安野モヨコ作「ジェリーインザメリーゴーランド」が面白い!隠れた良作!

更新:2021.11.10

安野モヨコのおしゃれな作風と勢いのあるギャグ、青春というテーマが詰め込まれた作品「ジェリーインザメリーゴーランド」。今回はその魅力をご紹介します!

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「ジェリーインザメリーゴーランド」あらすじ

著者
安野 モヨコ
出版日
2014-04-21

男になりたい女子高生のミリと、彼女の双子の兄で女として生きているモモ。ある日別々に育ったふたりは16歳の誕生日に再び出会います。そしてその日に父親が覚せい剤の密輸で捕まってしまい、家を追い出されてしまうのです。そこでミリ名義になっていた古い家に移り住むのですが、そこには3人のモデルの少年たちが住んでおり、奇妙な同居生活が始まります。

服も雰囲気もとにかくおしゃれ!

服も雰囲気もとにかくおしゃれ!

出典:『ジェリー イン ザ メリィゴーラウンド』1巻

美容やおしゃれについて語ったイラスト付きエッセイ「美人画報」シリーズで、高い美意識をのぞかせた安野モヨコらしいセンスが光る本作。センスの高いミリにおしゃれ好きなモモ、メンズモデルの男の子たちなど、普通のシーンでもとにかく格好が可愛い、かっこいい!見ているだけで惚れ惚れしてしまいます。

2話でミリとモモが引っ越し先に向かう途中のシーンはロードムービーのような雰囲気。軽トラの後ろに荷物と一緒につめこまれ、それぞれギンガムチェックと花柄のパンツを履いて長い足を窮屈そうにしているのは、はすっぱなかっこよさがあります。これから始まる新しい生活の期待感も高まってくるおしゃれなシーンです。軽トラに乗っていて、場所が日本の住宅街というのもカッコつけすぎない良い外し感となっています。

暴走ギャグが止まらない!

暴走ギャグが止まらない!

出典:『ジェリー イン ザ メリィゴーラウンド』1巻

安野モヨコ作品といえば勢いのある独特のギャグも特徴のひとつ。本作でもその面白さは健在です。男になりたいミリが、モモは姉ではなく兄だと気づいたシーンは、特にその面白さがあります。

「きみ兄じゃないか!」
「それはタブーよ!身近にいる人々が全員で心をこめてあたしのこと女だって思わなくちゃ」
「じゃあちんこいらないの?」
「いる?」
「うん!」
「じゃ あげる!!」
「やったあ!!」(それぞれ中略あり)

ツッコミ不在のカオス感。ポンポンとおかしな会話が進む暴走っぷりです。なんだか幼稚さが限界点を超えて微笑ましさすら感じられます。この謎の勢いにそのまま身を委ねていると、不思議とエネルギーチャージしてくれるのもこの作品の良さなのです。

おしゃれだけど青臭いエネルギーがある!

ミリとモモの若者らしい感情が描かれているのも本作の魅力。ふたりは双子で同じ容姿をしており、実は考えも遠いようで似ているのです。ミリは男になりたいと言いつつも本当にやりたいことがないのをぼんやりと寂しく思っています。

「子供の頃はパイロットか消防士になりたかった
いいなモモちゃんは『女になる夢』があって…
1999年に世界のおわりがくるってゆうけどそんなのあと3年しかない
やりたいことを思いついた順にやっておかないと やれるうちに!」(中略あり)

そしてモモは自分のしたいことをしているのにいつも他人を羨ましがるミリにこう思っています。

「いつもあたしが欲しい物を普通に手にしている子がいる
いいじゃないミリちゃん
あなたは女の子でカワイくってモデルにもスカウトされて
そんなにめぐまれたトコロにいるのに煮えきらないミリちゃんを見てると
つねってやりたくなるわ」(中略あり)

お互いがお互いの良さに気づいておらず、相手を羨ましく思っているのです。自分をまだ客観的に捉えられない若さが感じられます。そして自分のことが分からないから何をしたいかも、何に向いているかも分からず、ぼんやりとした不満を抱えているのです。そんなふたりの心の葛藤には、おしゃれな画風とは裏腹の青臭い若さが感じられます。

安野モヨコの隠れた名作『ジェリーインザメリィゴーラウンド』を読もう!

著者
安野 モヨコ
出版日
2014-06-21


心の内に熱いものをもった思春期の人物たちの様子を描いた本作は、表紙などのおしゃれさに反して意外と泥臭い青春が描かれています。ぜひ可愛くて読み応えもある安野モヨコの隠れた良作をチェックしてみてください。

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