チェスタトンおすすめ作品4選!20世紀イギリス知識人の作品を読む

更新:2017.4.18 作成:2017.4.18

シャーロック・ホームズのライバルの一人と言われるブラウン神父の活躍するミステリ、不思議な味わいのある長編小説、自身のキリスト教観が表れているエッセイなど、様々な作品を書いたチェスタトン。彼の作品の中から、おすすめの作品を紹介します!

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多才なチェスタトン

ギルバート・キース・チェスタトンは、1874年に生まれ、イギリスで活躍した知識人です。「ブラウン神父」シリーズを書いた推理小説家としての顔が最も有名ですが、批評家、詩人、画家などとしても評価されています。

「ブラウン神父」シリーズは、カトリック教会に属するブラウン神父が事件の謎を解いていくシリーズです。ブラウン神父はホームズと同時代に生まれたこともあり、よく比較されます。ブラウン神父はホームズのライバルだと言われることも多いです。

実際に比較してみると、実に対照的です。「シャーロック・ホームズ」シリーズは、かっこいいホームズという職業探偵の活躍をかっこよく書いており、いわば謎解きよりも冒険を主軸にしていると言えますが、「ブラウン神父」シリーズは、ブラウン神父という地味だけどどこか憎めない神父が、謎解きをする様子を淡々と書いています。

他に小説作品では、独特の雰囲気のある『木曜日だった男』『詩人と狂人たち』などを発表。エッセイの『正統とは何か』では、彼のキリスト教観に基づいた哲学などを綴っています。

今回はそんな多才なチェスタトンの様々な顔が見えてくる、上記4作品をご紹介します!

トリックの基礎はここにあり

名探偵のヴァランタンが、大泥棒フランボウを追ってきている最中に、ちょっとした悪戯ともいえるような数々の奇妙な事件に出会う「青い十字架」、ヴァランタンの屋敷のパーティの最中に見つかった切断された死体「秘密の庭」、脅迫状がとどき、視線を感じ、悩む少女のストーカー事件を解決する「見えない男」。

魅力的な12の短編が入った、ミステリ史に残る名作です。

著者
G・K・チェスタトン
出版日
2017-01-12

「ブラウン神父」シリーズの中でも最も有名な、1911年に出版された第一作です。

探偵役となるブラウン神父は、小柄で太っていて、丸々とした顔の、どこかひょうきんな田舎臭さを感じるような人物です。しかし、事件となれば鋭い洞察力を発揮します。不思議な魅力がある探偵役です。

彼が解いていく事件には、それぞれ趣向の異なるトリックが用いられています。様々な推理小説を読んだことがある方には、古臭く感じられるものもあるかもしれません。ですが、これだけのバリエーションのトリックが、一人の作家によって1911年に生まれていた、というのには驚かされると思います。

それぞれ別の角度からアプローチしたトリックの雛型が詰まった短編集です。ここにはミステリにおけるトリックのお手本のようなものを見いだせるのではないでしょうか。
 

落ち着かない小説

テロを未然に防ごうと、無政府主義組織に乗り込んだサイム。その組織では、7人の幹部に「日曜日」と呼ばれるボスを中心として、それぞれ曜日のコードネームが付けられていました。「木曜日」が急死し、ひょんなことからサイムは新しい「木曜日」に選ばれます。サイムは幹部会議に出席しますが……。

著者
チェスタトン
出版日
2008-05-13

上に書いたあらすじを読んだだけだと、単純なスパイ小説ではないかと思われるかもしれませんが、正直、とても紹介しにくい小説です。この小説がもつ奇妙な味わいを、どう言葉にしたらいいのかわかりませんが、とにかくじっくり楽しんでもらいたい作品です。

本を紹介するときに、その本のジャンルを伝えるのはよくあることですが、『木曜日だった男』に関しては、ジャンルを訊かれても困ってしまいます。あえて言うなら幻想小説のような気がしますが、サスペンスのような、ユーモア小説のような気もします。

どこか特定のカテゴリーに収めようとしても決して落ち着くことのない、奇妙な小説です。チェスタトン自身、一カ所に収まらず、様々な活躍をした人だったので、ある意味チェスタトンをよく表している作品なのかもしれません。奇想天外、という言葉でも足りないような、独特の世界をかみしめてみてください。きっとクセになりますよ。

めくるめく奇妙なチェスタトンの世界

奇妙な画家であり、詩人であるガブリエル・ゲイル。逆立ちをよくする妙な癖のある彼は、奇怪な事件を解くことのできる人物でもありました。一風変わった人たちの起こす、一風変わった事件を、一風変わった探偵が解き明かす8つの物語を収めた短編集です。

著者
G・K・チェスタトン
出版日
2016-11-19

チェスタトンの探偵、といえばブラウン神父ですが、ガブリエル・ゲイルもいます。ただ、彼は一筋縄では理解できない探偵です。

ガブリエル・ゲイル本人が、自分は実務的なことは苦手だが、狂人の思考がわかる、と認めています。こんな人物が本当に探偵なんてできるのか、と疑問に思われるかもしれませんが、その疑問は正しいです。彼の解く事件は全て、通常のミステリのように一般的な論理にかなった形で解かれるのではありません。狂人が起こした事件だからこそ、ガブリエル・ゲイルは解くことができるのです。

そのため、事件の内容自体も奇妙なものになっており、狂気と正気、などのテーマが繰り返し見え、実際に衒学的な議論が交わされるシーンもあります。そのようなシーンを読んでいると、チェスタトンの知識人としての側面がかいま見えてくるように思います。

これはミステリなのだろうか? アンチミステリ? いや、狂人の理論としてはすばらしいミステリではないだろうか? 狂っているってどういうこと? 読んでいるうちに、思考の海に溺れさせられます。

チェスタトンと自分をより深く知る

1908年に出版された『正当とは何か』は、チェスタトンのキリスト教観が見えてくるエッセイであり、キリスト教擁護論の系譜の中でも、重要な位置を占めている作品です。話題はタイトル通り「正統とは何か」ということから、狂気、伝統、愛国心など、様々なことに言及していきます。
 

著者
ギルバート・キース チェスタトン
出版日

上記で紹介した作品で、探偵役が神父というキリスト教に深くかかわっている職業をもっていたり、無政府主義組織など政治的な要素だったり、作品の中心が狂気であったりというところに、チェスタトンのキリスト教、政治、狂気といったものへの関心をうかがい知ることができると思います。チェスタトンは、そういったものをどのように考えているのか、ということが明確に述べられるのが、この『正統とは何か』というエッセイです。

読んでいくと、チェスタトンなりのキリスト教価値観を中心に据えたものの見方が段々見えてきます。それに同意したり、反発したりして、自分なりの価値観を考えてみるのも面白いですし、この本に書かれている内容を、彼のフィクション作品に表れている論理や思想と照らし合わせて考えてみるのも楽しいです。自分と、チェスタトンとより深く向き合えるようになる一冊です。

以上、20世紀イギリスで様々な活躍をしたチェスタトンを紹介させていただきました。頭を使って読まないといけない作品が多いかもしれませんが、不思議と惹きつけられる作品ばかりです。ぜひ一度手に取ってみてください!