをした紙を切り抜き重ねづけしたコラージュとよばれる画法で作成されています。
1929年ニューヨークで生まれたエリック・カールは幼い頃、家族とともにドイツへ移住。青年になった彼はシュトゥットガルト造形美術大学で学び、再びアメリカへ戻ります。
アメリカに戻ると絵本『スイミー』の作者であるレオ・レオニの紹介によりニューヨーク・タイムズのグラフデザイナーとして働きながら1968年には『1、2、3 どうぶつえんへ』でアメリカ・グラフィックアート協会賞を受賞。翌年には世界的も有名になった絵本『はらぺこあおむし』でも受賞します。
彼の描く色鮮やかな絵本はテンポもよく、想像力豊かな子供にぴったりのストーリー。また作品によって自然に色や形、生き物の名前が覚えられるよう子供の側に立った魅力的な内容となっています。
緑のボディに赤い頭が印象的な『はらぺこあおむし』は、1969年に初版が発売されました。
物語はとてもシンプルで、日曜日に生まれた「はらぺこあおむし」が、食べ物を探して出かけます。月曜にには「りんご」を1つ。火曜日には「なし」を2つ……と曜日を重ねるごとに食べていく数も増えていくストーリーは、自然に曜日や数について覚えられそうな内容ですね。
- 著者
- ["エリック=カール", "もり ひさし"]
- 出版日
毎日、美味しそうな食べ物を食べているのに一向にお腹がいっぱいにならない「はらぺこあおむし」は、とうとう土曜日には、ケーキ、アイスクリーム、ペロペロキャンディーなど10個の食べ物を食べてしまい、夜にはお腹が痛くなってしまいます。
「どうなるんだろう?」と心配になりますが、翌日の日曜日には葉っぱが食べたくなり、元気になった様子。そして太っちょになっていて、お腹もぺっこぺこではありません。
ここからは物語のクライマックス!緑色の「はらぺこあおむし」はさなぎになり、次のページではグーンと鮮やかな羽を広げた立派な蝶になります。
最後のページで登場する蝶は、コラージュの技法を使い指や筆で塗られた紙が何枚も重ねられて羽の形になっています。
「はらぺこあおむし」の成長していく姿は、子供から大人へと成長をしていく姿を投影しているよう。カラフルな蝶は、子供の限りない可能性を秘めた未来を感じさせてくれます。
『くまさん くまさん なにみてるの? 』は、アメリカの教育学の分野で活躍するビル・マーチンが作った物語にエリック・カールが挿絵を描いた絵本です。
見開きのページいっぱいに描かれた動物たちは、はっきりとした色合いで小さなお子様も興味を感じてくれることでしょう。
物語のはじめは表紙のくまさんが登場します。タイトルを見るとくまさんの物語のようですが、「くまさん くまさん なにみているの」という問いかけからはじまり、次のページではくまさんが見ていた赤い鳥に「なにを見ているの?」と続きます。
- 著者
- ビル=マーチン
- 出版日
この物語では次々に動物や生き物たちが登場。「あかいとりをみてるの」とくまさんが答え、次のページを開くと「あかいとりさん あかいとりさん なにみているの」とを韻を踏むように生き物の名前が繰り返しながら進んでいきます。また、問いかけの文章の中には「ちゃいろいくま」、「あかいとり」など描かれている生き物の色も書かれており、その部分は太文字で強調されています。
色鮮やかな金魚、馬などのページが続いたかと思うと、最後には子供たちが世界で一番大好きなお母さんが登場。そしてお母さんが見ているのは……。
最後にお母さんが出てくるこの絵本は、小さい頃のお母さんとの大切な時間。少しづつ成長していき好奇心旺盛になって子供たちに「おかあさんはいつも見ているから安心して冒険しておいで」というメッセージを感じる物語です。
ある夜、モニカがベッドにいこうとするとお月さまがとても近くに見えました。「お月さまとあそびたいな」と手を伸ばしますが、月には届きません。
パパと一緒に庭に出たモニカは「パパ、お月さまとって! 」と言います。
その次のページは、ほぼ真っ白で真ん中は左と右の横に向いた矢印だけがあります。矢印に従って、左右に開くと……。
- 著者
- エリック カール
- 出版日
むすめのためにながーいながいはしごを担いだパパが登場します。
パパは、ながーいながいはしごをたかーいたかい山へ運んでいきました。
次のページでは見開きの半分だけが白いページになっていて上向きの矢印になっていて、モニカのパパがお月様を取りに行く様子が描かれています。
このあとも絵本にはさまざまな仕掛けがあり、好奇心いっぱいの子供の心をくすぐります。
お月さまを娘のために持って帰ろうとするパパですが、まん丸のままでは大きすぎて持てません。そしたら、お月さまが、「わたしはまいばん少しづつ小さくなっていくので、ちいさくなったら連れて行ってくださな」と答え、モニカは小さくなったお月さまと一緒に遊ぶことができます。
遊んでいるうちにパッと消えるお月さま。このあとの展開はぜひ絵本を読んでみてください。
誕生日の前日の夜、枕の下から手紙をみつけた主人公のチム。
その手紙には「☆がのぼったら……」など、表紙にも使われている半円や星、楕円などの形が文章の合間に使われており、宝の地図のようになっています。
手紙を一通り読み終えたチムが窓の外を見ると、半円の形をした月がはらっぱのむこうにのぼってきたのを見つけます。次にチムは、一番明るい星をみつけてかけていき……。
- 著者
- エリック・カール
- 出版日
この物語はチムの枕の下にあった手紙の中に描かれている形から想像させるものを、チムが見つけていくストーリーになっています。
それぞれのページはどこかしらが、手紙に描かれている形に切り抜かれており、次のページやさらに先のページも利用した工夫を凝らした装丁になっています。
この本はストーリーだけでなく背表紙の折り返しも見逃せません。エリック・カールが主に用いるコラージュと言われる貼り絵の手法も紹介されています。
ぜひ、お子様と一緒に『たんじょうびの ふしぎなてがみ』を真似して、宝の地図のような絵本を作ってみるのも楽しそうです。
『おほしさま かいて! 』は、色々な色が混じりあったお星さまが表紙になっている絵本です。
「おほしさま かいて!」そう言われた絵描きは、青い線でお星さまを描いていき、次のページでは表紙のようなカラフルで素敵な星が見開きに描かれています。
絵かきが描いた星は「お日さま かいて」と言います。この物語も語りかけのリレー方式で、木を描き、女性を描き、男性を描き、家、さまざまな生き物へと続き……。
- 著者
- エリック カール
- 出版日
絵かきが次々に描く色とりどりの絵に目を奪われてしまう絵本ですが、繰り返し読んでみるとところどころのページには絵かきがどんどん年齢を重ねていく姿も描かれています。そして物語の冒頭で登場した月が「ほしをかいてよ!」と言い、絵かきはその星とともに旅に出ます。
はたして初めに問いかけたのは誰だったのでしょうか。そしてこの絵かきは、誰なのでしょう。天地創造も感じさせてくれる素敵なストーリーです。
エリック・カールの作品で人気の高い5作品を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。彼の描く絵本は色々な色を塗った紙を様々な形に切り取り、そして重ねることでカラフルなだけではなく、芸術的な絵本に仕上がっています。
この機会に、ぜひ『はらぺこあおむし』以外の本も手にとってみてください。