どんでん返しが凄い小説おすすめ16選!【海外作家編】

更新:2017.4.14

日本の小説とは、また一味違った魅力のある海外小説。1度ハマれば、その独特の世界観にやみつきになってしまいます。ここでは、あっと驚く華麗などんでん返しが待ち受ける、おすすめの海外小説16作品をご紹介していきましょう。

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ゴシックロマンを描いたイギリスの名作! 『レベッカ』

1938年に刊行された、イギリスの作家、ダフネ・デュ・モーリアによるゴシック小説『レベッカ』。ヒロインの憂鬱や不安、恐れなどが、詩的に美しく描かれ、思いもよらない展開へと進んでいく不朽の名作です。

主人公の「わたし」は、ある夫人の付き人としてモンテカルロのホテルを訪れました。そのホテルで、前妻を海の事故で亡くした、大金持ちの貴族マキシム・ド・ウインターと出会います。「わたし」とマキシムの距離は徐々に縮まり、恋に落ちた2人は結婚を決意。こうして「わたし」は、イギリスのマンダレーにあるお屋敷へと移り住む事になったのです。

しかし、たくさんの使用人たちがいる大きなお屋敷での生活に、「わたし」は戸惑うばかり。しかもお屋敷の中には、美しく完璧な女性だった前妻、レベッカの影が、未だ色濃く残っていました。何をしてもレベッカと比べられ、認めてもらえない日々が続き、「わたし」は次第にレベッカの影に怯えるようになります。精神的に追い詰められていく中、ある日、海底に沈んだヨットの中から1つの遺体が見つかり……。
 

著者
ダフネ デュ・モーリア
出版日

何といってもこの作品は、文章の美しさに心惹かれてしまいます。物語は主人公の視点で語られていきますが、モントレーの景色、広大な屋敷の様子、鬱々とした不安などが、じんわりと染み渡ってくるように描写され、その世界観にはまり込んでいくのです。レベッカとはどんな女性だったのか、という想像が頭から離れず、主人公同様、レベッカのことで頭がいっぱいになってしまうのではないでしょうか。

遺体の発見により、物語は一気に加速し、衝撃の真実が次から次へと明らかになっていく展開に、読む手が止まらなくなることでしょう。実体無きレベッカの影に怯える怪奇的な物語が、上質なサスペンスへと変わっていく様子は圧巻です。頼りなく名前もない主人公の「わたし」が、徐々に成長して、たくましくなっていく姿もとても魅力的。それまで見ていた世界が、一変してしまう面白さを味わえる素敵な作品です。
 

仕掛けられたトリックが光る! 『歯と爪』

1955年に刊行された、アメリカの作家ビル・S・バリンジャーによるミステリー小説『歯と爪』。一見何の繋がりもない2つの物語が、驚きの展開で結びつく「カットバック」が駆使された本作は、結末が袋綴じで隠されている珍しい作品です。結末を知りたいと思えなければ、代金の返金を保証するという、驚きのシステムが採用され話題になりました。

ニューヨークにある地方刑事裁判所では、ある殺人事件の裁判が行われていました。被害者の遺体は発見されず、あるのは被告の家の暖炉から見つかった義歯や頸骨、右中指などの状況証拠のみ。不利な状態の検察側ですが、証人たちの供述により事実を積み上げ、徐々に弁護人を追い詰めていきます。

それと並行して展開されるのが、奇術師のリュウ・マウンテンが主人公の物語。リュウはタリーという女性と出会い、あることがきっかけで、彼女を奇術舞台のパートナーにすることになります。やがて結婚し、幸せな生活を送る2人でしたが、そんな日々を壊すある出来事が襲うのです。

著者
ビル・S・バリンジャー
出版日
2010-06-10

現代では、カットバック手法を用いたミステリー作品が多数存在し、人気を博しています。しかし当時としては、この手法は画期的なものだったでしょう。ストーリーは今読んでもたいへん面白く、テンポよく進んでいくので飽きることがありません。裁判の行方と、リュウとタリーの愛の物語が、どのように繋がるのかが気になり、先を読まずにはいられない作品になっています。

裁判シーンでは被告の名前が語られないため、つい様々な推理をしながら読み進めたくなってしまいます。ミステリーが好きな方には、ぜひおすすめしたいこの作品。予想外の真相にたどり着ける、カットバックの先駆けとなった名作に触れてみてはいかがでしょう。奇術師リュウが仕掛けた一世一代のトリックに、騙される快感を堪能していただければと思います。
 

悲しみと感動が入り混じる秀逸のラスト! 『クリスマスに少女は還る』

ラストにどんでん返しが待ち受けることで有名な、アメリカの作家キャロル・オコンネルによるミステリー『クリスマスに少女は還る』。緻密に練られたストーリー構成と、まるで映像を見ているかのように感じられる、流れるような文章が印象的な大作です。

舞台となるのは、クリスマスも間近に迫る、ニューヨークの田舎町メイカーズ・ヴィレッジ。10歳の女の子2人が、行方不明になる出来事が起きました。町の警察官ルージュ・ケンダルの脳裏に、15年前のクリスマスに起こった、悪夢のような出来事が蘇ります。当時10歳だった、ルージュの双子の妹スーザンが、やはりクリスマス前に誘拐され、クリスマス当日の朝、遺体となって発見された過去があったのです。

その事件の犯人は捕まり、今も刑務所にいるはずですが、ルージュの胸には言いようのない不安が募ります。そんな彼の前に、「あなたの過去を知っている」と言う、顔に傷のある謎の女性心理学者アリ・クレイが現れ、捜査に加わることになるのでした。
 

著者
キャロル オコンネル
出版日

物語には様々な人物が登場し、失踪事件の捜査の行方とともに、犯人に捕らえられた2人の少女、グウェンとサディーが、脱出に挑む姿も克明に綴られます。15年前の事件の真犯人は他にいるのか?少女たちの運命は?クリスマスの日が近づく中、読んでいて緊張感を感じずにはいられません。

抜群の存在感を放っているのは、ホラー映画マニアである破天荒なサディー。グウェンを気遣いながら、懸命に脱出を企てる彼女の、1つ1つの行動から目が離せなくなります。その他の登場人物たちもとても魅力的に描かれ、それぞれの心の傷が癒されていく様子は、涙なしに読むことはできません。衝撃の真実が明らかになったとき、クリスマスに訪れる、悲しみを伴う奇蹟に胸が震える傑作です。絶妙の余韻の中で本を閉じることができるでしょう。
 

圧巻の法定劇を描く大ベストセラー小説! 『推定無罪』

現役の弁護士としても知られる、アメリカの人気作家スコット・トゥローによるリーガルサスペンス『推定無罪』。スコット・トゥロー渾身のデビュー作となった本作は、先の読めない展開やスリリングでリアルな法廷劇、そして驚きの結末が話題を呼び、大ベストセラーとなりました。

主人公のラスティ・サビッチは、優秀な首席検事補。美しい妻と幼い息子とともに、幸せな生活を送っています。上司のレイモンドが、地方検事選挙の真っ最中で慌ただしい中、サビッチはある殺人事件を担当することになりました。事件の被害者は女性検察補のキャサリン・ポルヒーマス。自宅で全裸の絞殺死体となって発見され、頭部を殴打、そして性的暴行を受けた痕跡がありました。実は、以前サビッチと愛人関係にあった女性です。

容疑者の手がかりがまったく掴めず、操作が難航している中、サビッチは自分が容疑者として疑われていることに気づきます。なんと犯行現場の状況や検死の結果すべてが、サビッチの犯行を示しており、彼は逮捕されることになってしまうのです。
 

著者
スコット トゥロー
出版日
2012-09-04

事件を捜査していた主人公が、一転、容疑者として裁判にかけられるという内容にどんどん引き込まれ、物語は一気に面白くなっていきます。やはり圧巻なのは、手に汗握る重厚な法定シーン。被告人は有罪か?無罪か?登場人物たちそれぞれの心理描写や駆け引きに、俄然目が離せなくなってしまいます。

前半、捜査はなかなか進まず、様々なエピソードが描かれていきますが、それらがすべて伏線となっていたことに気づき、言いようのない興奮を感じてしまうのです。「有罪が確定するまでは、被告人は無罪と推定される」。そんなルールのあるアメリカの裁判についても詳しく知ることができる、名作中の名作です。予想もつかない結末へと進んで行く、極上の緊張感をぜひ楽しんでみてくださいね。
 

世界観に惹きつけられる!時間の中を往き来する傑作SF 『永遠の終り』

SF界の三大巨匠の1人と言われたアメリカの作家、アイザック・アシモフによって描かれる、時間をテーマとしたSF小説『永遠の終り』。SFであり、ラブロマンスの要素も取り入れられた本作は、壮大なスケールで描かれる世界観にわくわくさせられる、魅力的な1冊です。

物語の世界では、人類の最大多数の幸福を保つため、過去の歴史を管理する機関「永遠(エターニティ)」が存在します。主人公アンドリュウ・ハーランは、その機関の「永遠人(エターナル)」。様々な分析や計算から、より良い未来にするべく、歴史をどのように矯正していくのかを導き出していくのです。多くの人間の運命を操ることになり、矯正によって消えていく人間もいる中、ハーランは冷静沈着に業務をこなしていきます。

そんな彼が、「現実矯正」のため新しく着任したのが482世紀。ハーランはこの時代で、美しい女性ノイエスと出会い、禁断の恋に落ちます。しかし、彼女の存在するこの時代に、「現実矯正」が行われることが決まりました。矯正が行われればノイエスの存在は消えてしまいます。ハーランはノイエスを助けるため、「永遠」に背くことを決意するのです。
 

永遠の終わり

アイザック・アシモフ
早川書房

数々の名作を残すアイザック・アシモフですが、時間を扱った作品は、唯一本書だけだと言われています。タイムトラベルによって、途方もなく長い時間の中を自由に往き来する設定に、思わず惹きつけられてしまうでしょう。それまで女性との交流がなかった主人公の、燃え上がるような恋心にはハラハラさせられます。それでいて人間らしい感情を取り戻していく様子が、何か大事なものを教えてくれているよう感じられる素敵な作品です。

終盤には意外な真実が次々と明らかになり、さらに驚きのどんでん返しが待っています。人類にとって、本当に必要なものとは何か。読み応えたっぷりな、なんとも奥深く壮観な結末を、ぜひ見届けていただければと思います。
 

謎が解けたときの爽快感がたまらない これぞ本格ミステリー! 『Xの悲劇』

日本でもファンの多い、アメリカの人気推理作家エラリー・クイーンによる本格ミステリー『Xの悲劇』。ドルリー・レーンを探偵役とした4部作の、第1作目となる本作は、論理的で緻密な推理が展開される、純粋に謎解きを楽しみたい、という方にぜひおすすめしたい傑作推理小説です。

主人公ドルリー・レーンは、引退した元舞台俳優。難事件の謎を鮮やかに解明した過去があり、その力を借りようとサム警視とブルーノ地方検事の2人が、彼の元を訪ねてきました。彼らが捜査しているのは、満員電車の中で起こった不可解な殺人事件です。

被害者のロングストリート氏は、タクシーがつかまらず、たまたま乗った電車の中で毒殺されます。彼の手には無数の傷がついており、ポケットの中から、縫い針が50以上刺さったコルクの球が発見されました。針の先端にはニコチン毒が塗られ、それがロングストリート氏を死に至らしめたのです。サム警視の話を聞いたレーンは、すぐに何かがわかった様子でした。しかしその後、第2の殺人事件が発生してしまい……。
 

著者
エラリー・クイーン
出版日
2009-01-24

頭脳明晰なレーンの分析力には脱帽するばかりです。加えて、俳優業で培った演技力を活かし、他の人間に変装して調査する場面もあり、スマートな身のこなしについうっとりしてしまいます。実はレーンは両耳が聴こえないのですが、驚異的な読唇術を身につけているため、なんらハンディキャップになっていない、というのもすごいところ。そんな魅力的な主人公レーンが、犯人によって綿密に練られた、驚くべき犯罪計画の真相をクールに暴いていくのです。

作品内のあちこちには、幾つもの伏線が驚くほど自然に、巧妙に張り巡らされています。物語の最後で、まるでパズルのピースがはめ込まれるように、全てが綺麗に収まっていく様子に、爽快感を感じずにはいられないでしょう。
 

予想を超える展開にページを捲る手が止まらない! 『死の相続』

1930年代、パルプ作家として数多くの作品を発表した、アメリカのセオドア・ロスコーによる怪作ミステリー『死の相続』。奇想天外なストーリーを展開させ、読むものを惹きつけ虜にしてしまう、なんとも不思議な力のある傑作です。

売れない画家のカートが、ガールフレンドのピート(パトリシア)をモデルに絵の製作に励んでいると、そこへ黒人の弁護士が訪ねてきました。ピートの叔父にあたるハイチの実業家、アンクル・イーライが亡くなり、ピートも遺産相続人であるため葬儀に参列してほしいと言うのです。ピートはイーライの屋敷がある「モルン・ノワール」へ行くことになり、カートもそれに同行することになりました。

屋敷には、他にも7人の遺産相続人たちが集められ、弁護士が遺言状を読み上げます。「遺産は全て第一相続人に譲る。ただし24時間以内に第一相続人が死亡した場合は、第二相続人へ。それも遂行されなければ第三相続人へ」と、順番に相続権が移行するとあり、また「24時間はどんなことがあってもモルン・ノワールから離れてはいけない」とも記されています。奇妙な遺言状の発表があったその日の夜、第一相続人のサー・ダフィンが、何者かに射殺されたのでした。
 

著者
セオドア ロスコー
出版日

登場人物たちはみな怪しげで、一癖も二癖もある人ばかり。相続人が次々と順番に殺されていくのですが、その展開の速さには本当にびっくりしてしまいます。屋敷を出れば相続権を失うため、逃げ出せないという状況だけではなく、外に出られなくなる、あるとんでもない出来事も発生してしまい、屋敷内は大パニックです。1人また1人と人が死んでいくだけではないのが、この物語のすごいところではないでしょうか。

驚くべきは、本書が書かれたのが1935年であるということ。作者の計り知れない発想力に驚嘆し、次々起こる出来事に目を丸くしながら読んでしまいます。収集がつかなくなるのでは、と心配するほど様々なことが起こるにもかかわらず、最後には全ての謎が解かれ、綺麗などんでん返しで締めてくれるのです。一風変わった、型破りなミステリーが読みたい方は、ぜひ本書を読んでみてくださいね。
 

想像を絶するエンディングに魅了される! 『ハンニバル』

映画化もされ、日本でもたいへん有名な『ハンニバル』。アメリカの作家トマス・ハリスによる、ハンニバルシリーズ3作目となる本作は、凄まじいほどの存在感を放つレクター博士と、女性捜査官クラリスの物語が、衝撃の結末を迎えることになる作品です。

『羊たちの沈黙』から時は経ち、クラリスはFBI特別捜査官として活躍していました。しかし、麻薬組織と繰り広げた銃撃戦をきっかけにマスコミから叩かれ、FBIでの立場も危うくなります。そんなとき、7年前に逃亡したレクター博士から、クラリス宛に慰めの手紙が届くのです。

レクター博士がイタリアのフィレンツェにいるらしいことがわかり、密かに捜査が進む中、博士に恨みを持つ大富豪メイスン・ヴァージャーもまた、復讐のため多額の懸賞金をかけて彼を探していました。そしてフィレンツェの刑事リナルド・パッツィが、偶然にもレクター博士の存在に気づき……。
 

著者
トマス ハリス
出版日
2000-04-12

レクター博士だけでなく、周りにいる登場人物たちもかなりの悪人揃いです。サディスティックな描写が多々あり、思わず目を背けたくなる場面もあるでしょう。そのあまりの悪魔性ゆえに、「もはや人間ではない」とまで言われるレクター博士ですが、なぜか魅力的に感じる瞬間もありハッとしてしまいます。緊張感が解ける瞬間がなく、物語はスピード感を落とさないまま一気に進んでいくため、とにかく読み出したら止まりません。

映画は見たことがあるけど原作は知らないという方にも、ぜひ読んでいただきたいこの作品。映画とはまったく違う、驚愕の結末が待っています。残酷で恐ろしく、それでいてどこか優雅で美しい。そんな刺激的な物語に浸ってみてはいかがでしょう。
 

至高の謎解きを!読みやすく誰にでも楽しめる名作 『貴婦人として死す』

日本でもファンの多い、アメリカの作家カーター・ディクスンによる推理小説『貴婦人として死す』。ヘンリー・メルヴェール卿が登場する人気シリーズ、第14作目となる作品で、トリックや登場人物たちの人間模様、ヘンリー・メルヴェール卿の魅力をたっぷり堪能できる、エンターテインメント性の高い作品です。

舞台となるのは、第二次世界大戦間近のイギリス。医師である「私」は、親しくしているアレック・ウェインライトの妻、リタから相談を受けました。アメリカから来た青年バリー・サリヴァンと不倫関係にあると言うのです。アレックのことも愛しているので、どうしたらいいかわからず悩んでいる様子。リタはたいへん若くて美しく、60男の夫アレックとは20歳以上の歳の差があります。

それ以来夫妻を気にかけていた「私」は、ある晩、アレックから自宅への招待を受けました。集まったのはアレック、リタ、サリヴァン、「私」の4人です。ところが、途中でリタとサリヴァンの2人が消えてしまい、探そうと外に出た「私」は、2人が崖から海へ飛び降りたように見える形跡を発見してしまいます。
 

著者
カーター・ディクスン
出版日
2016-02-27

物語は、田舎町の老医師リューク(私)の手記によって進められます。心中事件ではなく他殺だと主張するリュークの元へ、ヘンリー・メルヴェール卿が登場するのですが、その様子がコミカルでとても面白いのです。足の指を骨折したと、電動車椅子を乗り回し、ドタバタと大暴走。しんみりと憂鬱になりそうな世界観に、少しの明るさを与えてくれています。

作品内に散りばめられた伏線、巧妙なトリック、鮮やかな謎解きから犯人が判明したときの衝撃。どれを取っても、一級品の作品ではないでしょうか。ストーリーも読み応えがあり、つい夢中になって没頭してしまうでしょう。推理小説が好きな方なら、これを読まない手はないのでは、と思えるような素晴らしい1冊になっています。
 

ジェフリー・ディーヴァー ブレイク前の傑作! 『眠れぬイヴのために』

様々なベストセラー作品を生み出しているアメリカの人気作家、ジェフリー・ディーヴァーによるサスペンス『眠れぬイヴのために』。たった一夜の出来事を綴った物語ですが、登場人物それぞれの濃厚なドラマが積み重なった、ハラハラドキドキのサイコ・サスペンスです。

残虐な殺人事件、インディアン・リープ事件の犯人として有罪の確定している男、マイケル・ルーベックが精神病院から脱走しました。数ヶ月前に自分の有罪を決定付ける証言をした、女教師リズボーンへの復讐が目的だと思われます。記録的な嵐が近づいている中、ルーベックを捉えようと3人の男が動きだしました。

懸賞金が目当ての元警官、ルーベックを担当していた医師、そしてリズボーンの夫。それぞれに思惑のあるこの3人がルーベックを追跡しますが、彼はことごとく追跡者たちの裏をかき、徐々にリズボーンの自宅へと近づいていきます。その間も、嵐は激しさを増すばかり。そんな中、インディアン・リープ事件の真相も明らかになっていき……。
 

著者
ジェフリー ディーヴァー
出版日

分裂病を患っているルーベックですが、追跡者の仕掛ける罠を巧みに掻い潜っていく様子が、スリルたっぷりに描かれています。登場人物たちそれぞれの視点からストーリーが展開していき、先が気になるところで絶妙に場面が切り替えられるため、読む手が止まりません。様々な人物が見せる不穏な動きに、大いに振り回されることでしょう。

迫り来る嵐によって臨場感がさらに増し、クライマックスに向けて緊張感が高まっていく様子はまるで映画のよう。最後に明かされる予想外の真相には、思わず声をあげて驚いてしまいます。サイコ・サスペンスと言っても、残酷な描写はかなり抑えられており、苦手な方でも安心して楽しく読める作品です。
 

醜く、愚かで、卑しく、汚い人間のお話。これは真実のお話

ロス・マクドナルドはハードボイルド界の巨匠です。このジャンル特有の男くさいイメージに苦手意識を持つ女性の方は多いと思いますが、彼の特徴はその高いミステリ性にあります。ちょうどミステリとハードボイルドの中間にあるようなこんな作品もあるんです。

主人公リュウ・アーチャーは凄腕の私立探偵です。ある日、失踪した妻を探して欲しいという依頼が舞い込み……。探偵ものおなじみの冒頭から始まるこの作品ですが、肝は何といっても主人公アーチャーです。

著者
ロス・マクドナルド
出版日
1976-09-01

アーチャーは元警官で、過去に離婚を経験し、今は独り身の中年の男。不細工なわけでもイケメンなわけでもない一見普通の男。おいおい、なんだか魅力のなさそうな主人公だなぁって思ってしまいそうなんですが……読み進めていく内にあることに気付かされるんです。アーチャーには人間性が感じられないってことに。

食事をしたり、睡眠をとったりってシーンが記憶にないくらい少ないんですよね。お決まりの美女に誘惑されてうんちゃらかんちゃらって戦法もアーチャーには通用しないんです。彼は他のことは一切構わず常に事件を追い続けます。時には自分の利益にならない時でも真相を追い求め続けるんですよね。

感情が欠落しているんじゃないかって思うくらい、彼には感情の色がないんです。透明人間なんじゃないかって思う時もあります。そして、このことが何を表すかというと、彼が究極に客観的な視点、すなわち究極に公平な目を持っているということ。

まるで空の上から神様が人間界を覗いているような……。このアーチャー(=神)の眼に覗かれると人間の持つドス黒い部分がズルズルと引きずり出されてしまうんです。そして、そのアーチャーの眼を借りたあなたが目撃する驚愕の結末に、きっとこう思うはずです。これが『さむけ』か……と。

孤高の男の生き様を見よ!

こちらは「ハリー・ボッシュ」シリーズの3作目。刑事ものも法廷ものも両方楽しみたいっていう贅沢なあなたにお薦めなのが本作です。シリーズものはちょっと手を出しにくいなぁって方でもご安心を。初めての読者にも分かり易く、かつシリーズ愛読者にもくどくないよう、絶妙なバランスで作品ならではの魅力が描かれているんです。

死体に化粧を施す謎の連続殺人犯「ドールメイカー」。それを追うハリウッド署刑事ハリー・ボッシュ。執念の捜査で犯人を追い詰めたボッシュは犯人を射殺し、事件を解決を迎えました。

著者
マイクル コナリー
出版日

本編が描くのはその数年後、ある裁判から始まります。被告はなんと主人公ハリー・ボッシュ。ドールメイカーとして射殺された男は無実だったと犯人の妻に訴えられたのです。自らの捜査に確信を抱いていたボッシュでしたが、裁判が行われる中、新たな遺体が発見され、その手口はドールメイカーのものと酷似していました。確信が揺らぐハリー・ボッシュ。果たして真相はいかに?!

フィクションとは思えないそのリアルな人物描写や、丁寧に施された伏線をキレイに回収する構成の見事さは、職人芸としか言い様がありません。著者マイクル・コナリーがロサンゼルスタイムスの犯罪担当記者だったことが作品に鮮やかな彩りを添えているようですね。

さらには主人公ハリー・ボッシュの存在が本シリーズ最大の魅力です。自分を絶対に曲げず、誰にも迎合しない男。一度事件に喰らいつけば、少々汚い手も厭わないダーティヒーロー!それが孤高の刑事ハリー・ボッシュです。

「どんな人間にも価値がある。さもなければ、だれも価値がない」ハリー・ボッシュはこう信じています。その決して揺らぐことのない信条を胸に秘め、ひたすら突き進む男の執念に胸を打たれること必至です。

結末に向かってどんどんとスピード感が増していく本作は、一度手に取ったが最後!あっという間に引き込まれ、結末には驚かされること間違いなしです!

全ての弱き野郎どもへ

本作は50年代ロサンジェルスを舞台にしたジェイムズ・エルロイの代表シリーズ「暗黒の LA四部作」の2作目。1950年のハリウッドは、アカ(共産主義者)狩り旋風が吹き荒れる激動の時代でした。人々は密告の恐怖に怯え、頭を低くして生きています。

そんな時代の荒波に揉まれながらも、懸命に生きている3人の男たち。彼らがこの物語の語り部となります。一人は共産主義者をあぶりだすための調査を任された刑事、一人は凄惨な猟奇殺人事件の捜査に当たる保安官助手、最後の一人は元警官でマフィアの始末屋。

著者
ジェイムズ エルロイ
出版日

それぞれが辿っていた道が交差した時、物語は結末に向かって一直線に加速していきます。その構成は見事としか言いようがありません。複雑で緻密なプロット、散りばめられた伏線、そして人間の心の闇を描かせたら右に出るものはいないのが著者であるジェイムズ・エルロイです。

彼の描く人々は皆一様に闇を抱えています。皆、強さと弱さを身内に同時に抱えているのです。そしてエルロイは、この世界は光に満ち溢れているなどといった気休めは決して言いません。この世界は腐りきっているということを認めざるを得ない瞬間は誰にでもあると思います。

けど、それでも人は生きていかなければならないのだという人々の心の葛藤を存分に描き出したのが本作品。そんな複雑な人間の心理が結末を予想だにしないものへと導きます。

あの日、あの時、あの場所で

幼い頃の事をどれくらい覚えていますか?大人になって思い返すと、その記憶はほんの些細なことでしかなかったりしますよね。しかし、その頃すでに「運命」が決定づけられているとしたら?そんな問いが頭の中を駆け巡る作品です。

主人公ジミー、ショーン、そしてデイヴは幼い頃、近所に住む仲の良い友達同士。けどそれも長くは続きませんでした。ある日、3人で遊んでいると男たちに声を掛けられ、デイヴだけが何故か連れて行かれてしまいます。

著者
デニス ルヘイン
出版日
2003-12-20

まだ幼かったジミーとショーンは抵抗もできず、ただ黙って見ていました。何故なら彼らが警官の格好をしていたからです。大人たちは必死に捜しました。しかし見つけることはできず、数日が経過したある時、ひょっこりと帰ってきたのです。

一見したところ外傷もなく、デイヴは無事なようでした。けど誰もが分かっていたのです。性的虐待を受けたに違いない、と。それ以来3人は疎遠になり、互いに干渉することなく人生を過ごしました。

この衝撃的な冒頭で幕開けるこの物語は、大人になった彼らが巻き込まれたある事件によって再び動き出します。ずっと止まっていたはずの運命の歯車が、再び回転を始めたのです。

相変わらず付きまとうのは、幼い頃のあの出来事。連れ去られたものと、そうでなかったもの。どんなに抗おうとも乗り越えられない大きな隔たり。もしあの時、連れ去られたのが自分だったら。もしあの時、連れ去られたのが自分じゃなかったら。もしあの時……。

こういった後悔の念に蝕まれた彼らはその思いのみに盲目になり、事件はより複雑になっていきます。すぐそばに転がっていたはずの答えを、きっとあなたも彼らと同じように見逃してしまうでしょう。そうして、3人を待ち受けていたのはあまりにも哀しい結末でした。

著者デニス・ルへインは読者にこう問いかけているように思えます。「運命」という、とてつもない奔流『ミスティック・リバー』に飲み込まれてしまった時、一体あなたはどうしますか、と。

最後にひっくり返るのはあなたの……?!

ウィル・スミス主演の映画で有名ですが、こちらはその原作にあたります。ジャンルとしてはSFなんですが、あくまで「どんでん返し」の括りということでこちらをご紹介します。何よりこのどんでん返しは一風変わった斬新なもので面白いんです!

ウイルスが蔓延し、人類が吸血鬼化してしまった世界。そこで生き抜くたった一人の男、ロバート・ネヴィル。そう、彼こそ地球最後の男です。彼は自分が感染しなかったのは、ウイルスに対する抗体を持っているからに違いないと考え、吸血鬼たちと戦いながら日々研究に励みます。

著者
リチャード・マシスン
出版日
2007-11-08

この設定こそ、かの有名なジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の元ネタなんですね。ただ、映画のゾンビと本作の吸血鬼で決定的に違うことが一つあって、それがこのお話のカギになるんです。

それは、吸血鬼が知性を持っているということ。つまり、自分の頭で考えて行動し、吸血鬼同士でもコミュニケーションが取れるっていうことを表しているのです。

突然ですが、ここでこんな場面を思い浮かべてみましょう。

厳重な檻の中にいる連続殺人鬼と捜査官。「羊たちの沈黙」のレクター博士と捜査官クラリスを思い浮かべるといいですね。あなたは捜査官です。あなたの前には鉄格子があります。それは正義と悪を隔てる絶対的な境界線です。

さて、ではその境界線のどちら側にあなたはいるのでしょうか?いやいや、答えるまでもない。もちろん正義の側ですよね。そこでふと殺人鬼の顔を、レクター博士の顔を見て下さい。その確信が揺らいできませんか?彼の表情を見ていると、果たして自分がいるのが檻のどちら側なのか分からなくなってきませんか?

さて、話を元に戻しましょう。この物語はロバート・ネヴィルの視点で紡がれていきます。そしてその反対側には、知性を持った吸血鬼たちがいます。

では、正義と悪を隔てる境界線を引いたのは誰でしょうか?誰が、正義と悪を区別したのでしょうか?どうぞ本をお手に取ってみて下さい。秘められたその答えに、自分の考えが覆される面白さを感じられるでしょう。

ミステリーの女王アガサ・クリスティーの代表作!

1939年に刊行された、イギリスの作家アガサ・クリスティによる『そして誰もいなくなった』。ミステリー史上最高傑作と評されることも多い本作は、10人の登場人物たちが、1人ずつ殺されていくという王道ミステリー。多くの作家からリスペクトされ、世界中で読み継がれ愛されている作品です。

著者
アガサ・クリスティー
出版日
2010-11-10

年齢も職業もばらばらの男女10人が、偽の招待状によって、ある孤島へと集められました。最初の夜、10人で晩餐を楽しんでいると、突然人間の声とは思えないような甲高い声が響き渡ります。その声は、10人それぞれの過去の罪を暴露し、ふつりと消えました。そしてその後、1人目の犠牲者が出ることになるのです。

登場人物たちは皆個性的に描かれ、それぞれ印象深く心に残ります。閉じ込められた孤島で、1人、また1人と殺されていく様子には、ハラハラドキドキさせられ、まったく古さを感じることはありません。テンポ良く物語は進み、次は誰が消えるのか、犯人はいったい誰なのかと惹きつけられ、先が気になりどんどん読み進めることができるでしょう。

次々と人が死んでいくにもかかわらず、不思議と残酷さや不快感を感じることはなく、巧妙に仕掛けられたトリックを、心から楽しむことができます。いつまでも色褪せない、アガサ・クリスティの不朽の名作。エンターテインメント性の高い、上質なミステリーを楽しむことができますから、まだ読んだことのない方には、ぜひおすすめしたい作品です。

どんでん返しが魅力的な、おすすめの海外小説をご紹介しました。どの作品も、一度読み出したら止まらない面白い作品ばかりです。普段あまり海外小説を読まない方も、ぜひ1度挑戦してみてくださいね。

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